見積依頼に「幹線はアルミで。銅150sqのCVT相当」と一行だけ書かれていることがあります。サイズは許容電流表で決まります。迷うのはその先です。端子と工具は銅用の手持ちでいいのか、ブレーカーにそのまま入るのか、そもそも同じCVケーブルなのになぜアルミ品にはJISマークが付かないのか。
端子を流用した接続部は、施工直後は問題なく通電し、時間が経ってから発熱します。その順序を一次情報で追います。
アルミは銅の約60%しか電気を通さないが、同じ重さなら2倍流せる
アルミ導体ケーブルの設計で最初に効くのは、導電率と比重です。日本アルミニウム協会の資料では、電気伝導率は銅の約60%、比重は約1/3で、同じ重さの銅に比べて2倍の電流を通せると説明しています。
| 物性 | 銅(硬質) | アルミ(1100-H18) | 設計・施工への影響 |
|---|---|---|---|
| 導電率(%IACS) | 100 | 57 | 同じ断面積では許容電流が下がる |
| 比重 | 8.9 | 2.7 | 同サイズで質量は銅の4割前後 |
| 引張強さ(N/mm²) | 343 | 166 | 延線の許容張力が小さい |
| 線膨張係数(10⁻⁶/℃) | 16.8 | 23.6 | 通電・停止のたびに端子部の伸縮が大きい |
| 溶融温度(℃) | 1065〜1082 | 646〜657 | 耐火ケーブルには使えない |
出典:日本アルミニウム協会「アルミニウムとは」物理的性質表。表の導電率は1100合金の値で、電線メーカーはケーブル用の導体を「銅の60%」として扱っています。
質量の差は西日本電線のAL-CVTの表で確かめられます。同サイズの銅CVTと比べて外径は同じ、概算質量はサイズにより銅の38〜44%です。150mm²なら銅4,900kg/kmに対しアルミ1,950kg/km。ドラム1本の重さが半分以下になる、という感覚です。
サイズアップの目安は「銅100mm²以下は1サイズ、150mm²以上は2サイズ」
許容電流は導体の抵抗で決まるので、アルミでは同じ断面積のまま置き換えられません。古河電工メタルケーブルのQ&Aは、銅100mm²以下なら1サイズ、銅150mm²以上なら2サイズ上げれば許容電流が銅と同等以上になり、電圧降下もほぼ同等になるとしています。
パンドウイットの説明会資料は「150sq以下で1サイズ、150sq以上で2サイズ」と書いており、150mm²ちょうどの扱いはメーカーで割れます。西日本電線の表(下)では150mm²は2サイズ上げないと銅を超えません。
西日本電線がAL-CVT製品ページで公表している許容電流(参考値。布設条件の記載はありません)を、銅150mm²を基準に並べます。
| CVT導体サイズ | 銅(A) | アルミ(A) | 銅150mm²(380A)との関係 |
|---|---|---|---|
| 150mm² | 380 | 295 | 同サイズでは78% |
| 200mm² | 465 | 365 | 1サイズアップでも届かない |
| 250mm² | 535 | 420 | 2サイズアップで同等以上 |
150mm²から2サイズ上げる、という目安がこの表でも裏付けられます。ただし負荷電流に余裕のある幹線では、同サイズや1サイズアップで収まることもあります。そのときに確認するのは電圧降下です。採用するメーカーの、布設条件と周囲温度を合わせた許容電流表で最終決定してください。らくらくアルミケーブルの許容電流は、日本電線工業会のJCS 0168-2:2016に準拠し、1回線・基底温度40℃・導体最高許容温度90℃の条件で算出されています。
サイズアップに伴って変わるものが3つあります。
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配線スペース。外径が太くなるので、ラック・管路・盤内の余裕を見直します。許容曲げ半径の倍率は銅と同じ6D(D=ケーブル外径)ですが、Dが大きくなる分だけ実際の半径は増えます。
