在庫確認・見積は今すぐ フォームで依頼する 写真の添付もOK / 24時間受付
太陽光・EV電源回路設計

太陽光・蓄電池の直流回路用ヒューズとは|逆電流保護という独特の役割と、交流用ヒューズとの違いを一次情報で整理

読了目安: 12分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

接続箱の中で焦げたにおいがする。開けてみると、切れたヒューズのまわりだけ樹脂が黒く変色していた——太陽光の直流回路を扱う現場では、こうした「切れたはずなのに、切れ方がおかしい」という違和感に出会うことがある。原因を追うと、手元にあった一般的なガラス管ヒューズを応急的に使っていた、という話に行き着くことは珍しくない。同じ「ヒューズ」という部品でありながら、交流用と直流用はなぜここまで挙動が違うのか。

ヒューズは電流が流れすぎたら切れる、それだけの部品だと思われがちだ。しかし直流回路、とりわけ太陽光ストリングや蓄電池の回路に関しては、この理解では足りない。切れた後にアークが持続しないこと——ここまで含めて設計されているのが、直流回路用ヒューズの正体である。

アークは電圧ゼロで消える——交流の常識が直流では通用しない

ヒューズが電流を遮断する瞬間、内部のエレメント(溶ける金属線)が溶断すると同時に、その隙間にアークと呼ばれる放電が発生する。遮断が完了したと言えるのは、電流が止まるだけでなく、このアークが完全に消えたときだ。

交流回路では、この消弧はほぼ自動的に進む。電圧は1秒間に50回または60回、周期的にゼロを通過する。アークはこのゼロ電圧点の付近で自然に途切れ、そのまま遮断が完了する。大東通信機の技術資料が説明する通り、交流用ヒューズはこの性質に乗る形で設計されている。

直流回路にはこのゼロ電圧点が存在しない。電圧はゼロに落ちることなく一定方向にかかり続けるため、アークは自分から消えてくれない。とりわけ電圧が高い回路では、いったん発生したアークが持続し、再導通してしまう恐れがある。そのため直流用ヒューズには、消弧剤(アークを冷やして消すためにエレメントの周囲に配置された物質)などによって、アークを強制的に消し切る性能が求められる。交流用ヒューズをそのまま直流回路に使うと、この消弧の仕組みがないまま高い直流電圧にさらされることになり、溶断後もアークが残って再導通したり、ヒューズ自体が破裂・発火したりする危険につながる。

太陽光ストリングの逆電流保護——並列にした瞬間に生まれるリスク

太陽光アレイは、複数のストリングを並列に接続して構成する。並列にする理由は電流を稼ぐためだが、同時にもう一つ、あまり意識されない性質を持ち込むことになる。あるストリングの電圧が何らかの異常で下がると、隣り合う健全なストリングから、その電圧の低いストリングへ向かって電流が逆流しうる、という性質だ。

この逆流を防ぐ役割を担うのが、逆流防止ダイオードとヒューズである。ダイオードは正常に機能している間は逆電流そのものを遮断できるが、短絡故障すればその瞬間から無防備になる。産業技術総合研究所(AIST)が報告している2018年・九州のメガソーラーの事例では、落雷によって複数のバイパスダイオードが故障し、パワーコンディショナが直流過電流でトリップ、現場では焦げ臭さが確認された。調査の結果、接続箱内部で逆流防止ダイオードが3箇所短絡故障しており、うち2箇所は外観だけでは正常に見えていたという。同資料は「逆流防止ダイオードが短絡すると、並列に接続されている各ストリングから電流が流れ込み、非常に危険な状態となる」と指摘している。

ヒューズはこの弱点を補う。ダイオードが壊れていても、逆電流が定格を超えればヒューズが溶断し、被害の拡大を止める。AISTの実証試験はこの逆電流の威力を具体的に示している。定格電圧400Vの直流電源で正常ストリングを模擬し、2枚直列のPVモジュールへ88Aの逆電流を流したところ、通電開始からおよそ33分後にモジュールが発火した。発火点はジャンクションボックス付近で、原因はモジュール内部の回路が逆電流による温度上昇で溶断し、そこにアークが生じたことだった。しかもこの試験の直流電圧400Vは、実フィールドの中・大規模システムより低い水準にすぎない。直流電圧がより高い実際の設備では、回路が溶断する瞬間にアークが継続しやすくなり、燃焼規模はこの試験より大きくなりうると同資料は注意を促している。ここでもやはり、行き着く先はアークが消えるか消えないかという一点だ。

