在庫確認・見積は今すぐ フォームで依頼する 写真の添付もOK / 24時間受付
機械工学等 ・ 16 / 19

保温・保冷の材料 — 何のために巻き、どの材料をどこに使うのか

読み終えると、こうなる

機械室の保温材を見て、材料の系統(繊維系・多孔質系・発泡プラスチック系)と、使える温度、水への強さを言い、仕様書の表から、対象ごとに指定された材料を引けるようになる

  • 保温・保冷・防露の目的の違いを言い、仕様書が「保温材」の語に保冷材と防露材を含めていることを、3.1.2(1) の言葉で説明できる
  • ロックウール、グラスウール、けい酸カルシウム、硬質ウレタンフォーム、ポリスチレンフォームを、使用温度の上限の目安と水への強さで言い分け、並べ替えられる
  • 仕様書の表2.3.2・2.3.5を引いて、対象ごとに使える保温材(ア・イ・ウ)を読み、空欄や「特記による」が何を意味するかを言える
  • 含水率と熱伝導率の近似式(1社のけい酸カルシウムの測定にもとづく)の上で、保温材が濡れたときに通る熱が何倍になるかを計算し、断熱がどれだけ落ちるかの目安を数で言える
考えてみよう

仮に、機械室で2本の配管を見比べるとする。1本は温水管、もう1本は2〜4℃の冷水管。どちらにも保温材が巻いてある。ところが、仕様書の表をひくと、温水管の材料欄は「ロックウール・グラスウール」、冷水管の欄は「ポリスチレンフォーム」だけだ。

同じ保温材なのに、なぜ2〜4℃の冷水管では、選べる材料が減るのか。もう1つ、煙道や排煙ダクトの欄には「ロックウール」しか書かれていない。材料を分けているのは、温度か、水か、燃えにくさか。

読み終えるころには、材料の名前を見ただけで「どの温度まで使えて、水に強いのか弱いのか」を言い、仕様書の表から、対象ごとの材料を引けるようになる。

まず一言で

保温・保冷の材料は、使う温度の範囲、水と湿気への強さ、燃えにくさ、形(板・筒・帯など)で選ぶ。材料は、大きく3つの系統に分かれる。

  • 繊維系(人造鉱物繊維保温材): ロックウール、グラスウール。繊維の間に空気を抱く。高温側に強く、水には弱い
  • 多孔質系(無機多孔質保温材): けい酸カルシウム。さらに高温でも使え、硬くて壊れにくい。水は吸う
  • 発泡プラスチック系: 硬質ウレタンフォーム、ポリスチレンフォームなど。独立した細かい泡を持ち、低温側や防露に強い。熱には弱い

公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版(修補版。以下「仕様書」)は、表2.3.1に保温材としてロックウール、グラスウール、ポリスチレンフォームの3つを挙げ、対象ごとにどれを使えるかを、別の表(表2.3.2・2.3.5)で示す。ただし、保温工事の施工箇所、使用する材料、厚さ等は特記による。特記がなければ次(3.1.2以降)による(第2編 3.1.1(1))。

このトピックは、材料の目的・種類・選び方と、仕様書の適用の範囲に絞る。層の順は「保温・保冷と防振の施工」、結露は「結露と防露」、保温材の下の腐食は「腐食と防食」で扱う。

何のために巻くのか — 保温・保冷・防露

保温材は、熱を通しにくい材料で物を包む。ただし、包む理由は、熱の向きで保温と保冷の2つに分かれる。

ニチアスの技術レポートは、保温保冷工事施工標準(JIS A 9501)の定義を、次のように紹介している。

  • 保温: 常温以上、約1000℃以下の物体を被覆し、熱拡散を少なくすること、または、被覆後の表面温度を低下させること
  • 保冷: 常温以下の物体を被覆し、侵入熱量を小さくすること、または、被覆後の表面温度を露点温度(空気中の水蒸気が水になり始める温度)以上とし、表面に結露を生じさせないこと

JIS本文は有料で、確認していない。上の定義は、同レポートが引いたものによる。表面に結露を生じさせないこと(防露)は、保冷の定義の後半にあたる(当サイトの整理)。

