新築住宅の分電盤設計。電気工事士が「200Vエアコン用の回路と100V照明用の回路を、配線をまとめて中性線を共有する1本の分岐回路にしたい」と提案したところ、検査員から待ったがかかった。ただの配線の効率化のはずなのに、なぜ住宅の分岐回路ではこの種の共有が原則ダメなのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この禁止の理由を、基礎理論で学んだ計算と結びつけて説明できるようになっている。
分岐回路の土台になるのは、電技解釈第149条だ。第一種でもこの条文がそのまま出題されるので、まず表そのものを確認しておく。
分岐点から過電流遮断器までの距離は原則3m以下。ただし電線の許容電流が、幹線を保護する過電流遮断器の定格電流の55%以上なら距離の制限を受けず、35%以上なら8m以下まで延ばせる(第1項第一号)。
そして遮断器の定格 × 電線の太さ × コンセントの定格は、次の3点セットで組み合わせが決まっている(第2項第一号、149-1表ほか)。
| 分岐回路の種類(遮断器定格) | 軟銅線の太さ | 接続できるコンセント |
|---|---|---|
| 15A以下 | 直径1.6mm以上 | 15A以下 |
| 20A(配線用遮断器) | 直径1.6mm以上 | 20A以下 |
| 20A(配線用遮断器以外=ヒューズ等) | 直径2.0mm以上 | 20A以下 |
| 30A | 直径2.6mm以上 | 20A以上30A以下 |
| 40A | 断面積8mm²以上 | 30A以上40A以下 |
| 50A | 断面積14mm²以上 | 40A以上50A以下 |
コンセント側の欄も、30A以上の行では「◯A以上◯A以下」と下限まで付く。大きな遮断器で守られた回路に小さなコンセントを付けると、コンセントが焼けても遮断器が動かないという組合せができてしまうからだ。上限だけを見て済ませない。
第一種では、この土台にさらに3つの新しい規定が加わる。
電動機のみの分岐回路 ― 遮断器には2.5倍の余裕
電動機だけを接続する分岐回路には、通常の分岐回路とは違う特別ルールがある(同条2項二号)。
電線許容電流 ≧ 電動機定格電流の合計 × 1.25(合計50A超は1.1倍) 遮断器定格 ≦ 電線許容電流 × 2.5
電線側の倍率(1.25倍・1.1倍)は幹線設計と同じ考え方だが、遮断器側には2.5倍という、通常の分岐回路よりずっと大きな倍率が認められている。これは電動機の始動電流(定格の数倍)で遮断器が誤って動作しないようにするための余裕だ。電線許容電流37.5A(電動機定格合計30A×1.25)の回路なら、遮断器は37.5×2.5=93.75A以下。標準定格から選ぶなら75Aが上限で、100Aは93.75Aを超えるので選べない。
ここでもし、電動機のみの分岐回路だと気づかず、一般の分岐回路の考え方(電技解釈第149-1表の、遮断器定格と電線太さを1対1で組み合わせるルール)をそのまま当てはめてしまうとどうなるか。一般の分岐回路表は電動機の始動電流を想定しない組み合わせになっているため、始動電流が流れた瞬間に遮断器が誤って動作(いわゆる不要動作、始動のたびにブレーカーが落ちる状態)を起こしやすくなる。電動機だけの回路には、始動電流を織り込んだ専用の倍率(2.5倍)が用意されている、という区別ができていないと、正常な始動のたびに電源が落ちるという原因不明のトラブルに悩まされることになる。
50Aを超える1台の機器(電動機等を除く)への専用分岐 ― 1.3倍
もう1つの新規部分が、50Aを超える大型の機器1台だけに使う専用の分岐回路だ(同項三号)。条文は対象を「定格電流が50Aを超える1の電気使用機械器具(電動機等を除く)」としており、電動機はこの号の対象ではない(電動機だけの分岐回路は前の二号で2.5倍の側に入る)。この回路には他の負荷を接続してはならず、遮断器定格は機器定格の1.3倍以下(その値が標準定格に該当しないときは、その値の直近上位の標準定格以下)とされる。定格60Aの機器なら 60×1.3=78Aが上限の計算値になる。78Aちょうどの標準定格は無いので、条文(同号ロ)は上限を直近上位の標準定格と定めている。上限がそこに確定するだけで、78A以下に収まる75Aのような標準定格を選ぶことも当然できる。
この1.3倍という数字は、電動機のみの分岐回路の2.5倍と比べるとずいぶん小さい。これは対象が違うからだ。2.5倍は「始動電流が定格の数倍に達する電動機」を前提にした余裕だが、1.3倍が想定しているのは電動機を除いた大型機器で、始動時の突入がそこまで大きくない。しかも他の負荷と共有せず専用で使うぶん、多少の余裕(1.3倍)を見ておけば足りる、という設計思想の違いが倍率の差として表れている。「大きい機器だから余裕も比例して大きいはず」という直感で2.5倍と1.3倍を逆に覚えてしまうと、どちらの回路にどちらの倍率を使うべきかを取り違えることになる。
住宅の中性線分岐禁止 ― 基礎理論とつながる規定
そして3つ目が、住宅屋内での中性線を持つ分岐回路の扱いだ(同条3項)。住宅屋内に中性線を有する低圧分岐回路は、原則として施設してはならない。例外として認められるのは、専用配線であるか、欠相時に異常電圧が加わらない施設であるか、欠相時に自動遮断する装置がある場合に限られる。
たとえば、200Vのエアコン専用回路と100Vの照明回路をそれぞれ別々の2線式(中性線を共有しない)で配線するなら、この禁止規定には触れない。禁止されているのは、中性線1本を複数の負荷で共有し、その中性線が断線したときに異常電圧が生じ得る配線の仕方だ。「200Vと100Vを同時に使いたいから中性線を1本にまとめて配線をシンプルにする」という発想そのものが、断線時のリスクという代償を伴う、という理解が必要になる。
「原則禁止」の裏には、必ず理由がある
今日試せることとして、新築住宅の分電盤の配線図(あるいは施工写真)を見る機会があれば、中性線がどのように扱われているか――専用配線になっているか、欠相保護装置が入っているかを意識してみるといい。
電技解釈は無味乾燥な数字の羅列に見えるが、その1つ1つの背後には、実際に起きた事故や、理論的に予測される危険が存在する。分岐回路の3つの新規部分は、いずれも「始動時の大電流」「大型機器の専用性」「断線時の異常電圧」という、具体的な現象への対処として作られている。
二種で学んだ分岐回路の保護・分岐回路の設計の3m/8m/35%/55%というルールは、あらゆる分岐回路に共通する土台だった。一種で加わったこの3つの規定は、その土台の上に「相手が電動機のときはどうするか」「相手が50Aを超える大型機器1台だけのときはどうするか」「相手が住宅の中性線を含む配線のときはどうするか」という、負荷の性質に応じた枝分かれを足したものだと捉えると整理しやすい。共通の土台と、負荷ごとの例外――この2層構造で条文を読むと、単なる数字の暗記から抜け出せる。
冒頭の中性線共有がなぜ禁止されているのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。