制御盤の増設案件で、24V電源が足りなくなった。手元にあるのは形S8VS-24024が1台。同じ機種をもう1台買い足して、2台並べて配線すれば、電流を分け合って容量が倍になるはずだ――そう考えるのは、電源というものの素朴な理解として、そう間違ってはいない。実際、乾電池を並列につなげば電流の余裕は増える。
ところがオムロン公式のFAQを開くと、そう単純ではないと分かる。「形S8VSシリーズ、形S8ASシリーズ、形S82Sシリーズは並列運転できません。」その一文のあとに続く表を見ると、15W帯から480W帯まで、容量にかかわらず一律で「不可」。逃げ道は用意されていない。
型番の骨格――3桁の容量と2桁の電圧を、記号がまとう
まず型番そのものの構成を確認しておく。オムロン公式の形式一覧表に並ぶ型番を並べてみると、規則は見えてくる。形S8VS-06024、形S8VS-09024、形S8VS-12024、形S8VS-18024、形S8VS-24024、形S8VS-48024。ハイフンのあとの数字はどれも5桁で、先頭3桁が060・090・120・180・240・480と、容量のワット数クラスに一致する。残る2桁は24。これは出力電圧の24Vだ。15Wクラス・30Wクラスまで見ると、この2桁は05(5V)・12(12V)・24(24V)と変化する。つまり型番の数字部分は「容量3桁+出力電圧2桁」という骨格で組まれている。
数字のあとに続く記号も、役割が分かれている。形式一覧表を突き合わせると、無印は表示モニタなしの標準タイプ、Aは表示モニタ付で交換時期お知らせ機能タイプ、Bは表示モニタ付で積算稼働時間タイプ。さらにPが付けば出力アラームがソースタイプ(無印はシンクタイプ)、Sが付けばUL Class2出力に対応、末尾に-Fが付けば端子台がねじ式ではなくスクリューレス式になる。60W以上のBタイプに限っては、アラーム出力そのものを持たないEという記号もある(形S8VS-09024BE)。記号の数が増えるほど、その電源が持つ監視機能とアラームの出し方が細かく指定されていく仕組みだ。
型番のワット数表記についても、一点だけ注記しておきたい事実がある。15Wクラス・30Wクラスは5V・12V・24Vの3電圧展開だが、このうち5V品――形S8VS-01505と形S8VS-03005――には、公式の形式一覧表に脚注が付いている。「形S8VS-01505の出力容量は10Wです。」「形S8VS-03005の出力容量は20Wです。」型番が名乗る15W・30Wと、実際の出力容量には差がある。ただしこの差は5V品に限られた注記であり、同じクラスの12V品・24V品にはこうした脚注はない。そして60W以上のクラスに上がると、5V・12V出力そのものがラインアップから消え、24V品しか存在しなくなる。型番のワット数表記が実力値とずれる場面は、S8VSでは15W・30Wクラスの5V品という狭い範囲に留まっている。
複数台を組み合わせる方法は、並列運転のほかにもう一つある。直列運転だ。公式の定格・性能表には「直列運転 可(2台まで、外付けダイオード要)」ともある。ただしこれも一律ではない。15W・30Wクラスの5V・12Vタイプに限っては、直列運転欄が「不可」に変わる。同じ15W・30Wクラスでも24Vタイプなら直列運転は可能で、60W以上のクラス(そもそも24V品しかない)も可能。型番の中に直列運転の可否を示す記号こそないが、容量と出力電圧の組み合わせによって、できることとできないことが静かに分かれている。
「並列運転:不可」という一行が、全容量帯に共通している
型番の骨格を追う中で、もっとも目を引いたのはここだった。オムロン公式の定格・性能表を、15W・30W帯から480W帯まで順に開いていくと、容量帯ごとに効率もリップルノイズも起動時間も数値が変わっていくのに、「並列運転」の欄だけはどの容量帯でも判で押したように同じ文言が並ぶ。「不可(ただし、バックアップ運転可能 外付ダイオード要)」。15Wの小容量機でも、480Wの大容量機でも、この一行は変わらない。
容量が上がれば並列運転の需要も上がりそうなものだ、とは思う。実際、大きな負荷ほど電源1台の容量では足りず、複数台の組み合わせで賄いたくなる場面は増える。ところがS8VSは、その逃げ道をどの容量帯にも用意していない。480Wという最大容量の機種であっても、それ以上の電力が必要なら、複数台を並べるという発想自体が公式には成立しない。