環境省の資料も、断熱材のない配管は表面からの放熱損失が大きく、蒸気配管やバルブ等の断熱を強化すれば、放熱損失や、結露による断熱性能の低下等を防げると説明する。蒸気圧力0.6 MPa(ゲージ圧)、管径80 Aの蒸気配管の未保温部分(1 m×10か所)について、1か所当たりの放熱量を690 Wと想定し、グラスウール保温筒(厚さ30 mm、熱伝導率0.043 W/(m·K))で90%減(69 W)と試算している(想定値)。

仕様書は、保温・保冷・防露を別の材料名に分けず、3.1.2(1) で「保温材(保冷材及び防露材を含む。)」と一括して呼ぶ。だから仕様書で「保温材」と出てきたら、温かい側だけの話とは限らない。同レポートは、保温の厚さについても、経済性、凍結防止、結露防止、火傷防止などの観点から計算で決めると書く(プラント向けの記述)。熱を逃がさない、だけが目的ではない。

材料の系統 — 空気を閉じ込め、温度と水で選ぶ

なぜ、保温材は熱を通しにくいのか

保温材の中身は、ほとんどが空気だ。ロックウールは、微細な繊維の隙間に大量の空気を含むために断熱する(日本ロックウール工業会)。発泡プラスチックは、内部が独立した微細な気泡でできている(技術レポート)。空気は熱を伝えにくい(熱伝導率の意味は「熱の移動」で扱った)。

すると、弱点も決まる。空気が水に置き換わると熱が通る。熱で潰れたり溶けたりして、空気の層が失われると断熱が落ちる(当サイトの整理)。この2つが、材料選びの物差しになる。1つ目は水への強さ、2つ目は使用温度の上限だ。

繊維系 — ロックウールとグラスウール

ロックウールは、高炉スラグや玄武岩などの鉱物を溶かして繊維にしたもの。グラスウールは、ガラスを溶かして繊維にしたものだ(技術レポート)。

上限の目安は熱間収縮温度で測る。日本建築総合試験所の説明では、試験体に一定のおもりを載せて加熱し、厚さの収縮率が10%になる温度で、高温で使う設備を設計するときの、最高使用温度の目安になる。技術レポートの表では、ロックウールが400〜650℃、グラスウールが250〜400℃で、ロックウールのほうが高い。ロックウールの規格値(以上)は、日本ロックウール工業会の一覧では製品の形ごとに違い、フェルト400、板・筒・帯・ブランケット600、繊維のままのウール650で、表の幅と整合する。

  • 形: 板、筒、帯、フェルト、ブランケット(グラスウールは波形保温板)がある。仕様書は、配管に保温筒、タンクと長方形ダクトに保温板を使い(スパイラルダクトは保温帯)、筒や板が使いにくい箇所には、ロックウールなら帯・フェルト・ブランケット、グラスウールなら帯・波形保温板を使ってよいと書く(表2.3.3の注2・3)
  • 号と密度: ロックウールの保温板は、密度で1号(40〜100 kg/m³)、2号(101〜160)、3号(161〜300)に分かれる(日本ロックウール工業会が示すJIS A 9504の区分)。仕様書は、保温板を1号又は2号、保温帯を1号、フェルトを密度40 kg/m³以上、ブランケットを1号とする(保温帯・ブランケットの1号も、同じ一覧で40〜100)。グラスウールの保温板・保温筒・保温帯・波形保温板は「40K以上」とする(表2.3.1。Kの意味は本稿の資料では確認していない)。スパイラルダクト(フランジ部を除く)の保温には、グラスウール保温板32Kも使ってよい(表2.3.4の注7)
  • 不燃: ロックウール製品は、国土交通大臣認定の不燃材料だと、日本ロックウール工業会が示す
  • 水: 空隙がつながった連通構造で、水が入ると容易に吸水する(技術レポート)

多孔質系 — けい酸カルシウム

けい酸質と石灰質を水熱反応させて作る。1号品が1000℃以下、2号品が650℃以下で使える(技術レポート)。強度が高く、外から踏まれても壊れにくい。一方、柔軟性に乏しく、複雑な形には加工が要り、連通構造なので水を吸う。仕様書では、コージェネレーション装置の排ガス管で、ロックウール保温材の耐熱温度を超える場合に使う材料として出てくる(第3編 2.1.8(7))。

