冒頭の場面・会話は、内容の理解を助けるための例示です。特定の現場・企業・案件を指すものではありません。
「ACS580-01-025A-4」。銘板の型式をハイフンで割っていくと、途中に浮く2桁の数字がある。「01」だ。同じシリーズの別の設備には「ACS580-04-505A-4」とある。「04」。
単相入力と三相入力の違いだろうか、と最初は考える。実際、この2桁の直後には見慣れた電流らしき記号が続き、末尾には電圧クラスらしき数字も控えている。型式の構造としては、いかにもそういう役割を割り振られていそうな位置にある。
ABBの総合カタログ(文書番号3AUA0000145061 REV G、EN、発行日28.11.2016)の「Type designation」の図を開くと、答えはあっさり出てくる。図が示すブロックは「Product series」「Types and construction」「Rating」「Voltage」「Options」の5つ。「01」「04」が属するのは「Types and construction」――構造区分だ。相数の区分ではない。
型式の骨格――「01」「04」は構造区分であって、相数区分ではない
カタログ3ページの説明文はこう書いている。「01」は壁掛け形(wall-mounted drives)。EMCフィルタやブレーキチョッパー、Modbus RTUフィールドバスインターフェースを内蔵した、単体で使う汎用ドライブだ。「04」はキャビネット組込み用のドライブモジュール(drive modules for cabinet installations)で、標準の構造はIP00。盤の中に組み込んで使うことを前提にした、いわば「部品としてのドライブ」である。もう一つ、「07」はキャビネット組込み完成品(cabinet-built drives)――ABB自身が盤に組み上げた状態で納入するタイプを指す。
つまり「01」と「04」の違いは、電源の相数ではなく、壁に直接掛けて使うか、盤の中に組み込んで使うかという設置形態の違いだった。この点だけでも、型式を眺めて「01は単相、04は三相」と決め打ちすると、実務では的を外す。
では、担当する出力レンジはどう分かれているのか。ここで、もう一つ訂正しておきたい数字がある。ACS580-01は0.75kW止まりではない。カタログ16〜17ページの定格表を最後まで追うと、ACS580-01は型式「02A6-4」の0.75kW(フレームR0)から、型式「430A-4」の250kW(フレームR9)まで届く。一方のACS580-04は、型式「505A-4」の250kW(フレームR10)から「880A-4」の500kW(フレームR11)まで。250kWという同じ数字のところで、壁掛け形とドライブモジュールの守備範囲がぴたりと重なっている。カタログ本文にも「ACS580-04 drive modules with IP00 protection class extend the power range from 250 to 500 kW」とあり、04は01の上限からさらに範囲を延長する存在として明記されている。上限が22kWで切り替わるような境界線は、少なくともこのカタログのどこにも見当たらなかった。
IP21とIP55――型式の桁には現れない防護等級
構造区分の次に確かめておきたいのが、設置環境を左右する防護等級だ。屋外や粉じんの多い現場では、IP21ではなくIP55の指定が必要になる場面がある。ならば型式のどこかに、その違いを示す桁があるはずだ、と当たりを付けてみる。
カタログ14ページの「Degree of protection」欄を読むと、そこにはこう書いてある。「ACS580-01: IP21 as standard, IP55 as an optional variant」。標準はIP21で、IP55はオプション。型式の基本ブロックには、防護等級を示す桁は用意されていない。
ではIP55を指定するとき、型式はどう変わるのか。15ページの寸法表を見ると、そこに載っている型式表記は「ACS580-01+B056」。基本の型式「ACS580-01-088A-4」のような文字列に、「+B056」というオプションコードがそのまま足し算されている形だ。フレームサイズ・出力の違いを示すブロックは変わらず、末尾に一塊のコードが追加されるだけ。ACS580-04の側でも同様で、標準のIP00に対してIP20を選ぶ場合はオプションコード「+B051」(IP20 shrouds for finger safe operation)を足す。
