仮に、機械室の冷温水管(ロックウール保温筒)を切って、断面を見るとする。内側から保温筒、鉄線、ポリエチレンフィルム、原紙、アルミガラスクロスの5つが重なっている。この順番は、入れ替えてよいのか。冷水タンクや屋外の長方形ダクトでも、同じ順番なのか。
蒸気管が壁を貫く所では、保温はどこまで巻くのか。絶縁継手の周りに、金属板の外装をかぶせてよいのか。
もう1つ。1つの共通架台に、回転数の違う2台の機械を載せるなら、防振材は、どちらの回転数に合わせて決めるのか。
読み終えるころには、この3つに、仕様書の言葉と数字、そして式で答えられる。
まず一言で
保温の施工は、層の順番、継目と重ね、貫く所・止める所、厚さの4つで読む。防振の施工は、防振材を入れるだけでは足りず、機械の回転数と防振材の固有振動数の比で、効くか、逆に揺れが増えるかが決まる。
たとえば、冷水・冷温水管の保温筒に鉄線を巻くのは、フィルムより先だ。蒸気管が壁を貫く所は、面から25 mm以内の保温を行わない。防振では、加振の振動数と固有振動数の比が√2(約1.41)を超えて初めて揺れが減る向きになり、仕様書は、ポンプの防振基礎に、特記がなければ振動絶縁効率80%以上を求める。
典拠は、公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版(修補版。以下「仕様書」)の第2編 第3章 第1節(保温工事)、第3編の機器の据付け、公共建築設備工事標準図(以下「標準図」)だ。防振の式は仕様書にない(出どころは「仕組み」の節)。
この章は、保温の巻き方・止め方・厚さと、防振の考え方・入れ方に絞る。保温材の種類と性質は「保温・保冷の材料」、防湿のフィルムは「結露と防露」、防振基礎の構造は「機器の据付け」、配管の支持は「配管・附属品の施工」、ダクトの吊りは「ダクト・附属品の施工」で扱う。
保温 — 層には順番がある
管の層 — 筒、鉄線、フィルム、原紙、アルミ
仕様書は、保温(保冷材、防露材を含む。3.1.2(1))を「種別」の記号で表し、種別ごとに材料と施工順序を表で決める(表2.3.3)。機械室・書庫・倉庫の管は種別Bで、冷水・冷温水管にロックウール又はグラスウールの保温筒を使うなら、内側から次の順に重ねる。
ポリスチレンフォームの保温筒では、鉄線の代わりに粘着テープを使い、原紙は入れずにアルミガラスクロスだけを巻く。種別Bの原紙とアルミガラスクロスは、アルミガラス化粧原紙で替えてもよい(注6)。蒸気管・温水管の種別A・B・Cには、ポリエチレンフィルムが入らない(注1)。
覚え方を1つ。管の種別Bは「はめる、縛る、包む、紙、アルミ」。
仕様書は、この順の理由も、各層の役目も書いていない。鉄線は保温筒を管に押さえる層、フィルムは保温材を包む層、と当サイトは読む(フィルムの役目は「結露と防露」で扱った)。順は表で覚える。
対象で、順が変わる
| 対象(種別) | 内側から | 最外層 |
|---|---|---|
| 管・機械室(B) | 筒、鉄線、フィルム、原紙 | アルミガラスクロス |
| 管・屋外、多湿(E) | 筒、鉄線、フィルム | 金属板 |
| 冷水タンク等(F) | 鋲、板、フィルム、鉄線 | 金属板 |
| 温水タンク等(G) | 鋲、板、鉄線 | 金属板 |
| 長方形ダクト・屋外(K) | 鋲、板、フィルム、鉄線 | 金属板 |
やってみよう①:冷水タンクの層を並べる
冷水タンク(種別F、ロックウール保温板)の層を、内側から並べよ。材料は、鉄線、保温板、金属板、ポリエチレンフィルム、鋲の5つ。
答えは、鋲、保温板、ポリエチレンフィルム、鉄線、金属板。板を鋲で止め、フィルムで包み、鉄線で締め、金属板で仕上げる(表2.3.3の種別F)。
