前のトピックの最後に、こう書いた。内径が一定で流速も変わらない直管でも、先へ行くほど圧力が足りなくなる。ポンプの全揚程の式にあった「配管損失水頭」の正体を、ここで式にする。
仮の場面を1つ置く。ポンプで 4 L/s の水を送る配管の内径を、100 mm から 50 mm に半分にした。同じ長さ当たりの圧力損失は、何倍になるだろうか。2倍か、4倍か。それとも。
読み終えるころには、配管の太さや流量を変える話を聞いた瞬間に、損失が何倍になるかを頭の中で見積もれるようになっている。
まず一言で
内径が一定の円管の直管部で、摩擦による圧力損失と損失水頭は、次の式で表される(ダルシー・ワイスバッハの式)。
は管の長さ、 は内径、 は平均流速、 は密度。(ラムダ)が管摩擦係数、 が損失水頭で、前のトピックと同じく の関係にある。
- 損失は、管が長いほど、流速が速いほど、内径が小さいほど大きい。単位長さ当たりは、 と密度が同じなら、流速の2乗に比例し、内径に反比例する
- は定数ではない。層流なら 、乱流なら (レイノルズ数)と管内面の粗さで決まる
- 曲がりや弁などの損失(局部損失)は、直管の損失に別に足す
- 前のトピックの、吸込み・吐出しとも大気開放のポンプ設備の「全揚程=実揚程+配管損失水頭+吐出し速度水頭」で、配管損失水頭は直管の損失と局部損失の和だ(筆者の整理)
令和8年度の問題Aの No.2 が、この式そのものだ。円管の直管で、管摩擦係数・内径・流速の違う4通りから、単位長さ当たりの損失が最大のものを選ぶ。公式の正答肢は (3)。
仕組み① なぜ、直管で圧力が下がるのか
壁で、水は止まる
流体は、壁に付着して動かない(付着条件。no-slip condition)。管の中心は速く、壁際は遅いので、隣り合う層の間にずれが生じ、粘性により、流れを遅らせる向きの摩擦応力が壁に働く。Kudela の講義ノートは、付着条件のために、どんなに滑らかな管でも損失はゼロにならない、と書く。
力のつり合い
長さ 、内径 の水平な直管の区間を考える。入口付近を除く、十分に発達した流れでは、内径が一定なら流速は変わらず、水は加速も減速もしない。だから、力はつり合う。上流側から圧力が押す力と、下流側から圧力が押し返す力の差が、壁の摩擦力と等しい。壁の単位面積当たりの摩擦応力を 、断面積を 、壁の面積を とすると、
この力のつり合いは標準的な導出で、式の形としては出典資料になく、筆者が書いた(de Souza Mendes のノートは、層流では圧力の力と粘性力が正確につり合うと書く)。式から、なぜ損失が内径に反比例するかが読める。圧力が押す力は断面積( に比例)、摩擦力は壁の面積( に比例)に働く。太い管ほど、水の断面に対して壁の割合が小さいので、同じ摩擦応力でも、必要な圧力差が小さくなる。
ベルヌーイの式に、損失の項を足す
前のトピックのベルヌーイの式は、圧力・速度・高さの3つの水頭の和(全水頭)が一定だと言った。実際の配管では、ポンプなどのない区間で、全水頭が流れの向きに減っていく(Kudela のノートは、流れに沿って全水頭は減り、上流の全水頭 が下流の より大きいと書く)。その差が損失水頭だ。内径が一定の水平管なら、速度水頭も高さも同じなので、損失水頭は圧力水頭の差、 に等しい。鉛直や傾斜のある管では、圧力の差には高さの差の分も入る(前のトピックの鉛直管のとおり)。
これで、直管で圧力が下がる理由を、壁の摩擦と力のつり合いで言える。
仕組み② 管摩擦係数 λ — 「2乗」の約束と、その中身
力のつり合いの式 に、 を入れると、冒頭の式になる。つまり、 は、壁の摩擦応力 を、流れの勢い で割って8倍した無次元数だ()。名古屋大学の試験の解答例の と同じ内容で、(摩擦速度)は と定義される。この定義は出典になく、筆者の補足だ。実験では、産業技術総合研究所の資料のとおり、圧力の傾き を測って、 から求める。
では、損失は本当に に比例するのか。ここに、 の中身が効く。
| 流れ | 管摩擦係数 λ | 損失の流速への依存 |
|---|---|---|
