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配電理論及び配線設計 ・ 5 / 8

需要率・負荷率・不等率 ― 変圧器容量を決める三点セット

読み終えると、こうなる

マンションや商業ビルの変圧器が、各戸の契約容量を単純に足した値よりずっと小さい容量で問題なく運用されている理由を、需要率と不等率という2つの数字で説明できるようになる

  • 需要率・負荷率・不等率という3つの言葉を、それぞれ何を分母・分子にした割合かで区別できる
  • 各負荷の設備容量と需要率から、合成最大需要電力=Σ(設備容量×需要率)÷不等率を計算できる
  • 不等率だけが1以上の値になる理由を、各負荷のピーク時刻がずれることと結びつけて説明できる
考えてみよう

30戸のマンションがある。各戸の分電盤の主幹は40Aだから、単純に足せば建物全体で1200A分の設備が要るはずだ。ところが実際の受電設備と幹線は、その半分もない容量で設計されており、20年間、一度も容量不足を起こしたことがない。

残りの600A分は、いったいどこへ消えたのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この「消えた600A」の行き先を、2つの割合の掛け算・割り算として自分で計算できるようになっている。

二種電気工事士では、需要率という言葉の定義――「最大需要電力÷設備容量」までを学んだ。一種では、これに負荷率不等率を加えた三点セットで、実際の受電設備・変圧器の容量を計算する。

3つの割合、それぞれ何を測っているか

  • 需要率(%) = 最大需要電力 ÷ 設備容量 × 100 ―― 「契約(設備)のうち、実際どれだけ使うか」。常に100%以下
  • 負荷率(%) = 平均需要電力 ÷ 最大需要電力 × 100 ―― 「ピークに対して、平均的にはどれだけ使っているか」。期間を添えて日負荷率・年負荷率と呼ぶ。これも100%以下
  • 不等率 = 各負荷の最大需要電力の合計 ÷ 合成最大需要電力 ―― 「みんなのピークが本当に同時に来るか」。これだけは1以上の値になる

工場の1日の負荷曲線から、3つの率を実際に計算する

定義を並べるだけでは実感が湧きにくいので、1つの工場を例に、朝から晩までの電気の使われ方を追いながら3つの率を順番に求めてみる。

この工場の設備容量(契約している設備の合計)は200kW。電力量計を30分ごとに読み取ったところ、1日でもっとも電力を使った時間帯(最大需要電力)は120kWだった。まず需要率を求めると、需要率=120kW÷200kW×100=60%。契約している設備の6割しか、実際には同時に使われていないことになる。

次に、1日の電力量計の合計から平均需要電力を求める。この日の使用電力量が1920kWhだったとすると、24時間で割って平均需要電力=1920kWh÷24h=80kW。負荷率=80kW÷120kW×100≒66.7%。ピーク(120kW)に対して、1日ならすと平均66.7%程度の使われ方だった、ということが分かる。

ここまでで、需要率(契約のうちどれだけ使うか)と負荷率(ピークに対して平均どれだけ使うか)という、性格の違う2つの割合を、同じ1つの工場のデータから求められた。この先に不等率を組み合わせると、複数の工場・複数の設備をまとめたときに必要な変圧器容量まで計算できるようになる。

各戸の需要ピークはずれている 合成の山 個別の山の合計より、合成した山のほうが低い 各負荷のピークが同時刻に来ないため、合成した最大値は個別の合計より小さくなる
需要率と負荷率は「割り引かれる」割合だが、不等率だけは向きが逆になる。**各負荷のピークが同時刻に来ないという『ずれ』を分母に置くことで、不等率は必ず1以上の値になる。**そして最終的にこの3つを組み合わせた式で、実際に必要な設備容量が決まる。

合成最大需要電力 = Σ(設備容量 × 需要率) ÷ 不等率

たとえば設備容量A=100kW(需要率0.6)、B=80kW(需要率0.5)、C=60kW(需要率0.7)の3つの負荷があるとする。それぞれの最大需要電力はA=60kW、B=40kW、C=42kWで、合計142kW。ここに不等率1.2を反映させると、合成最大需要電力=142÷1.2≒118.3kW。単純合計の142kWより、不等率で割った分だけ小さくなる。

この合成最大需要電力が、変圧器容量を選ぶときの基礎になる。ただし、ここで一段だけ手順が要る。

合成最大需要電力は**kW(有効電力)**、変圧器の標準容量は**kVA(皮相電力)**だ。**118.3kWという数字を、そのままkVAの標準容量表に当てはめてはいけない。**両者は力率で結ばれた別の量なので、

