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不足電圧引き外し装置(UVR/UVT)とは|停電後の自動復電で機械が突然動き出す事故を防ぐ仕組み

読了目安: 10分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

停電中、機械のスイッチは切ったつもりでいた。実際には切れていなかった、という話を点検の現場で聞いたことがある。作業者は工作機械の起動スイッチを「入」のまま席を外し、そのまま停電に遭遇した。数分後、電気が戻った瞬間、主軸が前触れなく回り始めた。幸い機械の正面には誰もいなかったが、もし手を伸ばしていたら、という一言を、担当者は何度も繰り返していた。

この話を聞いて、多くの人がまず思うのはこうだろう。スイッチを切り忘れた作業者の不注意だ、と。たしかにそうだ。ただ、それだけで片づけてしまうと、この事故が持つもう一つの側面を見落とす。問題は「切り忘れたこと」以上に、「切り忘れても、機械側には何のブレーキもかかっていなかったこと」にある。

なぜ電源が戻っただけで機械が動き出すのか

配線用遮断器、いわゆるブレーカーは、いったん投入(ON)にすると、内部の機械的な保持機構——ラッチと呼ばれるかぎのような構造——がその状態を維持し続ける。電圧の有無はこの保持機構には関係しない。停電が起きても、ラッチは投入位置を握ったままだ。だから、電圧が戻れば、遮断器は「投入されたまま」の状態で通電を再開する。

これは決して遮断器の欠陥ではない。停電のたびに勝手にOFFへ切り替わるブレーカーのほうが、むしろ困る。冷蔵庫や生産ラインの制御盤で、瞬間的な電圧低下のたびに全回路が落ちてしまえば、業務は成り立たない。標準の遮断器が投入状態を保持し続けるのは、正しい設計だ。

問題は、この「正しい設計」がそのまま当てはまらない場面がある、という点にある。人が主軸のそばに立ち、スイッチを入れたまま停電に遭遇するような自動運転の工作機械では、電圧が戻った瞬間に何の前触れもなく動き出すという挙動そのものが、そのまま事故の引き金になる。

不足電圧引き外し装置(UVR/UVT)とは何か

この矛盾を解くために存在するのが、不足電圧引き外し装置だ。高圧受電設備で単体の継電器として使われる呼び方ではUVR(Under Voltage Relay)、配線用遮断器や気中遮断器に組み込む付属装置としては、三菱電機など主要メーカーの資料でUVT(Undervoltage Trip、不足電圧引きはずし装置)と呼ばれる。この記事で扱うのは、分電盤や制御盤の主開閉器に組み込んで、復電時の自動再起動を防ぐUVT型の装置である。

三菱電機FAの技術資料によれば、UVTは回路電圧が定格の70〜35%以下まで低下すると遮断器をトリップさせ、電圧が少なくとも85%まで回復して初めて、手動でリセットしたうえで投入できるようになる。動作そのものは速い。同社の別資料では、UVTの動作時間は30ms以下(一部の大型機種では35ms以下)とされており、これは電圧が失われてから遮断器の主接点が実際に開き始めるまでの時間として定義されている。停電を検知して、コンマ数十ミリ秒のうちに投入状態を強制的に解除する——ここまでは、いわば電圧センサー付きの自動遮断機構という理解で足りる。

ただし、この装置の本当の役割は「速く遮断すること」だけではない。むしろ核心は、その後にある。

常時励磁という設計——電源を「監視」ではなく「支え」に使う

UVTがどうやって「電圧が失われたこと」を検知しているのか、その仕組みを見ると、この装置の設計思想が見えてくる。

なべちゃんワークスの解説が整理する通り、遮断器の引き外し装置には二つの系統がある。一つはSHT(電圧引き外し装置)で、こちらはa接点(ノーマルオープン)を使い、端子に電圧を加えることでトリップさせる。もう一つがUVTで、こちらはb接点(ノーマルクローズ)を使い、常時コイルに電圧をかけ続けることで投入状態を支え、その電圧が失われた瞬間にトリップする。

この違いは、単なる配線方式の違いではない。SHTは「電圧を加える」という能動的な指令があって初めて動く。指令を送る配線のどこかが断線していれば、本来トリップすべき場面でも装置は沈黙する。一方のUVTは、常時励磁——コイルに電圧をかけ続けることそのものが「異常なし」の合図になっている。配線が断線しても、コイルへの電圧が正常でも、停電が起きても、UVTから見れば結果は同じ「電圧が来なくなった」であり、装置は迷わずトリップする側に動く。

