保守点検の記録簿には、ストリングごとの開放電圧という数字が並んでいる。数十本のうち一本だけ、ほかとわずかに違う値を示している。誤差の範囲だろう、と最初は思う。しかし竣工検査の場でこの違和感に立ち止まった中部電気保安協会の技術者は、そうしなかった。メガソーラービジネス誌が報じたこの事例では、接続箱内でストリングごとの開放電圧を測ったところ、一部の系統だけ数値が大きくばらついていることが見つかっている。
原因は配線の断線でも、パネルの故障でもなかった。ストリング内の直列接続枚数そのものが、設計と実際の施工とで食い違っていたのだ。1回路だけ枚数が多いストリングが紛れ込んでいた。パワーコンディショナ(PCS)はMPPT制御によって、複数のストリングをまとめてなるべく高い出力に追従させようとする。ところが直列で束ねられたパネル群の電圧は、その中で最も条件の悪い一系統に足を引っ張られる性質を持つ。枚数の違う1回路が交じっていたばかりに、他の健全なストリングまで低い電圧に付き合わされ、発電所全体が本来の実力を出し切れていなかった。
この話の面白さは、原因ではなく発見の仕方にある。パネル自体は壊れていない。配線も導通している。それでも出力は目減りする——直列接続という組み方そのものが持つ性質を知らなければ、この種の損失は永遠に「なんとなく発電量が伸びない設備」として片づけられてしまう。
ストリングとは何か——パネルを束ねる最小の回路単位
太陽光パネル1枚(モジュール)は、それだけでは扱いやすい電圧を生まない。数十Vという中途半端な電圧の板を、そのまま何百枚も並列に並べただけでは、PCSが必要とする電圧域に届かない。そこで複数枚のモジュールを直列につないで一つの回路にまとめたものがストリングである。このストリングをさらに複数本、並列に束ねたものがアレイと呼ばれる。セル→モジュール→ストリング→アレイという順に、単位が一段ずつ大きな回路へと積み上がっていく構造だ。
言葉の整理だけをしても実感は薄い。ストリングという単位がなぜ必要とされるのかは、直列と並列という二つのつなぎ方が、それぞれ何を解決しているのかを見て初めて見えてくる。
なぜ直列につなぐのか——電圧を積み上げてPCSの土俵に乗せる
モジュール1枚の開放電圧(Voc)は、結晶シリコン系でおおよそ30V台に収まる。ソーラーフロンティアの単結晶モジュールSFB250-88Aを例に取ると、公称開放電圧は30.36V、実際に発電する動作点での電圧(Vmpp)は25.08Vとされている。この電圧のまま1枚だけをPCSにつないでも、直流入力として扱うには低すぎる。
そこでモジュールを直列に何枚もつなぎ、電圧を足し合わせていく。直列接続では電流はそのままに電圧だけが枚数分積み上がるため、たとえばVmpp 25.08Vのモジュールを14枚直列にすれば、動作点の電圧はおよそ351Vまで持ち上がる。これは、パナソニックの屋外用集中型パワーコンディショナVBPC255GC1が定める定格入力電圧DC330Vにかなり近い水準だ。PCSが効率よく変換できる電圧帯に電圧を合わせ込む——これが直列接続の役割である。
なぜストリングを並列につなぐのか——電流を増やして必要な電力を確保する
電圧を積み上げただけでは、太陽光発電設備としては力不足だ。ストリング1本だけでは、モジュール1枚分の電流(Impp)しか流れない。5.5kW級のPCSを本来の容量まで働かせるには、電流のほうも増やす必要がある。
ここで並列接続が効いてくる。電圧の等しいストリングを複数本並列につなぐと、電圧はそのままに電流だけが本数分積み上がる。オムロンのKPVシリーズは入力回路数4回路(1 MPPT)という仕様を持ち、複数本のストリングをまとめて1系統のMPPTで追従させる構成を前提にしている。直列で電圧を、並列で電流を、それぞれ別の軸で稼ぐ——この組み合わせによって、ようやくPCSの定格に見合った電力が確保できる。
PCSのMPPT電圧範囲との整合——直列枚数は逆算で決まるもの
直列枚数は「何枚でもいい」わけではない。PCSにはMPPT電圧範囲、つまり動作を許容する直流入力電圧の上限と下限が定められている。オムロンKPVシリーズは運転可能電圧範囲DC50〜450V、パナソニックVBPC255GC1は入力運転電圧範囲DC50〜450V(仕様表上の動作電圧範囲としてはDC55〜450V)という数値を公表している。
この範囲の中に収まるように、直列枚数の上限と下限を挟み込む。上限側は「PCSの最大入力電圧÷モジュールの開放電圧」で押さえ、下限側は「MPPT電圧範囲の下限÷モジュールの動作電圧」で押さえる。実務では、この上限と下限の間に収まる直列枚数を選び、さらに並列本数をPCSの最大入力電流の範囲内で決める、という二段階の逆算になる。