発泡プラスチック系 — 独立気泡

内部が独立した微細な気泡で、熱伝導率が低く、透湿性と吸水性も低い。「保冷材」として広く使われる(技術レポート)。

  • 硬質ウレタンフォーム: −200℃近くまで寸法が安定し、液化天然ガス(LNG、−162℃)の保冷にも使われる。上限は約100℃。仕様書では、たとえば、ユニット形空調機のサンドイッチ構造のケーシングの心材(発泡密度35 kg/m³以上、厚さ18 mm以上。コンパクト形は14 mm以上。第3編 1.7.1.2、1.7.2.2)や、氷蓄熱ユニットのタンクの保温(ポリスチレンフォームでもよい。厚さ30 mm以上。第3編 1.5.7(3))として出てくる
  • ビーズ法ポリスチレンフォーム: いわゆる発泡スチロール。上限は70〜80℃の目安。ポリスチレンフォーム系は、約−50〜70℃の温度域で広く使われ、有機溶剤や石油類に侵されやすく、接着剤や塗料を使うときは、原則として指定の水系又はアルコール系を使う(技術レポート)。表2.3.1の保温板・保温筒は、ビーズ法の3号を指す。仕様書は、A種ビーズ法ポリスチレンフォームに準ずる合成樹脂製の支持受けを、温水温度60℃以下(耐熱仕様は80℃以下)に適用するとも書く(表2.2.14)
材料上限の目安水・湿気
ロックウール400〜650℃吸水しやすい
グラスウール250〜400℃吸水しやすい
けい酸カルシウム650〜1000℃吸水しやすい
硬質ウレタンフォーム約100℃吸水しにくい
ポリスチレンフォーム(ビーズ法)70〜80℃吸水しにくい
ニチアス技術時報2023年No.2の表1と本文。繊維系は熱間収縮温度、他は最高使用温度(発泡プラスチックは目安)。1社の報告。はっ水処理した品もある(技術レポート、日本ロックウール工業会のカタログ)。
使用温度の上限の目安(℃) けい酸カルシウム650〜1000 ロックウール400〜650 グラスウール250〜400 硬質ウレタンフォーム約100 ポリスチレンフォーム70〜80(ビーズ法) 02505007501000 数字の意味は材料ごとに違う(目安) 使用温度の上限の目安(自作の概念図。ニチアス技術時報2023年No.2の表1にもとづく。けい酸カルシウムは2号品650℃〜1号品1000℃。ロックウール・グラスウールは熱間収縮温度。ウレタン・ポリスチレンの棒は、見やすさのため幅を持たせている)
熱間収縮温度は「最高使用温度の目安」であって、その温度まで性能が変わらないという数字ではない。しかも、ロックウール・グラスウールは熱間収縮温度、けい酸カルシウムは最高使用温度、発泡プラスチックは目安と、数字の意味が材料ごとに違う。大小は、系統のおおまかな位置を知るために使う。人造鉱物繊維保温材は、約180℃以上でバインダ(ウールを板や筒に成形するときに使う材料)が分解し始め、形が保てなくなる場合がある。振動の大きい所では、特に注意が要る(技術レポート)。

数で追う — 水を含むと、熱はどれだけ逃げるのか

繊維系と多孔質系は、水が入ると吸水する。吸水すると、空気が水に置き換わる。水は空気より熱を伝えやすい。では、どれだけか。

技術レポートの図6は、20℃のけい酸カルシウム保温材について、含水率 x(体積%)と熱伝導率 λ の関係を示し、近似直線の式 y=0.0048x+0.0561(y が熱伝導率)を添えている。この式を使う。

λ=0.0561+0.0048 x[W/(m⋅K)]\lambda = 0.0561 + 0.0048\,x \quad [\mathrm{W/(m\cdot K)}]

平板の熱流は、厚さ L、温度差 ΔT のとき q=λ×ΔT÷L だ(標準的な式。出典資料にはなく、筆者が当てはめた)。厚さと温度差が同じなら、通る熱は λ に比例する。

