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太陽光・EV太陽光架台安全対策

太陽光パネル架台の積雪荷重・耐風圧設計|地域ごとの設計荷重の違いと、強度不足が招く倒壊事故を一次情報で整理

読了目安: 12分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

工場の屋根や造成地の一角に、パネルがびっしりと並んでいる。見学に来た担当者が真っ先に聞くのは、たいてい発電効率の話だ。何kW出るのか、変換効率は何%か、投資回収は何年か。誰も、パネルの下で影に徹しているアングルとボルトの話はしない。無理もない。それは発電しないし、パンフレットの見栄えにも貢献しない。

ところが、大雪や台風のたびに全国のどこかで、そのアングルとボルトの側が壊れたというニュースが流れる。2018年の台風21号では、大阪市住之江区にある出力6.5メガワットのメガソーラーで、設置されていた2万8160枚のパネルのうち約1万3780枚が損壊・飛散した。日経BPの報道によれば、経済産業省はこの被害について「従来はパネルと架台の接合部の強度が不十分でネジやクリップが外れてパネルごと飛ぶ事例があったが、今回はネジが外れていないままパネルだけが引きちぎられた」という、それまで確認されていなかった損傷形態だったと分析している。設計上想定していた最大風速は34m/sだったが、関西国際空港ではこのとき最大瞬間風速60m/sを超える値を記録していた。

パネルが壊れたのではない。パネルを固定する側が、その日の風に耐えられなかったのだ。

発電量の議論が、強度の議論を後回しにする

太陽光発電設備を検討するとき、比較の土俵に上がるのはほとんどが電気的な性能である。パネルの変換効率、パワーコンディショナの容量、系統連系の可否——これらは数字として見積書に並び、他社との比較材料になる。一方、架台の強度計算書は見積書の添付資料の中でも後回しにされやすい書類だ。理由は単純で、強度が十分かどうかは、平時にはまったく見た目に現れないからである。

構造計算をきちんと行った架台と、標準仕様のカタログ値をそのまま流用した架台は、晴れた日には区別がつかない。違いが表面化するのは、その地域で数十年に一度の大雪や暴風が実際に来た瞬間だけだ。国際評価技術・製品評価技術基盤機構(NITE)の分析でも、太陽電池発電設備の氷雪事故は積雪の多い時期に増加する傾向があり、とりわけ遊休地等に設置される小規模設備でその傾向が強いと指摘されている。2020〜2024年度の5年間で発生した氷雪事故は62件、そのうち約9割にあたる57件が豪雪地帯・特別豪雪地帯に集中しており、被害の9割以上は太陽電池モジュールと架台に集中していたという。地域が偏るのは偶然ではない。積雪が多い地域ほど、設計時の想定と現実の乖離が起きやすいというだけの話である。

積雪荷重の考え方——「多雪区域」という線引き

積雪荷重の基礎になっているのは建築基準法の考え方だ。国土交通省の資料によれば、積雪荷重は「積雪量1cmごとに1㎡あたり20N(約2kg重)以上の単位荷重」に、屋根の水平投影面積とその地方における垂直積雪量を乗じて算出する。積雪30cmの地域であれば600N/㎡(約61kg重/㎡)という具合だ。

この垂直積雪量は、全国423地点の気象官署で収集された過去15〜68年分のデータをもとに、各市町村で50年再現期待値として想定されたものである。ここで一つの区分が生まれる。「多雪区域」だ。垂直積雪量が1m以上、あるいは積雪の初終間日数の平年値が30日以上の区域がこれにあたり、特定行政庁が一般区域とは異なる基準を定めることができる。

多雪区域かどうかで何が変わるのか。国土交通省の資料が示す荷重の組み合わせ表を見ると、一般区域では長期(常時)の荷重はG+P(固定荷重+積載荷重)だけで、積雪荷重が長期の検討に登場しない。ところが多雪区域では、長期・積雪時の荷重にG+P+0.7Sという項目が加わる。積雪が一時的な外力ではなく、長期間にわたって載り続ける常態として扱われているということだ。短期・積雪時にはどちらの区域でもG+P+Sが適用され、瞬間的なピーク荷重として満積雪量Sをそのまま見込む。多雪区域ではさらに、暴風時・地震時の検討にも0.35Sという係数で積雪の重みを織り込む。雪が積もったまま風や地震に見舞われる状況を、想定の中にあらかじめ組み込んでいるわけだ。

JIS C 8955:2017は、この垂直積雪量をベースに、太陽電池アレイ面という傾斜した特殊な形状に応じた設計用積雪量を算出する方法を規定している。日本電機工業会(JEMA)の解説によれば、アレイ面の設計用積雪量は規格の計算式による値と、特定行政庁が定める50年再現期待値のいずれかで求め、より安全となる値を採用することが求められている。同解説はもう一点、「除雪をすることができない場合も考慮して設計いただけますようお願いいたします」という一文を添えている。野立ての太陽光発電所は、屋根のように人が上がって除雪できる場所ではない。積もったら、積もったままの荷重を支え続けるほかない構造物だという前提が、ここに表れている。

