近年、世界的な銅価(銅地金価格)の乱高下・高騰、および脱炭素化に伴うケーブル軽量化ニーズを受け、民間の中大型ビル、メガソーラー、工場設備などの低圧・高圧幹線において、銅導体ケーブルの代替としてアルミ導体ケーブル(AL-CVケーブル)の採用が急拡大しています。
しかし、アルミニウムは銅と異なる物性(導電率、機械的強度、熱膨張率)を持つため、従来の銅ケーブルと同じ感覚で設計・施工を行うと、能力不足による異常発熱や、接続部における破滅的なトラブルを招く恐れがあります。
本ガイドでは、アルミ導体電力ケーブルを安全に導入するための「許容電流の選定基準」と、銅端子接続時に発生する電食(ガルバニック腐食)のメカニズムおよび防止施工手順について技術解説します。
1. 銅とアルミニウムの物性比較と許容電流
アルミニウムは銅に比べて資源量が豊富で安価ですが、電気的特性には以下のような差があります。
| 物性項目 | 銅(Cu) | アルミニウム(Al) | 特徴と設計上の影響 |
|---|---|---|---|
| 導電率(%IACS) | 100% | 約61% | アルミは抵抗が高いため、許容電流が低い。 |
| 比重(g/cm³) | 8.89 | 2.70 | アルミは銅の約1/3と非常に軽量。 |
| 引張強度 | 高い | 銅の約1/2 | 許容引張荷重が低いため、敷設時の力加減に注意。 |
| 線膨張係数 | 小さい | 銅の約1.4倍 | 通電発熱による伸縮が大きいため、端子の緩みに注意。 |
電線サイズ(sq)のアップサイジング設計
アルミニウムの導電率は銅の約6割であるため、同じ断面積(sq:スケア)の電線であれば、流せる電流(許容電流)は低くなります。 そのため、銅電線をアルミ電線に置き換える場合は、1〜2サイズ太い電線を選定する(アップサイジング)必要があります。
- 例:同等の許容電流(約300A〜360A帯)を得るための選定比較
- 銅製 CV 3心 150sq: 許容電流 約360A(気中架設)
- アルミ製 AL-CV 3心 200sq: 許容電流 約340A (不足するためNG)
- アルミ製 AL-CV 3心 250sq: 許容電流 約395A (同等以上となるためこちらを選定)
※サイズを太くしても、アルミの比重は軽いため、ケーブル全体の総重量は銅製に比べて約30%〜50%軽量化されます。これにより高所やラックへの敷設作業効率は大幅に向上します。
2. 異種金属接触腐食(電食)の発生メカニズム
アルミ導体ケーブルの施工において最も重要かつ注意すべきトラブルが、接続端部で生じる電食(ガルバニック腐食)です。
【異種金属接触腐食(電食)のメカニズム】
アルミ線(イオン化傾向:大・陽極)
↓ (電子の移動)
[ 直接接触部 ] ← 水分・湿気(電解質)の介在
↓
銅製端子(イオン化傾向:小・陰極)
※結果:アルミ側が急激に溶け出し、腐食粉(水酸化アルミ)を噴いて痩せ細る
水(結露や雨水)が存在する環境で、イオン化傾向が大きく異なる「アルミニウム(卑)」と「銅(貴)」が直接接すると、一種の局所的な「電池」が形成されます。 電位差(約2.0V)によってアルミニウムから銅へと電子が移動し、アルミ導体自身が化学反応によって急速に腐食・酸化(陽極溶解)します。
アルミ線が腐食して痩せると、端子とのカシメ部に隙間ができ、接触抵抗が増大します。通電時の抵抗発熱によって接続部が数百度に達し、被覆の焼損や断線、最悪の場合は盤内爆発や火災といった重大事故へ発展します。
3. 電食を防ぐ正しい端末接続の施工要領
電食を防止し、アルミケーブルを長期間にわたり安全に運用するための標準施工手順は以下の通りです。
① 異種金属接続用「バイメタル端子」の使用
アルミ電線を、ブレーカー等の銅(または真鍮・錫めっき)の端子台に接続する場合、直接アルミを当ててはなりません。 接続部には、アルミニウムと銅を摩擦圧接(熱と圧力による分子結合)で接合したバイメタル端子を使用します。
- 構造: 電線を通す筒(スリーブ)部分はアルミ製、機器とネジ留めする板(舌部)は銅製になっており、金属の境界は製造段階で完全に密着結合しているため、境界に水分が入り込まず電食が起きません。
② 酸化被膜(不働態被膜)の除去と防食グリスの塗布
アルミニウムの表面は、空気中にさらされると一瞬で極めて強固な「絶縁性」の酸化被膜(不働態被膜)を形成します。これが接触抵抗を高める原因になります。
- ワイヤブラシ掛け: アルミ導体の被覆を剥いた直後に、ワイヤブラシで導体表面を軽く研磨し、酸化皮膜を取り除きます。
- 防食コンパウンド(ジョイントグリス)の塗布: 研磨直後、空気に触れて再酸化するのを防ぐために、速やかにアルミ電線専用の防食導電性コンパウンド(例: アルミノックス等)を導体に薄く均一に塗布します。このグリスは空気(酸素)と水分の侵入を遮断し、電食の発生を長期にわたり防止します。
③ 専用工具と適切なトルク管理
アルミニウムは銅に比べて柔らかく、力を加えると徐々に変形して逃げる性質(クリープ特性)があります。
- 圧着時は必ずアルミ電線・バイメタル端子専用のダイスと工具を使用し、規定値までしっかりと圧縮します。
- ネジ締め時は、熱膨張・伸縮による緩みを防止するため、皿ばね座金(コーンワッシャ。ばね座金とは別部品)を必ず挟み、トルクレンチを用いて規定の締付トルクで管理してください。
まとめ
銅高騰の救世主であるアルミ電力ケーブル(AL-CV)は、物性に基づいた正しい設計・施工を行うことで、非常に高いコストパフォーマンスと安全性を両立できます。
- 許容電流が低いため、銅電線から置き換える際は1〜2サイズアップする。
- 接続部には必ずバイメタル端子(またはアルミ専用端子)を使用する。
- 導体表面の酸化皮膜をブラシで研磨し、防食コンパウンドを塗布して湿気と空気を遮断する。
- トルクレンチと皿ばね座金を併用し、経年緩みを物理的に防止する。
これらの注意点を守り、安全で高効率な電気幹線システムを構築しましょう。
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