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機械工学等 ・ 5 / 19

管内流れの圧力損失 — 内径が一定の直管で、なぜ先へ行くほど圧力が足りなくなるのか

読み終えると、こうなる

配管の内径や流量を変える話を聞いたとき、圧力損失が何倍になるかを式の形(長さに比例、流速の2乗に比例、内径に反比例)から先に見積もり、そのあとで数字を入れて確かめられるようになる

  • ダルシー・ワイスバッハの式で、直管の圧力損失[Pa]と損失水頭[m]を、途中式つきで求められる
  • 管摩擦係数・内径・流速の組合せから、単位長さ当たりの圧力損失が最大のものを、λv²/d の比較で選べる
  • レイノルズ数を計算して層流か乱流かを判断し、層流では 64/Re が使えること、乱流では管内面の粗さが効くことを説明できる
  • 直管の損失に弁・曲がりの局部損失(損失係数 ζ や相当管長)を足して、前のトピックのポンプの全揚程の式に入れられる
考えてみよう

前のトピックの最後に、こう書いた。内径が一定で流速も変わらない直管でも、先へ行くほど圧力が足りなくなる。ポンプの全揚程の式にあった「配管損失水頭」の正体を、ここで式にする。

仮の場面を1つ置く。ポンプで 4 L/s の水を送る配管の内径を、100 mm から 50 mm に半分にした。同じ長さ当たりの圧力損失は、何倍になるだろうか。2倍か、4倍か。それとも。

読み終えるころには、配管の太さや流量を変える話を聞いた瞬間に、損失が何倍になるかを頭の中で見積もれるようになっている。

まず一言で

内径が一定の円管の直管部で、摩擦による圧力損失と損失水頭は、次の式で表される(ダルシー・ワイスバッハの式)。

Δp=λ Ld⋅ρv22,hL=λ Ld⋅v22g\Delta p = \lambda\,\frac{L}{d}\cdot\frac{\rho v^2}{2},\qquad h_L = \lambda\,\frac{L}{d}\cdot\frac{v^2}{2g}

LL は管の長さ、dd は内径、vv は平均流速、ρ\rho は密度。λ\lambda(ラムダ)が管摩擦係数、hLh_L が損失水頭で、前のトピックと同じく Δp=ρghL\Delta p = \rho g h_L の関係にある。

  • 損失は、管が長いほど、流速が速いほど、内径が小さいほど大きい。単位長さ当たりは、λ\lambda と密度が同じなら、流速の2乗に比例し、内径に反比例する
  • λ\lambda は定数ではない。層流なら 64/Re64/Re、乱流なら ReRe(レイノルズ数)と管内面の粗さで決まる
  • 曲がりや弁などの損失(局部損失)は、直管の損失に別に足す
  • 前のトピックの、吸込み・吐出しとも大気開放のポンプ設備の「全揚程=実揚程+配管損失水頭+吐出し速度水頭」で、配管損失水頭は直管の損失と局部損失の和だ(筆者の整理)

令和8年度の問題Aの No.2 が、この式そのものだ。円管の直管で、管摩擦係数・内径・流速の違う4通りから、単位長さ当たりの損失が最大のものを選ぶ。公式の正答肢は (3)。

仕組み① なぜ、直管で圧力が下がるのか

壁で、水は止まる

流体は、壁に付着して動かない(付着条件。no-slip condition)。管の中心は速く、壁際は遅いので、隣り合う層の間にずれが生じ、粘性により、流れを遅らせる向きの摩擦応力が壁に働く。Kudela の講義ノートは、付着条件のために、どんなに滑らかな管でも損失はゼロにならない、と書く。

力のつり合い

長さ LL、内径 dd の水平な直管の区間を考える。入口付近を除く、十分に発達した流れでは、内径が一定なら流速は変わらず、水は加速も減速もしない。だから、力はつり合う。上流側から圧力が押す力と、下流側から圧力が押し返す力の差が、壁の摩擦力と等しい。壁の単位面積当たりの摩擦応力を τ\tau、断面積を A=πd24A=\dfrac{\pi d^2}{4}、壁の面積を πdL\pi d L とすると、

