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【現場のやらかし】容量不足の配線用遮断器を2台並列に繋いで電流を分担させようとしたら、片方だけが過熱・焼損した!ブレーカーの並列接続がそもそも成立しない理由

読了目安: 10分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

本記事の場面・会話・数値は、理解を助ける仮想事例です。実際の事故・取引実績を示すものではありません。製品の適合性は個別の仕様で確認してください。

設備を1つ増やしただけのはずだった。制御盤の主幹から分岐しているポンプ回路に、もう1台のポンプを追加する——それだけの工事のつもりが、既設の配線用遮断器の定格電流をわずかに超える計算結果を出してしまう。上位側の主幹容量を見直すには時間も費用もかかる。かといって工事を止めるわけにもいかない。そんなとき、「同じ容量のブレーカーをもう1台、同じ回路に並列につなげば、電流を半分ずつ流せるのではないか」という考えが頭をよぎることがある。

一見、筋は通っているように見える。並列に道を2本用意すれば、電流はそれぞれの道に分かれて流れる——これは電気回路の基本そのものだ。しかし、この発想を配線用遮断器という機器に当てはめた瞬間、話は違う方向に転がり始める。

1.【現場のやらかし事例】容量不足を「もう1台並列」で解決しようとする

既設の分電盤や制御盤で、負荷の増設によって必要電流が既設ブレーカー1台の定格を超えてしまう場面は珍しくない。本来であれば、上位の主幹ブレーカーの容量を見直すか、その回路のブレーカー自体をより大きな定格のものへ交換するのが筋だ。しかし現場の事情——工期、盤の空きスペース、上位設備への影響を避けたいという判断——が重なると、「今ある同型のブレーカーをもう1台、同じ回路に並列で追加する」という応急処置に手が伸びることがある。

考え方としては単純だ。2台のブレーカーをそれぞれ電源側と負荷側の同じ母線に接続すれば、1つの負荷電流を2本の経路に分けられる。1台あたりの電流が減れば、それぞれは定格の範囲内に収まる——そう見積もった時点で、この応急処置は「うまくいくはず」の顔をして工事に組み込まれてしまう。

2. 「電流は半分ずつ流れる」という思い込みは、どこまで正しいのか

この発想の根っこにあるのは、並列回路の合成抵抗という、電気工事士の学科試験にも出てくるごく基本的な理論だ。抵抗を並列に接続すると、電流は各経路の抵抗の大きさに反比例して分かれる。2つの抵抗が完全に同じ値であれば、電流はきれいに2等分される。理屈の上では、間違っていない。

問題は、この理屈が成立する前提にある。「電流が半分ずつ流れる」のは、2つの経路の抵抗が実際に等しい場合に限られる。配線用遮断器を2台並べたとき、その前提は本当に成立しているのだろうか。

3. 配線用遮断器は「同じ抵抗」にはならない

配線用遮断器の内部には、接点の接触抵抗や内部配線の抵抗といった、ごくわずかな抵抗成分が存在する。カタログのどこにも明記されないほど小さな値だが、ゼロではない。そしてこの値は、同じ型式・同じ定格の製品であっても、個体ごとにまったく同じにはならない。接点の加工精度、ばね圧のばらつき、組み立て時の微妙な差——製造工程が同じでも、ミリオーム単位の抵抗値は個体ごとに散らばる。

この「わずかな差」が厄介なのは、もとの抵抗値自体が極端に小さいためだ。大きな抵抗同士の並列であれば、多少のばらつきは相対的に無視できる。しかし配線用遮断器のようにもともとの抵抗が小さい経路同士では、ミリオーム単位の差が、相対的には無視できない電流の偏りとして表れる。三菱電機FAのFAQは、この現象について明確に述べている。「遮断器の並列接続はしないでください。並列回路では各相の分流電流が必ずしも等しくなく」、実例としてA相が11Aと9Aに分流し、差し引き1Aの循環電流が漏電遮断器の不要動作を引き起こすケースを挙げ、さらに「分流電流の差が大きくなれば、ノーヒューズ遮断器でも過電流での不要動作を引き起こすおそれがあります」と注意を促している。遮断器メーカー自身が、並列接続という発想そのものを明確に退けている。