| 層流 | 64/Re | 流速の1乗 |
| 滑らかな管の乱流 | 近似式で Re の−1/4乗に比例 | 流速の約1.75乗 |
| 粗さが支配する乱流 | Re によらない | 流速の2乗 |
は、式を書くときの約束で、本当の流速への依存は の中に隠れている。令和8年度の No.2 では、 が数字で与えられていた。そのような問題では、流速は2乗でよい。
仕組み③ λ を決めるもの — レイノルズ数と粗さ
層流と乱流を分ける数
レイノルズ数 は、流れの勢い()を、流体の粘り気(動粘度 、粘度を密度で割ったもの)で割った数だ(当サイトの読み)。水の動粘度は約 m²/s(20 ℃で 。ISO/TR 3666)。
- が約2300より小さいと層流(水が整然と層をなして流れる)。およそ2100〜4000は遷移域で、層流にも乱流にもなりうる。遷移域より大きい側は、Kudela のムーディ線図では層流でない範囲(Re が 4×10³ から 10⁸)で、本文では乱流(渦を伴って混ざりながら流れる)として扱う。Kudela のノートは、Re が 2300 より小さいときを層流、2100 から 4000 の間を遷移域と書く(2100〜2300 は両方に入る)。本文では層流の目安に約2300を使う
- たとえば内径100 mm の管を、水が 0.5 m/s で流れるだけで、。層流の目安をはるかに超える
層流なら 64/Re
層流では、ハーゲン・ポアズイユの式(de Souza Mendes のノートの式(1))から が出る。粘度 の流体の流量 は で、 を入れると 。これを の定義に入れると になる(筆者の変形)。管内面の粗さは入らない(Kudela)。
乱流なら、粗さが効く
乱流では、 は と、相対粗さ (管内面の凹凸の代表値 を、内径で割った値)で決まる。コールブルックの式がこれを表し、ムーディ線図は、その式と を1枚の図にしたものだ。 の代表値は、商業鋼管で 0.045 mm、引抜管で 0.0015 mm、プラスチックは滑らか(0)とされる。ただし、Kudela は、これらの値は実測値ではなく、測定値の相関から作られたもので、「等価な」粗さと呼ばれることもあり、単なる代表値とみなすとよい、と断っている。
図は、コールブルックの式で筆者が計算した。 が大きいと は小さくなり、十分大きくなると、粗さ だけで決まる値に近づく(Kudela)。図では、粗さが大きいほど、低い で近づく。
これで、 を、層流なら 、乱流なら と粗さから読める。コールブルックの式は両辺に が出てくるので、繰り返し計算が要る(陽に解ける近似式として Haaland の式がある。Kudela)。令和8年度の No.2 では が与えられていた。与えられないときの読み方が、この節の内容だ。
数で追う — 例題と手順
数値は筆者が作った例だ。水の密度は 1000 kg/m³、動粘度は 1.0×10⁻⁶ m²/s、重力加速度は 9.8 m/s²。検算は Python のスクリプトで行った。
例題① 4つの条件から、損失が最大のものを選ぶ(No.2 の型)
長さ・密度が同じ4本の水平な直管で、管摩擦係数・内径・流速が次のとき、単位長さ当たりの圧力損失が最大なのは。
| 条件 | λ・内径[mm]・流速[m/s] | λv²/d(×10⁻³) |
|---|---|---|
| (a) | 0.020・125・3.0 | 1.44 |
| (b) | 0.025・250・2.5 | 0.63 |
| (c) | 0.030・200・2.5 | 0.94 |
| (d) | 0.030・100・2.0 | 1.20 |
手順は3手。①式 を書く。②共通の を落とす。③ を4つ並べる(内径は mm のままでよい。比べるだけなので)。答えは (a)。流速を2乗しないと (d) を選ぶ。
例題② 流量を決めたまま、内径を変える
流量 が決まっていると、流速は 。式に入れて整理すると、
