97-3102A-20-27P。この型式を渡されたら、シェルサイズ「20」まではすぐに読み取れる。問題はその次の「27」だ。深く考えなければ「27極」と読んでしまうだろうし、少し慎重な人なら「いや、20サイズで27極は物理的に無理があるのでは」と一度立ち止まるかもしれない。実際、この製品を扱う電材サーチの社内データには「20サイズ・14極オス」という注記が入っている。27でも、単純な思いつきの数字でもなく、14。では、この「14」はどこから来た数字なのか。当て推量なのか、それとも公式資料に裏付けがあるのか。
Amphenol Industrial Operationsの公式カタログを実際に開いて確認すると、答えは出た。ただし、その過程で見えてきたのは、この1型式だけの話では済まない事実だった。
結論から言うと
MS3102A/MS3106A/97-3102A・97-3106Aシリーズ(MIL-DTL-5015準拠)の型番は、次の骨格で組み立てられている。
- シリーズ/プレフィックス:MS(軍用規格品)またはAmphenol独自の97(市販カタログ品。公式カタログは「MIL-5015 style」と説明し、既存の97シリーズおよびSAE AS50151コネクタとの嵌合・取付互換をうたっている)
- シェルタイプ:3100(壁面取付レセプタクル)/3101(ケーブルレセプタクル)/3102(箱取付レセプタクル)/3106(ストレートプラグ)/3107(クイックディスコネクトプラグ)/3108(アングルプラグ)
- シェル構造:A(ソリッドバックシェル)/B(スプリットバックシェル)
- シェルサイズ:8S・10SL・12S・14S・14・16S・16・18・20・22・24・28・32・36のいずれか
- 挿入配列番号:シェルサイズの後ろに続く数字。ここが今回の核心
- コンタクト種別:P(ピン)またはS(ソケット)
97-3102A-20-27Pの「27」は、実際には27極ではなく14極だった。カタログの挿入配列表で確認すると、配列記号「20-27」は16サイズのコンタクトを14本持つ配列として登録されている。ここまでは電材サーチの既存の注記と一致する。だが、この確認作業のために同じシリーズの他の型式を同じ表で当たってみたところ、6型式のうち5型式で、シェルサイズの次に来る数字と実際の極数が食い違っていた。MS3102A18-9Pは9極ではなく7極。MS3102A20-29Pは29極ではなく17極。97-3102A-18-1Sは1極ではなく10極。97-3102A-14S-2Sは2極ではなく4極。数字がそのまま極数と一致していたのは、当初の疑問だった20-27の1件だけだった。
型番の分解 ── 「挿入配列番号」は極数ではなく、参照キーだった
Amphenolの公式カタログ18頁には「How to Order」という見出しのページがあり、実際の型番例「97 – 3101 A – 28 – 21 S Y (959)」を引き出し線で分解して見せている。先頭の「97」はSeries Number(カタログの表記は「97 - Amphenol® Product Series Designation」)。続く「3101」がShell Type。「A」がShell Construction。「28」がShell Size。「21」がInsert Configuration Number――ここに「Insert Availabilityの4・5頁と、Insert Arrangement illustrationsの6〜11頁を参照」という注記が入る。そのあとの「S」がContact Type(P=Pin/S=Socket)、「Y」がAlternate Insert Positions、「(959)」がShell Finishだ。図そのものには、この「21」が何極を意味するかは一切書かれていない。JAEのJL04V/JL10シリーズで見られた構造と同じで、配列番号は極数の直接表現ではなく、詳細ページへの参照キーとして機能している。
この読み方が思いつきでないことは、2頁の「Guide to Selecting a Connector」を読むとはっきりする。そこにはこう書かれている。8本の16ゲージ線を接続したいなら、まず8本のコンタクトを含む配列のセクションを探し、配列番号「20-7」を選ぶ――という趣旨の解説だ。つまりカタログ自身が「配列番号を見て極数を暗算するのではなく、欲しい極数から表を逆引きして配列番号にたどり着く」という手順を、購入者に明示的に指示している。配列番号は極数の記録ではなく、検索のための整理番号なのだ、と考えるほうが実態に近い。
その参照先である4〜5頁の「Insert Availability」表を実際に開くと、配列記号ごとのコンタクトサイズ別本数が並んでいる。今回の6型式に関係する行だけ抜き出すとこうなる。
| シェルサイズ-配列番号 | コンタクト構成 | 実際の極数 |
|---|---|---|
| 14S-2 | 16サイズ×4本 | 4極 |
| 18-1 | 16サイズ×10本 | 10極 |
