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機械 ・ 11 / 18

チョッパ回路の動作(電流経路・環流ダイオード)

読み終えると、こうなる

チョッパ回路の図を見て、スイッチがONの瞬間とOFFの瞬間のそれぞれで、電流が回路のどこを通っているかを指でなぞって説明できるようになる

  • 降圧チョッパのON期間とOFF期間で電流が通る素子を言い当て、リアクトル電流の増減幅(リップル)をΔI=(Vs−Vo)αT/Lで計算できる
  • 負荷の平均電流Io=αVs/Rから、スイッチ・環流ダイオード・電源それぞれの平均電流(αIo、(1−α)Io、αIo)を求められる
  • 負荷の平均電流がリップル幅の半分を下回ると電流が途切れる(不連続になる)ことを、数値で判定できる
  • 直流電動機を2個のスイッチで駆動する回路で、αVsと逆起電力Ebの大小から力行か回生かを判定し、電機子電流の向きと大きさを計算できる
考えてみよう

直流電源ユニットの中に、スイッチ(半導体)とリアクトル(コイル)と小さなダイオードが入っている。スイッチは1秒間に何万回もON/OFFを繰り返している。

スイッチがOFFになった瞬間、電源から負荷へ向かう道は切れる。それなのに、負荷の電流は止まらない。ダイオードは電源から電流を受け取っていないのに、電流が流れている。

この電流は、いったいどこを通っているのか。

答えはリアクトルにある。コイルは、流れている電流を流し続けようとする。電源から切り離された瞬間、コイルは自分の電流の行き場を作ろうとして、環流ダイオードを通る輪を自分で閉じる。チョッパの計算問題は、ほぼすべてこの「2つの状態を交互に追う」ことで解ける。

「パワーエレクトロニクス:インバータ・チョッパ」のページでは、降圧チョッパの出力電圧 Vo=αVsV_o=\alpha V_s と昇圧チョッパの出力電圧 Vo=Vs/(1−α)V_o=V_s/(1-\alpha) を扱った。このページはその続きで、電圧の式ではなく、電流の通り道と平均電流を扱う。

このページの結論:降圧チョッパは、スイッチONでは「電源→スイッチ→リアクトル→負荷」、スイッチOFFでは「リアクトル→負荷→環流ダイオード→リアクトル」の2つの輪を交互に使う。リアクトルの電流はONで増え、OFFで減る。この増減(リップル)は平均の負荷電流Ioのまわりを上下し、スイッチの平均電流はαIo、ダイオードは(1−α)Io。直流電動機をスイッチ2個で駆動すると、αVsと逆起電力Ebの大小で、力行と回生が切り替わる。

降圧チョッパを「ON」と「OFF」の2コマで追う

降圧チョッパの回路は、次の部品を次のようにつないでいる。

  • 電源 VsV_s の+側にスイッチ S をつなぎ、その先の点を P とする。
  • P からリアクトル L を通して負荷(出力コンデンサ C と並列)につなぎ、負荷のもう一端を電源の-側に戻す。
  • ダイオード D を、P と電源の-側の間に、カソード(電流が出ていく側)を P に向けてつなぐ。これが環流ダイオード(フリーホイリングダイオード)である。

以下では、スイッチもダイオードも理想的(ONのときの電圧降下0、OFFのときの電流0)とし、定常状態で考える。

スイッチ S が ONスイッチ S が OFF
電流の通り道電源 → S → L → 負荷 → 電源L → 負荷 → D → L(ダイオードを通る輪)
ダイオード D点Pが VsV_s に持ち上げられ、逆バイアスで電流0順バイアスで導通
電源から流れ出す電流リアクトル電流と同じ0
リアクトルにかかる電圧Vs−VoV_s - V_o−Vo-V_o
リアクトル電流増える(傾き (Vs−Vo)/L(V_s-V_o)/L)減る(傾き −Vo/L-V_o/L)

OFFの期間にダイオードが導通するのは、リアクトルが流れていた電流を流し続けようとして、点Pの電圧を0以下まで引き下げるからである(東芝のデザインガイドも、OFFにしてもインダクターは電流を流し続けると説明している)。ダイオードが導通した瞬間、点Pの電圧は0に固定され、リアクトルには負荷の電圧 VoV_o が逆向きにかかって電流が減っていく。