例題 近似式のとおりとして、含水率0のとき厚さ30 mmで足りた保温が、含水率10%と20%になった。含水率0のときと同じ熱量に抑えるには、厚さは何mm要るか。

  1. 近似式で x=0 の値は λ=0.0561
  2. 10%は λ=0.0561+0.0048×10=0.1041。比は0.1041÷0.0561≒1.86。厚さは 30×1.86≒56 mm
  3. 20%は λ=0.0561+0.0048×20=0.1521。比は0.1521÷0.0561≒2.71。厚さは 30×2.71≒81 mm

この倍率は、近似式の上での比だ。図6の点は直線の上下に0.025ほどまで散らばる。含水率0に近い点の実測の λ は約0.04で、直線の切片0.0561より低い(点の値は目盛りからの読み取り)。この実測(0.040〜0.043とみる)を分母、式の値(10%で0.1041、20%で0.1521)を分子にすれば、倍率は10%で約2.4〜2.6倍、20%で約3.5〜3.8倍と、さらに大きい(実測どうしの比ではない)。

含水率と熱伝導率(けい酸カルシウム、20℃) λ [W/(m·K)] 00.10.2 0102030含水率(体積%) 0.056(式でx=0) 0.104(約1.9倍) 0.152(約2.7倍) 含水率と熱伝導率(自作の図。近似式 λ=0.0561+0.0048x、ニチアス技術時報2023年No.2の図6による。1社の測定にもとづく近似式。倍率は、式でx=0の値0.0561との比。図6の含水率0に近い実測点は約0.04で、式より低い)

濡れた分を、厚さで補おうとすると、近似式の上では、含水率10%で2倍近く、20%で約2.7倍の厚さが要る。しかも、この式はけい酸カルシウムの測定値だ。ロックウールなどに同じ式が当てはまるとは限らない。同レポートは、人造鉱物繊維も、水が入れば断熱が大きく落ちると書くが、同じ式は示していない。

やってみよう ①:含水率5%の保温は、熱を何倍通すか

同じ近似式で、含水率5%のとき。λ=0.0561+0.0048×5=0.0801。x=0 の値との比は0.0801÷0.0561≒1.4倍。含水率0のときの30 mmと同じ熱量にするには、30×1.43≒43 mm。含水率5%でも、近似式の上では4割ほど多く熱が通る。

なぜ、冷たい側では水に強い材料が効くのか

技術レポートは、冷たい側では湿気が入りやすいと説明する。常温より低温の機器や配管を保冷するとき、低温側が負圧となるため、外気中の湿分が保冷材の内部へ侵入しやすい。入った水分は内部で結露し、保冷材に吸水されると、断熱性能が落ちる。だから保冷材には、防湿性が高く、水を吸いにくい独立気泡の材料が広く使われる。

冷水・冷温水管の保温には、ア・イ・ウのどれでも、ポリエチレンフィルムの層が入る(表2.3.3。別に、蒸気管・温水管の種別A〜Cはフィルムが入らない)。フィルムの役目は仕様書に書かれていない。湿気を防ぐ層と読める(当サイトの読み)。層の順は、施工管理法の「保温・保冷と防振の施工」で扱う。

仕様書の表を引く — どの対象に、どの材料か

仕様書は、保温材料の欄に、ア=ロックウール、イ=グラスウール、ウ=ポリスチレンフォームの記号を書く(表2.3.2は空調設備、表2.3.5は給排水衛生設備)。ブライン管は、氷点下に冷やした液体を通す管だ(表の温度は−10℃)。仕様書は、氷蓄熱用のブライン管の規格を、表2.2.4で示す(第2編 2.1.2.3(1))。

対象欄使える材料
温水管、低圧蒸気管、冷媒管ア・イロックウール、グラスウール
冷水・冷温水管、冷水タンクア・イ・ウ3つとも
冷水管(2〜4℃)、ブライン管(−10℃)ウポリスチレンフォームだけ
給水管(暗渠内・多湿箇所・屋外)ウポリスチレンフォームだけ
排煙ダクト、煙道、排気筒(隠ぺい)アロックウールだけ
表2.3.2・2.3.5の保温材料の欄。冷媒管は断熱材被覆銅管を除く。給水管の屋内の行はア・イ・ウ。理由は仕様書に書かれていない。