標準的な式で、産業技術総合研究所の資料にある、 を で表した式を、 について解いた形だ(変形は筆者)。 が同じとみなせるなら、直管の損失は、内径が同じで流量が2倍なら4倍。流量が同じで内径が半分なら32倍、内径が10%大きいだけで 1/1.61(約38%減)。
冒頭の問いに、実際の値で答える。商業鋼管(Kudela の表の mm)で L/s のとき、内径 100 mm では流速 0.51 m/s、、損失は 29 Pa/m。50 mm では流速 2.04 m/s、 で 904 Pa/m。比は約31倍で、32倍にほぼ等しい(内径が変わっても はあまり変わらないため)。
やってみよう①:損失を Pa と m で出す
λ=0.020、長さ 100 m、内径 0.10 m の直管を、水が 1.8 m/s で流れる。圧力損失と、損失水頭は。
損失水頭は m。圧力[Pa]と水頭[m]は、前のトピックのとおり で行き来できる。
やってみよう②:流量と内径を変えると
λ が同じとみなせるとき、(1) 流量が1.5倍になると損失は何倍か。(2) 内径を1.2倍にすると損失は何倍か(流量は同じ)。
(1) 倍。(2) 倍。内径が2割大きくなると、損失は4割になる。
例題③ 前のトピックの「仮の 3.0 m」を計算する
前のトピックの例題④は、損失水頭を説明用に仮に 3.0 m と置いた。同じ設備で計算する。実揚程 15 m、吐出し管は商業鋼管(内径 100 mm、粗さ ε=0.045 mm。Kudela の表の値)、流量 0.020 m³/s。管は直管 50 m に、入口1か所、標準エルボ4個、全開の玉形弁1個。
- 流速: m/s、速度水頭 m
- レイノルズ数:(2300の約110倍)で乱流。
- 管摩擦係数:コールブルックの式を繰り返し計算して (Haaland の式でも 0.0180)。図の点
- 直管の損失水頭: m。圧力では約 29.5 kPa
- 局部損失水頭:局部損失は、速度水頭に損失係数 を掛けて と表す(Kudela は と書く)。Kudela の例題3が使っている値は、入口 0.5、標準エルボ 0.9、全開の玉形弁 10(入口の形は書かれていない)。Kudela は、損失係数は管の大きさと関係づけられ、弁のデータは製造者の設計にある程度左右される、と書く。ここでは、その値をそのまま使う。合計 なので、 m
- 全揚程: m
直管を 50 m としたので、前のトピックの仮の 3.0 m は、直管の分だけにちょうど当たる。局部損失は約4.7 mで、直管の1.5倍強。合計は約7.7 mになり、全揚程は、仮の 18.3 m より約4.7 m高い。Kudela は、弁や曲がりの損失が、長い直管より大きくなることがある、と書く。
局部損失は、同じ損失水頭になる直管の長さ(相当管長)に置き換えて、直管に足すこともできる。 とおくと (筆者の導出)。玉形弁は m。ステンレス協会のマニュアルの表2.5-2は、ステンレス鋼管の100Aで、玉形弁を直管 49.2 m、90°エルボを 3.77 m としていて、桁が合う。ただし、表の弁の値は消防庁告示第38号からの抜粋、エルボの値はステンレス協会の計算で、本文の損失係数から出した値とは前提が違う。弁の値は製造者の設計にある程度左右される(Kudela)。
これで、前のトピックの全揚程の式に、計算した損失水頭を入れられる。
やってみよう③:○か×か
次の記述は正しいか。
(a) 管摩擦係数は、管の材質で決まる定数である。 → ×。層流では 64/Re で、流量とともに変わる。乱流でも Re と粗さで決まる。
(b) 層流なら、管内面が粗くても、λ=64/Re である。 → ○。層流の λ に、粗さは入らない。
(c) 弁や曲がりの局部損失は小さいので、無視してよい。 → ×。例題③では、直管の1.5倍強だった。小さいとは限らない。
現場とつなぐ