出力電圧 Vo=αVsV_o=\alpha V_s を、電流の増減から確かめる

リアクトルの電圧と電流の関係は vL=L diLdtv_L = L\,\dfrac{di_L}{dt} である。上の表の電圧を代入すると、傾きが一定なので、1周期 TT のうち ON の時間を Ton=αTT_{on}=\alpha T、OFF の時間を Toff=(1−α)TT_{off}=(1-\alpha)T とすれば、電流の変化量は次のようになる(以下は、この記事での導出)。

ΔIon=Vs−VoL αT,ΔIoff=VoL (1−α)T\Delta I_{on}=\frac{V_s-V_o}{L}\,\alpha T, \qquad \Delta I_{off}=\frac{V_o}{L}\,(1-\alpha)T

定常状態では、1周期で電流が元に戻るので、増える量と減る量が等しい。

(Vs−Vo) αT=Vo (1−α)T    ⟹    Vo=αVs(V_s-V_o)\,\alpha T = V_o\,(1-\alpha)T \;\;\Longrightarrow\;\; V_o=\alpha V_s

以前のページで暗記した式が、電流の増減の釣り合いから出てくる。傾きと時間の積(面積)が上りと下りで等しい、とも言える。

リアクトル電流の増減幅(リップル)

上の ΔIon\Delta I_{on} を整理すると、リアクトル電流の増減幅 ΔI\Delta I(リップル電流)が出る。

ΔI=(Vs−Vo) αTL=Vs α(1−α) TL=Vo (1−α) TL\Delta I=\frac{(V_s-V_o)\,\alpha T}{L}=\frac{V_s\,\alpha(1-\alpha)\,T}{L}=\frac{V_o\,(1-\alpha)\,T}{L}

3つの形はどれも同じ値。与えられた量に合わせて使い分ける。

  • LL が大きいほど、TT が短い(スイッチング周波数が高い)ほど、リップルは小さい。
  • α(1−α)\alpha(1-\alpha) は α=0.5\alpha=0.5 で最大になるので、α=0.5\alpha=0.5 のときリップルは最大(ΔI=VsT/(4L)\Delta I=V_sT/(4L))。
  • 連続している間、ΔI\Delta I は負荷電流 IoI_o に依存しない。重い負荷でも軽い負荷でも同じ幅で上下する。

リアクトル電流は、平均の負荷電流 IoI_o を中心に ±ΔI/2\pm\Delta I/2 だけ振れる三角波になる。最大値は Io+ΔI/2I_o+\Delta I/2、最小値は Io−ΔI/2I_o-\Delta I/2 である。

例題1:リップル電流を求める

降圧チョッパの電源電圧 Vs=100VV_s=100\text{V}、デューティ比 α=0.4\alpha=0.4、スイッチング周波数 10kHz10\text{kHz}、リアクトル L=2mHL=2\text{mH} である。リアクトル電流のリップル幅 ΔI\Delta I を求めよ。また、負荷電流の平均値が 3A3\text{A} のとき、リアクトル電流の最大値と最小値を求めよ(電流は連続)。

Vo=αVs=40V,T=110kHz=100μs,Ton=αT=40μsV_o=\alpha V_s=40\text{V}, \qquad T=\frac{1}{10\text{kHz}}=100\mu\text{s}, \qquad T_{on}=\alpha T=40\mu\text{s} ΔI=(Vs−Vo) TonL=60×40×10−62×10−3=1.2A\Delta I=\frac{(V_s-V_o)\,T_{on}}{L}=\frac{60\times 40\times10^{-6}}{2\times10^{-3}}=1.2\text{A}

検算:OFF期間は 40×60×10−6/(2×10−3)=1.2A40\times 60\times10^{-6}/(2\times10^{-3})=1.2\text{A} で、増える量と一致する。

最大値は 3+0.6=3.6A3+0.6=3.6\text{A}、最小値は 3−0.6=2.4A3-0.6=2.4\text{A}。最小値が0より大きいので、電流は途切れない。

