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電材基礎制御機器電源

UPS(無停電電源装置)の選び方|給電方式・容量計算・バックアップ時間を体系的に整理

読了目安: 11分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

停電が復旧して数分後、制御盤の前で作業員が首をかしげていた。盤の表示灯はちゃんと点いている。なのに、PLCの画面は起動ロゴのまま動かない。ラインはまだ止まっている。

「UPSを入れているのに、なぜ止まったんですか」——後日、そう相談を受けたことがある。話を聞くと、盤内には確かにUPSが組み込まれていた。瞬停は今までも何度かあったが、いつも問題なく吸収できていたはずだ。ところが今回はそうではなかった。あとで確認すると、そのUPSは数十ミリ秒の瞬停を吸収するための小容量タイプで、実際に起きたのは数十秒に及ぶ本格的な停電だったのである。バッテリー容量も、想定していたバックアップ時間も、そもそも桁が違う話だった。

「UPSさえ入れておけば安心」というのは、半分は正しく半分は間違っている。給電方式・容量・バックアップ時間・設置環境・バッテリー寿命、このどれか一つでも読み違えると、いざというときに動かない箱がただ盤の中に鎮座することになる。

3つの給電方式——何が違うのか

UPSには大きく3つの給電方式がある。名前だけを見るとどれも似たようなものに思えるが、内部構造が違えば、停電時の切り替わり方も対応できる用途もまるで違う。

常時商用給電方式

通常時は商用電源をほぼそのまま出力し、同時にバッテリーを充電しておく。停電を検知すると、バッテリー給電によるインバータ運転へ切り替わる仕組みだ。この切り替えの瞬間、わずかとはいえ電力供給が途切れる「瞬断」が発生する。構造がシンプルな分、UPS内部の常時消費電力が少なく、小型・軽量にまとまるのが利点だ。

ラインインタラクティブ方式

常時商用給電方式と基本構造は同じだが、AVR(自動電圧調整)機能が追加されている。トランスを介して出力電圧を安定させるため、電圧変動が多い環境でも常時商用給電方式より安定した電源を供給できる。高機能でありながら価格を抑えやすい位置づけから、サーバーやネットワーク機器向けの中間グレードとして選ばれることが多い。切り替え時の瞬断は、常時商用給電方式と同様に発生する。

常時インバータ給電方式

通常時からバッテリー充電と並行してインバータを常時運転し、出力そのものをインバータが作り続ける。停電時もインバータ運転を継続するだけなので、切り替えによる瞬断が発生しない。ノイズ除去と電圧安定化も常時インバータが担うため、3方式の中でもっとも安定した電源品質が得られる。その代わり、内部のインバータが常時稼働している分、変換損失による発熱・消費電力も相対的に大きくなる。

方式瞬断電圧安定化想定用途
常時商用給電方式ありなし個人PC・軽負荷
ラインインタラクティブ方式ありAVRありサーバー・NW機器
常時インバータ給電方式なし常時インバータで安定化精密機器・重要負荷

冒頭の事例に話を戻すと、あの盤に入っていたのは常時商用給電方式の小型UPSだった。瞬停はたしかに吸収できていた。ところが実際に起きたのは、切り替わった先のバッテリー容量そのものが足りなかったという話であり、これは方式の問題というより、次に説明する容量とバックアップ時間の見積もりの話に近い。

容量選定——VA・Wをどう積み上げるか

UPSのカタログには「VA」と「W」という2つの容量表示が並ぶ。この2つを混同したまま選定すると、見かけ上は容量が足りているのに実際は使えない、という事態を招く。

VA(皮相電力)はUPSが供給できる電力の上限を電圧×電流で表したもの、W(有効電力)は実際に機器が消費する電力を表す。両者の比率は力率(負荷の種類によって決まる係数で、おおむね0.6〜1.0程度)によって決まり、W=VA×力率、VA=W÷力率の関係になる。オムロンの選定手順でも、接続機器のVA値の合計とW値の合計をそれぞれ求め、両方の数値でUPSの定格を上回っていることを条件としている。VA側だけ足りていてW側が足りない、あるいはその逆という組み合わせは選定不可になる。

容量選定の手順

  1. 接続する全機器のVA値・W値を仕様書(銘板)から確認する
  2. それぞれを合算する
  3. 力率が不明な機器は、VA側を計算するなら力率0.6、W側を計算するなら力率1.0を仮定して安全側に見積もる(簡易的には「VA×0.6≒W」という目安も使われる)
  4. 合計値に対し、UPSのVA・W両方の定格が上回っていることを確認する

