町工場の一角、アルミサッシの研磨室。飛んでいるのは金属の細かい粉だ。ここの照明配線をPF管で、と見積もった電気工事店は、元請けから図面を突き返された。「この部屋は金属管かケーブルしか使えない」。
一方、隣町の製パン工場。小麦粉が霧のように舞う計量室の壁には、合成樹脂管の配線が通っていて、それで検査も通っている。
金属の粉と、小麦粉。燃えそうなのはどちらかと聞かれれば、たいていの人は小麦粉と答えるだろう。法令の答えは逆だ。見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この逆転の理由ごと、特殊場所のルールを説明できるようになっている。
電技解釈は、電気設備が点火源になって爆発や火災につながるおそれのある場所を「特殊場所」として、使える工事を厳しく絞っている(第175条〜第177条)。第二種電気工事士の学科で問われるのは、次の4つの場所と、それぞれで使える工事の組合せだ。
| 特殊場所 | 具体例 | 施設できる工事 |
|---|---|---|
| 爆燃性粉じんのある場所 | マグネシウム・アルミニウム等の粉、火薬類の粉末 | 金属管工事、ケーブル工事(キャブタイヤケーブルを除く) |
| 可燃性ガス等のある場所 | プロパンガスの漏れ・滞留、ガソリン等の引火性物質の蒸気 | 金属管工事、ケーブル工事(キャブタイヤケーブルを除く) |
| 可燃性粉じんのある場所 | 小麦粉・でん粉など | 上記+合成樹脂管工事(厚さ2mm未満の管・CD管を除く) |
| 危険物のある場所 | 石油類・セルロイド・マッチ等の製造・貯蔵場所 | 上記+合成樹脂管工事(厚さ2mm未満の管・CD管を除く) |
整理すると2グループしかない。最も厳しい「爆燃性粉じん・可燃性ガス等」は金属管かケーブルの二択。それ以外の「可燃性粉じん・危険物」は合成樹脂管が加わって三択。どの特殊場所でも、金属管工事とケーブル工事は必ず使え、がいし引き工事や金属線ぴ工事のような電線が露出・開口する工事は一切使えない。
施工の細部にも指定がある。金属管は薄鋼電線管又はこれと同等以上の強度のものを使い、管相互や管とボックスは5山以上ねじ合わせて、内部に粉じんやガスが入らないように接続する。ケーブルは、がい装ケーブル・MIケーブルを除いて管その他の防護装置に収める。
そのうえで冒頭の逆転に戻ると、区分を分けているのは「燃えるかどうか」ではなく「どんな条件で爆発するか」だと分かる。小麦粉やでん粉は、空気中に細かく舞った状態で着火すると爆発する——粉じん爆発として知られる現象で、これが可燃性粉じんだ。ところがマグネシウムやアルミニウムの粉は、舞っている状態はもちろん、床や設備の上に積もった状態でも、着火すれば爆発するおそれがある。塊の金属が燃えにくいのは表面しか空気に触れないからで、粉になると表面積が桁違いに増え、別物の危険性を持つ。だから爆燃性粉じんは火薬類の粉末と並ぶ最上位の区分に置かれ、ガソリン蒸気やプロパンと同じ厳しさで縛られる。
ガソリンスタンドが特殊場所の代表例とされるのは、ガソリンの蒸気が空気より重く、床の近くの低いところに滞留するからだ。給油空間の配線・機器は可燃性ガス等の場所として扱われ、金属管とケーブルで固められている。
給油中の3分で、頭上の防爆設計が読めるようになる
今日ガソリンスタンドに寄ることがあれば、給油の待ち時間にキャノピー(屋根)の裏を見上げてみてほしい。照明器具は分厚い密閉型で、そこへ向かう配線はねじ込み接続の金属管。計量機の足元にも樹脂の配管は見当たらないはずだ。この眺めがそのまま第176条の実装で、一度気づくと、塗装工場・ガス充填所・製粉所など、街の「爆発と隣り合わせの現場」の配線が全部同じ文法で読めるようになる。
この分野は資格の世界では「防爆」と呼ばれ、専門の講習や機器認証を持つ施工者が担う職域だ。第二種の学科で問われるのは入口の区分だけだが、その先には水素ステーション、蓄電池倉庫、バイオマス設備といった、これから増える現場が続いている。可燃物の種類が変わっても、「火花と可燃物を出会わせない」という原則は変わらない。区分の暗記が、そのままこの原則の練習になっている。
冒頭のアルミの粉と小麦粉、なぜ厳しさが逆転していたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。