連続と不連続の入口

リアクトル電流が途切れずに流れ続ける動作を電流連続モードという。条件は、最小値が0以上であること、つまり

Io≥ΔI2I_o \ge \frac{\Delta I}{2}

である(東芝のデザインガイドも同じ条件で、等しいときを臨界としている)。例題1の回路なら、Io≥0.6AI_o\ge 0.6\text{A} が連続の条件である。

負荷を軽くして Io<ΔI/2I_o<\Delta I/2 になると、ダイオードは逆向きの電流を流せないので、OFFの期間の途中でリアクトル電流が0に達し、次にスイッチがONになるまで0のままになる。これが電流不連続モードで、Vo=αVsV_o=\alpha V_s は成り立たない(同ガイドも同じ趣旨を述べている)。計算問題はほとんどが連続モードだが、「負荷が軽いとどうなるか」という定性問題で不連続が出る。

平均電流の按分:負荷・スイッチ・ダイオード・電源

負荷電流がほぼ平滑(一定の IoI_o)とみなせるとき、各部分の平均電流は時間の割合で決まる。

負荷が抵抗 RR とリアクトルの直列(R-L負荷)なら、定常状態ではリアクトルの電圧の平均が0なので、出力の平均電圧 αVs\alpha V_s はすべて抵抗にかかる。

Io=αVsRI_o=\frac{\alpha V_s}{R}

電流 IoI_o がどの素子を、どれだけの時間流れるかを数える。

部分電流が流れる期間平均電流
スイッチ SONの期間(周期の α\alpha の割合)αIo\alpha I_o
環流ダイオード DOFFの期間(周期の 1−α1-\alpha の割合)(1−α)Io(1-\alpha)I_o
電源(から流れ出す電流)ONの期間αIo\alpha I_o

スイッチとダイオードの平均電流を足すと IoI_o に戻る。また、電源電圧 VsV_s に電源の平均電流 αIo\alpha I_o を掛けた電力 VsαIoV_s\alpha I_o は、負荷の電力 VoIo=αVsIoV_oI_o=\alpha V_sI_o に等しい。この電力の保存が、按分の検算になる。

連続モードなら、リップルがあってもこの按分は崩れない(ON・OFFそれぞれの区間でリアクトル電流は直線で、両端の平均がどちらも IoI_o になる。この記事での導出)。

例題2:素子の平均電流を求める

降圧チョッパの電源電圧 200V200\text{V}、デューティ比 α=0.6\alpha=0.6、負荷は抵抗 10Ω10\Omega とリアクトルの直列(リアクトルは十分大きく、電流は平滑)である。負荷の平均電流、スイッチ、環流ダイオード、電源の平均電流を求めよ。

Vo=0.6×200=120V,Io=12010=12AV_o=0.6\times200=120\text{V}, \qquad I_o=\frac{120}{10}=12\text{A} スイッチ:0.6×12=7.2A,ダイオード:0.4×12=4.8A,電源:7.2A\text{スイッチ:}0.6\times12=7.2\text{A}, \qquad \text{ダイオード:}0.4\times12=4.8\text{A}, \qquad \text{電源:}7.2\text{A}

検算:7.2+4.8=12A7.2+4.8=12\text{A}。電源の電力 200×7.2=1440W200\times7.2=1440\text{W}、負荷の電力 122×10=1440W12^2\times10=1440\text{W} で一致する。

昇圧チョッパの電流経路

昇圧チョッパは、電源 VsV_s の+側から先にリアクトルを通り、その先の点にスイッチ(電源の-側へ)とダイオード(出力側へ)がつながる構成である。出力側には平滑コンデンサ C と負荷がある。

スイッチ S が ONスイッチ S が OFF
電流の通り道電源 → L → S → 電源電源 → L → D → 負荷(と C)→ 電源
ダイオード D逆バイアスで電流0順方向で導通
リアクトルにかかる電圧VsV_sVs−VoV_s-V_o(負)
リアクトル電流増える(傾き Vs/LV_s/L)。エネルギーを蓄える減る。エネルギーが出力へ送られる