場所で、仕上げが決まる
管の最外層は、場所で決まる(場所ごとの種別は表2.3.2、参考使用区分は表2.3.3)。屋内露出の居室・廊下は合成樹脂製カバー(A)、機械室・書庫・倉庫と天井内・シャフト内はアルミガラスクロス(B・C)、暗渠内は着色アルミガラスクロス(D)、多湿箇所(浴室・厨房等)・屋外露出は金属板(E)だ。
継目と重ね — すき間を減らす巻き方
保温は、すき間をできる限り少なくし、継目をずらして張る。3.1.3は、巻き方に数字を付けている。
| 何について | 決まり | 条 |
|---|---|---|
| 保温材相互 | 間隙は少なく、継目は同一線上を避ける | (2) |
| ポリスチレンフォーム保温筒 | 合わせ目は全て粘着テープ、継目は2回巻き | (3) |
| 鉄線巻き | 帯状材は50 mmピッチ以下(スパイラルダクトは150 mm)。筒状材は1本につき2箇所以上、2巻き締め | (4) |
| テープ巻きの重なり | テープ状15 mm以上、フィルム1/2重ね以上、その他30 mm以上 | (6) |
| 巻く向き | テープ巻きは、配管の下方より上向きに巻き上げる | (7) |
| 鋲 | 300 mm角当たり1個以上、全ての面 | (14) |
数字は、何の数字かとセットで覚える。50 mmは帯状材の鉄線のピッチ(上限)、15 mmと30 mmはテープの重なり幅(下限)、300 mm角は鋲の密度だ。下から上へ巻く理由は書かれていない。上の巻きが下の巻きにかぶさる、屋根瓦のような重なりになる、と読める(当サイトの読み)。
厚さの見方 — 数字は種別と呼び径で決まる
保温の厚さは、保温材主体の厚さで、外装及び補助材の厚さを含まない(3.1.3(1))。数字は、表2.3.7が、保温の種別と呼び径で決める。
| 種別・対象 | 呼び径・場所 | 厚さ |
|---|---|---|
| Ⅰ 温水管・給湯管 | 15〜80 | 20 mm |
| 100〜150 | 25 mm | |
| 200〜300 | 40 mm | |
| Ⅲ 冷水管・冷温水管 | 15〜25 | 30 mm |
| 32〜200 | 40 mm | |
| 250〜300 | 50 mm | |
| XI 一般ダクト | 機械室等・隠ぺい部 | 25 mm |
| XI 一般ダクト | 居室・廊下・多湿・屋外 | 50 mm |
数で追う — めっき鋼板の板厚は、保温外径で変わる
塗装亜鉛系めっき鋼板と溶融アルミニウム-亜鉛鉄板の板厚は、保温外径で変わる。保温外径250 mm以下の管・弁等に使う場合は0.27 mm、その他は0.35 mm。ステンレス鋼板は保温外径によらず、管・弁等に使う場合は0.2 mm以上、その他は0.3 mm以上だ(表2.3.1)。
例題1 外径139.8 mmの冷水管と、外径216.3 mmの冷水管。どちらも保温の厚さは40 mm(表2.3.7の種別Ⅲ)で、外装は特記で塗装亜鉛系めっき鋼板とする。
- 保温外径は、仕様書が数え方を書いていないので、管の外径+保温の厚さ(保温材主体)×2とする
- 139.8+2×40=219.8 mm。250 mm以下なので、板厚は0.27 mm
- 216.3+2×40=296.3 mm。250 mmを超えるので、板厚は0.35 mm
管の外径は、例題のために与えた値だ。同じ厚さ40 mmでも、管が太いと板厚の区分が変わる。
やってみよう②:板厚と、山形鋼の長さ
(1) 外径267.4 mmの冷水・冷温水管に、厚さ50 mmの保温材を施工し、特記で塗装亜鉛系めっき鋼板で仕上げる。板厚は?