(p1−p2) πd24=τ⋅πdL(p_1 - p_2)\,\frac{\pi d^2}{4} = \tau\cdot \pi d L ⟹Δp=4τLd\Longrightarrow\quad \Delta p = \frac{4\tau L}{d}

この力のつり合いは標準的な導出で、式の形としては出典資料になく、筆者が書いた(de Souza Mendes のノートは、層流では圧力の力と粘性力が正確につり合うと書く)。式から、なぜ損失が内径に反比例するかが読める。圧力が押す力は断面積(d2d^2 に比例)、摩擦力は壁の面積(dd に比例)に働く。太い管ほど、水の断面に対して壁の割合が小さいので、同じ摩擦応力でも、必要な圧力差が小さくなる。

p₁A p₂A 流れ 壁の摩擦力(流れと逆向き) d 長さ L (p₁−p₂)A = 壁の摩擦力 内径が一定の水平な直管の区間(自作の概念図)。A は断面積。流速が一定なら、圧力が押す力の差と、壁の摩擦力がつり合う

ベルヌーイの式に、損失の項を足す

前のトピックのベルヌーイの式は、圧力・速度・高さの3つの水頭の和(全水頭)が一定だと言った。実際の配管では、ポンプなどのない区間で、全水頭が流れの向きに減っていく(Kudela のノートは、流れに沿って全水頭は減り、上流の全水頭 H1H_1 が下流の H2H_2 より大きいと書く)。その差が損失水頭だ。内径が一定の水平管なら、速度水頭も高さも同じなので、損失水頭は圧力水頭の差、(p1−p2)/ρg(p_1-p_2)/\rho g に等しい。鉛直や傾斜のある管では、圧力の差には高さの差の分も入る(前のトピックの鉛直管のとおり)。

勘違いポイント:前のトピックの細くなる管では、流速が上がったから静圧が下がった。直管の圧力降下は、流速が同じままでも起きる。摩擦で失われた分で、管が太くなっても、その分は戻らない。この2つを混ぜない。

これで、直管で圧力が下がる理由を、壁の摩擦と力のつり合いで言える。

仕組み② 管摩擦係数 λ — 「2乗」の約束と、その中身

力のつり合いの式 Δp=4τL/d\Delta p = 4\tau L/d に、τ=(λ/8)ρv2\tau = (\lambda/8)\rho v^2 を入れると、冒頭の式になる。つまり、λ\lambda は、壁の摩擦応力 τ\tau を、流れの勢い ρv2\rho v^2 で割って8倍した無次元数だ(λ=8τ/(ρv2)\lambda = 8\tau/(\rho v^2))。名古屋大学の試験の解答例の λ=8(u∗/V)2\lambda = 8(u_*/V)^2 と同じ内容で、u∗u_*(摩擦速度)は τ/ρ\sqrt{\tau/\rho} と定義される。この定義は出典になく、筆者の補足だ。実験では、産業技術総合研究所の資料のとおり、圧力の傾き Δp/L\Delta p/L を測って、λ=2dρv2⋅ΔpL\lambda = \dfrac{2d}{\rho v^2}\cdot\dfrac{\Delta p}{L} から求める。

では、損失は本当に v2v^2 に比例するのか。ここに、λ\lambda の中身が効く。

流れ管摩擦係数 λ損失の流速への依存
層流64/Re流速の1乗
滑らかな管の乱流近似式で Re の−1/4乗に比例流速の約1.75乗
粗さが支配する乱流Re によらない流速の2乗
層流は Δp=32μLv/d²(μ は粘度。ハーゲン・ポアズイユの式の変形)。約1.75乗は、近似式が成り立つ範囲での 2−1/4(筆者の計算)

v2v^2 は、式を書くときの約束で、本当の流速への依存は λ\lambda の中に隠れている。令和8年度の No.2 では、λ\lambda が数字で与えられていた。そのような問題では、流速は2乗でよい。