逆流を防ぐ素子そのものが欠けているケースも報告されている。2019年3月に南九州で発見された事例(容量2.3MW DC)では、IEC規格に基づく海外製の接続箱に逆流防止ダイオードが搭載されておらず、出力制御でパワーコンディショナを停止した際に直流逆電流の異常を検知した。同資料は、一部のパワーコンディショナがストリングごとに逆流防止ダイオードを内蔵し、直流入力部でヒューズと逆流防止ダイオードを組み合わせて事故時の被害拡大を抑える構成を取っていることも紹介している。ダイオードとヒューズは、どちらか一方で完結する保護ではなく、互いの弱点を補い合う組み合わせとして設計されているわけだ。

定格電圧が交流用と直流用で違う理由

ヒューズの「定格電圧」は、単に回路電圧に耐えられるかという数字ではない。大東通信機の用語集の定義によれば、定格電圧とは「点火、破壊等の危険がなくその定格遮断電流を遮断できる最大電圧」、つまり溶断した後に安全に開放状態を保っていられる電圧の上限を意味する。

この数字が交流用と直流用で異なるのは、まさにここまで見てきたアークの消弧しやすさが電圧ごとに違うからだ。交流はゼロ電圧点の助けを借りて消弧できるため、同じ物理構造のヒューズでも交流側の定格電圧は比較的高く設定できる。直流はその助けがなく、ヒューズ自身の消弧性能だけでアークを断ち切らなければならないため、同じ製品でも直流側の定格電圧は交流側より低く抑えられているのが一般的だ。太陽光ストリングやDC入力盤に使うヒューズを選ぶときに「AC○○V/DC○○V」という表記を見比べる必要があるのは、この違いを反映しているからにほかならない。

蓄電池回路の短絡保護——電流源と電圧源では短絡のケタが違う

太陽光ストリングと蓄電池の直流回路は、同じ「直流」でもヒューズに求められる遮断容量の考え方が異なる。太陽光パネルは電流源に近い性質を持ち、短絡時の電流はモジュールの短絡電流(Isc)からそれほど大きく超えない。IEC/TS62548がストリング用ヒューズの定格遮断電流をIscの1.25〜2.4倍という比較的狭い範囲で定めていられるのは、このIscという上限がある程度読めるからだ。

蓄電池はこの前提が崩れる。大和製罐の技術資料によれば、リチウムイオン電池の単電池は内部抵抗がおおむね0.1〜5mΩ程度と極めて小さい。外部で短絡が起きた場合の電流の大きさは、電池自身の内部抵抗と外部の抵抗(配線・接触抵抗など)だけでほぼ決まってしまう。同資料が示す試算例では、外部抵抗100mΩの条件で、3.7Vの単電池なら約37A、24Vの組電池なら約240Aの短絡電流が流れるという。太陽光パネル1枚のIscがせいぜい10A前後であることと比べれば、蓄電池回路で起こりうる短絡電流はケタが違う領域に入り得ることがわかる。蓄電池の直流回路に使うヒューズは、定格電流だけでなく、この大きな短絡電流を安全に遮断できる遮断容量(規定条件下でヒューズが破裂せずに遮断できる最大電流)を備えた製品を選ぶ必要がある。

定格電流の選定——ストリングの短絡電流に余裕を持たせる

ストリング用ヒューズの定格電流は、モジュールの短絡電流(Isc)を基準に決める。IEC/TS62548はストリング・サブアレイ・アレイのそれぞれの単位で、定格遮断電流をその段階のIscの1.25倍以上2.4倍以下とするよう求めている。下限の1.25倍を割り込む定格を選ぶと、日射条件による通常の発電電流のばらつきだけで誤動作しかねない。上限の2.4倍を超えて定格を上げすぎると、今度は異常時に十分な速さで遮断できなくなる。

もう一つ見落とせないのが、ヒューズそのものの規格だ。AISTの資料は、過去に交流用ヒューズを代用したり、適切な遮断時間・遮断容量を設定しなかったりしたことが原因で、接続箱内のヒューズボックスから火災に至った事例が報告されているとした上で、太陽光発電用に作られたgPVヒューズ規格――米国のUL2579、国際規格のIEC60269-6――の要求事項を満たす製品を使う必要があると明記している。定格電流の数字が合っていても、その製品が太陽光の直流回路向けに設計されたものでなければ、消弧性能の面で前提が崩れる。

交換時に見落としやすいこと——定格の思い込みと極性の確認

ヒューズが溶断したという事実は、単なる部品交換のサインとは限らない。日本電機工業会・太陽光発電協会の保守点検ガイドライン(JM16Z001)は、ヒューズを交換する際には適切なサイズ・種類・定格のヒューズを入手することが不可欠だとした上で、「定格又はサイズの誤りがヒューズ溶断の原因である場合があるため、被交換ヒューズが正しいサイズ、種類及び定格であったと思い込んではならない」と明記している。以前に取り付けられていたヒューズをそのまま同じ型番で発注する前に、製品マニュアルや設計図面で本来の定格を確かめる手間を惜しまないことが、同じ箇所を再び溶断させないための最短ルートになる。

