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太陽光・EV電源回路設計

太陽光・蓄電池の直流回路用ヒューズとは|逆電流保護という独特の役割と、交流用ヒューズとの違いを一次情報で整理

・ 読了目安: 12分 ・ 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー)

冒頭の場面・会話は、内容の理解を助けるための例示です。特定の現場・企業・案件を指すものではありません。

接続箱の中で焦げたにおいがする。開けてみると、切れたヒューズのまわりだけ樹脂が黒く変色していた——太陽光の直流回路を扱う現場では、こうした「切れたはずなのに、切れ方がおかしい」という違和感に出会うことがある。原因を追うと、手元にあった一般的なガラス管ヒューズを応急的に使っていた、という話に行き着くことは珍しくない。同じ「ヒューズ」という部品でありながら、交流用と直流用はなぜここまで挙動が違うのか。

ヒューズは電流が流れすぎたら切れる、それだけの部品だと思われがちだ。しかし直流回路、とりわけ太陽光ストリングや蓄電池の回路に関しては、この理解では足りない。切れた後にアークが持続しないこと——ここまで含めて設計されているのが、直流回路用ヒューズの正体である。

直流回路では溶断後の消弧性能を確認する

ヒューズが電流を遮断する瞬間、内部のエレメント(溶ける金属線)が溶断すると同時に、その隙間にアークと呼ばれる放電が発生する。遮断が完了したと言えるのは、電流が止まるだけでなく、このアークが完全に消えたときだ。

交流用と直流用は適用する回路条件が異なる。交流用という表示だけの製品を、そのまま直流回路へ流用することはできない。AC/DC両用でも、直流側の定格電圧・遮断容量・使用条件を個別に確認する。

直流回路では、溶断した後に発生するアークまで安全に遮断できることが必要だ。大東通信機は、交流用ヒューズを直流回路に使うとアークを遮断できず破損等に至るおそれを説明している。消弧性能を、単にエレメントが切れることと混同しない。

太陽光ストリングの逆電流保護——並列にした瞬間に生まれるリスク

太陽光アレイは、複数のストリングを並列に接続して構成する。並列にする理由は電流を稼ぐためだが、同時にもう一つ、あまり意識されない性質を持ち込むことになる。あるストリングの電圧が何らかの異常で下がると、隣り合う健全なストリングから、その電圧の低いストリングへ向かって電流が逆流しうる、という性質だ。

この逆流を防ぐ役割を担うのが、逆流防止ダイオードとヒューズである。ダイオードは正常に機能している間は逆電流そのものを遮断できるが、短絡故障すればその瞬間から無防備になる。産業技術総合研究所(AIST)が報告している2018年・九州のメガソーラーの事例では、落雷によって複数のバイパスダイオードが故障し、パワーコンディショナが直流過電流でトリップ、現場では焦げ臭さが確認された。調査の結果、接続箱内部で逆流防止ダイオードが3箇所短絡故障しており、うち2箇所は外観だけでは正常に見えていたという。同資料は「逆流防止ダイオードが短絡すると、並列に接続されている各ストリングから電流が流れ込み、非常に危険な状態となる」と指摘している。

ヒューズはこの弱点を補う。ダイオードが壊れていても、逆電流が定格を超えればヒューズが溶断し、被害の拡大を止める。AISTの実証試験はこの逆電流の威力を具体的に示している。定格電圧400Vの直流電源で正常ストリングを模擬し、2枚直列のPVモジュールへ88Aの逆電流を流したところ、通電開始からおよそ33分後にモジュールが発火した。発火点はジャンクションボックス付近で、原因はモジュール内部の回路が逆電流による温度上昇で溶断し、そこにアークが生じたことだった。しかもこの試験の直流電圧400Vは、実フィールドの中・大規模システムより低い水準にすぎない。直流電圧がより高い実際の設備では、回路が溶断する瞬間にアークが継続しやすくなり、燃焼規模はこの試験より大きくなりうると同資料は注意を促している。ここでもやはり、行き着く先はアークが消えるか消えないかという一点だ。

逆流を防ぐ素子そのものが欠けているケースも報告されている。2019年3月に南九州で発見された事例(容量2.3MW DC)では、IEC規格に基づく海外製の接続箱に逆流防止ダイオードが搭載されておらず、出力制御でパワーコンディショナを停止した際に直流逆電流の異常を検知した。同資料は、一部のパワーコンディショナがストリングごとに逆流防止ダイオードを内蔵し、直流入力部でヒューズと逆流防止ダイオードを組み合わせて事故時の被害拡大を抑える構成を取っていることも紹介している。ダイオードとヒューズは、どちらか一方で完結する保護ではなく、互いの弱点を補い合う組み合わせとして設計されているわけだ。