4. 電流が偏った側で、何が起きるのか

抵抗の低い側に電流が余分に流れ込むと、その1台は当初の想定——「定格の範囲内に収まるはず」だった半分の電流——を超えて働くことになる。ここで頼みの綱になるはずなのが、配線用遮断器そのものの過電流保護機能だ。定格を超えて流れているのだから、いずれはトリップして止まってくれるはずだ、とは思う。

ところが、配線用遮断器の動作特性はそう単純ではない。定格電流をわずかに超えた領域は、瞬時に遮断されるのではなく、時間をかけて動作する反限時特性の範囲にある。電技解釈第33条は、定格電流の1.25倍の電流であれば60分以内(30A以下の場合)といった猶予時間を法定の枠組みとして定めており、この猶予はそもそも、始動時の一時的な電流変動などで不必要にトリップしないための設計だ。しかも三菱電機FAのFAQによれば、この動作特性そのものが製造ばらつきにより1本の線ではなく最小-最大の帯として示される。つまり、同じ型式の製品であっても、定格を超えた電流に対して速やかにトリップする個体もあれば、帯の中の「動作しにくい側」に位置する個体もあるということだ。

電流が偏って多く流れ込んだ側が、たまたまこの「動作しにくい側」の個体だった場合はどうなるか。定格を超える電流が流れ続けているにもかかわらず、猶予時間の範囲内では遮断されない。この状態が続くほど、接点・内部配線・端子部では電流による発熱が進む。配線用遮断器の定格電流は、それを超えて連続して流し続けることを前提にしていない値であり、超過した状態が長く続けば、接点の劣化や端子部の温度上昇が静かに進行する。一方でもう1台は定格に対して余裕を残したまま平然と動いており、盤の外からは何の異常も見えない。

5. 「もう一方が守ってくれる」は成立しない

ここで見落とされがちな点がもう一つある。2台の配線用遮断器は、互いの状態を知らない。1台1台が、自分の内部を流れている電流だけを見て、自分の閾値と照らし合わせてトリップするかどうかを判断する独立した機器だ。もう一方が既に定格を超えて過熱していようと、自分の分担分がまだ自分の閾値以下であれば、当然ながら動作しない。「片方が限界に近づけば、もう片方が肩代わりして守ってくれる」という発想が成立する余地は、そもそもこの機器の設計のどこにもない。

これは、主幹ブレーカーと分岐ブレーカーの間で意図的に設計される保護協調——上位と下位で動作特性曲線をずらし、事故が起きた回路だけを選択的に遮断する仕組み——とはまったく別物だ。保護協調は、上位と下位という役割の異なる機器の間で、あらかじめ動作特性を計算して組み込む設計行為である。並列に並んだ同格の2台には、そうした役割分担も、事前の計算も存在しない。

6. もう一段深い理解——機器の並列運転には、本来「分担させる仕組み」が要る

電力設備の世界には、複数の機器を並列に接続して負荷を分担させる技術そのものは確かに存在する。変圧器の並列運転や、UPSのN+1冗長構成がその例だ。ただし、これらはどれも「ただ並べてつなぐ」だけでは成立しない。

変圧器の並列運転について、ダイヘンの技術解説は、定格電圧・極性・角変位の一致に加えて、百分率インピーダンス電圧やインピーダンスの抵抗・リアクタンス比の一致、定格容量比が3倍以内であることなど、複数の条件をすべて満たすことを求めている。UPSの並列冗長構成についても、UPSの並列冗長運転(N+1)ガイドで扱っているとおり、各台の出力を検知して電流を均等に分担させる制御そのものが、機器の内部に組み込まれている。負荷を分担させるという結果は、偶然そう分かれるのではなく、そう分かれるように設計された制御があって初めて成立する。

配線用遮断器には、こうした分担のための制御は存在しない。単純な保護用のスイッチであり、並列に接続したからといって、電流を均等に分けてくれる仕組みが後から生まれるわけではない。「並列にすれば分担できる」という発想は、変圧器やUPSの世界で成立している前提を、それを支える制御ごと配線用遮断器に持ち込んでしまった誤りだと言える。

