工場に古いモーターと進相コンデンサの組み合わせがある。そこにインバータを追加し、運転周波数を自由に変えられるようにしたところ、ある特定の周波数のときだけ、盤内の電流計の針が跳ね上がり、ケーブルが妙に熱くなることに気づいた。他の周波数ではまったく何も起きない。
電源電圧は変えていない。負荷も変えていない。変えたのは周波数だけだ。なぜその1点だけで、電流がここまで変わるのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この「特定の周波数」がなぜ生まれるのかを、自分で計算して言い当てられるようになっている。
二種電気工事士の基礎理論では、「コイルは周波数が上がると電流が流れにくくなる」という定性的な理解までしか扱わなかった。ここでは、コイル(L)とコンデンサ(C)を組み合わせたときに何が起きるかまで踏み込む。
まず、コイルとコンデンサそれぞれの抵抗にあたる量(リアクタンス)を確認する。
- 誘導性リアクタンス XL = 2πfL(周波数fが上がるほど大きくなる)
- 容量性リアクタンス XC = 1/(2πfC)(周波数fが上がるほど小さくなる)
同じ「周波数が変数」の式なのに、動く方向が正反対だ。周波数を上げるとコイルは電流を流しにくくなり、コンデンサは電流を流しやすくなる。この逆向きの性質こそが、この先の共振現象を生む。
2πfの正体 ― 角速度ωという量
XL=2πfLという式の「2πf」には、角速度(角周波数)ωという名前が付いている。
ω = 2πf [rad/s]
周波数f[Hz]は「1秒間に何回振動するか」を表す数字だが、角速度ωは「1秒間に電気角で何ラジアン進むか」を表す数字だ。正弦波交流を瞬時値の形でv=Vm・sin(ωt)と書くときのωが、これと同じものになる。1周期(f回のうち1回分)で電気角は2πラジアン進むので、1秒間にf回振動するならω=2πfになる――この関係さえ押さえておけば、50Hzならω≒314rad/s、60Hzならω≒377rad/sと、その場で計算できる。XL=2πfL=ωLという表し方は、教科書や計器のカタログでもよく使われるので、2πfとωが同じものだと知っておくと式の見た目が変わっても慌てずに済む。
リアクタンスが持つ無効電力 Q=V²/X
抵抗Rに電圧Vが加わったときの消費電力がP=V²/R(=I²R)だったのと同じ形で、リアクタンスXにも対応する量がある。リアクタンスだけの負荷に電圧Vが加わったときの無効電力は、
Q = V²/X = I²X [var]
という式になる。抵抗が電力Pを消費して熱に変えるのに対し、リアクタンス(コイル・コンデンサ)は電力を消費せず、電源との間を行ったり来たりする無効電力Qを生み出す――この違いは、力率改善に必要なコンデンサ容量で電力三角形を扱うときの土台にもなる。
三相回路でこの式を使うときは、結線に注意がいる。リアクタンスXをY結線した場合、各相にかかる電圧は線間電圧Vの1/√3になるので、三相合計の無効電力はQ=3×(V/√3)²/X=V²/X(Vは線間電圧)。Δ結線した場合は各相に線間電圧Vがそのままかかるので、Q=3V²/Xになる。同じ線間電圧・同じリアクタンスでも、Δ結線はY結線の3倍の無効電力になる――進相コンデンサの結線を読み違えると、必要容量の計算がまるごと3倍・3分の1にずれてしまう理由がここにある。
直列RLC回路のインピーダンス
抵抗R、コイルL、コンデンサCを直列につないだ回路のインピーダンスZは、次の式になる。
Z = √(R² + (XL − XC)²)
XLとXCは足し算ではなく、差を取ってから2乗する。これは、コイルとコンデンサが電圧に対して逆位相(コイルは電流より電圧が90度進む、コンデンサは逆に90度遅れる)の性質を持つためだ。