ここで、冒頭とは別の実例に触れておきたい。国土交通省の資料には、2014年2月の関東甲信越豪雪で屋根崩落被害が出た施設の一覧が載っている。東京都青梅市の施設では、法令上の基準となる垂直積雪量が30cmだったのに対し、実際の積雪量は青梅市役所調べで63cm。埼玉県熊谷市の施設でも、基準30cmに対し実測59cmを記録した。基準の2倍を超える積雪が、関東という「多雪区域には指定されていない」地域を襲ったのである。太陽光発電の架台がこの種の記録的降雪と無縁でいられる保証は、どこにもない。

風荷重の考え方——基準風速と地表面粗度区分

風荷重の起点になるのが基準風速V0だ。平成12年建設省告示第1454号に基づき、全国の市町村ごとに30m/sから46m/sの範囲で指定されている。沿岸部や台風の常襲地域ほど高い数値が割り当てられる仕組みで、同じ「太陽光の架台」という言葉でも、設置場所によって求められる耐風性能は最初からまったく違う。

基準風速に加えて、風圧力の算定にはもう一つ、地表面粗度区分という指標が使われる。建物の高さや海岸線からの距離といった条件に応じて区分され、開けた地形ほど地表付近まで強い風が吹き込みやすく、密集した市街地ほど周囲の建物が風を遮る、という地形の粗さの違いを反映するものだ。野立ての太陽光発電所は、多くの場合まわりを遮る建物のない造成地や農地に設置される。市街地の建築物と同じ感覚で「この地域の風は大したことがない」と判断するのは早計で、地表面粗度区分次第では、周辺に建物が多い市街地よりも高い風圧を受ける設計にせざるを得ない場合がある。

JIS C 8955は2017年の改正で、この地表面粗度区分の分類とアレイ面の風力係数を見直しており、多くの条件で従来より大きな設計風圧荷重が算出される方向に改められた。冒頭で触れた大阪の事例に戻ると、設計最大風速34m/sという数値そのものは当時の基準に沿ったものだったはずだ。それでも関西国際空港で記録された60m/s超という値の前では、この設計値は十分な余裕を持っていなかった。基準を満たす設計と、その日その場所で実際に吹いた風との間には、常に埋まりきらない距離が残る。

JIS C 8955という規格の、実はあまり知られていない性格

ここで、見落とされがちな事実を一つ挟んでおきたい。現行のJIS C 8955:2017は、2004年版・2011年版まで「太陽電池アレイ用支持物設計標準」という名称だったものが、「太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法」へと名称そのものが変更されたものである。日本規格協会の情報によれば、この改正では材料や許容応力度に関する規定が削除され、規格の対象が「設計用荷重の算出方法」に絞り込まれた。

つまり、この規格が定めているのは「この地域・この形状ならどれだけの荷重を見込むべきか」までであって、「その荷重に対して部材をどう選び、どう接合すれば安全な構造になるか」という部材設計・接合部設計そのものは、規格の対象から外れている。この空白を埋める目的で、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドラインを整備し、一般仕様・強風仕様・多雪仕様という標準的な仕様区分を示している。

「JIS C 8955に準拠しています」という説明を見積書やカタログで見かけたとき、それが荷重の算出方法に準拠しているという意味なのか、その荷重に見合う構造設計まで検証済みという意味なのかは、実は別問題だ。前者だけを満たして後者が伴っていない架台は、規格上の言葉づかいとしては嘘をついていないまま、強度不足のリスクを抱えることになる。

材質・工法による強度の違い

架台の材質選定は、防食性能の話として語られることが多いが、強度の観点でも無視できない差がある。鋼製は強度と剛性に優れ、大型の野立て設備で標準的に使われる一方、腐食対策としてめっき仕様の選定が要る。アルミ製は軽量で施工性に優れるが、同じ荷重条件では鋼製より部材断面を大きく取る必要が生じやすい。ステンレス製は塩害地域など高い防食性能が求められる環境向けの選択肢になるが、コストは相応に上がる。

基礎の工法にも強度上の分岐点がある。コンクリート基礎は自重で安定させる方式、杭基礎は地中に打ち込んだ杭の支持力・引き抜き抵抗力に頼る方式だ。JPEA太陽光発電協会の不具合事例集は、野立て太陽光発電所で地盤が軟弱なために杭が沈下し、架台やパネルに歪みが生じた事例を報告している。放置すればパネル割れや発電量低下につながるとされ、地盤の強さを見誤った基礎設計が、時間差で構造そのものを歪めていく実態を示している。同事例集は塩害地域における架台の腐食にも触れており、金属である以上、経年劣化によって錆が進み、重量のあるパネルを安全に固定する能力そのものが損なわれていく点を指摘している。