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延線張力。導体の許容張力は銅7kgf/mm²に対しアルミ4kgf/mm²です。自重が軽いので必要な張力自体は小さくなりますが、銅の数字で引くと導体を傷めます。プーリングネットでシースを引く場合は銅と差がありません。
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質量。通電容量を合わせて1〜2サイズ上げても、ケーブル質量は銅より約30%軽くなります(古河電工メタルケーブル、東電物流の案内とも同じ数字)。西日本電線の表で銅150mm²(4,900kg/km)とアルミ250mm²(3,180kg/km)を比べると35%軽い計算です。
一段深い理解:AL-CVにJISマークが付かないのは、JIS C 3605が銅導体しか規定していないから
銅導体のCVケーブルはJIS C 3605(600Vポリエチレンケーブル)で規定されています。この規格にはアルミ導体の規定がありません。そのため、同じ構造のAL-CVであってもJISマークは表示できません。古河電工メタルケーブルはQ&Aでこの点を明記し、導体を除く部分はJIS C 3605を満足し、性能は銅導体CVと変わらないと説明しています。
アルミ導体CVの製品規格は、日本電線工業会(JCMA)の規格JCS 4348「600Vアルミ導体架橋ポリエチレンケーブル」です。メーカーは「JIS C 3605とJCS 4348を基に設計・製造」と書きます。同じ工業会は2017年12月に技術資料第150号「600Vアルミ導体架橋ポリエチレンケーブルの特性及び取扱い」も出しています。設計図書に「JIS C 3605相当」とだけ書くと、アルミ導体を規定していない規格を引くことになります。仕様書には「JCS 4348準拠」と書いておくのが確実です。
ケーブルの外観にも印があります。らくらくアルミケーブルのシースは黒ではなく青です。理由は銅CVとの識別、誤切断の防止、そしてアルミ専用端子の使用を守らせること。西日本電線のAL-CVTも対角2条(計4条)の識別ストライプを入れています。盤屋が端子を選ぶ前に「これはアルミだ」と気付ける仕掛けです。
銅端子を流用した接続部で何が起きるか
銅用の圧着端子にアルミ導体を押し込んで圧着しても、その日は通電します。問題は後から出ます。冨士端子工業は、銅端子をアルミ電線に使えない理由を2つ挙げています。線膨張率の差で通電を繰り返すうちに接触の保持力が落ちて発熱すること、イオン化傾向の差で接触部のアルミが腐食(電食)することです。
【異種金属接触腐食(電食)の起き方】
アルミ導体(電位:卑・アノード)
↓ 水分・湿気(電解質)が入ると電池になる
[ 直接接触部 ]
↓
銅製端子(電位:貴・カソード)
結果:アルミ側だけが溶け出し、腐食粉を噴いて痩せる
結露や雨水がある環境で、電位の異なるアルミ(卑)と銅(貴)が直接触れると、局所的な電池ができます。電位の卑なアルミ側がアノードになって溶け出し、銅側はカソードになって逆に腐食が抑えられます。アルミ導体が痩せると端子とのカシメ部に隙間ができ、接触抵抗が増え、通電時の抵抗発熱で被覆が焼けます。これが電食(ガルバニック腐食)です。
「電位差2V」は現場の数字ではない
化学の教科書にあるイオン化傾向の順序(標準電極電位)では、アルミは−1.68V、銅は+0.34Vで、差は約2Vです(農林水産省の腐食解説にある表)。この2Vを、接続部にかかる電圧のように扱ってはいけません。どちらがアノードになり、どれだけ腐食が進むかを決めるのは、その環境に浸かった状態で各材料が示す自然浸漬電位(腐食電位)のほうです。
腐食防食学会の宮坂による海水中の実測例では、ステンレス鋼の−0.10Vから鋳鉄の−0.67V(対SCE)まで、材料間の差は大きく見ても1V未満に収まっています。アルミが表面にち密な酸化皮膜をつくることもあり、標準電極電位から想像するほど極端な数字にはなりません。腐食の速さを左右する因子も電位差だけではなく、①電位差、②カソード/アノードの面積比、③電解質を含む回路抵抗の3つです。「アルミと銅は2Vもあるから危険」ではなく、「電位の卑なアルミがアノードになり、面積比と水分の条件しだいで腐食が集中する」と覚えるほうが実務に合います。