表を眺めると、2〜4℃の冷水管、ブライン管、暗渠内・多湿箇所・屋外の給水管はウだけ、煙道や排煙ダクトはアだけ、温水管、低圧蒸気管、冷媒管(断熱材被覆銅管を除く)はア・イ、冷水・冷温水管はア・イ・ウだ。ウだけの欄は先に見た系統の性質と矛盾しないが、冷水・冷温水管はア・イも使えるので、冷たい側がすべてウだけという形ではない。冷媒管の欄は、冷水・冷温水管と同じ種別が並ぶのに、ウがない。仕様書は理由を書いていないので、温度、水、燃えにくさのどれが効いているかは、当サイトの読みにとどまる。

表の外にも、材料に関する決まりがある。

  • 防火区画の貫通部: 準耐火構造の防火区画等を貫通する冷水管・冷温水管・給水管・排水管・給湯管の保温は、その貫通する部分をロックウール保温材で行う(表2.3.2・2.3.5の注1)
  • 使いにくい箇所の代替: ポリスチレンフォームの筒が使いにくい箇所には、ロックウールの帯・フェルト、グラスウールの帯・波形保温板を使ってよい(表2.3.3の注4)
やってみよう ②:密度から「号」を判定し、仕様書に合うか確かめる

ロックウールの保温板を、仕様書の表2.3.1に照らす(保温板は1号又は2号)。

(1) 密度120 kg/m³。101〜160の範囲なので2号。号の点では仕様書に合う(JIS A 9504 への適合など、ほかの条件は別)。

(2) 密度200 kg/m³。161〜300の範囲なので3号。保温板は1号又は2号なので、合わない。密度が高いほうが良い、とは限らない。仕様書は、板の号を指定している。

仕様書の「適用の範囲」

ここまでの表は、仕様書の規定だ。では、その規定は、どの工事にどう効くのか。

  • 位置づけ: 仕様書は、国土交通省官庁営繕部及び地方整備局等営繕部が、官庁施設の営繕を実施するための基準として制定したものだ(表紙)。民間工事で使うかどうかは、設計図書の指定による(当サイトの理解)
  • 優先順位: 全ての設計図書は相互に補完する。そのうえで相違があるときは、質問回答書、現場説明書、特記仕様、図面、標準仕様書の順で、これにより難い場合は協議による(1.1.1(2)、1.1.8)。標準仕様書は最後で、「特記」は、このうち標準仕様書を除く指定事項を指す(1.1.2(1))
  • 保温工事: 特記の扱いは先に見たとおり(3.1.1(1))。寒冷地等で厚さの表によれない場合も特記(3.1.6)
  • 標準で指定しない対象: 表の空欄で保温を行う場合は、保温の適用、種別及び厚さを特記する(表の注7)。換気用ダクト、外気取入れ用ダクト、ポンプ、送風機なども、保温を行う場合は特記する(3.1.4.1(3))
やってみよう ③:標準で指定しているか、特記が要るか

次の保温を行うとき、仕様書の標準(表)で指定されているか、特記が要るか。

(1) 機械室の温水管 → 表2.3.2に種別Bとア・イがあり、標準で指定。

(2) 外気取入れ用ダクト → 保温を行う場合は、保温の適用、種別及び厚さを特記(3.1.4.1(3))。

(3) 冷水管(2〜4℃)の屋内露出(居室・廊下)の欄が空欄 → 保温を行う場合は特記(注7)。

現場とつなぐ — 電気設備工事編にも、ロックウールが出てくる

公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版にも、次の規定がある。

  • 防火区画等の貫通(第2編 2.1.10(1)): 金属管が防火区画等を貫通する場合、金属管と壁等との隙間に、モルタル、耐熱シール材等の不燃材料を充てんするか、ロックウール保温材を充てんして標準厚さ1.6 mm以上の鋼板で押さえるか、ロックウール保温材を充てんしてモルタルで押さえる
  • 発電設備の排気管(第5編 2.1.7.5(4)): 屋内部分の排気管の断熱は、ロックウール等を使い、厚さは、特記がなければ75 mm以上とする。鉄線で固定し、溶融亜鉛めっき鋼板又は塗装溶融亜鉛めっき鋼板で巻き仕上げる
  • 発電設備の温水・蒸気配管(第5編 2.1.7.1(17)): 保温処理を施し、保温材の種類、厚さ及び施工は、機械設備工事編の保温工事による