管径は、損失を目安に選ぶ。 ステンレス協会のマニュアルは、管径の決定に多く使われる等摩擦損失法を紹介している。単位長さ当たりの摩擦損失をある一定値に設定して、それに対応する管を選ぶ方法だ。この方法では流量が増えると流速も増すので、流速にも上限を設けて併用する。同資料の空調配管の試算は、単位摩擦損失圧力を 440 Pa/m、流速を 2.0 m/s(銅管は 1.4 m/s)とし、一般配管用ステンレス鋼鋼管には 3.5 m/s も加えている。この試算はヘーゼン・ウィリアムスの式によるもので、同資料の流量線図は、ダルシー・ワイスバッハの式でも作られている(業界団体の資料で、公的な設計基準ではない。流速の上限は設計図書の指定に従う)。
計算に使うのは、内径だ。 同じマニュアルは、呼び径が外径・内径のいずれとも一致しないこと、管径を決める流量計算は内径を基準にすることを書く。同じ呼び径でも、ステンレス鋼管は炭素鋼管より内径が大きく、このことなどから、同じ流量に対して小さな管径を選べる、とも書く。 が同じとみなせるとき、流量が同じなら、直管の損失は内径の5乗に反比例する。内径が2%違えば、直管の損失は約10%違う()。
損失は、ポンプの仕事で払う。 圧力損失が 、流量が のとき、損失で失われる動力は (筆者の導出。J-Net21 の と同じ形)。例題③の全損失は、約 0.020 m³/s × 75 kPa = 1.5 kW だ。これを供給するのは、ポンプを回す電動機で、効率の分だけ入力は大きくなる。J-Net21 は、配管の損失と吐出し速度水頭を、流量の2乗に比例する変動抵抗と呼ぶ(J-Net21 は、本文の文章では条件を書いていない。本文の表のとおり、配管の損失が流量の2乗に比例するのは、λ が一定とみなせるときだ。筆者の補足)。実揚程がゼロの密閉回路(冷水の循環など)では、全揚程がその変動抵抗だけになる(筆者の読み)。ポンプの電源・制御まわりの電材は、サイト内の水道工事で使う電材にまとめてある(このトピックの数値の根拠ではない)。
ここで扱ったのは、丸い管の水だ。ダクトの圧力損失(矩形ダクトの扱いを含む)は、このトピックでは扱っていない。給水管の流量の見積もり(同時使用率)は、給水方式のトピックで扱う予定だ。
試験での出方とワナ
出題の型
令和8年度の問題Aの No.2 は、先に書いたとおり、管摩擦係数・内径・流速の違う4通りから、単位長さ当たりの損失が最大のものを選ぶ形だった(ダルシー・ワイスバッハの式による)。式の形を知っていれば、計算は例題①の3手で終わる。令和8年度の4つの組合せは、λ が大きく、内径が小さく、流速も大きいものが1つあり、答えがその1つに決まる並びだった。3つの向きがそろわない並びでも解けるように、λv²/d を計算する習慣をつけておく。
ワナ
- 流速を2乗し忘れる、内径を分子に置く。 流速は2乗、内径は割り算。λ や流速だけを見て選ばない
- 流量が一定の問題で、内径を1乗で考える。 内径が半分で流速は4倍、λ が同じとみなせるとき、損失は32倍
- 呼び径を内径として使う。 計算に使うのは内径
- λ を定数と思う。 層流では 64/Re。ただし、その 64/Re を乱流に使わない
冒頭の問いの答え合わせ
直管で圧力が下がる理由。 壁に付着した流体が遅らされ、隣り合う層との粘性のずれで、流れを遅らせる摩擦応力が壁に働く。流速を保つには、その分を圧力の差で押し続けなければならない。内径が一定でも、失われる力学的エネルギーの分だけ、全水頭は流れの向きに減る。水が速く流れるほど先で足りなくなるのは、壁の摩擦応力が流速とともに増え(層流で1乗、粗さが支配する乱流でほぼ2乗)、それとつり合う圧力差も増えるからだ。
内径を半分にすると。 が同じとみなせるなら32倍(流速が4倍、その2乗で16倍、内径が半分で2倍)。商業鋼管で 4 L/s を送る実際の計算でも、約31倍だった。管を細くする節約は、ポンプの圧力と動力となって、運転のあいだ返ってくる。
次の問い
ここまでは、配管が要求する圧力を求めた。実揚程と、流量の2乗に比例する損失(λ が一定とみなせるとき)を足したものだ。では、ポンプが出せる揚程は、流量が変わっても同じなのか。配管が要求する揚程と、ポンプが出せる揚程は、どこで釣り合い、そこから外れると何が起きるのか。次のトピック(ポンプと送風機)で、特性曲線と運転点を読む。