型式の基本ブロックだけを見て、この個体がIP21なのかIP55なのかを判定することはできない。防護等級は、型式のどこかの桁ではなく、末尾に付くか付かないかの「+」記号の有無で管理されている。これは電源仕様や構造区分とは、まったく別の管理軸だ。
実機への当てはめ――025A-4と088A-4
ここまでの規則を、yamlに載っている実型式に当てはめておく。「ACS580-01-025A-4」は、定格表と照合するとIN=25A・PN=11kW・フレームR2に対応する。「ACS580-01-088A-4」はIN=88A・PN=45kW・フレームR5。どちらも、Ratingブロックの数字が定格出力電流(A)をおよそ10倍して桁をそろえた値になっている。
この「電流を基準にサイズコードを決める」という発想は、実は目新しいものではない。当サイトで別途扱っているABB ACS880シリーズの型式規則も、まったく同じ考え方――サイズコードは電流(A)の10倍値――で作られている。ACS580とACS880は型式の見た目こそ似ているが別シリーズであり、外形の桁の数もIP等級の扱いも一致しない部分がある一方で、「サイズコードは電流で決める」という設計思想だけは、シリーズをまたいで共有されている。ABBの汎用ドライブに広く通じる、いわば設計文化の一部と見てよさそうだ。
もう一つ、電圧クラスを示す末尾の数字にも触れておく。カタログの定格表は「3-phase, UN = 380, 400, 415 V」の表と「3-phase, UN = 440, 460, 480 V」の表を別に載せているが、025A-4や088A-4を含む全型式は、両方の表に同一の電流値(IN・Imax)のまま重複して登場する。違うのは、後者の表がPLd・PHdをhp単位で併記している点だけだ。つまり末尾の「-4」は、380Vから480Vまでという一つの電圧の帯をまとめて表す記号であって、単一の電圧を確定させる記号ではない。北米向けの技術カタログ(ACS580-PHTC01U-EN REVF、発行日10/16/2019)まで手を広げると、この末尾の数字には「-2」(208〜240V)、「-6」(500〜600V)という兄弟もあることが分かる。同じ「Voltage」ブロックの中に、複数の電圧レンジが並んでいるわけだ。
現場で間違えやすい点
「01」「04」を相数の違いだと思い込まない。 壁掛け形かキャビネット組込みモジュールかという構造の違いであり、単相・三相の違いではない。供給電源の相数は、型式ではなく仕様書・銘板の別の記載欄で確認する必要がある。
IP55を型式の桁の中に探さない。 防護等級はオプションコード「+B056」(IP55)や「+B051」(IP20 shrouds)の有無で決まる。既設品の銘板に「ACS580-01-088A-4」とだけ書かれていて「+B056」の記載がなければ、それは標準のIP21である可能性が高い。屋外設置や高いIP等級が必要な現場では、型式本体だけでなくオプションコードの有無まで確認したほうがいい。
型式の一桁違いを、公式資料同士で突き合わせる。 今回、1.5kW・4Aという同一の定格に対して、2016年版カタログでは「ACS580-01-04A0-4」、ABB公式サイトの製品ページでは「ACS580-01-04A1-4」という、末尾一桁だけ食い違う表記を確認した。どちらも同じABBの公式情報源でありながら、発行時期の異なる資料の間でこの種のずれが起き得るという実例だ。既設品の型式を控えるときは、可能な限り現行の公式情報源で裏取りしたほうが安全だろう。
実務上の注意点
見積りや更新提案の場面では、この記事で確認した3点を合わせて伝えるのが早い。第一に、壁掛け形(01)かキャビネット組込みモジュール(04)かという設置形態。第二に、IP21で足りるのか、IP55やIP20のオプションコードが必要なのか。第三に、供給電圧が380〜415Vの帯にあるのか、440〜480Vの帯にあるのか。型式の文字列だけをそのまま伝えるよりも、この3点を添えたほうが、対応する型式・オプションの確認が速く進む。
ABB ACS580インバータの型式確認・見積りについて
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、盤に残ったACS580の型式から、構造区分(01/04/07)・サイズコード・防護等級のオプションコードを照合し、代替品・後継品の確認に対応している。銘板の型式が判読しにくい場合や、IP55指定の要否が不明な場合は、写真を添えてもらえれば照合が早い。
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