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一般用電気工作物等及び自家用電気工作物の保安に関する法令 ・ 8 / 12

電気工事業法 — 登録・主任電気工事士・器具・帳簿・標識

読み終えると、こうなる

同じ電気工事業法の中で、主任電気工事士になれる時期に3年の差がつく理由を言い当てられるようになる。

  • 自家用電気工作物のみを扱う業者には、登録ではなく通知で足りると判断できる
  • 第二種電気工事士の実務経験2年では、主任電気工事士にまだなれないと見抜ける
  • 営業所の帳簿が、記載の日から5年間保存する義務を負っていると挙げられる
考えてみよう

第一種電気工事士は、免状を取得したその日から、電気工事業者の営業所で「主任電気工事士」になれる。ところが第二種電気工事士は、免状を取得しても3年間はその立場になれない。同じ電気工事業法の中の話なのに、なぜこの差がつくのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この3年の差の正体を説明できるようになっている。

ここまでは電気工事士個人の資格を見てきたが、電気工事業法は「電気工事業を営む会社・個人事業主」側に課される義務を定めている。まず、電気工事業を営もうとする者は登録が必要になる(電気工事業法3条1項)。営業所が2以上の都道府県にまたがる場合は経済産業大臣、1都道府県内にとどまる場合は都道府県知事の登録を受ける。登録の有効期間は5年で(3条2項)、その後も事業を続けるには更新の登録が必要になる(3条3項)。ただし、自家用電気工作物のみの工事を行う業者は、登録ではなく「通知」で足りる(通知電気工事業者。事業開始の10日前までに、大臣または知事に通知する。17条の2)。

もうひとつ、登録の例外になるのが建設業者だ。建設業法の許可を受けた建設業者には、電気工事業法の登録に係る規定(第2章)は適用されない(34条1項)。すでに建設業の許可という別の入口の審査を通っているからだ。ただし手続きがゼロになるわけではなく、電気工事業を開始したときは遅滞なく経済産業大臣または都道府県知事に届け出る必要があり(34条4項)、届出をした建設業者は登録電気工事業者と「みなされる」(みなし登録電気工事業者。34条2項)。自家用電気工事のみを営む建設業者なら、届出ではなく通知で、通知電気工事業者とみなされる(みなし通知電気工事業者。34条3項・5項)。みなされた後は、主任電気工事士の設置をはじめ、この後見ていく業者としての義務が登録業者と同じように課される。入口の手続き(登録/通知/届出)が違うだけで、営み始めた後の義務の中身は変わらない、と整理しておくとよい。

電気工事業を営むときの4つの備え 登録/通知(3条・17条の2) 2都道府県以上の営業所→経済産業大臣、1都道府県内→知事 自家用のみの業者は通知でよい。登録の有効期間は5年 主任電気工事士(19条) ①第一種電気工事士 → 免状取得直後からなれる ②第二種電気工事士 → 免状取得後3年以上の実務経験が必要 器具の備付け(24条) 一般用のみの営業所→絶縁抵抗計・接地抵抗計・回路計の3点 自家用工事を行う営業所→これに加え高圧検電器等が必要 帳簿・標識(25条・26条) 帳簿は記載の日から5年間保存 標識は営業所・施工場所ごとに掲示 電気工事業を営むときの4つの備え(自作の概念図。電気工事業法3条・19条・24条〜26条にもとづく)

登録電気工事業者は、一般用電気工事の業務を行う営業所ごとに主任電気工事士を置かなければならない(19条1項)。なれるのは①第一種電気工事士、または②第二種電気工事士免状取得後3年以上の実務経験を有する者のいずれかだ。主任電気工事士が欠けた場合は、知った日から2週間以内に選任しなければならない(19条3項)。また、業者本人(法人ならその役員のいずれか)がこの要件を満たす電気工事士で、自ら主としてその業務に従事する営業所については、別に主任電気工事士を置く必要はない(19条2項)。一人親方の電気工事店が成り立つのは、この規定があるからだ。主任電気工事士は一般用電気工事の作業の管理の職務を誠実に行い(20条1項)、作業に従事する者はその指示に従う義務を負う(20条2項)。なお自家用電気工事のみを行う営業所には、この主任電気工事士の設置義務はない。

ここで冒頭の疑問に戻る。第一種と第二種でこの3年の差がつくのは、優遇・冷遇の話ではない。**第一種電気工事士免状は、交付の要件そのものにすでに実務経験3年以上が組み込まれている。** つまり第一種の免状を持っているという事実自体が、すでに3年以上の実務経験を証明している。これに対して第二種は試験合格のみで免状が交付されるため、電気工事業法の側で改めて3年以上の実務経験を主任電気工事士の要件として求めている。**免状の交付要件と、その後の資格の使い道が一貫してつながっている**、と読めば、この3年の差は不公平な優遇ではなく、同じものさし(実務経験3年以上)を一貫して当てはめた結果だと分かる。