仕組み③ λ を決めるもの — レイノルズ数と粗さ

層流と乱流を分ける数

レイノルズ数 Re=vd/νRe = vd/\nu は、流れの勢い(vdvd)を、流体の粘り気(動粘度 ν\nu、粘度を密度で割ったもの)で割った数だ(当サイトの読み)。水の動粘度は約 1.0×10−61.0\times10^{-6} m²/s(20 ℃で 1.0034×10−61.0034\times10^{-6}。ISO/TR 3666)。

  • ReRe が約2300より小さいと層流(水が整然と層をなして流れる)。およそ2100〜4000は遷移域で、層流にも乱流にもなりうる。遷移域より大きい側は、Kudela のムーディ線図では層流でない範囲(Re が 4×10³ から 10⁸)で、本文では乱流(渦を伴って混ざりながら流れる)として扱う。Kudela のノートは、Re が 2300 より小さいときを層流、2100 から 4000 の間を遷移域と書く(2100〜2300 は両方に入る)。本文では層流の目安に約2300を使う
  • たとえば内径100 mm の管を、水が 0.5 m/s で流れるだけで、Re=0.5×0.1/(1.0×10−6)=50,000Re = 0.5\times0.1/(1.0\times10^{-6}) = 50{,}000。層流の目安をはるかに超える

層流なら 64/Re

層流では、ハーゲン・ポアズイユの式(de Souza Mendes のノートの式(1))から λ=64/Re\lambda = 64/Re が出る。粘度 μ\mu の流体の流量 QQ は Q=πd4Δp/(128μL)Q = \pi d^4\Delta p/(128\mu L) で、Q=πd2v/4Q = \pi d^2 v/4 を入れると Δp=32μLv/d2\Delta p = 32\mu L v/d^2。これを λ\lambda の定義に入れると 64/Re64/Re になる(筆者の変形)。管内面の粗さは入らない(Kudela)。

乱流なら、粗さが効く

乱流では、λ\lambda は ReRe と、相対粗さ ε/d\varepsilon/d(管内面の凹凸の代表値 ε\varepsilon を、内径で割った値)で決まる。コールブルックの式がこれを表し、ムーディ線図は、その式と 64/Re64/Re を1枚の図にしたものだ。ε\varepsilon の代表値は、商業鋼管で 0.045 mm、引抜管で 0.0015 mm、プラスチックは滑らか(0)とされる。ただし、Kudela は、これらの値は実測値ではなく、測定値の相関から作られたもので、「等価な」粗さと呼ばれることもあり、単なる代表値とみなすとよい、と断っている。

図は、コールブルックの式で筆者が計算した。ReRe が大きいと λ\lambda は小さくなり、十分大きくなると、粗さ ε/d\varepsilon/d だけで決まる値に近づく(Kudela)。図では、粗さが大きいほど、低い ReRe で近づく。

10³ 10⁴ 10⁵ 10⁶ 0.1 0.05 0.02 0.01 レイノルズ数 Re(対数目盛) 管摩擦係数 λ(対数) 層流 64/Re 遷移 滑らか ε/d=0.001 ε/d=0.01 例題③ 管摩擦係数 λ とレイノルズ数 Re の関係(概念図。コールブルックの式で筆者が計算)。下から、滑らかな管、ε/d=0.001(破線)、ε/d=0.01。灰色は、層流・乱流のどちらにもなりうる遷移域。点は例題③
勘違いポイント:λ は、管の材質で決まる定数ではない。層流では 64/Re で、流量が変わると変わる。乱流でも Re と粗さで決まる。ただし、粗さの影響が出るのは乱流のときで、層流の 64/Re に粗さは入らない。

これで、λ\lambda を、層流なら 64/Re64/Re、乱流なら ReRe と粗さから読める。コールブルックの式は両辺に λ\lambda が出てくるので、繰り返し計算が要る(陽に解ける近似式として Haaland の式がある。Kudela)。令和8年度の No.2 では λ\lambda が与えられていた。与えられないときの読み方が、この節の内容だ。

数で追う — 例題と手順

数値は筆者が作った例だ。水の密度は 1000 kg/m³、動粘度は 1.0×10⁻⁶ m²/s、重力加速度は 9.8 m/s²。検算は Python のスクリプトで行った。

