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一般用電気工作物等及び自家用電気工作物の保安に関する法令 ・ 6 / 12

保安規程と電気主任技術者 — 設置者の自主保安

読み終えると、こうなる

現場で自分の作業を止める権限が、電気工事士とは別の資格者にあると見抜けるようになる。

  • 電気主任技術者に作業を止められたとき、それが免状の優劣ではなく役割の違いだと切り分けられる
  • 保安規程の届出が『認可』ではなく『届出』にとどまると知ったうえで、設置者が自ら保安体制を作る仕組みだと位置づけられる
  • 太陽光30kWの小規模事業用電気工作物に、保安規程の届出や主任技術者の選任義務がないと判断できる
考えてみよう

第一種電気工事士の免状を持ち、法令上その工事に従事する資格がある作業者が、現場で作業を始めようとしたところ、電気主任技術者から「今は止めてほしい」と言われた。免状を持っているのに、なぜその指示に従わなければならないのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、電気工事士とは別に置かれている「保安を監督する人」の正体を説明できるようになっている。

これまでのトピックで見てきた電気工事士の資格は、あくまで「工事という作業をしてよいかどうか」を定めるものだった。だが電気事業法は、事業用電気工作物の設置者側にも、別の角度から保安を確保する義務を課している。それが保安規程と主任技術者だ。

事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く)の設置者は、保安を一体的に確保する組織ごとに保安規程を定め、使用開始「前」に主務大臣(経済産業大臣)に届け出なければならない(電気事業法42条1項)。変更したときも遅滞なく届け出る(2項)。ここで重要なのは、これが「認可」ではなく「届出」だということだ。 国が保安規程の中身を事前に審査して許可を与える制度ではなく、設置者が自ら保安体制を作り、その内容を国に知らせる仕組みになっている。ただし主務大臣は、届け出られた保安規程が不十分だと判断すれば変更を命令できる(3項)し、設置者と従業者はその保安規程を守る義務を負う(4項)。

保安規程に定める事項は、業務管理者の職務・組織、保安教育、巡視・点検・検査、運転・操作、長期停止時の保全、災害等非常時の措置、保安についての記録など多岐にわたる(施行規則50条3項)。

設置者の義務の三本柱 技術基準 適合維持 (39条) 保安規程 届出(42条) 主任技術者 選任(43条) 設置者による自主保安体制 国が事前に細部を審査する認可ではなく、届出のみで足りる 設置者自身が保安体制を作り、守り続ける責任を負う 設置者の義務の三本柱(自作の概念図。電気事業法39条・42条・43条にもとづく)

もう1つの柱が主任技術者だ。設置者は、主任技術者免状の交付を受けている者から主任技術者を選任しなければならない(43条1項)。この主任技術者免状は経済産業大臣系の制度で、都道府県知事が交付する電気工事士免状とは別の免状だ。選任・解任は遅滞なく届け出る(3項)。主任技術者は保安の監督の職務を誠実に行う義務を負い(4項)、工事・維持・運用に従事する者は主任技術者の指示に従う義務がある(5項)。

ここで見方を反転させたい。電気工事士は「工事という作業をしてよい人」を定める資格であり、主任技術者は「保安を監督する人」を定める資格だ。**同じ現場にいても役割が違う別の資格であって、優劣の関係ではない。** それでも、工事・維持・運用に従事する者は主任技術者の指示に従わなければならない。作業をする権限を持つ人と、その作業全体を止める権限を持つ人が分かれている――これが自主保安体制の骨格だ。そして保安規程が「届出」にとどまっているのも同じ発想の延長線上にある。国が細部まで事前に審査するのではなく、現場を最もよく知る設置者・主任技術者に保安の運用を委ね、事後に変更命令等で関与する、という設計になっている。

なお、自家用電気工作物(小規模事業用を除く)では、主務大臣の許可を受ければ、免状を持たない者の選任(許可主任技術者)も可能とされている(43条2項)が、その許可の細目や外部委託の制度についてはここでは扱わない。押さえておくべきは、設置者の義務が技術基準適合維持(39条)・保安規程(42条)・主任技術者選任(43条)の三本柱だという骨格そのものだ。

現場に入る前に「誰の指示系統の中にいるか」が分かるようになる

この構造を知っていると、自家用電気工作物の現場に入るとき、自分(電気工事士)と主任技術者の役割の違いを最初から意識できるようになる。作業内容だけでなく、誰の保安監督のもとで働いているのかを確認する習慣がつく。

今日試せることとして、取引先の工場やビルの管理体制を聞く機会があれば、「保安規程」や「電気主任技術者」という言葉が出てくるかどうかに耳を傾けてみるといい。事業用電気工作物を持つ施設なら、必ずどちらも存在しているはずだ。

この二重の体制(資格による作業の許可制と、設置者による自主保安)がある背景には、工事の瞬間だけを取り締まっても保安は守れない、という考え方がある。工事が終わった後の日々の運用・点検・非常時の対応まで含めて、誰かが継続的に見ている必要があるからこそ、保安規程と主任技術者という仕組みが用意されている。

独立して自家用電気工作物の工事を請け負うようになると、現場ごとの主任技術者と円滑に連携できるかどうかが、仕事のしやすさに直結してくる。保安規程と主任技術者という概念を理解していることは、その現場での信頼の土台になる。

電気工事士免状を持つ作業者が、なぜ主任技術者の指示に従わなければならなかったのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 保安規程の届出を、国の承認を得る「認可」だと思わせる

    なぜ引っかかる重要な保安体制の書類だと聞くと、国が内容を審査して許可する手続きだと連想しやすい

    見破り方条文の言葉が『届出』であることを確認する。国が事前に細部を審査して許可を出す認可制ではなく、設置者が自ら定めて知らせる届出制である

  2. 電気工事士免状を持っていれば、保安の監督権限も併せ持つと思わせる

    なぜ引っかかる電気工事士は現場で作業そのものを行う資格者のため、保安全体を監督する権限も同じ人が持っていると錯覚しやすい

    見破り方電気工事士(作業を行う資格・都道府県知事交付)と主任技術者(保安を監督する資格・経済産業大臣系の免状)は別の資格・別の役割だと切り分ける。作業従事者は主任技術者の指示に従う義務がある

  3. 小規模事業用電気工作物にも保安規程・主任技術者の義務があると思わせる

    なぜ引っかかる『事業用電気工作物』という同じ枠でくくられるため、小規模事業用も保安規程・主任技術者の対象だと誤解しやすい

    見破り方保安規程(42条1項)・主任技術者(43条1項)の義務は、事業用電気工作物のうち小規模事業用電気工作物を除いたものに課される、と条文のかっこ書を確認する

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 事業用電気工作物(小規模事業用を除く)の設置者は保安規程を定め、使用開始前に主務大臣(経済産業大臣)に届け出る(電気事業法42条1項)。これは認可ではなく届出である
  2. 保安規程には、業務管理者の職務・組織、保安教育、巡視・点検・検査、運転・操作、長期停止時の保全、災害等非常時の措置、保安の記録などを定める(施行規則50条3項)
  3. 設置者は主任技術者免状の交付を受けている者から主任技術者を選任しなければならない(43条1項)。免状の交付は経済産業大臣系の制度で、電気工事士免状(都道府県知事交付)とは別系統
  4. 主任技術者は保安の監督の職務を誠実に行う義務があり(43条4項)、工事・維持・運用に従事する者は主任技術者の指示に従う義務がある(43条5項)
  5. 設置者の義務の三本柱は、技術基準適合維持(39条)・保安規程(42条)・主任技術者選任(43条)
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