制御盤の改修現場で、外したDINレール電源を2台並べる。片方の銘板には「DR-60-5」、もう片方には「DR-30-15」と刻印されている。数字だけ見れば60対30、ほぼ倍の開きだ。だから「DR-60-5のほうが、ずっと大きな電力を扱える電源なのだろう」と踏むのが自然だろう。
ところが、MEAN WELL公式のスペックシートを開いて定格表を並べると、そうはなっていない。DR-60-5のRATED POWERは32.5W、DR-30-15のRATED POWERは30W。差はわずか2.5Wしかない。型番の頭についた「60」と「30」という数字は、少なくともこの2台に関しては、実際の出力差をほとんど言い当てていない。
型番の骨格は「(E)DR-ワット数-電圧」——ここまでは両シリーズで共通
MEAN WELLのDR・EDRシリーズの型番は、いずれも「シリーズ名」「ワット数」「出力電圧」の3つを並べた形をしている。この骨格自体は、EDRシリーズの公式スペックシートが図解している。EDR-120・EDR-150-24・EDR-240、それぞれのスペックシートには「Model Encoding」という項目があり、「EDR-120-12」という型番を矢印で分解して、末尾の「12」を「Output voltage」、中央の「120」を「Output wattage」、頭の「EDR」を「Series name」と説明している。
細かい点だが、この3枚のうちEDR-150-24のスペックシートだけは、頭の部分を「Series name」ではなく「Model name」と表記していた。同じMEAN WELL公式の資料の中でも、この一語は統一されていない。実害のある違いではないが、型番の骨格そのものは3枚とも同じ並びで一致している。
一方、DRシリーズについては、今回確認したDR-15・DR-30・DR-60・DR-100・DR-120の5本のスペックシートいずれにも、この「Model Encoding」に相当する図は載っていなかった。並びが同じであることは型番を見れば察しがつくが、それを公式資料が明文化しているかどうかという点では、EDRとDRの間に差がある。
EDRシリーズでは、数字は実出力とほぼ一致する
骨格が同じでも、その数字が実態とどこまで一致するかは別の問題だ。まずEDR-120シリーズのSPECIFICATION表を見てみる。EDR-120-12は10A×12V、EDR-120-24は5A×24V、EDR-120-48は2.5A×48V。電圧が変わっても、掛け算すればどれも120Wになるように電流値が調整されており、RATED POWER欄も3機種とも律儀に「120W」と記載されている。EDR-240シリーズも同様で、EDR-240-24(10A×24V)、EDR-240-48(5A×48V)がどちらも240Wぴったりに揃っている。EDRシリーズにおいては、型番中央の数字が、そのままその電源の実出力ワット数だと考えて差し支えない。
ただし、これは「入力電圧が一定の条件下では」という留保がつく。EDR-150-24のスペックシートを見ると、SPECIFICATION表のRATED CURRENT欄が「6.5A / 230VAC 5.2A / 115VAC」と2段に分かれており、RATED POWER欄も「156W / 230VAC 125W / 115VAC」と2つの値を持つ。230VAC入力であれば型番の「150」を6W上回る156Wが出せるが、115VAC入力では逆に125Wまで落ちる。Description欄にも「EDR-150-24 is one economical slim DIN rail power supply series, providing up to 156W at 230VAC input」と明記されており、「150」という数字自体、230VAC入力時の最大値を丸めた代表値に近い。EDRシリーズであっても、型番の数字が万能の絶対値というわけではない。
DRシリーズでは、数字はシリーズの「クラス名」に近い
DRシリーズに目を移すと、数字と実出力の関係はさらに緩む。5本のスペックシートから、型番の数字(DR-15・DR-30・DR-60・DR-100・DR-120)ごとに、電圧違いの実出力を並べてみる。