電気設備工事編が、機械設備工事編の保温工事を呼ぶ形だ。

もう1つ、古い設備の改修では、保温材が石綿を含むことがある。環境再生保全機構は、石綿含有保温材が、化学プラントやボイラーの本体、配管の保温に使われてきたと説明する。改修や撤去の前の事前調査の制度は、サイトのガイド「電気設備の改修・解体と石綿事前調査」にある(本稿の根拠にはしていない)。

試験での出方とワナ

令和8年度の問題Aには、保温及び保冷に関する記述のうち、適当でないものを選ぶ4択(No.40)があった。問題Aの No.38〜44は全問解答の必須問題で、この主題は、全員が解く範囲に入る。主題は、保温材の種類ごとの区分、用途、使用温度、水への強さだ。

解き方は3つ。

  1. 主語(材料名)に線を引く。ロックウールか、グラスウールか、ポリスチレンフォームか
  2. 比べる軸を決める。上限の温度か、水への強さか、用途か
  3. 系統から引く。繊維系は高温側で水に弱い。発泡プラスチック系は低温側で水に強く、熱に弱い

間違えやすいのは、比較の向き(どちらが高いか)と、用途(どの材料をどこに使うか)だと考えられる(当サイトの想定。受験者の誤答の統計は確認していない)。

ワナは4つ(上限の取り違え、保温は高温だけという思い込み、空欄の読み違い、発泡プラスチック系は万能という思い込み)。詳しくは、本文末の「出題者のワナ」で見る。

冒頭の問いの答え合わせ

温水管の材料欄はア・イ、冷水管(2〜4℃)の欄はウだけだった。仕様書は理由を書いていないが、材料の側から読める。冷たい側は、外気の湿分が入って結露しやすい。繊維系は吸水すると断熱が大きく落ちる(けい酸カルシウムの近似式の上では、含水率10%で、通る熱は約1.9倍)。独立気泡のポリスチレンフォームは、吸水しにくい。2〜4℃の冷水管でウだけが残る理由は、このように読める(当サイトの読み)。冷水・冷温水管でア・イも使える点と、冷媒管(断熱材被覆銅管を除く)の欄がア・イである点は、これだけでは説明できない。

煙道や排煙ダクトの欄はアだけ。ロックウールは、上限の目安が繊維系で高く、国土交通大臣認定の不燃材料だ(グラスウールの不燃性は、本稿の資料では確認していない)。これも、仕様書が理由を書いていない当サイトの読みだ。

材料を分けるのは、温度、水、燃えにくさのどれか1つではなく、使う場所ごとに重なっている、と読める(当サイトの読み)。名前を見たら、系統、上限、水への強さの3つを引く。それができれば、初見の4択でも、食い違う1つを選べる。

次の問い

材料が決まった。では、どう巻くのか。機械室の冷水・冷温水管は、ロックウール・グラスウールの保温筒なら、保温筒の外に、鉄線、ポリエチレンフィルム、原紙、アルミガラスクロスの順に重ねる(ポリスチレンフォームなら、鉄線の代わりに粘着テープで、原紙は入らない)。ところが冷水タンクでは、フィルムが鉄線より先に来る。この順の違いは、どこから来るのか。巻く順、継目の数字、貫通部、そして防振を、施工管理法のトピック「保温・保冷と防振の施工」で追う。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. ロックウールとグラスウールの使用温度の上限を、取り違える

    なぜ引っかかるどちらも繊維状で、見た目も用途も似ており、「人造鉱物繊維保温材」とひとまとめに覚えるため、どちらの上限が高いのかが曖昧になる

    見破り方原料で覚える。ロックウールは高炉スラグや玄武岩などの鉱物、グラスウールはガラス。上限の目安の熱間収縮温度は、1社の技術レポートでロックウール400〜650℃、グラスウール250〜400℃で、ロックウールのほうが高い。「高い」「低い」の主語が入れ替わっていないかを、文を読むたびに確かめる

