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電気工事の施工方法 ・ 8 / 10

特殊場所の工事 — ガソリンスタンドと粉じんの部屋

読み終えると、こうなる

研磨室に舞う金属の粉と、製粉室に舞う小麦粉を見て、使ってよい配線工事の範囲が変わることに気づく

  • 舞っている粉じんの性質(金属か食品か)から、爆燃性粉じんか可燃性粉じんかを判定できる
  • 特殊場所と工事の組合せを見て、がいし引きなど絶対に使えない工事を先回りして除外できる
  • 金属管の接続を見て、5山以上のねじ合わせが施されているか確認できる
考えてみよう

町工場の一角、アルミサッシの研磨室。飛んでいるのは金属の細かい粉だ。ここの照明配線をPF管で、と見積もった電気工事店は、元請けから図面を突き返された。「この部屋は金属管かケーブルしか使えない」。

一方、隣町の製パン工場。小麦粉が霧のように舞う計量室の壁には、合成樹脂管の配線が通っていて、それで検査も通っている。

金属の粉と、小麦粉。燃えそうなのはどちらかと聞かれれば、たいていの人は小麦粉と答えるだろう。法令の答えは逆だ。見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この逆転の理由ごと、特殊場所のルールを説明できるようになっている。

電技解釈は、電気設備が点火源になって爆発や火災につながるおそれのある場所を「特殊場所」として、使える工事を厳しく絞っている(第175条〜第177条)。第二種電気工事士の学科で問われるのは、次の4つの場所と、それぞれで使える工事の組合せだ。

特殊場所具体例施設できる工事
爆燃性粉じんのある場所マグネシウム・アルミニウム等の粉、火薬類の粉末金属管工事、ケーブル工事(キャブタイヤケーブルを除く)
可燃性ガス等のある場所プロパンガスの漏れ・滞留、ガソリン等の引火性物質の蒸気金属管工事、ケーブル工事(キャブタイヤケーブルを除く)
可燃性粉じんのある場所小麦粉・でん粉など上記+合成樹脂管工事(厚さ2mm未満の管・CD管を除く)
危険物のある場所石油類・セルロイド・マッチ等の製造・貯蔵場所上記+合成樹脂管工事(厚さ2mm未満の管・CD管を除く)

整理すると2グループしかない。最も厳しい「爆燃性粉じん・可燃性ガス等」は金属管かケーブルの二択。それ以外の「可燃性粉じん・危険物」は合成樹脂管が加わって三択。どの特殊場所でも、金属管工事とケーブル工事は必ず使え、がいし引き工事や金属線ぴ工事のような電線が露出・開口する工事は一切使えない。

施工の細部にも指定がある。金属管は薄鋼電線管又はこれと同等以上の強度のものを使い、管相互や管とボックスは5山以上ねじ合わせて、内部に粉じんやガスが入らないように接続する。ケーブルは、がい装ケーブル・MIケーブルを除いて管その他の防護装置に収める。

このルールの狙いは「火花を出さないこと」ではない。スイッチを切るたび、モーターが回るたび、接点では小さな火花が出る。それは止められない。止められるのは、火花と可燃物を出会わせることだ。だから配線を金属と外装で完全に包み、蒸気や粉が火花のいる内側へ入り込む隙間を潰す。「5山以上のねじ合わせ」という一見細かすぎる指定は、爆発性の雰囲気が通り抜けられる隙間を寸法で塞ぐための数字だ。

そのうえで冒頭の逆転に戻ると、区分を分けているのは「燃えるかどうか」ではなく「どんな条件で爆発するか」だと分かる。小麦粉やでん粉は、空気中に細かく舞った状態で着火すると爆発する——粉じん爆発として知られる現象で、これが可燃性粉じんだ。ところがマグネシウムやアルミニウムの粉は、舞っている状態はもちろん、床や設備の上に積もった状態でも、着火すれば爆発するおそれがある。塊の金属が燃えにくいのは表面しか空気に触れないからで、粉になると表面積が桁違いに増え、別物の危険性を持つ。だから爆燃性粉じんは火薬類の粉末と並ぶ最上位の区分に置かれ、ガソリン蒸気やプロパンと同じ厳しさで縛られる。