267.4+2×50=367.4 mm。250 mmを超えるので、0.35 mm。
(2) 横幅600 mmの長方形ダクトを、機械室で保温して吊る。吊り金物の山形鋼の長さは、保温も含めたダクトの横幅以上とされる(第3編 2.2.2.1(1))。保温の厚さは、表2.3.7のXIで25 mm。山形鋼は何mm以上か。
600+2×25=650 mm以上。外装の厚さは、ここでは数えていない(仕様書は、横幅にどこまで含めるかを書いていない)。
貫く所・止める所・守る所
保温の施工には、貫通部、弁、継手、タンクの周りで、個別の決まりがある。
| 場所 | 決まり | 条 |
|---|---|---|
| 蒸気管等の壁・床貫通 | その面から25 mm以内は保温を行わない | 3.1.3(15) |
| 屋内露出の配管・ダクトの床貫通部 | 床面から少なくとも150 mmまで、ステンレス鋼板で被覆。外装が塗装亜鉛系めっき鋼板等の金属板なら除く | 3.1.3(15) |
| 準耐火構造の防火区画等の貫通 | 冷水・冷温水・給水・排水・給湯の管は、貫通部の保温をロックウール保温材で行う | 表2.3.2・2.3.5 注1 |
| 呼び径65以上の弁・ストレーナ(冷水・冷温水・給水・給湯の露出配管) | ビス等で容易に着脱できる金属製カバー | 3.1.4.2(2)、3.1.5.2(2) |
| 絶縁継手廻り | 金属製のラッキングを行ってはならない | 3.1.3(19) |
| ステンレス鋼板製のタンク類 | SUS444製を除き、エポキシ系塗装で保温材と絶縁 | 3.1.4.2(4) |
仕様書は、25 mmを止める理由も、ラッキングを禁じる理由も書いていない。絶縁継手は、給水・給湯・開放系の冷温水・冷却水配管で、機器接続部の金属材料と配管材料のイオン化傾向が大きく異なる場合(鋼とステンレス、鋼と銅)に、絶縁を行うために使う(2.4.1(8))。鋼管とステンレス鋼管、銅管と鋼管の接合は、絶縁フランジ接合とする(2.5.16)。継手の両側を金属板でまたいで覆うと、絶縁した2つの金属が金属板でつながる、と読める(当サイトの読み)。
準耐火構造の防火区画等の貫通部の保温の規定は、表の行のとおり、冷水・冷温水・給水・排水・給湯の管に限る(蒸気管・温水管は注1に入っていない)。ダクト側は「ダクト・附属品の施工」で扱った。
防振 — 揺れを建物に伝えない
なぜ防振するのか
回転する機械は揺れる。その揺れが架台や床を伝わって建物の構造に入ると、離れた壁や天井が音を出す面になる(当サイトの説明)。日本建設機械施工協会の機関誌の記事は、防音ハウスの例で、振動が柱や梁を伝わり、壁面の防音材が放射面となって再び騒音になる経路を、固体音と呼ぶ。
防振は、機械と建物の間に柔らかいもの(防振材)を入れて、揺れが建物へ伝わる割合を減らす仕事だ。効くか逆効果かは、柔らかさと回転数の関係で分かれる。
仕組み — 振動数比で決まる
機械を、ばねで支えた簡単なモデルで考える。機械が回ると、回転の不釣り合いで、回転と同じ振動数 f の周期的な力が出る(以下、f は回転数÷60の Hz。標準的な考え方で、仕様書にはない)。ばねで支えた系には、自分で揺れるときの振動数がある。固有振動数 fN だ。
機械が出す力に対する、建物へ伝わる力の割合を、振動伝達率 τ と呼ぶ。減衰を考えないモデルでは、次の式になる。
r は、加振の振動数 f と固有振動数 fN の比(振動数比)だ。
- r=1は共振で、τ は理論上無限大になる