例題① 4つの条件から、損失が最大のものを選ぶ(No.2 の型)

長さ・密度が同じ4本の水平な直管で、管摩擦係数・内径・流速が次のとき、単位長さ当たりの圧力損失が最大なのは。

条件λ・内径[mm]・流速[m/s]λv²/d(×10⁻³)
(a)0.020・125・3.01.44
(b)0.025・250・2.50.63
(c)0.030・200・2.50.94
(d)0.030・100・2.01.20

手順は3手。①式 Δp/L=λρv2/(2d)\Delta p/L = \lambda\rho v^2/(2d) を書く。②共通の ρ/2\rho/2 を落とす。③λv2/d\lambda v^2/d を4つ並べる(内径は mm のままでよい。比べるだけなので)。答えは (a)。流速を2乗しないと (d) を選ぶ。

例題② 流量を決めたまま、内径を変える

流量 QQ が決まっていると、流速は v=4Q/(πd2)v = 4Q/(\pi d^2)。式に入れて整理すると、

ΔpL=8ρλQ2π2d5\frac{\Delta p}{L} = \frac{8\rho\lambda Q^2}{\pi^2 d^5}

標準的な式で、産業技術総合研究所の資料にある、λ\lambda を QQ で表した式を、Δp/L\Delta p/L について解いた形だ(変形は筆者)。λ\lambda が同じとみなせるなら、直管の損失は、内径が同じで流量が2倍なら4倍。流量が同じで内径が半分なら32倍、内径が10%大きいだけで 1/1.61(約38%減)。

冒頭の問いに、実際の値で答える。商業鋼管(Kudela の表の ε=0.045\varepsilon = 0.045 mm)で Q=4Q = 4 L/s のとき、内径 100 mm では流速 0.51 m/s、λ=0.0223\lambda = 0.0223、損失は 29 Pa/m。50 mm では流速 2.04 m/s、λ=0.0218\lambda = 0.0218 で 904 Pa/m。比は約31倍で、32倍にほぼ等しい(内径が変わっても λ\lambda はあまり変わらないため)。

やってみよう①:損失を Pa と m で出す

λ=0.020、長さ 100 m、内径 0.10 m の直管を、水が 1.8 m/s で流れる。圧力損失と、損失水頭は。

Δp=0.020×1000.10×1000×1.822\Delta p = 0.020\times\frac{100}{0.10}\times\frac{1000\times1.8^2}{2} =20×1620=32,400 Pa≈32 kPa= 20\times1620 = 32{,}400\ \text{Pa}\approx 32\ \text{kPa}

損失水頭は 32400÷(1000×9.8)≈3.332400\div(1000\times9.8)\approx 3.3 m。圧力[Pa]と水頭[m]は、前のトピックのとおり Δp=ρgh\Delta p=\rho g h で行き来できる。

やってみよう②:流量と内径を変えると

λ が同じとみなせるとき、(1) 流量が1.5倍になると損失は何倍か。(2) 内径を1.2倍にすると損失は何倍か(流量は同じ)。

(1) 1.52=2.251.5^2 = 2.25 倍。(2) 1/1.25=1/2.49≈0.401/1.2^5 = 1/2.49 \approx 0.40 倍。内径が2割大きくなると、損失は4割になる。

例題③ 前のトピックの「仮の 3.0 m」を計算する

前のトピックの例題④は、損失水頭を説明用に仮に 3.0 m と置いた。同じ設備で計算する。実揚程 15 m、吐出し管は商業鋼管(内径 100 mm、粗さ ε=0.045 mm。Kudela の表の値)、流量 0.020 m³/s。管は直管 50 m に、入口1か所、標準エルボ4個、全開の玉形弁1個。