7. 容量不足への正しい向き合い方

配線用遮断器の容量が不足したとき、選択肢は並列接続ではなく、次のいずれかになる。

  • 負荷電流を実測し直し、必要なATを再計算する——クランプメーターで実際の負荷電流を測り、内線規程の基準(負荷電流×1.25倍以上)に基づいて必要なATを求め直す。計算方法はブレーカーの容量計算ガイドにまとめている。
  • そのブレーカー自体をより大きな定格へ交換する——ATだけでなく、フレームサイズ(AF)・遮断容量(kA)まで含めて上位側と整合の取れた品種へ交換する。
  • 上位側(主幹)の容量そのものを見直す——分岐側の容量を上げると、上位の主幹ブレーカー・幹線側の許容電流が追いつかなくなるケースがある。分電盤へのブレーカー増設の実務手順で触れているとおり、主幹容量に対して負荷合計が超過する場合は、主幹ブレーカー自体の容量アップか分電盤の交換が必要になる。

いずれも、既設の1台を並列に増やすより手間がかかる。だが、その手間こそが、電流の分担という結果を偶然の抵抗値の差に委ねず、計算と選定という裏付けのある形に置き換える作業にほかならない。

ブレーカー・保護機器の選定は「電材サーチ」へ

「設備増設で既設ブレーカーの容量が足りなくなりそうだが、主幹側をどこまで見直せばよいか分からない」「銘板写真を送るので、上位側との整合を含めて後継品を選定してほしい」——こうしたご相談を、設備保全・電気設計のご担当者様からいただきます。

電材サーチでは、三菱電機・富士電機・テンパール工業をはじめとする各社の配線用遮断器を取り扱っており、既設の負荷状況と設置環境をお伝えいただければ、容量計算の考え方も含めたご相談から見積もりまで対応いたします。

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よくある質問

配線用遮断器を2台並列に接続すれば、容量不足を解消できますか?

できません。三菱電機FAのFAQは『遮断器の並列接続はしないでください』と明言しており、理由として並列回路では各相の分流電流が必ずしも均等にならないことを挙げています。同じ型式・同じ定格の製品を2台並べても、電流は2等分では流れず、どちらか一方に偏って流れ込みます。

なぜ同じ型式のブレーカーを並列にしても、電流は半分ずつ流れないのですか?

並列回路の電流分担は、各経路の抵抗の逆比で決まります(並列抵抗の合成則)。配線用遮断器の内部抵抗(接点の接触抵抗・内部配線の抵抗)は非常に小さい値であるため、個体ごとのわずかな製造ばらつきが、相対的には大きな電流の偏りとして現れます。三菱電機FAのFAQでも、並列接続時にA相が11Aと9Aのように不均等に分流する例が示されています。

電流が偏って多く流れた側のブレーカーは、すぐにトリップして守ってくれないのですか?

必ずしもそうはなりません。配線用遮断器の動作特性は、定格電流をわずかに超えた領域では時間をかけて動作する反限時特性を持ち、しかもこの特性自体が製造ばらつきにより最小-最大の帯として示されます(三菱電機FA FAQ)。偏って多く流れた側が『不動作寄り』の個体だった場合、定格を超えた電流を流し続けながらもすぐにはトリップしないことがあり、その間に内部の接点・端子部で温度上昇が進みます。

容量不足のブレーカーには、本来どう対処すればよいですか?

上位側(主幹)の容量見直し、またはそのブレーカー自体をより大きな定格電流・遮断容量(kA)の品種へ交換するのが基本です。負荷電流を実測したうえで必要なAT(トリップ電流)を再計算し、電線の許容電流・上位ブレーカーとの保護協調まで含めて選定し直す必要があります。詳しい計算式は[ブレーカーの容量計算ガイド](/guide/breaker-selection/)で解説しています。

分電盤に予備のブレーカーを増設して回路を分ける方法ならよいのですか?

はい、それは全く別の話です。既存の1回路を守る1台のブレーカーを『並列に増やして分担させる』ことと、新しい別回路のために『予備スペースへブレーカーを追加する』ことは、回路構成として別物です。後者は主幹容量・幹線サイズに余力があることを前提に成立する正規の増設手順で、[分電盤へのブレーカー増設の実務手順](/guide/breaker-addition-practical-procedure-guide/)で解説しています。

参考文献・出典

この内容は、第二種電気工事士ではこう問われる

並列回路の合成抵抗は『必ず一番小さい抵抗より小さくなる』という学科試験の定番論点は、実は配線用遮断器を並列に接続してはいけない理由の説明にもそのまま使えます。電流がなぜ均等に分かれないのかを式で理解しておくと、現場の危うい思いつきにも数字で反論できるようになります。

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