- r=√2(約1.41)で τ=1。建物に伝わる力は機械の出す力と同じで、効果がない
- r が√2を超えると τ<1になり、r が大きいほど τ は小さい
- r が√2より小さい所では τ>1。防振材を入れたことで、揺れが増える
因幡電機産業の施工要領書は、防振効果を 1−τ とする(τ=20.2%なら79.8%)。仕様書は「振動絶縁効率」と書くだけで、式を示さない。同じ量を指すと読めるが、確認はできていない(当サイトの読み)。以下、絶縁効率を 1−τ として計算する。
固有振動数は、防振材が機械の重さで縮む量(静的たわみ)δ で決まる。標準的な式は、次のとおりだ。
たわみが大きい、つまり柔らかいほど、fN は低く、r は大きくなり、r>1なら τ は小さくなる。式の由来: 標準的な式で、仕様書にはない。因幡電機産業の施工要領書(2020)と、飯島(2014)で確かめた。実際の防振材は減衰を持ち、このモデルは簡略化したものだ。
数で追う — 絶縁効率と、共通架台
例題2 回転数1,200 min⁻¹のポンプを、たわみ5 mmの防振材で支える。絶縁効率はいくつか。
- f=1,200÷60=20 Hz
- fN=4.98÷√(5÷10)=4.98÷0.707≒7.04 Hz(たわみを mm で入れるときは、10で割って cm にする)
- r=20÷7.04≒2.84
- τ=1÷(2.84²−1)=1÷7.07≒0.14。絶縁効率は 1−0.14≒86%
絶縁効率を 1−τ と読めば、仕様書がポンプに求める80%以上を満たす。80%ちょうどなら τ=0.2で、r²=6、r=√6≒2.45。このとき fN≒8.2 Hz、たわみは約3.7 mmだ。
例題3 1,800 min⁻¹の機械Xと、900 min⁻¹の機械Yを、1つの共通架台に載せ、同じ防振材(固有振動数は共通)で支える。どちらも絶縁効率80%以上にしたい。
- f は、Xが30 Hz、Yが15 Hz。80%には r≧√6≒2.45が要る
- Xに合わせる: fN≦30÷2.45≒12.2 Hz。たわみは約1.65 mm以上。Xの条件だけで最小の約1.65 mmにすると、Yの r=15÷12.2≒1.22。τ=1÷|1−1.22²|=2.0で、Yの揺れは、2倍に増えて建物へ伝わる
- Yに合わせる: fN≦15÷2.45≒6.1 Hz。たわみは約6.6 mm以上。Yの条件だけで最小の約6.6 mmにすると、Xの r=30÷6.1≒4.9。τ=0.043で、絶縁効率は約96%
最も低い回転数の機械が、r を最も小さくする。このモデルでは、そこに合わせれば、速い機械は、おのずと足りる。
防振材の種類 — 固有振動数の範囲が違う
防振用の弾性体は、金属ばね、防振ゴム、空気ばねに分けられる。固有振動数は、空気ばねが最も低く0.7〜3 Hzが可能、防振ゴムは4〜15 Hz、金属ばねはその中間に位置する、と機関誌の記事は書く(目安)。仕様書・標準図に出てくる例では、防振ゴムは遠心冷凍機や空気調和機等の標準基礎のパット、金属ばねは送風機の防振材(スプリング。ゴムも可)がある。
機器の防振 — 仕様書と標準図に書かれていること
防振基礎の構造(標準基礎にストッパーを設け、防振架台を間接的に固定する)は、「機器の据付け」で扱った。ここでは、防振材の決め方と、機器ごとの違いを読む。
- 決め方は、送風機とポンプで共通: 防振基礎の防振材の個数と取付位置は、運転荷重、回転速度、防振材の振動絶縁効率により決定する。防振材及び振動絶縁効率は特記による(第3編 送風機 2.1.18.1(3)、ポンプ 2.1.19(3)、第5編 給排水のポンプ 2.2.2.1(3))