「電食」という呼び名のずれ
この現象の正式な呼び名は異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)です。現場では「電食」と呼ぶことが多く、本ガイドも併用します。ただし腐食の分類上、「電食」は直流電気鉄道などからの迷走電流で起きる別区分の腐食を指します。農林水産省の分類でも、異種金属接触腐食は自然腐食のマクロセル腐食に、電食は迷走電流・干渉として別に整理されています。文献を当たるときは、用語の指す範囲がずれることに注意してください。
端末処理の手順と、銅と違う3点
古河電工メタルケーブルは、銅導体との端末処理の違いを3点に絞っています。導体表面のブラッシング、アルミ専用端子の使用、導体露出部を防水テープで覆うこと。手順に沿って見ます。
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皮剥ぎとブラッシング。アルミ導体は空気に触れるとすぐ酸化皮膜をつくります。日本アルミニウム協会はこの皮膜を「ち密で安定」で自己修復すると説明し、同じ資料は、工業材料としてのアルミナ(酸化アルミニウム)の性質に「電気絶縁抵抗が大きい」を挙げています。耐食性の源が、接続部では絶縁層になります。ワイヤブラシで皮膜を除きます。
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コンパウンドの塗布。研磨した導体にコンパウンド(ゲル状の絶縁油)を塗り、再酸化と水分の侵入を防ぎます。冨士端子工業のアルミ端子は端子内面に定量を事前塗布済み、パンドウイットの端子もバレル内部に内包済みで、塗り忘れを防ぐ設計です。
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専用端子の挿入と圧着・圧縮。アルミ専用端子かバイメタル端子を使います。冨士端子工業の圧着端子なら銅用の電動油圧工具本体(マクセルイズミ、カクタス等)を共用できますが、アルミ専用のダイスが必要です。圧縮端子ではBurndy社のダイスと専用ヘッドを使います。
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防水処理。圧着部に自己融着テープを巻きます。水分が入る可能性のある場所では、端子の電線接続箇所の防水が電食対策の最後の一手です。
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端子台・ブレーカーへの接続。専用端子は銅用のR端子より大きく、形状も厚みも違います。収まるか、ボルト径が合うかを事前に確認します。古河電工メタルケーブルは、ボルトサイズが合っていないと性能が出ないこと、接続側の接触部にもめっき処理が必要なことを挙げています。
らくらくアルミケーブルシステムには、皮剥ぎとブラッシングを同時に行う専用ソケットがあります。ドリルドライバー用で、最大トルクは40N・m以下、インパクトドライバーには付けられません。アルミは空気中ですぐ皮膜を再生する(協会資料の「自己修復作用」)ので、研磨から圧着までを続けて行います。工具ページの手順も皮剥ぎ・ブラッシングから防水処理までを一連で示しています。
もう1つ、ケーブルカッターの注意があります。カッター本体は銅と共用できますが、アルミ導体を切る前に刃に残った銅粉を拭き取ります。切断面に銅の粉が残ると、そこが電食の起点になるからです(冨士端子工業・古河電工メタルケーブルの両方が注意しています)。
一段深い理解:端子メーカーは「異種金属を触れさせない」設計で電食を消している
電食を防ぐ考え方は「アルミと銅を直接触れさせない」の一点です。各社の実装は少しずつ違います。
| 方式 | 構造 | 電食をどう避けるか | 注意点 |
|---|---|---|---|