定格電圧が交流用と直流用で違う理由

ヒューズの「定格電圧」は、単に回路電圧に耐えられるかという数字ではない。大東通信機の用語集の定義によれば、定格電圧とは「点火、破壊等の危険がなくその定格遮断電流を遮断できる最大電圧」、つまり溶断した後に安全に開放状態を保っていられる電圧の上限を意味する。

定格電圧はACとDCの表示を区別して確認する。同じ製品に両方の定格が表示されていても、交流の値を直流へ転用してよいという意味ではない。採用品の仕様書で確認できる条件の範囲内で用いる。

蓄電池回路の短絡保護——電流源と電圧源では短絡のケタが違う

太陽光ストリングと蓄電池の直流回路は、電源の特性や想定短絡電流が異なる。ヒューズの定格電流と遮断容量は別の仕様であり、太陽光向けの選定条件を蓄電池へそのまま当てはめない。

蓄電池はこの前提が崩れる。大和製罐の技術資料によれば、リチウムイオン電池の単電池は内部抵抗がおおむね0.1〜5mΩ程度と極めて小さい。外部で短絡が起きた場合の電流の大きさは、電池自身の内部抵抗と外部の抵抗(配線・接触抵抗など)だけでほぼ決まってしまう。同資料が示す試算例では、外部抵抗100mΩの条件で、3.7Vの単電池なら約37A、24Vの組電池なら約240Aの短絡電流が流れるという。太陽光パネル1枚のIscがせいぜい10A前後であることと比べれば、蓄電池回路で起こりうる短絡電流はケタが違う領域に入り得ることがわかる。蓄電池の直流回路に使うヒューズは、定格電流だけでなく、この大きな短絡電流を安全に遮断できる遮断容量(規定条件下でヒューズが破裂せずに遮断できる最大電流)を備えた製品を選ぶ必要がある。

定格電流の選定——ストリングの短絡電流に余裕を持たせる

ストリング用ヒューズの定格電流は、使用するモジュールと接続箱の指定、ケーブルの許容電流、温度等の使用条件を確認して決める。古い参考資料のIscに対する倍率を、現行の全製品共通の選定式としては使わない。SFB250-88A取扱説明書の最大過電流保護定格20Aも、そのモジュール固有の条件であり、遮断容量を示す値ではない。現行の適用規格とメーカーの設計要領を併せて確認する。

もう一つ見落とせないのが、ヒューズそのものの規格だ。AISTの資料は、過去に交流用ヒューズを代用したり、適切な遮断時間・遮断容量を設定しなかったりしたことが原因で、接続箱内のヒューズボックスから火災に至った事例が報告されているとした上で、太陽光発電用に作られたgPVヒューズ規格――米国のUL2579、国際規格のIEC60269-6――の要求事項を満たす製品を使う必要があると明記している。定格電流の数字が合っていても、その製品が太陽光の直流回路向けに設計されたものでなければ、消弧性能の面で前提が崩れる。

交換時に見落としやすいこと——定格の思い込みと極性の確認

ヒューズが溶断したという事実は、単なる部品交換のサインとは限らない。日本電機工業会・太陽光発電協会の保守点検ガイドライン(JM16Z001)は、ヒューズを交換する際には適切なサイズ・種類・定格のヒューズを入手することが不可欠だとした上で、「定格又はサイズの誤りがヒューズ溶断の原因である場合があるため、被交換ヒューズが正しいサイズ、種類及び定格であったと思い込んではならない」と明記している。以前に取り付けられていたヒューズをそのまま同じ型番で発注する前に、製品マニュアルや設計図面で本来の定格を確かめる手間を惜しまないことが、同じ箇所を再び溶断させないための最短ルートになる。

同ガイドラインは、結線図やシステム仕様書に、ストリング過電流保護装置と逆流防止ダイオードそれぞれの仕様(種類・定格電圧・定格電流)を記載しておくことも求めている。現場に設計時の仕様書が残っていれば、交換時に定格を推測する必要はなくなる。

極性についても注意が必要だ。ヒューズ交換の作業では、接続箱内の端子台からストリングのケーブルを外し、作業後に再び接続し直す工程が発生する。この接続箱まわりの配線は、ここまで見てきた逆流防止ダイオードやパワーコンディショナの入力回路と直列に組み合わさっており、正負を取り違えて再接続すれば、せっかくの逆流防止機構が意図した向きに働かなくなる。ヒューズ単体を交換して終わりにせず、再接続後にストリングの極性と開放電圧を確認してから通電するところまでを、交換作業の一部として扱いたい。