将来の増設分を見込む

現場でよく抜け落ちるのが、将来の増設分だ。制御盤更新のタイミングで機器を1台追加しただけでも、ぎりぎりで選定したUPSは容量オーバーになりうる。スイッチング電源の選定でディレーティング(定格の70〜80%以下での使用)が推奨されるのと同じ発想で、UPSも現時点の消費容量ぎりぎりで選ばず、将来の増設余裕を見込んだ一段上の容量を選んでおくのが実務的な判断になる。

バックアップ時間——「何分守りたいか」から逆算する

容量とは別に、もう一つ決めなければならないのがバックアップ時間だ。ここを何となく決めてしまうと、容量は足りているのにすぐバッテリーが切れる、という別の失敗につながる。

シュナイダーエレクトリックの解説では、バックアップ時間の目安を用途別に次のように整理している。

  • 瞬停対策・安全なシャットダウンが目的:5〜10分程度
  • 自家発電設備が立ち上がるまでの「つなぎ」:15〜30分程度
  • 停電中も業務・生産を継続したい重要システム:1時間以上

必要なバックアップ時間が決まっても、その数値のままUPSを選ばないほうがいい。バッテリーは経年劣化とともにバックアップ時間そのものが短くなっていく消耗品であり、オムロンの選定手順でも「必要なバックアップ時間の2倍以上を確保できるか」を確認するよう案内している。新品時の性能ぎりぎりで選ぶと、数年後の実運用ではすでに要求時間を割り込んでいる、ということが起こりうる。

バックアップ時間はバッテリー容量(Ah)にほぼ比例して延びるが、単純な比例関係ではない。同じバッテリーでも、負荷が軽いほど相対的に長く持ち、負荷が重いほど急激に短くなる(鉛蓄電池の放電特性による)。カタログのバックアップ時間表は特定の負荷率ごとに記載されているため、自分の実負荷に近い行の数値を確認する必要がある。外部バッテリーパックを増設して時間を延ばせる機種もあるが、増設のたびに設置スペースと重量が増える点は見落とされやすい。

設置環境——制御盤組込み型・ラック型・スタンド型

同じ「UPS」でも、置き場所によって選ぶべき形はまったく違う。

  • スタンド型(タワー型):床置き・机上に自立するタイプ。設置場所を選ばず、事務所・小規模サーバー室でよく使われる
  • ラックマウント型:19インチサーバーラックに収める前提の薄型・横長の筐体。データセンターや通信機器室で標準的な形
  • 制御盤組込み型(DINレール取付):制御盤内のDINレールに直接取り付けるコンパクトなタイプ。産業用コンピュータやコントローラの電源保護に特化した製品が多い

たとえばオムロンのS8BAシリーズは、DINレール取付・DC24V入出力という制御盤向けの構成を持つUPSで、産業用コンピュータ(IPC)やコントローラの瞬停・電圧低下対策を目的にした製品だ。一般的なタワー型・ラック型のUPSがAC電源をそのままバックアップするのに対し、この手のDC-DC方式UPSは、盤内ですでに直流化された24V系統だけをピンポイントで守る発想に立っている。制御盤の設計段階で「盤全体を守るのか、盤内の重要な24V回路だけを守るのか」を最初に決めておかないと、あとから設置スペースに入らない形式を選んでしまうことになる。

サーバー室・データセンター向けには、富士電機のミニUPSシリーズ(UX100・GX100等)のように、常時商用給電方式やラインインタラクティブ方式を中心に容量帯を細かく揃えた製品もある。用途と設置スペースの両方から、方式・容量・形状の3点を同時に絞り込むのが選定の近道だ。

バッテリー交換サイクルと寿命

UPS本体は長く使えても、内部のバッテリーはそれより短い周期で寿命を迎える。ここを見落とすと、「UPSはまだ新しいはずなのに、いざというとき電気が来なかった」という事態になりかねない。

一般に鉛蓄電池を搭載したUPSのバッテリー寿命は3〜5年程度とされる。オムロンは、使用開始から3年程度が経過したUPSについて、バッテリー寿命が近づいている旨を利用者に案内している。バッテリーの寿命は周囲温度の影響を大きく受け、高温環境ほど劣化が早まる点は、スイッチング電源の電解コンデンサの劣化と同じ理屈だ。

例外もある。富士電機のGX100シリーズ(一部容量帯)は、小型制御弁式鉛蓄電池を採用しながらも、装置寿命(約8年)に達するまでバッテリーを含めた保守部品の交換が不要な「メンテナンスフリー」設計をうたっている。バッテリー交換の手間・コストを避けたい現場では、こうしたメンテナンスフリー型を検討する価値がある。ただし対応容量帯は限られるため、必要容量と照合したうえで選ぶ必要がある。