- ポンプ: 特記がなければ、振動絶縁効率は80%以上(2.1.19(3)、第5編 2.2.2.1(3))
- 送風機: 防振材がスプリングの場合は、絶縁効率80%以上。標準図の注で、回転速度600 min⁻¹以上の送風機の場合だ(基礎施工要領(四))
- 遠心冷凍機: 標準基礎の上に、防振ゴムパット(15以上)と鉄板を敷く図が標準図にある。吸収冷凍機等の標準基礎には示されない(基礎施工要領(二))。図の題は「標準基礎」で、ストッパー付きの「防振基礎」とは別の図だ
配管・ダクトの防振 — つなぎ目で、揺れを切る
機械は揺れても、配管やダクトは建物に固定されている。そのままつなぐと、揺れが管や壁を伝わる。つなぎ目に、揺れを切る継手を入れる(当サイトの読み。フレキシブルジョイントの趣旨は書かれていない)。
防振継手とフレキシブルジョイント
仕様書は、2つを別の項に書く。
- 防振継手(2.2.8): ベローズ形(鋼製フランジ付き、SUS304・316・316Lのベローズ、耐圧は最高使用圧力の1.5倍以上)と、合成ゴム製の項(補強材を挿入した合成ゴム製、又は3山ベローズ形のポリテトラフルオロエチレン樹脂製。ブライン用はエチレンプロピレンゴム製)。どちらも「防振効果」を有するものとされる
- フレキシブルジョイント(2.2.9): 可とう性と耐圧強度を求め、全長に下限がある
水用のフレキシブルジョイントの全長は、形式で呼び径の区切りが違う。たとえば呼び径100なら、ベローズ形は750 mm以上(65〜150の区分)、合成ゴム製は700 mm以上(100以上の区分)だ(2.2.9.1、2.2.9.2)。形式を先に見る。
どこに入れるか
仕様書と標準図が、継手を入れる場所を決めている。
- 冷凍機の冷温水管・ブライン管・冷却水管: 出入口側に、圧力計、温度計及び防振継手を取り付ける。吸収冷凍機、吸収冷温水機及び吸収冷温水機ユニットでは、防振継手を除く(2.4.2(2))
- 冷却塔廻り: 配管の荷重が冷却塔本体に直接かからないよう十分に支持し、冷却水の出入口側と補給水管の入口側に、合成ゴム製のフレキシブルジョイントを設ける(2.4.2(3))
- 受水タンク・高置タンク: 排水及び通気管を除く各接続管に、鋼板製・ステンレス鋼板製のタンクならベローズ形、FRP製のタンクなら合成ゴム製のフレキシブルジョイントを取り付ける。各接続管の荷重が直接タンク本体にかからないように支持する(2.4.7(5))
- ポンプ廻り: 標準図のポンプ廻り配管要領に防振継手が示される(開放回路の図の防振継手1か所は「防振基礎の場合のみ」)。機器廻りの配管は、機器へ荷重がかからないように固定と支持を行う(第3編 2.1.1(6))。その固定・支持は、地震時等に加わる過大な力、機器の振動、管内流体の脈動等による力を抑えるために行う(第2編 2.6.2.1(4))
- ダクト: 遠心送風機との接続にたわみ継手を用いる(2.1.18.1(4))。ダクトの振動伝播を防ぐ必要がある場合は、防振材を介して吊り及び支持を行う(2.2.2.1(4))
ポンプ廻りの防振継手とフレキシブルジョイントの保温は、空調設備では保温の適用・種別・厚さを特記とされ(3.1.4.1(3)(ニ))、給排水設備では給水管について同じ形で特記とされる(3.1.5.1(2)(エ))。理由は書かれていない。
配管の吊り金物そのものを防振する、という一般的な規定は、確認した範囲の仕様書と標準図には見つからなかった。
