第二種電気工事士にも「一般用電気工作物等の検査方法」という科目がある。絶縁抵抗を測り、接地抵抗を測り、検電器で無電圧を確認する——それだけの科目だ。
ところが第一種になると、同じ「検査方法」という科目名なのに、絶縁耐力試験や継電器試験という、第二種にはまったく出てこない検査が新たに登場する。同じ「検査」なのに、なぜ第一種になると急にやることが増えるのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、検査という言葉の背後にある枠組み——誰が、何を根拠に、何のために検査するのか——を説明できるようになっている。
自家用電気工作物(高圧で受電するビル・工場・店舗の設備)を持つ需要家には、電気事業法第42条により保安規程を定める義務がある。保安規程とは、その設備を安全に維持するためのルールブックのようなものだ。施行規則第50条第3項第三号は、保安規程に定めるべき事項として「保安のための巡視、点検及び検査に関すること」を挙げている。
ここで注意したいのは、条文自体が驚くほど抽象的だということだ。法令が求めているのは「巡視、点検及び検査に関することを規程に定めよ」というだけで、それを「竣工検査」「定期検査」「臨時検査」と呼ぶかどうか、月次でやるか年次でやるか、といった具体的な中身は法令に書かれていない。実務では、高圧受電設備規程(JEAC 8011)のような民間規程や、各設置者が定める保安規程がその中身を埋めている。
この構造が分かると、第一種で検査項目が増える理由も見えてくる。第二種の検査対象は一般用電気工作物等——低圧(600V以下)で受電する住宅・小規模店舗までだった。第一種はそれに加えて自家用電気工作物、つまり高圧で受電するビルや工場の設備が対象に入る。
高圧を扱うということは、単に電圧が高いというだけでなく、より高い電圧に耐えられることを事前に証明する試験(絶縁耐力試験)や、事故が起きたときに設備を自動で守る保護継電器の試験が必要になる、ということでもある。低圧の住宅設備にはそもそも保護継電器という概念自体がほとんど登場しないが、高圧受電設備では遮断器と継電器の組み合わせが安全の要になる。だからこそ、第一種の検査方法の科目には、絶縁耐力試験・継電器試験という第二種にはない新顔が加わっている。
同じ理由で、絶縁抵抗という同じ言葉を使っていても、低圧と高圧では条文の扱いが違う。低圧の電路には電技省令第58条という明確な数値基準(0.1MΩ・0.2MΩ・0.4MΩ)があるが、高圧側の絶縁抵抗には、これに相当する法定の数値基準が存在しない。 この違いは、次のトピック以降で絶縁抵抗・絶縁耐力・接地工事・継電器試験を1つずつ見ていくときの土台になる。
完成時の自主検査で「やること」の一覧 — そして、そこに並ばないもの
出題は決まって否定形で来る。「高圧受電設備の完成時の自主検査として、一般に行わないものはどれか」。何をやるかを知っていないと、やらないものは選べない。まず、やることの側を並べておく。
| 検査 | 何を確かめるか |
|---|---|
| 外観検査 | 図面どおりに施工されているか、離隔・表示・銘板を目視で確認 |
| 接地抵抗測定 | 各接地工事が規定の抵抗値に収まっているか |
| 絶縁抵抗測定 | 電路・機器の絶縁が生きているか(低圧は500V、高圧は1,000V以上のメガー) |
| 絶縁耐力試験 | 規定電圧を10分間かけ続けて、絶縁が壊れないことの証明 |
| 保護装置試験(継電器試験) | 継電器単体の特性と、遮断器まで含めた保護連動 |
| 遮断器関係試験 | 開閉動作、断路器とのインタロック |
なぜ工場側の試験なのかは、試験の中身を考えると分かる。温度上昇試験は、変圧器に全負荷を連続してかけ、温度が飽和するまで運転し続ける。現地では、その負荷をどこから持ってくるのかという問題がまず立ちはだかる。受電したばかりの建物に、定格いっぱいの負荷があるとは限らない。試験のために巨大な負荷装置を持ち込む必要がある——だから、負荷を自由に作れる工場でやってしまうほうが理にかなっている。
ただし「現地で温度を見ることは絶対にない」と言い切ると、これは行き過ぎになる。大規模な設備の使用前自主検査では、負荷試験という項目の中で、変圧器を全負荷で連続運転して異常な温度上昇・異常振動・異常音がないことを確認する場合がある。試験で問われているのは、あくまで高圧受電設備の完成時自主検査の標準的な項目に、温度上昇試験は並ばないという一点だ。「どの場面の、どの検査の話をしているか」を取り違えないようにしたい。
検査という言葉を、条文の言葉で読み直せるようになる
このトピックの内容が頭に入ると、「検査」という一言で片づけていたものが、法令が定める骨格(保安規程を定める義務)と、実務が積み上げた肉付け(竣工・定期・臨時という区分、JEACなどの民間規程)の2層でできていることが見えてくる。
今日試せることとして、もし自分の会社や取引先に自家用電気工作物(キュービクルなど)があれば、保安規程という書類が実際に存在するかを確認してみるといい。多くの現場では、電気主任技術者や外部委託契約先が管理しており、その中に巡視・点検・検査の頻度や項目が具体的に定められている。
この2層構造を意識できるようになると、太陽光発電設備や蓄電池、EV充電設備を高圧で受け入れる新設工事でも、法令が求める最低限の義務と、現場が独自に積み上げる管理基準の違いを冷静に切り分けて考えられるようになる。これは、これからの再生可能エネルギー設備の保安管理にもそのまま生きてくる視点だ。
冒頭の謎、なぜ第一種になると検査の顔ぶれが増えるのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。