  2. 「保温」の語から、高温の管にしか使わないと考える

    なぜ引っかかる保温は「温める」の連想が強く、冷水管やブライン管が、同じ保温材の表で扱われていることを見落とす

    見破り方仕様書は、保温材に保冷材及び防露材を含める(3.1.2(1))。表2.3.2は冷水管やブライン管も保温の種別で定める。保温は常温以上、保冷は常温以下の物体を被覆する、という向きの違いを先に言う

  3. 表の空欄を、「保温を行わない」という意味に読む

    なぜ引っかかる表に記号が並ぶ中で空欄を見ると、「対象外」「不要」と受け取りやすい。注の最後の1行を読み飛ばす

    見破り方表2.3.2・2.3.5の注7は、施工箇所の空欄部分で保温を行う場合は、保温の適用、種別及び厚さを特記する、と書く。空欄は禁止でも、隣の欄の準用でもなく、標準では指定していない、という意味

  4. 発泡プラスチック系を、高温の管にも使える万能の材料と考える

    なぜ引っかかる低温側での性能(独立気泡、吸水しにくい)が目立ち、使用温度の上限を見落とす

    見破り方上限の目安は、硬質ウレタンフォーム約100℃、ビーズ法ポリスチレンフォーム70〜80℃で、繊維系より大きく低い。表2.3.2でも、温水管・蒸気管の欄にウ(ポリスチレンフォーム)はなく、煙道はアだけ。まず温度で系統を絞る

参考文献・出典

理解度チェック(12問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、12問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用6問・ひっかけ3問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 12 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 仕様書(機械設備工事編 令和7年版(修補版))は、保温材(保冷材及び防露材を含む。)、外装材及び補助材を表2.3.1で定め、保温材としてロックウール、グラスウール、ポリスチレンフォーム(ビーズ法。保温板及び保温筒は3号)を挙げる。保温工事の施工箇所、使用する材料、厚さ等は特記による。特記がなければ次による(第2編 3.1.1、3.1.2)
  2. 表2.3.2・2.3.5の保温材料の欄は、ア=ロックウール、イ=グラスウール、ウ=ポリスチレンフォームで書かれる。温水管・低圧蒸気管・冷媒管(断熱材被覆銅管を除く)はア・イ、冷水・冷温水管はア・イ・ウ、冷水管(2〜4℃)とブライン管(−10℃)はウだけ、排煙ダクトと煙道はアだけ。仕様書は理由を書いていない。空欄で保温を行う場合は、保温の適用、種別及び厚さを特記する(注7)
  3. 繊維系の上限の目安は熱間収縮温度(一定のおもりを載せて加熱し、厚さが10%縮む温度)で、1社の技術レポートでは、ロックウール400〜650℃、グラスウール250〜400℃。けい酸カルシウムは1号品1000℃以下、2号品650℃以下。硬質ウレタンフォームは約100℃、ビーズ法ポリスチレンフォームは70〜80℃(目安)。コージェネレーション装置の排ガス管は、ロックウール保温材等で保温し、その耐熱温度を超える場合はJIS A 9510のけい酸カルシウム保温材を使う(第3編 2.1.8(7))
  4. 発泡プラスチック系は、内部が独立した微細な気泡で、低熱伝導率かつ透湿性・吸水性が低く、保冷材として広く使われる。繊維系と多孔質系は連通構造で、水が入ると吸水し、空気が熱伝導率の大きい水に置き換わって、断熱性能が大きく下がる(技術レポート)
  5. 準耐火構造の防火区画等を貫通する冷水管・冷温水管・給水管・排水管・給湯管の保温は、貫通部をロックウール保温材で行う(表2.3.2・2.3.5の注1)。電気設備工事編にも、金属管の防火区画等の貫通部にロックウール保温材を充てんする方法(第2編 2.1.10(1))と、発電設備の屋内の排気管をロックウール等で断熱する規定(第5編 2.1.7.5(4)。厚さは特記がなければ75 mm以上)がある
Xでシェア
打ち合わせを予約 見積依頼