ガソリンスタンドが特殊場所の代表例とされるのは、ガソリンの蒸気が空気より重く、床の近くの低いところに滞留するからだ。給油空間の配線・機器は可燃性ガス等の場所として扱われ、金属管とケーブルで固められている。

給油中の3分で、頭上の防爆設計が読めるようになる

今日ガソリンスタンドに寄ることがあれば、給油の待ち時間にキャノピー(屋根)の裏を見上げてみてほしい。照明器具は分厚い密閉型で、そこへ向かう配線はねじ込み接続の金属管。計量機の足元にも樹脂の配管は見当たらないはずだ。この眺めがそのまま第176条の実装で、一度気づくと、塗装工場・ガス充填所・製粉所など、街の「爆発と隣り合わせの現場」の配線が全部同じ文法で読めるようになる。

この分野は資格の世界では「防爆」と呼ばれ、専門の講習や機器認証を持つ施工者が担う職域だ。第二種の学科で問われるのは入口の区分だけだが、その先には水素ステーション、蓄電池倉庫、バイオマス設備といった、これから増える現場が続いている。可燃物の種類が変わっても、「火花と可燃物を出会わせない」という原則は変わらない。区分の暗記が、そのままこの原則の練習になっている。

冒頭のアルミの粉と小麦粉、なぜ厳しさが逆転していたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 場所と工事の組合せを4つ並べ、そのうち1つだけを別の区分の工事に入れ替える

    なぜ引っかかるこの形式では、選択肢のほとんどが正しい組合せで埋められている。可燃性ガス等の場所は金属管工事とケーブル工事だけ、可燃性粉じんや危険物の場所はこれに合成樹脂管工事が加わる、という一段の差を利用して、可燃性ガスの場所にだけ合成樹脂管工事を紛れ込ませてくる。正しい組合せを3つ読んだあとでは、判断が甘くなる。

    見破り方選択肢を場所と工事に切り分け、場所のほうを先に区分名(爆燃性粉じん/可燃性粉じん/可燃性ガス等/危険物等)に翻訳する。区分が決まれば使える工事は自動的に決まるので、書かれた工事名と照合するだけになる。4つとも同じ手順で処理し、途中で流さないこと。

  2. 粉じんの例示物を入れ替えて、区分そのものを動かす

    なぜ引っかかるマグネシウム・アルミニウムの粉じんは爆燃性粉じん、小麦粉・でん粉は可燃性粉じんで、使える工事が変わる。ところが問題文では「小麦粉をふるい分けする」「金属を研磨する」といった作業の描写で書かれるため、どちらの区分に当たるかを自分で判定しなければならない。作業の様子は具体的なのに、区分名はどこにも書かれていない。

    見破り方物質名だけを抜き出して区分に変換する。金属の粉なら爆燃性、食品や樹脂の粉なら可燃性、液体の油類なら危険物等。爆燃性は積もった状態でも爆発するため最も厳しい、と危険の性質までセットで覚えておくと、迷ったときに厳しい側へ寄せられる。

  3. どの特殊場所でも使えない工事を、1つだけ混ぜる

    なぜ引っかかるがいし引き工事・金属線ぴ工事・金属ダクト工事・ライティングダクト工事は、どの特殊場所にも施設できない。しかし選択肢では、場所の描写が具体的で正しいぶん、工事名まで検討が回らない。金属線ぴ工事は名前に金属が入っているため、金属管工事が許される場所なら通りそうに見えてしまう。

    見破り方特殊場所の設問では、まず使える工事の側を先に固定する。金属管工事とケーブル工事、そして粉じん・危険物なら合成樹脂管工事。このリストにない工事名が出てきたら、場所を読むまでもなく切ってよい。

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 爆燃性粉じん(マグネシウム・アルミニウム等)や可燃性ガス等(プロパン・ガソリン蒸気等)のある場所は、金属管工事かケーブル工事(キャブタイヤケーブルを除く)に限られる
  2. 可燃性粉じん(小麦粉・でん粉等)や危険物(石油類等)のある場所は、上記に加えて合成樹脂管工事(厚さ2mm未満の管・CD管を除く)も施設できる
  3. 金属管相互・ボックスとの接続は5山以上ねじ合わせ、内部にガス・粉じんが入らないようにする
  4. ケーブルは、がい装ケーブル・MIケーブルを除き、管その他の防護装置に収めて施設する
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