たとえばR=6Ω、XL=11Ω、XC=3Ωの回路なら、Z=√(6²+(11−3)²)=√(36+64)=√100=10Ω。ここで注目したいのは、XL−XC=8(プラスの値)になっている点だ。XLのほうがXCより大きいこの状態は「誘導性」の回路と呼ばれ、電流は電圧より遅れる(遅れ力率)。逆に周波数が下がってXC側が大きくなり、XL−XCがマイナスになれば「容量性」の回路になり、電流は電圧より進む(進み力率)。差を取った後の符号が、回路の力率が遅れなのか進みなのかまで教えてくれている——この符号の意味は、この先の力率改善コンデンサの計算でも同じ考え方のまま使われる。
XLとXCがつり合う瞬間 ― 直列共振
XLとXCの大小関係は周波数によって変わる。周波数が低ければXC(分母にf)が大きくXLが小さく、周波数が高ければその逆になる。ということは、ある1つの周波数で、XL = XCとなる瞬間が必ず存在する。
このとき何が起きるか。Z=√(R²+(XL−XC)²)の式で、括弧の中がゼロになるので、Z = R——インピーダンスは抵抗分だけになり、回路が取り得る最小値まで下がる。
共振する周波数f0は、XL=XCという条件から自分で導ける。XL=2πf0L、XC=1/(2πf0C)を等しいと置くと、
2πf0L = 1/(2πf0C) (2πf0)² = 1/(LC) 2πf0 = 1/√(LC)
f0 = 1 / (2π√(LC))
という形が出てくる。暗記するのではなく、「XL=XCと置いて、f0について解くだけ」という手順を知っていれば、この場で毎回導き出せる式だ。
ここで見落としてはいけないのは、この式には電源の周波数(50Hzや60Hz)がどこにも出てこないということだ。共振周波数を決めているのはL・Cという回路側の部品の値だけで、電源とは無関係に存在する。たとえばL=0.4H、C=25μFの回路なら、f0=1/(2π√(0.4×25×10⁻⁶))≒50.3Hz——たまたま商用周波数に近い値になっているが、これはL・Cの組み合わせがそうなっているからにすぎない。
共振を見落とすと何が起きるか
高圧受電設備には、力率改善用の進相コンデンサが設置されることが多い。この進相コンデンサと、配電系統側や変圧器が持つインダクタンス成分を組み合わせると、意図しないところにRLC回路が出来上がる。設計段階でこの組み合わせの共振周波数を確認しないまま設備を追加すると、電源側にわずかに含まれる高調波(基本波の整数倍の周波数成分)がたまたまこの共振周波数に近いとき、共振によって電流や電圧が異常に増幅されてしまうことがある。これが、高圧の進相コンデンサに直列にコイル(直列リアクトル)を追加し、共振点を意図的にずらす設計が実務で行われている理由だ。共振という現象を知らずにコンデンサだけを増設すると、力率は改善できても、思わぬ形で別のトラブルの芽を作ってしまうことがある——共振周波数の計算は、単なる試験問題ではなく、設備を追加するときに確認すべき現実の項目でもある。
意図せず共振点をまたぐ、という現場のリスク
インバータで運転周波数を自由に変えられる設備が増えるほど、この共振現象と無縁ではいられなくなる。今日試せることとして、身の回りの電子機器の説明書やモーターのカタログに「共振周波数」「固有周波数」という言葉が出てきたら、それがこのf0=1/(2π√(LC))と同じ考え方で決まっていることを意識してみるといい。
RLC回路の理論は、この科目だけで終わらない。高圧進相コンデンサに直列リアクトルを組み合わせる設計、ケーブルの充電電流の計算、フィルタ回路の設計——一種の電気工事士がキュービクルの中身を扱うようになると、この共振の考え方は形を変えて何度も現れる。式を暗記するのではなく、「XLとXCが逆向きに動く」というたった1つの性質から、共振・力率・インピーダンス最小という一連の結論を自分で導ける状態にしておくと、応用が効く。
冒頭の電流の跳ね上がり、その周波数がどうやって決まっていたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。