いずれにせよ、UPS本体の保証期間とバッテリーの寿命年数は別物だと考えたほうがいい。導入時に、バッテリー交換の目安時期をあらかじめ設備台帳に記録しておくと、「気づいたら寿命が切れていた」という事態を避けやすい。

よくある選定ミス

瞬停対策と長時間停電対応を混同する

もっとも多い失敗が、冒頭の事例そのものだ。瞬停(数十〜数百ミリ秒)を吸収する小容量UPSと、停電時に数分〜数十分の業務継続を支えるUPSは、必要な容量もバッテリー構成もまったく別物である。「UPSを入れているから停電は安心」の一言で済ませず、何秒〜何分の停電まで守りたいのかを先に言語化しておく必要がある。

VA値だけ見てW値を見落とす

前述の通り、VAとWは力率を介して別の数値になる。カタログのVA表記だけを見てW値を確認しないと、実際に接続してみたら「Wが足りず起動しない」という事態になりうる。

現状ぎりぎりの容量で選定する

将来の機器追加を見込まずに現状消費量ぎりぎりでUPSを選ぶと、増設のたびにUPSごと入れ替える羽目になる。初期投資を数割抑えるより、増設分の余裕を持たせておくほうが、長期的なコストは小さく収まることが多い。

バッテリー交換の周期を管理台帳に残さない

UPS本体の存在は認識していても、内部バッテリーの交換時期まで管理している現場は少ない。導入時点で交換目安の年数を記録しておかないと、本体は動いているのにバッテリーだけ寿命切れ、という状態に気づけない。

選定チェックリスト

  • 想定する停電の長さ(瞬停か、長時間停電か)を先に決めたか
  • 給電方式(常時商用給電・ラインインタラクティブ・常時インバータ給電)は用途に合っているか
  • 接続機器のVA値・W値を仕様書から積み上げたか
  • 両方の合計値に対してUPSの定格VA・定格Wが上回っているか
  • 必要バックアップ時間の2倍以上を新品時の性能として確保できるか
  • 将来の増設分の余裕を見込んだか
  • 設置形態(スタンド型・ラック型・制御盤組込み型)は設置場所に合っているか
  • バッテリーの交換目安時期を設備台帳に記録したか

電材サーチでは、UPS本体だけでなく、盤内の直流電源やバッファモジュールとの組み合わせもあわせてご相談いただけます。

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よくある質問

UPSの3つの給電方式は、結局どれを選べばよいですか?

瞬停対策程度で十分なら常時商用給電方式、サーバーやネットワーク機器など電圧変動対策も欲しいならラインインタラクティブ方式、精密機器や重要負荷で電源品質そのものを安定させたいなら常時インバータ給電方式、というのが基本的な選び分けである。切り替え時の瞬断が許容できない機器では常時インバータ給電方式が実質的な一択になる。

VAとWのどちらを基準に容量を選べばよいですか?

両方を確認する必要がある。UPSの定格VA・定格Wの両方が、接続機器の合計VA・合計Wを上回っていることが条件で、どちらか一方だけでは選定不可である。力率が不明な機器はVA側を厳しめ(力率0.6程度)に見積もっておくと安全側に振れる。

バックアップ時間はどのくらい確保すればよいですか?

用途によって目安が変わる。瞬停対策・安全なシャットダウンが目的なら5〜10分程度、自家発電設備が立ち上がるまでのつなぎなら15〜30分程度、停電中も業務・生産を継続したい重要システムなら1時間以上が一つの目安である。ただしバッテリーは経年劣化するため、必要時間の2倍程度を新品時の性能として確保しておくと安全である。

制御盤に組み込めるUPSはありますか?

ある。DINレール取付・DC24V入出力に対応した産業用UPSがあり、盤内の24V制御回路だけをピンポイントで守る用途に使われる。一般的なタワー型・ラック型UPSがAC電源全体をバックアップするのに対し、この種の製品は盤内ですでに直流化された系統専用という違いがある。

UPSのバッテリーはどのくらいで交換が必要ですか?

鉛蓄電池搭載機で3〜5年程度が一般的な目安である。周囲温度が高い環境ほど劣化が早まる。一部メーカーには装置寿命(約8年)までバッテリー交換が不要なメンテナンスフリー機種もあるが、対応容量帯は限られる。

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参考文献・出典

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