同ガイドラインは、結線図やシステム仕様書に、ストリング過電流保護装置と逆流防止ダイオードそれぞれの仕様(種類・定格電圧・定格電流)を記載しておくことも求めている。現場に設計時の仕様書が残っていれば、交換時に定格を推測する必要はなくなる。

極性についても注意が必要だ。ヒューズ交換の作業では、接続箱内の端子台からストリングのケーブルを外し、作業後に再び接続し直す工程が発生する。この接続箱まわりの配線は、ここまで見てきた逆流防止ダイオードやパワーコンディショナの入力回路と直列に組み合わさっており、正負を取り違えて再接続すれば、せっかくの逆流防止機構が意図した向きに働かなくなる。ヒューズ単体を交換して終わりにせず、再接続後にストリングの極性と開放電圧を確認してから通電するところまでを、交換作業の一部として扱いたい。

太陽光・蓄電池の直流ヒューズの選定・調達について

「既設の接続箱・DC入力盤に入っているヒューズの型番から、後継品を探したい」「新設のストリング設計に合わせて、定格電流・定格電圧を計算してほしい」といったご相談を、施工店・設備管理担当者様からいただきます。gPVヒューズ規格に適合した製品かどうかの確認や、蓄電池回路向けの遮断容量を踏まえた選定まで、電材サーチではご相談いただけます。

見積もり依頼をする →

よくある質問

太陽光・蓄電池の直流回路に、手元にある一般的な交流用ヒューズを応急的に使ってはいけませんか?

避けてください。交流用ヒューズは、電圧が周期的にゼロになる交流波形を前提に、そのゼロ電圧点付近でアークが自然に消えることを利用して遮断を完了する構造である。直流にはこのゼロ電圧点がないため、交流用ヒューズを直流回路に使うと、溶断してもアークが消えずに再導通したり、ヒューズ自体が破損したりする恐れがある。産業技術総合研究所の資料でも、太陽光の接続箱で交流用ヒューズを代用した結果の火災事例が報告されている。

逆流防止ダイオードとヒューズ、どちらか一方だけでは足りないのですか?

それぞれ弱点が異なる。逆流防止ダイオードは正常に機能している限り逆電流そのものを遮断できるが、ダイオードが短絡故障すると無保護の状態になる。ヒューズは逆電流が流れても定格を超えるまでは遮断できず、溶断までのわずかな時間は事故電流が流入する。産業技術総合研究所の資料は、両者を併用することが理論上もっとも効果的な過電流保護だとしている。

ストリング用ヒューズの定格電流はどう決めればよいですか?

国際規格IEC/TS62548は、ストリング単位の過電流保護装置の定格遮断電流を、モジュールの短絡電流(Isc)の1.25倍以上2.4倍以下とするよう定めている。下限を割ると通常の発電電流で誤動作しやすくなり、上限を超えると異常時に十分な速さで遮断できない。あわせて、太陽光発電用として作られたgPVヒューズ規格(UL2579・IEC60269-6)に適合した製品を選ぶ必要がある。

蓄電池の直流回路では、太陽光ストリングと同じ考え方でヒューズを選んでよいですか?

定格電流の考え方は同じでも、想定すべき短絡電流のケタが違うため注意が必要である。太陽光パネルは電流源に近い性質を持ち、短絡時の電流はIscからそれほど大きく超えない。一方、蓄電池は内部抵抗が非常に小さいため、外部で短絡が起きると内部抵抗と配線抵抗だけで電流の大きさが決まり、桁違いに大きな短絡電流が流れることがある。蓄電池回路のヒューズは、この大きな短絡電流を安全に遮断できる遮断容量を持つ製品を選ぶ必要がある。

太陽光・蓄電池用の直流ヒューズはどこで購入できますか?

松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)の見積フォームからお見積りいただける。既設の接続箱・DC入力盤に使われているヒューズの型番からの後継品照合、新設設計時の定格選定のご相談も承る。

あわせて読みたい

関連する太陽光・蓄電池・直流ヒューズ・逆電流・選び方の品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。

対象の電材・品種を検索する →

参考文献・出典

QUOTATION SIGNAL

電設資材・FA部品の無料見積もり

仕入れコスト削減、廃盤代替品の選定、お急ぎの在庫確認まで。型番や数量を送っていただくだけです。 手書きメモや型番リストの写真・PDFでも依頼できます。

SPONSOR / AD

Google AdSense 広告配信エリア

(AdSense管理画面で広告ユニットを作成し、実際のslot値に差し替えるとここに本番広告が挿入されます)

AIと状況を整理してから相談する

普段お使いのChatGPT・Gemini・Perplexity等に貼り付けられる質問文をコピーできます。 自分の状況を伝えて相談すると、最後に電材サーチへの見積依頼文もまとめてもらえます。