つまりUVTは、電源を「監視する」道具ではなく、電源を「支えに使う」道具だ。電圧という支えが外れた瞬間、装置は自動的に安全側へ倒れる。この設計は一般にフェールセーフと呼ばれるが、UVTの場合はそれが特に分かりやすい形で実装されている。壊れたときにどちらへ転ぶかが、あらかじめ決められている。

なぜ自動で戻さないのか——手動リセットという設計思想

ここまでの説明だけだと、UVTは「停電を検知して素早く切る、賢いブレーカー」に聞こえるかもしれない。しかし、この装置が本当に興味深いのは、切った後の挙動のほうだ。

素朴に考えれば、電圧が戻ったら、遮断器も一緒に元に戻ってくれたほうが便利なはずだ。停電が終われば照明も機器も自動的に復旧する、というのが多くの人にとっての「当たり前」の電気の挙動である。ところがUVTは、その当たり前をあえて壊す方向に設計されている。三菱電機FAの資料が明記する通り、電圧が85%以上に復帰しても、遮断器は自動では投入されない。人がその場で手動でリセット操作をしなければ、投入状態には戻らない。

なぜ、わざわざ不便な設計にしているのか。答えは、冒頭の事故が教えてくれる。UVTが防ぎたいのは「停電が起きること」ではない。「停電から回復したときに、誰も見ていない場所で機械が勝手に動き出すこと」だ。電圧が失われたという事実を、装置がそのまま記憶し、電圧が戻っても、人が現場で状況を確認してボタンを押すまでは、その記憶を解除しない——これがUVTの設計思想の核心である。停電の前後で機械の状態が変わっていないかを確認する機会を、装置自体が強制的に作り出しているとも言える。

この思想は、リセット可能形とリセット防止形という二つの型式にも表れている。三菱電機FAの資料によれば、リセット可能形は無励磁の状態でもリセット操作ができる型式、リセット防止形は無励磁ではリセット操作そのものができない型式だ。無人でも早く復旧してほしい設備ならリセット可能形で足りるが、人が近くにいない状態で動き出すこと自体が危険な設備では、そもそもリセット操作を受け付けないリセット防止形を選ぶ意味が大きくなる。同資料はまた、UVTのコイルには必ず規定の電圧を印加してからリセット・投入操作を行うよう注意を促しており、これも「電圧が確立している状態でしか、装置が再投入を受け付けない」という同じ思想の延長線上にある。

適用が求められる機械・設備

この設計思想は、電材メーカーが独自に唱えている話ではない。機械の電気装置に関する国際的な安全規格を国内に取り入れたJIS B 9960-1「機械類の安全性-機械の電気装置-第1部:一般要求事項」には、電源の中断・電圧低下とその復帰時の影響からの保護を扱う条項があり、電圧の回復や供給電源側の再投入によって機械が自動的、あるいは予期しない形で再起動することが危険な状態を招く場合には、その再起動を防止しなければならないという趣旨の要求事項が置かれている。同規格には、予期しない起動を防止するための機器に関する規定もあり、 機械の電気設計そのものが「電源が戻っただけでは動かしてはいけない」場面を想定して作られていることが分かる。

自動運転する工作機械はまさにこの典型だ。加工サイクルの途中で停電し、作業者がその場を離れているあいだに電源が復旧すれば、主軸やテーブルは何の予告もなく動き出す。搬送コンベアや自動化された生産ラインの駆動部も同様で、人がすぐそばで作業する可能性がある設備ほど、この「電源任せの自動復旧」を許さない設計が求められる。

労働安全衛生規則との関係

労働安全衛生規則第107条は、機械の運転を停止して掃除・給油・検査・修理・調整の作業を行う場合、労働者に危険を及ぼすおそれがあるときは、起動装置に錠を掛ける、表示板を取り付けるなどして、他の者がその機械を運転することを防止するための措置を講じなければならないと定めている。これは点検・保守の場面を念頭に置いた規定であり、停電からの復電そのものを直接扱った条文ではない。ただし、その根底にある発想——「意図しない者が、意図しないタイミングで機械を起動させてはならない」——は、UVTが果たしている役割と地続きだ。人による意図的な操作を経なければ機械が動かない状態を作る、という点で、UVTは同じ安全思想を電気的な仕組みとして実現している装置だと理解しておくとよい。