降圧チョッパとの違いは、スイッチの位置にある。昇圧では、ONの間は電源がリアクトルへエネルギーを蓄えるだけで負荷へは何も送らず、OFFの期間にリアクトルの電圧が電源に上乗せされて、出力が電源電圧より高くなる。

リアクトル電流の釣り合いを降圧のときと同様に書くと、次のようになる(この記事での導出)。

Vs αT=(Vo−Vs)(1−α)T    ⟹    Vo=Vs1−αV_s\,\alpha T=(V_o-V_s)(1-\alpha)T \;\;\Longrightarrow\;\; V_o=\frac{V_s}{1-\alpha}

平均電流は、リアクトル電流の平均を ILI_L(電源から流れ出す電流の平均に等しい)とすると、スイッチが αIL\alpha I_L、ダイオード(=出力側へ送られる電流)が (1−α)IL(1-\alpha)I_L。損失を無視すれば VsIL=VoIoV_sI_L=V_oI_o で、(1−α)IL(1-\alpha)I_L は出力電流 IoI_o に等しい。降圧では電源側の電流 αIo\alpha I_o が出力より少なかったのに対し、昇圧では電源側の電流 ILI_L が出力電流より大きい。

直流電動機のチョッパ駆動

降圧チョッパ1個では力行だけ

他励直流電動機の電機子(電機子抵抗 RaR_a、逆起電力 EbE_b)に降圧チョッパの出力をつなぐと、電機子インダクタンスがリアクトルの役をして、OFFの期間は環流ダイオードが電流を流し続ける。平均の電機子電流は、連続モードのとき Ia=(αVs−Eb)/RaI_a=(\alpha V_s-E_b)/R_a(電動機の電圧方程式 V=Eb+IaRaV=E_b+I_aR_a の VV を αVs\alpha V_s に置き換えたもの)。環流ダイオードは逆向きの電流を通さないので、αVs<Eb\alpha V_s<E_b にしても電流は0になるだけで、ブレーキ(回生)はかけられない。

スイッチ2個の2象限チョッパ

電流が逆向きにも流れるようにするには、上下にスイッチを2個置く。S1は電源の+側と中間点の間、S2は中間点と電源の-側の間にあり、それぞれにダイオード(D1、D2)を逆並列につなぐ。S1とS2は相補に駆動し(片方がONのときもう片方はOFF。同時ONは電源短絡になる。注意点で扱う)、電動機は中間点と電源の-側の間につなぐ。端子電圧の向きも回転方向も変えずに、電流が正の力行と、電流が負の回生の2つの状態を取れるので、これを2象限チョッパと呼ぶ(本ページでの呼び方)。

電機子電流 IaI_a は、中間点から電動機へ流れ込む向きを正とする。S1・S2のON/OFFの組合せごとの電流の通り道は次のとおり。

電機子電流の向きS1 ON(S2 OFF)S1 OFF(S2 ON)
Ia>0I_a>0(力行)電源 → S1 → 電動機 → 電源(S1を通る)電動機のインダクタンスの電流がD2を通って環流(S2はONでも電流はD2を流れる)
Ia<0I_a<0(回生)電動機の電流がD1を通って電源へ戻る(S1はONでも電流はD1を流れる)電動機がS2で短絡されて電流が増える(S2を通る)

平均の端子電圧は、どちらの向きでも S1 のデューティ比 α\alpha で決まり、αVs\alpha V_s である。したがって

Ia=αVs−EbRaI_a=\frac{\alpha V_s-E_b}{R_a}

の符号が(連続モードのとき)そのまま動作を決める。

  • αVs>Eb\alpha V_s>E_b のとき Ia>0I_a>0:力行。電源から電動機へ電力が流れる。
  • αVs<Eb\alpha V_s<E_b のとき Ia<0I_a<0:回生。電動機が発電機になり、電力が電源へ戻る。