  1. 流速:v=0.020/(π×0.1002/4)=2.55v = 0.020/(\pi\times0.100^2/4) = 2.55 m/s、速度水頭 v2/2g=0.331v^2/2g = 0.331 m
  2. レイノルズ数:Re=2.55×0.100/(1.0×10−6)≈2.55×105Re = 2.55\times0.100/(1.0\times10^{-6}) \approx 2.55\times10^5(2300の約110倍)で乱流。ε/d=0.045/100=0.00045\varepsilon/d = 0.045/100 = 0.00045
  3. 管摩擦係数:コールブルックの式を繰り返し計算して λ=0.0182\lambda = 0.0182(Haaland の式でも 0.0180)。図の点
  4. 直管の損失水頭:h=0.0182×(50/0.100)×0.331=3.0h = 0.0182\times(50/0.100)\times0.331 = 3.0 m。圧力では約 29.5 kPa
  5. 局部損失水頭:局部損失は、速度水頭に損失係数 ζ\zeta を掛けて h=ζv2/2gh = \zeta v^2/2g と表す(Kudela は KLK_L と書く)。Kudela の例題3が使っている値は、入口 0.5、標準エルボ 0.9、全開の玉形弁 10(入口の形は書かれていない)。Kudela は、損失係数は管の大きさと関係づけられ、弁のデータは製造者の設計にある程度左右される、と書く。ここでは、その値をそのまま使う。合計 ζ=0.5+0.9×4+10=14.1\zeta = 0.5 + 0.9\times4 + 10 = 14.1 なので、14.1×0.331=4.714.1\times0.331 = 4.7 m
  6. 全揚程:15+0.33+(3.0+4.7)=23.015 + 0.33 + (3.0 + 4.7) = 23.0 m

直管を 50 m としたので、前のトピックの仮の 3.0 m は、直管の分だけにちょうど当たる。局部損失は約4.7 mで、直管の1.5倍強。合計は約7.7 mになり、全揚程は、仮の 18.3 m より約4.7 m高い。Kudela は、弁や曲がりの損失が、長い直管より大きくなることがある、と書く。

局部損失は、同じ損失水頭になる直管の長さ(相当管長)に置き換えて、直管に足すこともできる。ζv2/2g=λ(Le/d) v2/2g\zeta v^2/2g = \lambda (L_e/d)\, v^2/2g とおくと Le=ζd/λL_e = \zeta d/\lambda(筆者の導出)。玉形弁は 10×0.100/0.0182≈5510\times0.100/0.0182 \approx 55 m。ステンレス協会のマニュアルの表2.5-2は、ステンレス鋼管の100Aで、玉形弁を直管 49.2 m、90°エルボを 3.77 m としていて、桁が合う。ただし、表の弁の値は消防庁告示第38号からの抜粋、エルボの値はステンレス協会の計算で、本文の損失係数から出した値とは前提が違う。弁の値は製造者の設計にある程度左右される(Kudela)。

これで、前のトピックの全揚程の式に、計算した損失水頭を入れられる。

やってみよう③:○か×か

次の記述は正しいか。

(a) 管摩擦係数は、管の材質で決まる定数である。 → ×。層流では 64/Re で、流量とともに変わる。乱流でも Re と粗さで決まる。

(b) 層流なら、管内面が粗くても、λ=64/Re である。 → ○。層流の λ に、粗さは入らない。

(c) 弁や曲がりの局部損失は小さいので、無視してよい。 → ×。例題③では、直管の1.5倍強だった。小さいとは限らない。

現場とつなぐ

管径は、損失を目安に選ぶ。 ステンレス協会のマニュアルは、管径の決定に多く使われる等摩擦損失法を紹介している。単位長さ当たりの摩擦損失をある一定値に設定して、それに対応する管を選ぶ方法だ。この方法では流量が増えると流速も増すので、流速にも上限を設けて併用する。同資料の空調配管の試算は、単位摩擦損失圧力を 440 Pa/m、流速を 2.0 m/s(銅管は 1.4 m/s)とし、一般配管用ステンレス鋼鋼管には 3.5 m/s も加えている。この試算はヘーゼン・ウィリアムスの式によるもので、同資料の流量線図は、ダルシー・ワイスバッハの式でも作られている(業界団体の資料で、公的な設計基準ではない。流速の上限は設計図書の指定に従う)。