太陽光・蓄電池の直流ヒューズの選定・調達について

「既設の接続箱・DC入力盤に入っているヒューズの型番から、後継品を探したい」「新設のストリング設計に合わせて、定格電流・定格電圧を計算してほしい」といったご相談を、施工店・設備管理担当者様からいただきます。gPVヒューズ規格に適合した製品かどうかの確認や、蓄電池回路向けの遮断容量を踏まえた選定まで、電材サーチではご相談いただけます。

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よくある質問

太陽光・蓄電池の直流回路に、手元にある一般的な交流用ヒューズを応急的に使ってはいけませんか?

交流用という表示だけのヒューズを直流回路へ流用しないでください。直流用途では溶断後のアークを安全に遮断できることが必要です。使用する回路の直流電圧と想定短絡電流に対して、メーカーが示すDC定格・遮断容量・適用条件を確認します。AC/DC両用の製品も、表示された各定格の範囲内で選びます。

逆流防止ダイオードとヒューズ、どちらか一方だけでは足りないのですか?

それぞれ弱点が異なる。逆流防止ダイオードは正常に機能している限り逆電流そのものを遮断できるが、ダイオードが短絡故障すると無保護の状態になる。ヒューズは逆電流が流れても定格を超えるまでは遮断できず、溶断までのわずかな時間は事故電流が流入する。産業技術総合研究所の資料は、両者を併用することが理論上もっとも効果的な過電流保護だとしている。

ストリング用ヒューズの定格電流はどう決めればよいですか?

定格電流と遮断容量は別の仕様です。定格電流はモジュール・接続箱の指定、ケーブルの許容電流、温度などの使用条件を確認して選びます。たとえばSFB250-88Aの説明書は最大過電流保護定格を20Aとしていますが、これはその製品の条件であり全モジュール共通のヒューズ値ではありません。遮断容量は想定短絡電流を安全に遮断できるか別に確認し、使用する製品の設計要領・現行規格に従ってください。

蓄電池の直流回路では、太陽光ストリングと同じ考え方でヒューズを選んでよいですか?

定格電流の考え方は同じでも、想定すべき短絡電流のケタが違うため注意が必要である。太陽光パネルは電流源に近い性質を持ち、短絡時の電流はIscからそれほど大きく超えない。一方、蓄電池は内部抵抗が非常に小さいため、外部で短絡が起きると内部抵抗と配線抵抗だけで電流の大きさが決まり、桁違いに大きな短絡電流が流れることがある。蓄電池回路のヒューズは、この大きな短絡電流を安全に遮断できる遮断容量を持つ製品を選ぶ必要がある。

太陽光・蓄電池用の直流ヒューズはどこで購入できますか?

松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)の見積フォームからお見積りいただける。既設の接続箱・DC入力盤に使われているヒューズの型番からの後継品照合、新設設計時の定格選定のご相談も承る。

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よくある質問

逆流防止ダイオードとヒューズ、どちらか一方だけでは足りないのですか?

それぞれ弱点が異なります。逆流防止ダイオードは正常に機能している限り逆電流そのものを遮断できますが、ダイオードが短絡故障すると無保護の状態になります。ヒューズは逆電流が流れても定格を超えるまでは遮断できず、溶断までのわずかな時間は事故電流が流入します。産業技術総合研究所の資料は、両者を併用することが理論上もっとも効果的な過電流保護だとしています。

蓄電池の直流回路では、太陽光ストリングと同じ考え方でヒューズを選んでよいですか?

定格電流の考え方は同じでも、想定すべき短絡電流のケタが違うため注意が必要です。太陽光パネルは電流源に近い性質を持ち、短絡時の電流はIscからそれほど大きく超えません。一方、蓄電池は内部抵抗が非常に小さいため、外部で短絡が起きると内部抵抗と配線抵抗だけで電流の大きさが決まり、桁違いに大きな短絡電流が流れることがあります。蓄電池回路のヒューズは、この大きな短絡電流を安全に遮断できる遮断容量を持つ製品を選ぶ必要があります。

太陽光・蓄電池用の直流ヒューズはどこで購入できますか?

松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)の見積フォームからお見積りいただけます。既設の接続箱・DC入力盤に使われているヒューズの型番からの後継品照合、新設設計時の定格選定のご相談も承ります。

参考文献・出典

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