変圧器容量[kVA] = 合成最大需要電力[kW] ÷ 力率

でkVAに直してから、その直近上位の標準容量を選ぶ。力率0.8なら118.3÷0.8≒147.9kVAで、直近上位は150kVA。力率0.9なら131.4kVAで、これも150kVA。力率が示されなければ、変圧器容量は決まらない。

118.3kWをそのままkVAとみなして100kVAの変圧器を選ぶ、といった飛ばし方をすると、力率の低い設備では実際に容量が足りなくなる。力率改善で見るとおり、有効電力Pと皮相電力Sは直角三角形の一辺と斜辺の関係で、決して同じ数直線の上には乗らない。

もしここで不等率を掛け算に使ってしまうと(142×1.2=170.4kW)、実際に必要な容量よりも大きい値が出てしまい、本来より一段大きい変圧器を選ぶことになる。逆に不等率の存在を忘れて142kWのまま(割りもせず)容量を決めてしまうと、こちらも本来より大きめの見積もりになる。不等率は「ピークがずれる分だけ得をする」割引率なので、必ず割り算で使う――この1点さえ外さなければ、方向を間違えることはない。

前のトピックで見た幹線設計の需要率修正(電技解釈第148条1項三号)も、この合成最大需要電力の考え方が土台になっている。「需要率が明らかなら幹線電流を修正してよい」という規定は、ここで計算した需要率・不等率を反映した実際の使用実態を、幹線の太さにそのまま反映させてよい、という意味だった。理論(この計算)と法令(前トピックの条文)は、同じ1つの考え方の表と裏の関係にある。

マンションの「消えた600A」の正体

冒頭のマンションの例に戻る。各戸の主幹40A×30戸=1200Aという数字は、全戸が同時に主幹いっぱいの40Aを使うという、現実にはまず起きない前提の上に立っている。実際には各戸の需要率(そもそも主幹いっぱい使わない)と、不等率(各戸の使用のピークが同時刻に来ない)の2つが効いて、実際に必要な容量はずっと小さくなる。

今日試せることとして、集合住宅や商業施設の電気室・キュービクルの銘板に書かれた変圧器容量を見かけたら、建物の規模から考えて「意外と小さいかもしれない」と想像してみるといい。それが手抜きではなく、需要率と不等率という2つの計算にもとづいた正当な設計だと分かる。

この三点セットの計算は、次に見る変圧器の効率計算とも直結する。実際に必要な容量を過不足なく見積もることが、無駄な設備投資も、容量不足による事故も、両方避ける道になる。

冒頭の消えた600Aの行き先、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 不等率を、需要率・負荷率と同じように100%以下の割合(%)として扱わせる

    なぜ引っかかる需要率・負荷率はどちらも100%以下の割合として定義されるため、同じ並びに出てくる不等率も同じように100%以下だと思い込みやすいが、不等率は分母と分子が逆(各負荷の最大値の合計÷合成の最大値)で、必ず1以上(100%以上)の倍数になる

    見破り方不等率だけ単位が『%』ではなく『倍』に近い数値(1.1、1.2など)で示されることが多いと意識する。3つの指標のうち、1を下回らないのは不等率だけだと覚えておく

  2. 合成最大需要電力の式で、不等率を掛け算してしまう(割り算すべきところを)

    なぜ引っかかるΣ(設備容量×需要率)まで正しく計算できても、最後に不等率を掛けるか割るかで迷い、掛け算にしてしまうと数値が大きくなりすぎる方向に外れる

    見破り方不等率は『バラバラのピークをならして得をする割引率』だとイメージする。得をする(必要な設備が小さくて済む)なら、割り算で数値を小さくする方向に使うはずだと考えれば、割り算だと判断できる

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 需要率(%)=最大需要電力÷設備容量×100。常に100%以下
  2. 負荷率(%)=平均需要電力÷最大需要電力×100。期間を添えて日負荷率・年負荷率などと呼ぶ
  3. 不等率=各負荷の最大需要電力の合計÷合成最大需要電力。各負荷のピーク時刻がずれるため常に1以上になる(3つの中で唯一%でなく倍数で、1以上になるのが定番の引っかけどころ)
  4. 合成最大需要電力=Σ(設備容量×需要率)÷不等率。この値が変圧器容量選定の基礎になる
  5. 電技解釈第148条1項三号は、需要率が明らかな場合に幹線電流を修正できることを認めており、需要率の考え方は幹線設計にも直結する
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