営業所には器具の備付け義務もある(24条)。一般用電気工事のみの営業所は絶縁抵抗計接地抵抗計回路計の3点で足りるが、自家用電気工事の業務を行う営業所は、これに加えて低圧検電器・高圧検電器・継電器試験装置・絶縁耐力試験装置等も必要になる(施行規則11条。継電器試験装置と絶縁耐力試験装置は必要なときに使用し得る措置=レンタル等でも可)。

さらに、営業所ごとに帳簿を備え、電気工事ごとに注文者の氏名・住所、電気工事の種類・施工場所、施工年月日、主任電気工事士等及び作業者の氏名、配線図、検査結果を記載し、記載の日から5年間保存する義務がある(26条、施行規則13条)。加えて、営業所及び電気工事の施工場所ごとに、見やすい場所に標識を掲示する義務もある(25条)。標識には氏名・名称、営業所の名称と電気工事の種類、登録年月日・登録番号、主任電気工事士等の氏名を記載する(施行規則12条)。

似た名前の4本の法律は、それぞれ何を規制して誰を守るのか — 目的条文を並べて読む

この科目には「電気」で始まる法律が4本も出てくる。電気事業法、電気工事士法、電気工事業法、電気用品安全法。名前が似ているうえ、どれも最後は保安・安全の話に行き着くため、試験では「この目的を定めているのはどの法律か」という形で、4本の第1条を入れ替える出題が仕掛けられる。ここで一度、目的条文そのものを横に並べて読んでおきたい。

電気工事士法 第1条 この法律は、電気工事の作業に従事する者の資格及び義務を定め、もつて電気工事の欠陥による災害の発生の防止に寄与することを目的とする。

電気工事業法(電気工事業の業務の適正化に関する法律)第1条 この法律は、電気工事業を営む者の登録等及びその業務の規制を行うことにより、その業務の適正な実施を確保し、もつて一般用電気工作物等及び自家用電気工作物の保安の確保に資することを目的とする。

電気事業法 第1条 この法律は、電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによつて、電気の使用者の利益を保護し、及び電気事業の健全な発達を図るとともに、電気工作物の工事、維持及び運用を規制することによつて、公共の安全を確保し、及び環境の保全を図ることを目的とする。

電気用品安全法 第1条 この法律は、電気用品の製造、販売等を規制するとともに、電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進することにより、電気用品による危険及び障害の発生を防止することを目的とする。

並べてみると、4本が同じ「電気の安全」という山を、別々の登り口から登っていることが見えてくる。

法律規制しているもの目的の結び
電気工事士法工事の作業に従事する(資格・義務)電気工事の欠陥による災害の発生の防止
電気工事業法電気工事業を営む業者(登録・業務)業務の適正な実施→電気工作物の保安の確保
電気事業法電気事業の運営と電気工作物の工事・維持・運用使用者の利益保護・事業の健全な発達、公共の安全・環境の保全
電気用品安全法電気用品という製品(製造・販売)電気用品による危険及び障害の発生の防止
見分けの軸は、結びの美辞ではなく**「何を規制しているか」という主語の側**にある。人(資格)なら電気工事士法、業者(登録・業務)なら電気工事業法、事業と設備なら電気事業法、製品なら電気用品安全法。同じ現場を思い浮かべれば、工事をする職人の腕前は士法が、職人を雇う会社の商売の仕方は業法が、出来上がった設備とそれを動かす事業は事業法が、現場に持ち込まれるケーブルや器具そのものは用品法が、それぞれ受け持っている。**4本で1人の職人・1つの現場を四方から囲んでいる**構図だ。

細部を読み比べると、それぞれの法律の性格も浮かび上がる。電気事業法だけは目的が2階建てになっており、「使用者の利益の保護・事業の健全な発達」という産業政策の顔と、「公共の安全の確保・環境の保全」という保安規制の顔を併せ持つ。電気工事業法の条文は「業務の規制を行うことにより……もつて保安の確保に資する」という構造で、登録や帳簿はあくまで手段であり、行き先は保安だと自分で宣言している。電気工事士法の目的は「災害の発生の防止」の一言で、このトピックの冒頭で見た主任電気工事士の3年差も、突き詰めればこの目的——欠陥工事を出さないこと——へ実務経験というものさしを当てた結果だった。目的条文は暗記項目である前に、各法律の設計図の1行目になっている。

独立・開業したときに、最初に確認すべき4つの条文になる

この構造を知っていると、将来自分で電気工事業を営むことになったとき、何から準備すればよいかの見取り図がすでに頭の中にある状態でスタートできる。登録(または通知)、主任電気工事士の選任、器具の備付け、帳簿・標識の掲示という4つの備えを、最初のチェックリストとして持てるようになる。

今日試せることとして、街の電気工事店の入口や事務所に掲示されている標識を見かけたら、登録番号や電気工事の種類が書かれているかを確認してみるといい。

この一連の義務が細かく定められている背景には、電気工事は施工した後で不具合が表面化しにくく、後から誰が何を担当したかを追跡できる仕組みが必要だという事情がある。帳簿の5年保存や標識の掲示は、そのための最低限の記録と説明責任の仕組みだ。

