銘板の型式に「CIMR-AA4A0088AA」とある。ハイフンの先に並ぶ0088という4桁を見て、反射的に「電流88A」と読んでしまう。実のところ、この読み方はだいたい合っている。この形式のND(軽負荷)定格の定格出力電流は、確かにちょうど88Aだ。
問題は「だいたい」であって「常に」ではないところにある。安川電機の公式資料には、この4桁について「軽負荷(ND)定格の定格出力電流の小数点以下1桁を四捨五入した値を示しています」という注記が添えられている。四捨五入——つまりこの数字は、電流の実測値そのものではなく、丸めたあとの管理用の値だということだ。試しに形式一覧でCIMR-AA2A0018FAAを引くと、ND定格の定格出力電流は17.5A。型式に現れるのは17.5ではなく、四捨五入した「18」の方である。0088がたまたま端数のない値だったから疑わずに読めていただけで、型式の4桁を「その数字の電流が流れる」と決めてかかると、いずれ端数の合わない形式に当たって足を止めることになる。
安川電機公式の「形式の見方」図と、200V級・400V級それぞれの形式一覧に基づいて、CIMR-AAという8つの記号の並びが、どこまでを確定させ、どこから先を丸めたり公開資料の外に追いやったりしているのかを一段ずつ確認する。
型式の骨格——8つの位置に分けて読む
公式の形式説明図は、CIMR-AA2A0004FAAという型式を、頭から8つの位置に分けて示している。CIMRは固定の接頭辞でインバータを表す。続く1文字目のAはA1000シリーズであることを示す記号、2文字目のAは仕向地で、記号表にはA=日本とだけ定義されている。
3文字目が電圧クラスで、2なら三相200V、4なら三相400V。続く4文字目がカスタマイズ仕様で、Aは標準品を意味する。ここには「専用ソフトウェア(クレーン、高周波)についてはご照会ください」という注記が付いており、標準品以外のカスタム仕様は型式一覧の表面には現れず、個別確認が前提になっていると読める。
ハイフンをまたいだ次の4桁が電流クラスだ。ここまでで6つ、電流クラスの後にさらに保護構造・耐環境向上仕様・設計順位という3つの記号が続き、型式全体で8つの情報が積み上がっている。8つのうち、製品ごとに変わるのは電圧クラス・電流クラス・保護構造・耐環境向上仕様・設計順位の5箇所で、残りの3箇所(シリーズ・仕向地・カスタマイズ仕様)はほぼ固定されると考えてよい。
電流クラス——四捨五入という一段挟まったフィルター
電流クラスが厄介なのは、この数字だけを見て容量(kW)を逆算しようとする読み方が、必ずしも一意に決まらない点にある。安川電機の形式一覧には「軽負荷(ND)/重負荷(HD)定格(出荷時設定)はパラメータ(C6-01)で設定できます」という注記があり、同じ電流クラスの本体でも、パラメータの設定次第でND定格とHD定格のどちらで使うかを選べる。
CIMR-AA4A0088AAで確認すると、電流クラス0088の最大適用モータ容量は、ND定格なら45kW、HD定格なら37kWとなっている。1つの型式に2つのkW数値が対応しているわけで、「0088だから45kW用」と決めつけるのは半分だけ正しい。この本体1台がどちらの容量として扱われているかは、型式の文字列だけでなく設定側まで見て初めて確定する。
同じ構図は200V級の小容量帯にも現れる。CIMR-AA2A0008FAAという形式を形式一覧で引くと、最大適用モータ容量はND定格で1.5kW、HD定格で1.1kWだ。取扱品の案内文に「1.1kW」とだけ書かれていた場合、それはHD定格側の数字を指しており、ND定格に切り替えれば1.5kWの機体として使える本体だということになる。逆に「1.5kW」とだけ見せられても、それが常時この容量で使えるという意味ではなく、HD定格に設定を戻せば1.1kW用に位置づけが変わる。同一の型式に対して、案内する側がどちらの定格で容量を語っているのかを揃えておかないと、現場では「聞いていた容量と違う」というすれ違いが起きる。
