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配電理論及び配線設計 ・ 2 / 8

配電方式ごとの電線量比較 ― なぜ幹は三相で、家庭は単相3線式か

読み終えると、こうなる

送電会社が幹線を三相で組み、家庭への引込みだけ単相3線式にしている使い分けを、好みではなくコストの結果として説明できるようになる

  • 同一条件(距離・電力・損失)での配電方式ごとの電線量比較の前提条件を、数値だけでなく言葉で説明できる
  • 単相2線式を基準(100%)にしたとき、三相3線式・単相3線式・三相4線式の電線量がどう違うかを比較できる
  • 電線量が少ない方式ほど電流が方式によってどう変わるかを、P=√3VIcosθの関係から説明できる
考えてみよう

電力会社の設計者に「同じ電力を、同じ距離、同じ許容損失で送るとして、配電方式を選べ」と言われたら、まよわず三相3線式を選ぶ。まったく同じ仕事をするはずなのに、単相でやるか三相でやるかで、使う電線の総量(コスト)にはっきりとした差がつくからだ。

その差はどれくらいで、何が理由なのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、電力会社が幹線を三相で組み、家庭への引込みを単相3線式にしている理由を、電線量という視点から説明できるようになっている。

二種電気工事士の配電方式では、単相2線式・単相3線式・三相3線式それぞれの電圧・電流の関係式までを学んだ。ここでは視点を変えて、「同じ仕事をするなら、どの方式がいちばん電線を使わずに済むか」を比べる。

電圧降下は方式によってはっきり違う

電線1条の抵抗Rと線電流Iがまったく同じという条件で並べると、電圧降下は次の順で大きい。

単相2線式(2IR) > 三相3線式(√3IR) > 単相3線式・平衡時(IR)

これは二種で学んだ各方式の式に、同じRとIを当てはめれば出てくる関係だ。

係数の2・√3・1をそのまま比べてよいのは、**RとIが同じとき**に限られる。**「同じ電力を、同じ線間電圧で送る」に前提を変えると、比の値は変わる。**同じ電力なら三相の線電流は単相の1/√3になるので、三相3線式の電圧降下は √3×(I/√3)×R = **IR** となり、単相2線式2IRとの比は2:1.73ではなく**2:1**になる。

順位そのもの(単相2線式がもっとも大きい)はどちらの前提でも変わらないが、比の数値だけは前提とセットで覚える。「同じ電力なら三相の電圧降下は単相の√3/2倍」と数値まで覚え込むと、電力一定を明示した計算問題で係数を取り違える。

電線量の比較 ― 前提条件つきの参考値

もう1つの視点が、所要電線量(必要な電線の総量、つまりコスト)の比較だ。教科書で広く示される代表値は、単相2線式を100%としたとき、次のようになる。

  • 単相2線式: 100%(基準)
  • 三相3線式: 75%
  • 単相3線式(平衡): 37.5%
  • 三相4線式: 33.3%
所要電線量の比較(同一条件での代表値) 単相2線式 100% 三相3線式 75% 単相3線式 37.5% 三相4線式 33.3% 単相2線式を100%としたときの相対値(前提条件により変わる参考値)
この数値は、法令のように固定された値ではない。**同一の送電距離・電力・損失という前提に加え、電圧を対地電圧基準でとるか線間電圧基準でとるか、中性線を電圧線と同じ太さにするかどうかといった、細かい前提条件の置き方によって数値そのものが変わる。**教科書によって多少違う値が載っていることがあるのは、この前提の違いが原因だ。数値を丸暗記するのではなく、「どんな前提でこの数字になっているか」を説明できることのほうが大切になる。

なぜ電線量に差がつくのか ― 電流の違いから見る

電線量の差は、突き詰めれば「同じ電力を送るのに必要な電流」の違いから来ている。三相の電流は、

I = P / (√3・V・cosθ)

単相のI=P/(V・cosθ)と比べると、分母に√3が加わる分だけ電流は小さくて済む(約1/√3倍)。電流が小さくなれば、同じ電力損失の範囲に収めるために必要な電線の断面積も小さくてよく、結果として電線量も減る。単相3線式が特に少なくて済むのは、中性線を挟んで2系統分の電力を実質1.5本分の電線でまかなえる構造になっているためだ。

単相2線式と三相3線式の75%を、実際に導いてみる

電線量(重量)は、電線の本数nと断面積Aの積に比例する(長さと材質は方式によらず共通なので考えなくてよい)。断面積Aは、許容される電力損失PLの範囲で決まり、A=n・I²・ρl/PL という関係になる(ρ:抵抗率、l:こう長)。したがって電線量は、n²・I²に比例すると考えてよい。

単相2線式(n=2)は、電流I=P/(Vcosθ)なので、n²I²=4×{P/(Vcosθ)}²。三相3線式(n=3)は、電流I=P/(√3Vcosθ)なので、n²I²=9×{P/(√3Vcosθ)}²=9×P²/(3V²cos²θ)=3×P²/(V²cos²θ)。

この2つの比を取ると、三相3線式÷単相2線式=3÷4=0.75。単相2線式を100%としたときの三相3線式の電線量が75%になる、という代表値は、n²I²という関係式から実際にこうして導ける。