回生のしくみは、昇圧チョッパそのものである。S2がONの間、電動機の逆起電力が電機子インダクタンスに電流を押し込んで、エネルギーを蓄える。S2がOFFになると、その電流はD1を通って電源へ流れ込む。電動機の発電電圧 EbE_b のほうが電源電圧より低いのに電源へ電力を送れるのは、昇圧チョッパが入力より高い電圧を作るのと同じ理屈による(講義資料でも、回生ブレーキを昇圧チョッパの考え方で説明している)。

JEEAの電気技術解説講座も、回生制動を「電源を接続したまま逆起電力を端子電圧より高くし、発電電力を電源へ送り返す方法」と説明している。チョッパでは、デューティ比 α\alpha を下げて αVs\alpha V_s を EbE_b より低くすることでそれを作る。

回生に入るかどうかは「αVs\alpha V_s と EbE_b のどちらが大きいか」だけで決まる。回転方向と磁束が同じなら EbE_b の向きも大きさも変わらないので、力行から回生で反転するのは EbE_b ではなく、電機子電流の向きとトルクの向きである(「直流電動機の原理と特性」の回生制動の節と同じ整理)。EbE_b は回転数に比例するので、同じ α\alpha でも回転数が上がれば、力行から回生へ入る。

例題3:直流電動機の回生時の電流経路と電流

他励直流電動機(電機子抵抗 Ra=0.5ΩR_a=0.5\Omega、磁束一定)を、スイッチ2個の2象限チョッパ(電源電圧 Vs=200VV_s=200\text{V})で駆動している。ある回転数での逆起電力は Eb=150VE_b=150\text{V} である。(1) α=0.8\alpha=0.8 のときの電機子電流、(2) α=0.6\alpha=0.6 に下げたときの電機子電流、(3) (2)のとき電源へ戻る平均電流を求めよ。電機子電流は平滑とする。

(1) αVs=160V\alpha V_s=160\text{V} で、Eb=150VE_b=150\text{V} より高い。

Ia=160−1500.5=20A(力行)I_a=\frac{160-150}{0.5}=20\text{A}\quad(\text{力行})

(2) αVs=120V\alpha V_s=120\text{V} で、EbE_b より低い。

Ia=120−1500.5=−60A(回生、電流の大きさ 60A)I_a=\frac{120-150}{0.5}=-60\text{A}\quad(\text{回生、電流の大きさ }60\text{A})

(3) 電源へ電流が戻るのは、D1が導通する期間(S1の指令がONの期間、周期の0.6)である。そのとき流れる電流が60Aなので

0.6×60=36A0.6\times60=36\text{A}

検算:電源が受け取る電力 200×36=7200W200\times36=7200\text{W} は、端子での電力 120×60=7200W120\times60=7200\text{W} と一致する。S2を流れる平均電流は 0.4×60=24A0.4\times60=24\text{A} で、36+24=60A36+24=60\text{A} に戻る。

波形の読み取り

電圧・電流の波形が図で与えられたときは、次の3点を順に読む。

  1. スイッチの電流が流れている期間が TonT_{on}。その比が α\alpha。
  2. リアクトル電流の山と谷の差が ΔI\Delta I、真ん中が IoI_o。谷が0に張りついて平らな区間があれば、不連続モード。
  3. スイッチとダイオードの電流の平均の比は α:(1−α)\alpha:(1-\alpha)。

注意点

  • スイッチ2個を同時にONにしない:2象限チョッパのS1とS2が同時にONになると、電源が短絡される。実際の駆動回路には同時ONを防ぐ対策が必要になる(講義資料も、同時ONは電源短絡になると扱っている)。
  • リップル電流は L と周波数で決まり、負荷では決まらない:軽負荷で負荷電流が小さくなってもΔIは減らないので、不連続モードに入る。

実務との接点

直流電動機の速度制御にチョッパを使うと、抵抗で電圧を落とす方式に比べて、運転時も回生制動時も抵抗による電力損失がない、と日本電気技術者協会の解説講座は説明している。一方で、入力電流がパルス状になるため、電源とチョッパの間にフィルタを入れる必要があるとも述べている。