| アルミ専用端子(錫めっき) | アルミ製の筒と舌部、全体に錫めっき | 接触面はめっき同士。端子台側もニッケルめっき品を組み合わせる | 受け側の接触部にもめっきが必要。銅用より大きい |
| バイメタル端子 | アルミのバレル部と銅の丸端子部を接合 | 境界は製造時に接合済みで水が入らない。銅機器にそのまま接続 | アルミ端子より高価 |
| 銅・アルミ直線接続材/ハイブリッドケーブル | 現場または工場でアルミ導体を銅導体に変換 | 盤側は銅のまま | 直線接続材は採用実績が少ない。工場加工は納期を要する |
出典:らくらくアルミケーブルシステムQ&A・切替ページ、パンドウイットPJ24-020、パンドウイット製品説明会資料(2025年11月)。
冨士端子工業の説明によれば、国内のアルミ端子は長く油圧式の「圧縮」端子が主流で、150mm²の端子なら2か所を押しつぶす必要がありました。同社は銅線用工具の本体に専用ダイスを付けて「圧着」できる端子を開発し、JIS C 2810の電線サイズに合わせた寸法にしました。海外規格品にはJISのサイズ区分に合うものがなかったからです。パンドウイットは逆に、ダイス交換なしで38〜400mm²を圧着できる工具とセットで展開し、2024年4月にバイメタル端子を国内発売しました。同社の端子はJIS C 2810とJCAA K1001(日本電力ケーブル接続技術協会の規格)の接続要求をクリアしたとしています。
共通しているのは「ケーブルと端子の組み合わせはメーカー同士で確認したものに限る」という姿勢です。パンドウイットの説明会資料は、施工事例がまだ少ないため、予めメーカー同士で使用確認したものに限り各メーカーが品質を担保する、と書いています。同資料によれば国内の電線需要で銅に対するアルミの比率は約4%(日本電線工業会統計から)で、採用が集中しているのは太サイズ・長尺の太陽光発電所と物流センターです。細サイズ・短尺のビル・マンションでは効果が出にくいとも述べています。
現場で間違いやすい点
| やりがちなこと | 何が起きるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 銅用端子・銅用ダイスの流用 | 線膨張差で保持力が落ちて発熱、接触部のアルミが電食 | 冨士端子工業、古河電工メタルケーブル |
| ブラッシング後に時間を空けて圧着 | 酸化皮膜が再形成される(協会資料の自己修復作用からの推論) | 日本アルミニウム協会、古河電工メタルケーブル工具ページ(手順を一連で示す) |
| 銅粉の付いたカッターで切断 | 切断面の銅粉が電食の起点になる | 冨士端子工業、古河電工メタルケーブル |
| 防水テープを省く | 水分が電解質になり、接続部で腐食が進む | 古河電工メタルケーブルQ&A |
| 銅の張力(7kgf/mm²)で延線 | 許容張力4kgf/mm²のアルミ導体を傷める | 古河電工メタルケーブルQ&A |
| 設計図書を「JIS C 3605」だけで書く | アルミ導体を規定していない規格を引くことになる | 古河電工メタルケーブルQ&A(JIS C 3605にアルミ導体の規定なし) |
いずれも接続直後は通電できてしまうので、症状が出るのは後になります。施工記録に「端子の型番・ダイス・コンパウンドの有無・防水処理」を残しておくと、点検時に見返せます。
アルミが使えない場所
アルミ化は幹線に向く一方で、使えない場所があります。
- 消防用の耐火ケーブル(FP-C)。古河電工メタルケーブルは、消防用ケーブルには800℃で30分間の通電が求められ、融点660℃(日本アルミニウム協会の表では1100合金で646〜657℃)のアルミ導体は使えないとしています。
- 引込口配線と低圧変流器の両側。東電物流の案内では、引込口配線と低圧変流器の両側には銅線を使い、アルミケーブルは幹線に限る(低圧のみ、高圧は取り扱いなし)としています。
- 既設の銅機器に直接。西日本電線が書くとおり、一般機材は銅接続仕様なので、特殊品の調達と電食防止措置が前提です。
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