S8VMという旧シリーズには、並列運転ができた
ここで話がもう一段面白くなる。並列運転の可否を尋ねたFAQ(FAQ06285)は、S8VS単体ではなく、S8VS・S8VM・S8AS・S82Sという4シリーズをまとめて扱っている。その回答の一文目はこうだ。「形S8VSシリーズ、形S8ASシリーズ、形S82Sシリーズは並列運転できません。形S8VMシリーズ*1は300W以上の機種のみ並列運転が可能です。」
S8VMは、2019年3月に生産を終了した旧シリーズだ。表1を見ると、S8VMの15W〜150W帯は「不可」だが、300W・600W・1500W帯は「可(2台)」となっている。表2にはその接続方法まで載っている。形S8VM-30005CのようにCB端子(電流バランス端子)とCBG端子(電流バランス用グランド端子)を配線すれば電流バランス機能が働き、2台の合計出力容量の80%までを並列運転で賄える。300Wを2台なら、(300W+300W)×80%=480Wという計算式まで、公式FAQに具体的に示されている。
つまり、同じオムロンのパワーサプライ製品群の中に、「大容量帯なら電流バランス端子を使って並列運転できる」という設計思想を持ったシリーズが、かつて存在していた。そしてその設計思想は、後継として現行ラインアップに残っているS8VSには引き継がれていない。S8VSの最大容量である480Wは、S8VMでいえば並列運転が可能だった300W・600W・1500W帯に近い規模感でありながら、並列運転の選択肢そのものがない。型番の中に、その機能の有無を示す記号は用意されていない。持つか持たないかは、シリーズ全体の設計で決まっている。
なぜ、その機能は引き継がれなかったのか――確認できるのはここまで
なぜS8VSはCB端子のような電流バランス機構を持たない設計になったのか。オムロン公式のFAQやカタログの本文は、その設計判断の理由までは説明していない。バックアップ運転のFAQ(FAQ06325)には「電流バランス端子(CB端子、CBG端子)がある機種は、電流バランス端子を接続しないでください」という注意書きがあり、これはS8VMのような電流バランス端子を持つ機種を想定した一般的な注記と読める。少なくともS8VSの形式一覧表にはCB端子・CBG端子を持つ機種は見当たらない。並列運転に必要な電流バランスの仕組みそのものを、S8VSは設計に組み込んでいないと考えられる。
その代わりにS8VSが用意しているのが、バックアップ運転という別の冗長化の考え方だ。これは複数台で電流を分担する仕組みではない。負荷電流は1台で賄えるようにしておき、故障時にもう1台が肩代わりする、主従型の予備系統だ。方法は2通り。冗長運転ユニット形S8VK-Rシリーズを使うか、外付けでショットキーバリアダイオードを接続するか。ダイオードを使う場合、耐圧は電源の定格出力電圧以上、順方向電流は定格出力電流の2倍以上のものを選ぶよう、具体的な選定条件までFAQに示されている。容量を増やすための並列運転と、故障に備えるためのバックアップ運転は、名前が似ていても目的も配線も別物だ。
現場でできること――「増やす」のか「備える」のかを、先に分ける
制御盤の設計や既設更新でS8VSを扱うときは、まず「容量を増やしたいのか」「故障に備えたいのか」を切り分けておきたい。容量が足りない場合、S8VSでは複数台の並列運転という選択肢が存在しないため、素直により大きい容量の機種に置き換えるのが公式に沿った対応になる。形式一覧表を見れば、15W・30W・60W・90W・120W・180W・240W・480Wという容量クラスが揃っているので、必要電力から余裕を見て一段上のクラスを選べばよい。
一方、故障時に電源が完全停止する事態を避けたい場合は、バックアップ運転を検討することになる。ただしこの場合も、負荷電流は1台分で収まるように設計する必要がある点には注意したい。並列運転のように2台で電流を分け合って容量を底上げする発想とは違うからだ。冗長運転ユニット形S8VK-Rシリーズを使うか外付けダイオードを使うかは、負荷条件(形S8VK-R10はDC5〜30V・0〜10A、形S8VK-R20はDC10〜60V・0〜20A)と相談しながら選ぶことになる。
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