選定・設置時の注意点

UVR/UVTを選定・導入する際は、次の点を押さえておきたい。

  • 既設の遮断器に後付けできるか、遮断器ごと交換が必要か:UVTは遮断器本体と一体で設計されている機種と、別置きのコントローラをリード線で接続する機種がある。Panasonicの資料が示す単相3線式100V回路の配線例では、UVTコントローラの端子を遮断器1次側の相線・中性線に接続する形が取られており、既設の遮断器がUVT対応の構造を持っているかどうかを、まず銘板・型番で確認する必要がある。
  • 定格電圧の一致:UVTのコイルは単相100V・200V、三相200Vなど電源方式ごとに定格が分かれている。回路の電源方式と合わない定格のUVTを選ぶと、正常な電圧でも誤ってトリップする、あるいは低下時にも動作しないといった不具合につながる。
  • リセット可能形かリセット防止形かの選定:前述の通り、無人復旧を許容する設備か、人の確認を必須にしたい設備かで選び分ける。
  • 施工は電気工事士による電気工事:Panasonicの資料も明記する通り、UVT付きブレーカーの配線・設置は電気工事店に依頼すべき作業である。分電盤内部の結線を伴うため、自己判断での取り付けは避ける。

いずれの項目も、既設設備からの更新であれば現物の型番・配線状況の写真があれば照合が早い。

冒頭の事故に話を戻せば、あのときスイッチを切り忘れたこと自体は、誰にでも起こりうる小さな不注意だった。UVTという装置が本当に問うているのは、その種の不注意が起きたときに、機械の側にブレーキが用意されていたかどうかという一点である。電源が戻れば元通り動く、という一見当たり前の挙動こそが危険であり得る場面がある——このことを知っているかどうかが、次に同じ不注意が起きたときの結果を分ける。

不足電圧引き外し装置の選定や、既設の遮断器への後付け可否についてご相談があれば、現行の型番・配線状況をお知らせください。

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よくある質問

不足電圧引き外し装置(UVR)とUVTは同じものですか?

現場ではほぼ同じ意味で使われていますが、由来は少し異なります。もともとUVR(Under Voltage Relay、器具番号27)は高圧受電設備などで単体の継電器として使われてきた不足電圧継電器を指す呼び方です。一方、配線用遮断器や気中遮断器に組み込む形の付属装置は、三菱電機など主要メーカーの資料ではUVT(Undervoltage Trip、不足電圧引きはずし装置)と呼ばれています。この記事で扱っているのは、分電盤・制御盤の主開閉器に組み込んで復電時の自動再起動を防ぐUVT型の装置です。どちらも『電圧が下がったら遮断する』という原理は共通しています。

UVRが動作する電圧の目安はどれくらいですか?

三菱電機FAの資料によれば、回路電圧が定格の70〜35%以下まで低下するとトリップし、電圧が少なくとも85%まで回復してから手動でリセットしなければ再投入できません。この70〜85%という幅は、瞬時的な電圧の揺らぎで不必要にトリップしたり、逆に不安定な電圧のまま投入されたりしないようにするための整定です。実際の整定値は機種によって異なるため、必ずメーカーの仕様書を確認してください。

停電したら必ず遮断器が開放されるのですか?普通のブレーカーとは何が違うのですか?

UVR/UVTを装着していない標準の配線用遮断器は、投入(ON)状態を機械的なラッチ(かぎ機構)で保持する構造になっており、電圧の有無に関係なくON状態を維持し続けます。停電しても投入状態はそのまま残るため、電圧が戻れば通電も自動的に再開します。UVR/UVTはこの標準的な保持機構に割り込む形で追加される装置で、電圧が失われた瞬間に機械的にラッチを外し、遮断器を強制的にOFFへ落とします。装着していなければ、この『停電を記憶して開放する』動作そのものが起きません。

リセット可能形とリセット防止形は、どちらを選べばよいですか?

無人で自動的に立ち上がってよい設備であればリセット可能形、人が現場で状況を確認してからでなければ再投入させたくない設備であればリセット防止形、という考え方が基本です。自動運転する工作機械のように『人が近くにいなくても動き出してしまう』ことが事故につながる設備では、無励磁の状態でリセット操作自体ができないリセット防止形を選ぶ意味が大きくなります。どちらの形式が適切かは、設備の運転形態とリスクアセスメントの結果に応じて判断してください。

UVR/UVTの選定・設置はどこに相談すればよいですか?

遮断器本体のメーカー・フレームサイズ・極数、UVR/UVTの定格電圧(単相100V・200V、三相200V等)、リセット可能形かリセット防止形かの3点が分かれば選定が進みます。既設の遮断器に後付けできるか、遮断器ごと交換が必要かは機種によって異なるため、現物の銘板や型番が分かれば照合いたします。実際の取付・配線作業は電気工事士による電気工事に該当するため、選定後の施工は電気工事店にご依頼ください。

参考文献・出典

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