電流クラスの4桁自体も一枚岩ではない。200V級の形式一覧でCIMR-AA2A0004FAAを引くと、ND定格の定格出力電流は3.5A。四捨五入すれば4になるので「0004」という表記に落ち着く。同じ並びでCIMR-AA2A0018FAAはND定格出力電流17.5A、四捨五入で18となり「0018」。逆にCIMR-AA4A0088AAのように、ND定格出力電流がちょうど88.0Aで端数を持たない形式もある。どちらのケースも公式の注記どおりの計算結果であり、矛盾はしていない。ただし読み手の側からすると、型式の4桁だけを見て「これは丸めのない実測値か、丸めた値か」を判別する手段はない。形式一覧の実数値と照合して初めて、その違いが見えてくる。
保護構造——記号は4つ並んでいても、選べる幅は容量で変わる
電流クラスの後ろに続く1文字が保護構造だ。公式の記号表では、A=IP00、F=UL Type1、J=IP20フィンレス、L=IP00フィンレスの4種類が定義されている。
ここでも、記号表に載っていることと、その記号が全容量で選べることは別問題だ。Jの欄には「CIMR-AA4A0058〜AA4A0165のみ対応しています」という注記が添えられており、IP20フィンレスタイプは400V級の、しかも電流クラス0058から0165までという限られた範囲にしか用意されていない。CIMR-AA4A0088AAはちょうどこの範囲に収まるため、保護構造をJに変えたIP20フィンレス版を選べる可能性があるが、これが0004や1200のような範囲外の電流クラスであれば、記号表にJという文字があっても実在しない組み合わせになる。Lのタイプについても「IP00フィンレスタイプについてはご照会ください」と注記されており、標準の型式一覧だけで在庫や納期まで判断するのは難しい。
耐環境向上仕様と設計順位——記号は定義されていても、確認が前提の領域
保護構造の次に続くのが耐環境向上仕様で、A=標準、K=耐ガス、M=耐湿・耐じん、N=耐油、P=耐湿・耐じん・耐振、R=耐ガス・耐振、S=耐振、T=耐油・耐振という8種類の記号が形式説明図には並んでいる。種類自体は豊富だが、この項目にも「耐環境向上仕様についてはご照会ください」という注記が付く。記号の意味は公開されていても、どの容量・どのシリーズで実際に選べるかまでは、公式の型式一覧の表だけからは読み取れない。
型式の最後に残る1文字は設計順位だ。ここまでの7項目にはすべて記号と仕様を対応させる表が添えられているのに対して、設計順位だけは形式説明図の中に凡例表が示されていない。何を表す桁かという位置づけは図から分かるが、記号ごとの意味までは公開資料からは確認できない。分からないことを分かったふりで埋めるよりは、確認できていないとはっきりさせておいた方が、後で型式を読み違える事故を防げる。
CIMR-AA4A0088AAを通しで読む
ここまでの内容を、最初に挙げた型式1本で読み通しておく。CIMRはインバータであることを示す固定の接頭辞。1文字目のAはA1000シリーズ。2文字目のAは仕向地で日本向け。3文字目の4は電圧クラスで三相400V。4文字目のAはカスタマイズ仕様で標準品。続く0088が電流クラスで、ND定格の定格出力電流88Aから四捨五入なしでそのまま4桁になっている。最大適用モータ容量はND定格で45kW、HD定格で37kW。最後のAAは、保護構造がIP00、耐環境向上仕様が標準であることを示している。
8つの記号のうち、確定している情報と、パラメータ設定や個別確認に委ねられている情報が、この1本の中に同居している。型式を写し取っただけでは分からない部分がどこにあるかを知っていることが、発注時の手戻りを減らす一番の近道になる。
安川電機A1000インバータの型式確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物の銘板に残ったCIMR-AA系列の型式から、電圧クラス・電流クラス・保護構造の読み解き、ND/HD定格の確認、後継品との照合まで対応している。四捨五入された電流クラスの数字だけでは容量が一意に決まらないケースもあるため、銘板の写真を添えてもらえると照合が早い。
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