現場とつなぐ — 電気設備との接点
公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版には、次の2つの規定がある。
- 電動機への配線のうち、電動機端子箱に直接接続する部分には、金属製可とう電線管を使用する。ただし、電動機が端子箱を持たない場合、又は設置場所が二重天井内の場合を除く(第2編 2.15.1(1)(ア))
- バスダクトを垂直に取り付ける場合は、必要に応じて、スプリング、ゴム等を用いた防振構造の支持物を使用する(2.9.2(4))
どちらも理由は書かれていない。機械は動くので、硬い電線管を直接つなぐと動きを逃がす所がなくなる、と読める(当サイトの読み。規定は防振基礎の機械に限った書き方ではない)。電線管の種類の整理は、サイトのガイド「電線管・配線ダクトの種類と選び方」にある(本稿の根拠にはしていない)。
試験での出方とワナ
令和8年度 問題B No.8(保温、保冷)と No.9(機器類の防振):どちらも必須問題(No.1〜9)で、4つの記述から「適当でないもの」を選ぶ形だった。正答肢の公表後の訂正は、No.1・25・26についてで、No.8・9は含まれない。
- No.8: 公式の正答は、管の層の施工順序を入れ替えた記述だった。ほかの3つのうち、絶縁継手廻りの外装と蒸気管の貫通部は、仕様書の本文(3.1.3(19)、3.1.3(15))に規定がある。ステンレス鋼板製の貯湯タンクの絶縁は、仕様書のほぼ同じ文が空調設備の項のタンク類(3.1.4.2(4))にあり、給排水設備の貯湯タンクには確認できていない(貯湯タンクの本体をSUS444とする規定は第5編 1.4.3)。公式の正答肢に解説はなく、前提にした規定は確かめられていない
- No.9: 公式の正答は、共通架台の防振で、設計の基準にする回転数の向きを取り違えた記述だった。4つのうち、仕様書・標準図で確かめられたのは、遠心冷凍機に防振ゴムパットが描かれること(標準図)と、ダクトを防振材を介して吊る規定まで。配管の吊り金物、浴槽、共通架台の記述と、冷凍機の理由づけは、確認できていない
「適当でないもの」は、層の順・止める幅・基準の向きの3点で点検する。層の順は表の行を引き、止める幅は対象と向きで分け、基準の向きは数で確かめる。
冒頭の問いの答え合わせ
- 管の層の順は、入れ替えられない。冷水・冷温水管の種別Bなら、保温筒、鉄線、フィルム、原紙、アルミガラスクロス。冷水タンクと屋外の長方形ダクトは、フィルムが先で鉄線が後だ
- 蒸気管が壁や床を貫く所は、その面から25 mm以内は保温を行わない。絶縁継手廻りは、金属製のラッキングを行ってはならない
- 共通架台は、最も低い回転数に合わせる(筆者の導出。仕様書に条文はない)。最も高い回転数に合わせると、例題3のとおり、遅い機械の揺れが2倍に増える
これで、保温の記述の層の順、止める幅、板厚を表と数で確かめ、防振の記述の揺れが減るのか増えるのかを、振動数比と絶縁効率から言える。
理解度チェックの問1・2・4・5・6(保温)、問7〜10(防振の計算)、問11・12(機器の防振)で、答え合わせをしよう。
次の問い
絶縁継手の周りに、金属板を巻いてはいけない。空調設備の項のステンレス鋼板製のタンク類(SUS444製を除く)は、保温材とエポキシ系塗装で絶縁する。なぜ、金属は金属とつながると、傷むのか。保温材の下で管が傷んでも、外からは見えない。腐食の仕組みと防食の方法を、次のトピック「腐食と防食」で追う。