第一種電気工事士の資格は、この電気工事業法の中でも「すぐに主任電気工事士になれる」という即戦力としての価値を持っている。将来独立して電気工事業を営むことを考えるなら、この差は具体的な準備期間の差として跳ね返ってくる。

第一種は免状取得直後から主任電気工事士になれるのに、第二種はなぜ3年待たされるのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 自家用電気工作物のみを扱う業者にも『登録』が必要だと思わせる

    なぜ引っかかる電気工事業を営むには登録が必要、と一律に習うと、自家用のみの業者にも同じ登録義務があると思い込みやすい

    見破り方自家用電気工作物のみの工事を行う業者は、登録ではなく『通知』(通知電気工事業者。17条の2)で足りると条文の対象を確認する

  2. 第二種電気工事士は実務経験を積んでも主任電気工事士になれないと思わせる

    なぜ引っかかる第一種電気工事士だけが主任電気工事士になれる、という第一種の優位性を強調する説明だけを覚えると、第二種には道が全くないと誤解しやすい

    見破り方第二種電気工事士でも、免状取得後3年以上の実務経験があれば主任電気工事士になれると条文(19条1項2号)を確認する。道が違うだけで閉ざされてはいない

  3. 建設業の許可を受けている業者でも、電気工事業を営むには改めて『登録』が必要だと思わせる(またはみなし登録なら手続きが一切不要だと思わせる)

    なぜ引っかかる登録・通知・みなし登録・みなし通知と手続きの名前が4つ並ぶため、『建設業者も登録が要る』か『みなしだから何も要らない』のどちらかの極端に流れやすい

    見破り方建設業法の建設業者には登録の規定(第2章)は適用されない(34条1項)が、電気工事業を開始したときは遅滞なく届出(自家用のみなら通知)が必要(34条4項・5項)。登録は不要でも、届出まで不要になるわけではないと二段で確認する

  4. 4本の法律の目的条文を入れ替える(例: 電気工事業法の目的を『電気工事の欠陥による災害の発生の防止』とする)

    なぜ引っかかる電気事業法・電気工事士法・電気工事業法・電気用品安全法はどれも最後は保安・安全に行き着くため、目的文の結びだけを読むと、相互に入れ替えられても違和感が出にくい

    見破り方規制している対象で見分ける。人(作業に従事する者の資格・義務)=電気工事士法、業者(登録・業務)=電気工事業法、事業と電気工作物=電気事業法、製品(製造・販売)=電気用品安全法。結びの言葉も対で覚える。士法=欠陥による災害の発生の防止、業法=保安の確保に資する、事業法=公共の安全の確保・環境の保全、用品法=危険及び障害の発生の防止

  5. 営業所に備え付ける器具を一般用・自家用で同じ内容だと思わせる

    なぜ引っかかる『器具の備付け義務』という1つの条文(24条)でくくられるため、営業所の種類にかかわらず同じ器具でよいと錯覚しやすい

    見破り方一般用電気工事のみの営業所は絶縁抵抗計・接地抵抗計・回路計の3点で足りるが、自家用電気工事を行う営業所はこれに加えて高圧検電器等が必要になる、と営業所の種類で区別する

参考文献・出典

理解度チェック(9問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、9問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用2問・ひっかけ3問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 9 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 電気工事業を営もうとする者は登録が必要(電気工事業法3条1項)。2以上の都道府県に営業所→経済産業大臣、1都道府県内のみ→都道府県知事の登録で、有効期間は5年(3条2項)、続けるには更新登録(3条3項)
  2. 自家用電気工作物のみの工事を行う業者は、登録ではなく「通知」で足りる(通知電気工事業者。事業開始の10日前までに通知。17条の2)
  3. 建設業法の建設業者には登録の規定(第2章)は適用されず、電気工事業を開始したら遅滞なく届出をすれば登録電気工事業者とみなされる(みなし登録電気工事業者。34条)。自家用電気工事のみなら通知でみなし通知電気工事業者になる
  4. 登録電気工事業者は、一般用電気工事の業務を行う営業所ごとに主任電気工事士を置く(19条1項)。なれるのは①第一種電気工事士、②第二種電気工事士免状取得後3年以上の実務経験を有する者
  5. 営業所には絶縁抵抗計・接地抵抗計・回路計などの器具を備え付ける義務がある(24条)。自家用電気工事を行う営業所はさらに高圧検電器等も必要になる
  6. 帳簿は営業所ごとに備え、電気工事ごとの記載事項を記載の日から5年間保存する(26条)。標識は営業所・施工場所ごとに掲示する(25条)
  7. 目的条文(第1条)の対比: 電気工事士法=作業に従事する『人』の資格・義務→欠陥による災害の発生の防止/電気工事業法=電気工事業を営む『業者』の登録・業務規制→業務の適正な実施と電気工作物の保安/電気事業法=『事業』の運営の適正化と電気工作物の工事・維持・運用の規制→使用者の利益保護・公共の安全・環境の保全/電気用品安全法=『製品』の製造・販売規制→電気用品による危険及び障害の発生の防止
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