仕様書の「環流ダイオード」「連続モード」「回生」といった言葉は、ここで追った回路の動作で説明できる。定格や形式の判断は、各メーカーの資料と仕様書で確認する。

関連トピック

  • 「パワーエレクトロニクス:インバータ・チョッパ」:降圧・昇圧チョッパの出力電圧の式 Vo=αVsV_o=\alpha V_s、Vo=Vs/(1−α)V_o=V_s/(1-\alpha) と、インバータ、太陽光発電用パワーコンディショナを扱う。このページはその電流側の補足にあたる。
  • 「直流電動機の原理と特性」:逆起電力、電圧方程式、始動、回生制動(V>EbV>E_b か V<EbV<E_b か)を扱う。このページの Ia=(αVs−Eb)/RaI_a=(\alpha V_s-E_b)/R_a は、その電圧方程式のチョッパ版である。

冒頭の問いの答え:OFFの期間、電流はリアクトルから環流ダイオードを通る輪を流れている。理解度チェックで確かめてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. スイッチがOFFになれば負荷電流も0になる(または電源へ逆流する)と考えてしまう

    なぜ引っかかるスイッチは電源をつないだり切ったりする素子という印象が強く、OFFの瞬間に回路が切れて電流が止まると思い込みやすい。リアクトルは流れていた電流を流し続けようとする素子で、そのときの通り道が環流ダイオードだと気づかないと、OFF期間の電流が消えてしまう。

    見破り方OFF期間の回路を描き直し、電流の通り道が閉じているか確かめる。リアクトル→負荷→ダイオード→リアクトルの輪が閉じていれば、電源から切り離されても電流は流れる。

  2. スイッチとダイオードの平均電流を取り違える(スイッチを(1−α)Io、ダイオードをαIoとしてしまう)

    なぜ引っかかる「オフの比率(1−α)」と「ダイオード」を結びつけたつもりで逆にしてしまう。また、どちらも負荷電流Ioそのものだと考えて按分を忘れる誤りもある。

    見破り方スイッチが電流を流すのはON期間だけ、ダイオードはOFF期間だけ、と時間で数える。平均はそれぞれαIo、(1−α)Io。足すとIoに戻ることで検算する。

  3. 回生は逆起電力Ebの向きが反転するから起きる、またはデューティ比αの値だけで決まると考える

    なぜ引っかかる力行と回生は逆のモードなので、内部の逆起電力も逆になるはずだと連想しやすい。また、αを小さくすると回生になるという覚え方だけだと、そのときの回転数(Eb)を見落とす。

    見破り方連続モードの電機子電流の式Ia=(αVs−Eb)/Raを書いて符号を見る。回転方向と磁束が変わらなければEbの向きも大きさも変わらない。αVsがEbより小さくなったときに電流が逆向きになり、回生になる。

参考文献・出典

理解度チェック(14問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、14問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用7問・ひっかけ3問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 14 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 降圧チョッパの2状態:スイッチON=電源→スイッチ→リアクトル→負荷(ダイオードは逆バイアスで非導通)。スイッチOFF=リアクトルの電流が環流ダイオードを通って負荷へ流れ続ける(電源からの電流は0)
  2. リアクトル電流はONで傾き(Vs−Vo)/Lで増え、OFFで傾き−Vo/Lで減る。増減幅(リップル)はΔI=(Vs−Vo)αT/L=Vo(1−α)T/L。IoがΔI/2以上なら連続、下回ると不連続でVo=αVsが成り立たない
  3. 平滑された負荷電流Ioに対し、スイッチの平均電流はαIo、環流ダイオードは(1−α)Io、電源から流れ出す平均電流はαIo。損失を無視すれば電源の電力VsαIoと負荷の電力VoIoが等しい
  4. 昇圧チョッパ:ONは電源→リアクトル→スイッチで電流が増え(ダイオードは非導通)、OFFは電源→リアクトル→ダイオード→負荷で電流が減る。リアクトル電流の平均をILとすると、ダイオードは(1−α)IL、スイッチはαIL
  5. 直流電動機を逆並列ダイオード付きのスイッチ2個で駆動すると、連続モードのとき電機子電流はIa=(αVs−Eb)/Raの符号で向きが決まる。αVs>Ebなら力行、αVs<Ebなら電流が逆向きになって電源へ戻る回生
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