計算に使うのは、内径だ。 同じマニュアルは、呼び径が外径・内径のいずれとも一致しないこと、管径を決める流量計算は内径を基準にすることを書く。同じ呼び径でも、ステンレス鋼管は炭素鋼管より内径が大きく、このことなどから、同じ流量に対して小さな管径を選べる、とも書く。λ\lambda が同じとみなせるとき、流量が同じなら、直管の損失は内径の5乗に反比例する。内径が2%違えば、直管の損失は約10%違う(1.025=1.101.02^5 = 1.10)。

損失は、ポンプの仕事で払う。 圧力損失が Δp\Delta p、流量が QQ のとき、損失で失われる動力は Q×ΔpQ\times\Delta p(筆者の導出。J-Net21 の P=k×Q×HP = k\times Q\times H と同じ形)。例題③の全損失は、約 0.020 m³/s × 75 kPa = 1.5 kW だ。これを供給するのは、ポンプを回す電動機で、効率の分だけ入力は大きくなる。J-Net21 は、配管の損失と吐出し速度水頭を、流量の2乗に比例する変動抵抗と呼ぶ(J-Net21 は、本文の文章では条件を書いていない。本文の表のとおり、配管の損失が流量の2乗に比例するのは、λ が一定とみなせるときだ。筆者の補足)。実揚程がゼロの密閉回路(冷水の循環など)では、全揚程がその変動抵抗だけになる(筆者の読み)。ポンプの電源・制御まわりの電材は、サイト内の水道工事で使う電材にまとめてある(このトピックの数値の根拠ではない)。

ここで扱ったのは、丸い管の水だ。ダクトの圧力損失(矩形ダクトの扱いを含む)は、このトピックでは扱っていない。給水管の流量の見積もり(同時使用率)は、給水方式のトピックで扱う予定だ。

試験での出方とワナ

出題の型

令和8年度の問題Aの No.2 は、先に書いたとおり、管摩擦係数・内径・流速の違う4通りから、単位長さ当たりの損失が最大のものを選ぶ形だった(ダルシー・ワイスバッハの式による)。式の形を知っていれば、計算は例題①の3手で終わる。令和8年度の4つの組合せは、λ が大きく、内径が小さく、流速も大きいものが1つあり、答えがその1つに決まる並びだった。3つの向きがそろわない並びでも解けるように、λv²/d を計算する習慣をつけておく。

ワナ

  • 流速を2乗し忘れる、内径を分子に置く。 流速は2乗、内径は割り算。λ や流速だけを見て選ばない
  • 流量が一定の問題で、内径を1乗で考える。 内径が半分で流速は4倍、λ が同じとみなせるとき、損失は32倍
  • 呼び径を内径として使う。 計算に使うのは内径
  • λ を定数と思う。 層流では 64/Re。ただし、その 64/Re を乱流に使わない

冒頭の問いの答え合わせ

直管で圧力が下がる理由。 壁に付着した流体が遅らされ、隣り合う層との粘性のずれで、流れを遅らせる摩擦応力が壁に働く。流速を保つには、その分を圧力の差で押し続けなければならない。内径が一定でも、失われる力学的エネルギーの分だけ、全水頭は流れの向きに減る。水が速く流れるほど先で足りなくなるのは、壁の摩擦応力が流速とともに増え(層流で1乗、粗さが支配する乱流でほぼ2乗)、それとつり合う圧力差も増えるからだ。

内径を半分にすると。 λ\lambda が同じとみなせるなら32倍(流速が4倍、その2乗で16倍、内径が半分で2倍)。商業鋼管で 4 L/s を送る実際の計算でも、約31倍だった。管を細くする節約は、ポンプの圧力と動力となって、運転のあいだ返ってくる。

次の問い

ここまでは、配管が要求する圧力を求めた。実揚程と、流量の2乗に比例する損失(λ が一定とみなせるとき)を足したものだ。では、ポンプが出せる揚程は、流量が変わっても同じなのか。配管が要求する揚程と、ポンプが出せる揚程は、どこで釣り合い、そこから外れると何が起きるのか。次のトピック(ポンプと送風機)で、特性曲線と運転点を読む。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 流速を2乗し忘れる、または内径を分子に置く