パナソニックの標準仕様書は、この上限を守るべき理由をかなり踏み込んで説明している。「電気設備技術基準の対地電圧は450V以下であることと規定されています。従って、太陽電池の組み合わせにおいて、いかなる条件(環境、太陽電池特性を含めて)においても450V以下となるようなシステム設計をしてください」。450Vを超えた場合には直流過電圧を検出し、太陽電池過電圧を示すF3エラーが表示されてPCSは停止する。直列枚数の設計ミスは、単に効率が落ちるだけでなく、法令上の対地電圧規定に抵触しかねない領域の話でもある。
気温という変数——低温で開放電圧はどこまで上がるのか
ここまでの計算は、モジュールの電圧が一定であることを前提にしていた。しかし現実のモジュールは、気温によって電圧が動く。
結晶シリコン系モジュールの開放電圧には、負の温度係数がある。ソーラーフロンティアのSFB250-88Aの仕様書には、開放電圧の温度係数(β)が-0.27%/Kと明記されている。マイナスの係数ということは、温度が下がるほど開放電圧は上がるという意味だ。基準となる25℃から気温が下がれば下がるほど、その差分だけ開放電圧が積み上がっていく。
この値を使って試算してみる。基準の25℃から真冬の-10℃まで、温度差は35Kある。SFB250-88Aの公称開放電圧30.36Vに0.27%×35Kの上昇分を乗せると、低温時の開放電圧はおよそ33.2Vまで上がる計算になる。これを、パナソニックVBPC255GC1が求める対地電圧450V以下という条件に当てはめてみるとどうなるか。33.2Vのモジュールを14枚直列にすると約465V、13枚なら約432V。同じ「14枚直列」という設計図面上の数字が、真夏の測定では問題なく見えても、真冬の朝には対地電圧規定を超えて機器を停止させる側に回る。直列枚数は、その地域の最低気温を見込んだ上での上限枚数として決めるべき数字であって、標準状態(STC、セル温度25℃)の数字だけで決めてよいものではない。
一段深い理解——直列の弱点、1枚の不調が全体を引きずり下ろす仕組み
ここまでは電圧・電流をどう組み合わせるかという「設計の作法」の話だった。しかし直列接続には、枚数計算だけでは見えてこないもう一つの性質がある。直列回路を流れる電流は、回路のどこか1点でも詰まれば、その1点の許容量までしか流れなくなるという性質だ。
部分的に影がかかったり、経年劣化や汚れの偏りで一部のセルだけ発電能力が落ちたりしたモジュールが1枚でもストリングに混じると、そのセルが電流のボトルネックになる。他の健全なセルが本来出せるはずの電流も、その1枚に合わせて絞り込まれてしまう。エネがえるが公開している実測データがこの性質をよく示している。3.6kWのシステム(240Wパネル15枚、3回路構成)で、パネル1枚だけに部分影がかかったケースでは出力低下は約4%にとどまった。ところが、同じ影が1回路(5枚)すべてに広がると約33%減、3回路に分散する形で3枚に影がかかると約54%減にまで落ち込んでいる。影を受けたセルの物理的な面積比率をはるかに超える出力ロスが生じているのが分かる。
このボトルネック構造を緩和するために、モジュールにはあらかじめバイパスダイオードが組み込まれている。NTT REC VALUEの解説によれば、バイパスダイオードは影がかかって電流が流れにくくなったセルグループに対して電流の迂回路を作る部品だ。迂回路が正常に機能している間は、影のかかったセル群を電流が飛び越え、残りのセル群だけで発電を継続できる。だが、この迂回がうまく働かない、あるいはダイオード自体が劣化・故障している場合には話が変わる。影を受けたセルは電流を強制的に流され続け、消費した電力がそのセルの発熱に変わる。これがホットスポットと呼ばれる現象で、進行すれば発電効率の低下にとどまらず、封止材やバックシートの熱劣化にまで至る。
ここで押さえておきたいのは、この弱点が「影」という特殊な状況に限った話ではないという点だ。パネルの個体差、施工時期の違いによる経年劣化の差、汚れの付き方のばらつき——同じストリングの中に特性の異なるモジュールが1枚でも混在すれば、原理としては同じボトルネックが起こり得る。並列接続は1本のストリングに何かあっても他のストリングが発電を続けられる構造だが、直列接続はその内部に、1枚の不調が全体を道連れにするという弱点を抱えたまま組み上がっている。
よくある設計・施工ミス
- 直列枚数の設計と施工の食い違い:冒頭で触れた事例のように、設計図面上のストリング構成と、現場で実際に組まれた枚数が一致していないケース。竣工時の開放電圧測定で各ストリングの値を突き合わせない限り、発見が遅れやすい。