- DR-15シリーズ:DR-15-5は12W、DR-15-12は15W、DR-15-15は15W、DR-15-24は15.2W
- DR-30シリーズ:DR-30-5は15W、DR-30-12は24W、DR-30-15は30W、DR-30-24は36W
- DR-60シリーズ:DR-60-5は32.5W、DR-60-12は54W、DR-60-15は60W、DR-60-24は60W
- DR-100シリーズ:DR-100-12は90W、DR-100-15は97.5W、DR-100-24は100.8W
- DR-120シリーズ:DR-120-12は120W、DR-120-24は120W、DR-120-48は120W
同じ「DR-30」でも、5V品は15W、24V品は36Wと、実に2.4倍の開きがある。型番の「30」は、この4機種に共通する何らかの平均値でも上限値でもなく、シリーズ・筐体のクラスを表す名前に近い。他方で、最後のDR-120シリーズだけは3機種とも120Wぴったりに揃っており、DRシリーズのすべてが数字からズレるわけでもない。ズレる機種とズレない機種が同じ「DR」の中に混在している、という点こそが、DRシリーズの型番を数字だけで判断してはいけない理由になる。
なぜこの差が生まれるのか——確認できるのは、ここまで
DR-30-5とDR-30-24の間に2.4倍の開きが出るのは、出力電圧が上がるほど、同じ内部回路でも扱える電流の上限に対して出せる電力(電圧×電流)が大きく取れる、という電源回路の一般的な特性による部分が大きいと考えられる。ただし、MEAN WELLの公式スペックシートは、なぜDR-30シリーズの中でここまでの開きを許容し、EDR-120シリーズではほぼ揃えているのか、という設計方針そのものを文章で説明してはいない。今回確認できたのは、あくまで両シリーズのSPECIFICATION表に記載された数字の並びであり、その背後にある設計判断の理由までは一次資料からは読み取れない。分からないことは分からないままにしておくのが、型番を都合よく解釈しないための最低限の態度だ。
型番構成図が示す境界線と、その先にある別シリーズ
ここまでの内容は、EDR-120・EDR-150-24・EDR-240・DR-15・DR-30・DR-60・DR-100・DR-120という、実際にスペックシートを確認した8本の範囲に限られる。MEAN WELLのDINレール電源には、この他にもHDR・NDR・TDR・WDR・DDR・SDRといった、同じく「DR」を含むシリーズ名が存在する。これらのシリーズが、今回確認したDR・EDRと同じ型番規則で読めるのかどうかは、今回の調査では確認していない。
その境界線を意識させる小さな手がかりが、EDR-240のスペックシートの中にある。掲載されている実機写真の銘板をよく見ると、「EDR-240-48」ではなく「SDR-240-48」と印字されているのだ。誤植なのか、SDRシリーズと共通の筐体をそのまま流用した結果なのか、スペックシート本文には説明がない。少なくとも、DINレール電源の型番の世界には、外見だけでは踏み込みきれない領域がまだ残っている。
現場でできること——型番だけで発注しない
制御盤の更新やDINレール電源の追加発注では、型番の頭に並んだ「60」や「120」という数字を、そのまま出力ワット数として見積書に転記しない方が安全だ。特にDRシリーズでは、同じ「DR-30」でも電圧違いで実出力が2倍以上変わることがある。現物の銘板か公式スペックシートで、末尾の出力電圧まで含めた型番全体と、そこに対応するRATED CURRENT・RATED POWERの実測値を確認したうえで、既設と同じ電圧・同じワット数の機種を指定するのが確実だ。EDRシリーズについても、AC入力電圧が230VAC系か115VAC系かによって実出力が変わるため、盤の設置環境の入力電圧を合わせて確認しておきたい。
MEAN WELL製品の型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、DR・EDRシリーズをはじめとしたMEAN WELL製DINレール電源の型番確認から、電圧違い・出力違いの代替品選定まで対応している。現物の銘板が判読しづらい場合は、写真を添えてもらえると照合が早い。
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