施工不良が招く事故の類型

架台まわりの事故は、いくつかの典型的なパターンに分けられる。一つは、ここまで見てきた設計荷重そのものの想定不足——その地域で実際に起こりうる積雪・強風を過小評価した設計だ。もう一つは、設計自体は妥当でも、施工段階でその設計通りに組み上がっていないケース。ボルトの締め付けトルクが規定に達していない、基礎の根入れ深さが不足している、といった食い違いは、竣工検査をすり抜けたとしても、数年後の荷重の谷間で表面化しやすい。

三つ目は、経年劣化によって初期の強度が目減りしていくケースだ。塩害地域での腐食、繰り返し受ける風荷重によるボルトの緩みや接合部の疲労——これらは施工時点では存在しなかった弱点で、供用開始からの年数が長くなるほど、初期の強度計算がそのまま通用するとは限らなくなっていく。設計・施工・経年劣化という三つの段階のどこに弱点があっても、結果として現れる現象は同じだ。ある日、その地域にとって想定内のはずの雪や風で、架台が崩れる。

定期点検で確認すべきこと

JPEA・JEMAの太陽光発電システム保守点検ガイドラインは、架台についていくつかの点検項目を挙げている。ボルト・ナットの緩みの確認と増し締め、変形・錆・腐食・破損がないかの外観目視点検などだ。野立て設備ではこれに加えて、基礎の沈下や傾斜の有無も確認しておきたい項目になる。

竣工時点で適切だった強度計算は、その時点の部材・その時点の地盤を前提にした答えでしかない。腐食は進み、地盤は変化し、ボルトは緩む。積雪荷重・風荷重という自然側の条件が変わらなくても、それを支える側の実力が時間とともに目減りしていけば、いずれ同じ答えは通用しなくなる。定期点検は、その目減りを早期に見つけるための、数少ない手段の一つだ。

太陽光パネルの発電性能を比べる作業は、カタログを並べれば誰にでもできる。架台がその地域の垂直積雪量・基準風速に対してどう設計されているかを見極める作業は、それよりずっと地味で、注目もされにくい。しかし冒頭の大阪の事例が示す通り、壊れるのはパネルではなく、たいていその足元の方からである。

架台の強度設計・地域ごとの設計荷重の確認、材質・工法の選定でお困りの際は、設置予定地の垂直積雪量・基準風速・地表面粗度区分が分かれば具体的な検討に入れます。

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FAQ

Q. 太陽光パネル架台の強度設計は、法律で義務づけられているのですか?

A. はい。電気設備の技術基準の解釈は、太陽電池発電設備の支持物(架台・基礎)の設計荷重算出根拠としてJIS C 8955:2017を引用しており、新規に設計する地上設置型の太陽光発電設備は、このJISに基づく積雪荷重・風荷重等の算定が実質的に義務づけられています。加えて、屋根置き型など建築物と一体になる設置形態では、建築基準法上の構造計算の対象となる場合もあります。

Q. 「うちの地域は雪があまり降らない」場合でも積雪荷重の検討は必要ですか?

A. 必要です。JIS C 8955:2017は、アレイ面の設計用積雪量を、規格の計算式による値か、特定行政庁が定める50年再現期待値かのいずれかで求め、より安全側の値を採用するよう求めています。50年に一度の再現期待値という考え方である以上、「これまで大雪が降ったことがない地域」は「まだ50年分の記録的な大雪を経験していないだけの地域」である可能性を排除できません。

Q. 架台の材質は鋼製・アルミ・ステンレスのどれを選べばよいですか?

A. 設置環境と荷重条件によって最適解が変わるため一概には言えませんが、塩害地域や高湿度環境では腐食による強度低下のリスクが高くなるため、防食性能を重視した材質・めっき仕様の検討が必要です。JPEA太陽光発電協会の不具合事例集でも、塩害地域における架台の腐食が強度低下を招いた事例が報告されており、初期選定だけでなく供用後の防錆対策も含めて検討する部材です。

Q. 架台の強度計算書は、施主として必ず確認すべきものですか?

A. 確認をおすすめします。JIS C 8955:2017に準拠した強度計算書は、その地域の垂直積雪量・基準風速という前提条件を明記した上で成立するものです。施工業者に強度計算書の提示を求め、記載されている前提条件(垂直積雪量・基準風速・地表面粗度区分等)が設置予定地の値と一致しているかを確認することで、汎用的な標準仕様のまま個別の立地条件を反映していない設計を見抜くことができます。

Q. 架台の定期点検では何を確認すればよいですか?

A. JPEA・JEMAの太陽光発電システム保守点検ガイドラインでは、架台についてボルト・ナットの緩みの確認と増し締め、外観の目視点検(変形・錆・腐食・破損の有無)などが点検項目として挙げられています。加えて、野立て設備では基礎の沈下・傾斜がないかの確認も重要です。竣工時に適切だった強度は、経年劣化や地盤の変化によって時間とともに変わりうるものだという前提で、定期的に見直す必要があります。

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