- 標準状態(25℃)の数値だけで直列枚数の上限を決める:低温時の開放電圧上昇を見込まずに枚数を決めると、その地域の最低気温でPCSの最大入力電圧・対地電圧規定を超えるリスクが残る。
- 既設ストリングへの安易な継ぎ足し:増設時に、電圧特性の異なる新しいモジュールを既存ストリングの末尾に追加してしまうと、特性差がボトルネックを生み、既存パネル分の発電量まで巻き込んで下げてしまう。増設は別ストリングとして構成するのが安全だ。
- 方位・傾斜角が異なる面のモジュールを同一ストリングに混在させる:朝日と西日で日照条件が変わる面を同じ直列回路に組み込むと、常にどちらかの面が足を引っ張る状態になりやすい。
- 並列接続時の逆流防止対策の見落とし:ソーラーフロンティアの取扱説明書も、並列数を決める際はモジュールの最大過電流保護定格とPCSの入力電流範囲の双方を超えないこと、並列接続の際は過電流保護回路(ブロッキングダイオードなど)を合わせて設置することを求めている。
ストリング配線の設計・部材調達について
「既設設備のストリング構成とPCSのMPPT電圧範囲が合っているか確認したい」「増設予定のモジュールを、既存ストリングに継ぎ足すべきか別回路にすべきか判断がつかない」といったご相談を、施工店・設備管理担当者様からいただきます。
直列枚数の上限・下限はモジュールの型番とPCSの型番の組み合わせごとに変わり、低温時の電圧上昇を見込んだ再計算が必要な場面も少なくありません。当サービス「電材サーチ」では、PCS・モジュールの仕様確認から、ストリング構成に応じた接続箱・ブロッキングダイオードなどの周辺部材の見積もりまでご相談いただけます。
FAQ
Q. ストリングとは何ですか。アレイとは違うのですか?
A. ストリングとは、太陽光パネル(モジュール)を複数枚、直列に接続した一つの回路単位を指します。このストリングを複数本、並列に束ねたものがアレイです。セル→モジュール→ストリング→アレイという順で、単位が一段ずつ大きくなっていくと理解すると整理しやすくなります。
Q. 1ストリングあたりの直列枚数はどうやって決めるのですか?
A. パワーコンディショナ(PCS)のMPPT電圧範囲(入力運転電圧範囲)とモジュールの開放電圧(Voc)・最大出力動作電圧(Vmpp)から逆算します。上限は「PCSの最大入力電圧÷モジュールのVoc(低温時の上昇を見込んだ値)」、下限は「MPPT下限電圧÷モジュールのVmpp」で押さえ、その範囲に収まる枚数を選びます。
Q. 低温で本当に開放電圧がPCSの上限を超えることがあるのですか?
A. 起こり得ます。結晶シリコン系モジュールの開放電圧には負の温度係数があり、気温が下がるほど電圧が上昇します。ソーラーフロンティアの単結晶モジュールSFB250-88Aの場合で開放電圧の温度係数は-0.27%/K、つまり基準の25℃から気温が下がるほど、その分だけ開放電圧が積み上がります。直列枚数の設計は、その地域で想定される最低気温での電圧上昇を織り込んで行う必要があります。
Q. ストリング内の1枚だけ汚れていたり日陰になったりすると、そのパネルの分だけ発電量が下がるのですか?
A. そうとは限りません。直列接続では回路を流れる電流がストリング内で最も条件の悪い1枚に制限されるため、影響がその1枚の面積比率を上回って現れることがあります。エネがえるの実測例では、3.6kWシステムでパネル1枚への部分影は約4%減にとどまった一方、影が複数回路に分散すると約54%減まで落ち込んでおり、影の面積そのものより、どのストリングにどう分散しているかが発電量を大きく左右しています。
Q. 既設のストリングに後からパネルを継ぎ足してもよいですか?
A. 電圧・特性の異なるモジュールを同じストリングに混在させると、直列接続の性質上、最も条件の悪い1枚に電流が引きずられて既存パネル分の発電量まで道連れにする恐れがあります。増設する際は、既存ストリングへの継ぎ足しではなく別ストリングとして構成し、PCSのMPPT入力に空きがあるかどうかも含めて設計し直すのが安全です。
あわせて読みたい
- 太陽光発電の系統連系保護と単独運転防止装置|なぜ停電時にパワコンは自動停止するのか
- 太陽光パネル架台の積雪荷重・耐風圧設計|地域ごとの設計荷重の違いと、強度不足が招く倒壊事故を一次情報で整理
- 【現場のやらかし】太陽光発電所でコネクタが炭化して発火!MC4コネクタの「別メーカー・互換品混在」による接触不良と直流アークトラブルの防ぎ方
- 太陽光発電用PVケーブルの選定と盗難対策!銅高騰時代における敷設設計
関連する太陽光・ストリング・配線・直列・並列・組み方の品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。