    なぜ引っかかる式の形を覚えていても、λ・L・d・v の置き場所を取り違えやすい。流速の1乗や内径の2乗で計算すると、最大の組合せを取り違えることがある

    見破り方最初に Δp=λ(L/d)(ρv²/2) を書く。単位長さ当たりを比べるなら、共通の ρ/2 を落として λv²/d を並べる(管全体で、長さが違うなら L も掛ける)。流速は2乗、内径は割り算。選択肢を λ だけ、v だけで見ない

  2. 流量が一定の問題で、内径の効き方を1乗で考える

    なぜ引っかかる内径が変わると流速も変わる。内径が半分なら流速は4倍、その2乗で16倍、さらに 1/d で2倍になり、合わせて32倍になる(λ が同じとみなせるとき)

    見破り方流量が決まっているときは、先に v=4Q/(πd²) で流速を出す。直管の損失は内径の5乗に反比例すると覚えておく(λ が同じとみなせるとき)

  3. 呼び径の数字を、そのまま内径として使う

    なぜ引っかかる呼び径(100A など)は、外径・内径のいずれとも一致しない。同じ呼び径でも管種により内径が違い、流量が同じで λ が同じとみなせるとき、内径の差は直管の損失に5乗で効く

    見破り方計算に使うのは管の内径。設問が「呼び径」だけで内径を与えていないときは、計算の前提がそろっていないと考える

  4. 管摩擦係数を、管の材質で決まる定数と思う

    なぜ引っかかる層流では λ=64/Re で流速とともに変わり、乱流でも Re と粗さで決まる。層流や、粗さが支配しない乱流では、同じ管でも流量が変われば λ は変わる

    見破り方試験で λ が数字で与えられていたら、そのまま使う。与えられていないときは、層流(Re が約2300より小さい)なら 64/Re、乱流なら粗さを読む。層流の 64/Re を乱流に使わない

参考文献・出典

理解度チェック(12問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、12問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用6問・ひっかけ3問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 12 問正解

覚えておきたいポイント

  1. ダルシー・ワイスバッハの式:内径が一定の円管の直管部で、圧力損失 Δp=λ(L/d)(ρv²/2)、損失水頭 h=λ(L/d)(v²/2g)(λ は管摩擦係数、L は管長、d は内径、v は平均流速)。単位長さ当たりは λρv²/(2d) なので、λ と密度が同じなら、流速の2乗に比例し、内径に反比例する
  2. 損失が出る理由:流体は壁に付着して壁面の流速が0になり、壁面に流れと逆向きの摩擦応力が働く。流速が変わらない直管では、圧力差が押す力と壁の摩擦力がつり合う(力のつり合いから Δp=4τL/d。標準的な導出で、筆者が書いた)。ポンプのない区間では、全水頭は流れの向きに減り、その減る分が損失水頭
  3. 管摩擦係数 λ:レイノルズ数 Re=vd/ν(ν は動粘度)。Re が約2300より小さい層流では λ=64/Re で、管内面の粗さによらない。乱流では Re と相対粗さ ε/d で決まり(コールブルックの式、ムーディ線図)、粗さが支配的な域では Re によらない。λ は定数ではなく、損失の流速依存は流れの状態で変わる(層流で1乗、粗さ支配の乱流で2乗)
  4. 局部損失:曲がり・弁・入口などの損失は h=ζv²/2g(ζ は損失係数)。直管に換算した相当管長 L=ζd/λ(筆者の導出)で直管に足してもよい。弁や曲がりが多いと、局部損失が直管の損失より大きくなることがある
  5. ポンプとの関係:吸込み・吐出しとも大気開放のポンプ設備の「全揚程=実揚程+配管損失水頭+吐出し速度水頭」で、配管損失水頭は直管の損失と局部損失の和(筆者の整理)。λ が同じなら、直管の損失は、内径が同じとき流量の2乗に比例し、流量が同じとき内径の5乗に反比例する(Δp/L=8ρλQ²/(π²d⁵)。産業技術総合研究所の資料のスライド9にある λ の式を、Δp/L について解いた形)。局部損失は ζ が同じなら Q²/d⁴ に比例する
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