単相3線式・三相4線式についても同じ考え方(n²I²の比較)を土台にしているが、こちらは中性線の電流がゼロに近いという特殊事情があるため、中性線の太さをどう決めるか(電圧線と同じ太さにするのか、細くするのか)という前提の置き方によって、比較値がいくらか変わってくる。教科書に37.5%・33.3%という代表値が載っているのは、中性線を電圧線と同じ太さに揃える、という一定の前提を置いた場合の値であり、この前提が変われば数値も変わり得る、という留保がつく。

もう1つの物差し — 電線1線当たりの供給電力

電線量の比(100%・75%・37.5%)は「同じ電力を運ぶのに、電線がどれだけ要るか」を見る指標だった。試験にはもう1つ、向きが逆の指標が出る。電線1線当たり、どれだけの電力を供給できるかだ。

計算は素直で、その方式が運ぶ全電力を、使っている電線の本数で割るだけになる。

  • 単相2線式:全電力は VIVI、電線は2本。1線当たり VI/2VI/2
  • 単相3線式:全電力は 2VI2VIVVは電圧線と中性線の間の電圧)、電線は3本。1線当たり 2VI/32VI/3
単相3線式は単相2線式の何倍か。

2VI/3VI/2=23×21=43\frac{2VI/3}{VI/2} = \frac{2}{3} \times \frac{2}{1} = \frac{4}{3}

4/3倍(約1.33倍)。 電線を1本増やしただけで、1本あたりの働きも増えている——単相3線式が住宅の標準になった理由が、この数字に出ている。

三相3線式も同じ手順で出せる。全電力は 3VI\sqrt{3}VI、電線は3本なので、1線当たり 3VI/3=VI/3\sqrt{3}VI/3 = VI/\sqrt{3}。単相2線式の VI/2VI/2 と比べると 2/31.152/\sqrt{3} \approx 1.15 倍になる。

2つの指標は**同じことを裏表から見ている**ので、混同しやすい。
  • 所要電線量の比 — 分母が「運ぶ電力」。少ないほど良い(37.5%が最良)
  • 1線当たりの供給電力 — 分母が「電線の本数」。大きいほど良い

設問がどちらを聞いているかは、「電線1線当たり」という言葉があるかどうかで見分ける。この一言があれば、電線量比の数字(75%・37.5%)を持ち出しても答えにならない。

「同じ仕事」を、いちばん少ない電線で運ぶ

電力会社が長い幹線区間に三相を使い、家庭への短い引込み区間に単相3線式を使っているのは、それぞれの区間でコストの有利な方式を選んだ結果だ。今日試せることとして、街を歩いて電柱の上の電線の本数を数えてみるといい。幹線区間は3本(三相3線式)、住宅への引込みは3本(単相3線式)と、同じ本数でもまったく違う理由でその本数になっている。

配電方式を選ぶという視点は、電気工事士の仕事の中でも「与えられた設計に従う」段階から一歩進んで、「なぜこの設計になっているか」を理解する段階に踏み込むものだ。n²I²に比例するという1本の関係式さえ押さえておけば、教科書の数値を丸暗記しなくても、方式が変われば電線量がどちらの方向に動くかを自分で見積もれるようになる。この視点があると、幹線設計や需要率の計算といった次のトピックの理解も速くなる。

冒頭の「まよわず三相を選ぶ」理由、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。同じ計算の道具立て(n²I²の比較)は、送電方式に限らず、電線を複数本並列に張るか、太い1本にまとめるかといった、幹線設計の選択肢を比べるときにも応用できる考え方だ。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 電線量の比較値(37.5%・75%・33.3%)を、前提条件を確認せず絶対的な数値として覚えさせる

    なぜ引っかかる教科書に載っている代表値をそのまま暗記すると、送電距離・電圧の取り方(線間電圧か対地電圧か)・中性線の太さの扱いなど、前提条件が変わると数値も変わることを見落とし、少し条件を変えた出題に対応できなくなる

    見破り方この比較値には必ず『同一条件』という前提がついていることを意識する。出題文で電圧の基準や中性線の太さの扱いが明示されていないかを先に確認し、教科書の代表値をそのまま当てはめてよいかを判断する

  2. 電線量が少ない方式ほど、電圧降下も一律に小さくなると錯覚させる

    なぜ引っかかる電線量の比較(単相3線式が最も少ない)と、電圧降下の比較(単相3線式が最も小さい)がたまたま同じ順番になるため、両者を同じ理由で説明できると思い込みやすいが、電線量はコスト(重量)の指標、電圧降下は電圧の下がり方の指標で、別々の計算根拠を持つ

    見破り方電線量の比較は『同じ仕事をするのに使う金属の量』、電圧降下の比較は『同じ仕事をするときの電圧の下がり方』と、聞かれている量が違うことを式の単位(重量か電圧か)で区別する

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 同一条件(送電距離・送電電力・電力損失・電圧が同じ)での比較が配電方式選びの定番の視点
  2. 電圧降下は単相2線式2IR>三相3線式√3IR>単相3線式(平衡)IRの順に大きい。この係数比較が成り立つ前提は『電線1条の抵抗Rと線電流Iが同じ』ときで、『同じ電力・同じ電圧』のときは三相の線電流が1/√3になるため単相2線式との比は2:√3ではなく2:1になる
  3. 電線重量(所要電線量)の代表的な比較値: 単相2線式を100%とすると三相3線式75%・単相3線式37.5%・三相4線式33.3%
  4. この比較値は、対地電圧を基準にとり中性線を電圧線と同じ太さにする、といった前提条件のもとで成り立つ参考値であり、前提が変われば数値も変わる
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