| 18-9 | 16サイズ×5本+12サイズ×2本 | 7極 |
| 20-27 | 16サイズ×14本 | 14極 |
| 20-29 | 16サイズ×17本 | 17極 |
この5行の数値は、Amphenol公式カタログ・Glenair公式サイトの挿入配列表・MilNec公式サイトの挿入配列表という独立した3つの資料で、一致した数字として確認できた。1つの資料の誤植や旧版という可能性はほぼ消える。配列番号「27」の正体は14極で確定だが、同じ確からしさで、配列番号「9」の正体は7極、「29」の正体は17極、「1」の正体は10極、「2」の正体は4極でもある。
実機への当てはめ ── 6つの型式を分解する
ここまでの読み方を、実際に取り扱う6つの型式に当てはめてみる。
MS3102A18-9P(箱取付レセプタクル・オス)は、MS(軍用規格プレフィックス)・3102(箱取付レセプタクル)・A(ソリッドバックシェル)・18(シェルサイズ)・9(配列番号、実際は7極)・P(ピン)という構成だ。7極のうち5本は16サイズ、残り2本は12サイズという、コンタクトサイズが混在した配列である。12サイズは16サイズより一回り大きく、より太い電線・より大きい電流に対応するコンタクトなので、この配列は「信号線5本+動力線2本」のような混在配線を想定した組み合わせだと読める。
MS3102A20-29P(箱取付レセプタクル・オス)は、MS・3102・A・20・29(配列番号、実際は17極)・Pという構成。17極すべてが16サイズで統一されている。
MS3106A18-9S(ストレートプラグ・メス)は、3106(ストレートプラグ)に変わる以外はMS3102A18-9Pと同じ配列を使う。実際の極数は同じ7極(16サイズ5本+12サイズ2本)で、MS3102A18-9Pと嵌合する相手方の部品だと考えられる。
97-3102A-18-1S(箱取付レセプタクル・メス)は、97(Amphenol独自プレフィックス)・3102・A・18(シェルサイズ)・1(配列番号、実際は10極)・S(ソケット)という構成。6型式の中でもっとも配列番号と実際の極数の開きが大きいのがこの型式で、「1」という数字から連想する極数と、実際の10極という数字との差は9極分にもなる。
97-3102A-20-27P(箱取付レセプタクル・オス)は、97・3102・A・20・27(配列番号、実際は14極)・Pという構成。今回の出発点だった型式で、14極すべてが16サイズで統一されている。
97-3102A-14S-2S(箱取付レセプタクル・メス)は、97・3102・A・14S(シェルサイズ)・2(配列番号、実際は4極)・Sという構成。公式カタログの寸法表によれば、シェルサイズ「14S」は「14」と同じカップリングねじ径(7/8-20)を持ちながら、全長が短い派生サイズだ。「S」は極数とは無関係に、シェル形状のバリエーションを示す記号である。4極すべてが16サイズで統一されている。
現場で間違えやすい点
一つめは、繰り返しになるが、シェルサイズの次に来る数字を極数だと思い込む読み方だ。97-3102A-18-1Sを「1極品」として代替候補を探せば、実際の10極という前提条件そのものが違ってくる。逆にMS3102A20-29Pを「29極品」だと思って盤内のスペースや配線本数を計画すれば、実際に配線できるのは17本分に過ぎない。極数を確認する必要がある場面では、型番の桁を数えるのではなく、公式カタログの挿入配列表を必ず開く必要がある。
二つめは、コンタクトサイズの混在を見落とす点だ。MS3102A18-9P/MS3106A18-9Sの7極は、16サイズ5本と12サイズ2本という異なる規格のコンタクトが同居している。「7極ある」ことだけを確認して発注すると、実際に届いた製品のコンタクトが2種類のサイズに分かれていることに気づかず、圧着工具や電線サイズの手配で手戻りが生じかねない。
三つめは、MS(軍用規格プレフィックス)と97(Amphenol独自プレフィックス)の型番を、まったく別の製品系列だと誤解する点だ。公式カタログは97シリーズを「MIL-5015 style」の汎用シリンドリカルコネクタと位置づけ、既存の97シリーズおよびSAE AS50151コネクタとの嵌合・取付互換をうたっている。シェルタイプ・シェル構造・シェルサイズ・挿入配列番号・コンタクト種別という型番の骨格は、MSプレフィックスでも97プレフィックスでも共通しており、配列番号が示す実際の極数も同じ挿入配列表を参照する。片方の系列で調べた極数を、もう片方の系列の同じ配列番号にそのまま当てはめても矛盾は生じない。
実務上の注意点
型番から極数を読み取る際は、シェルサイズと配列番号をセットで確認したうえで、配列番号そのものを「極数」ではなく「挿入配列表を引くための識別子」として扱いたい。実際の極数・コンタクトサイズ・電圧レーティングを確認する必要がある場面では、必ず公式カタログの挿入配列表(Insert Availability/Insert Arrangements)を開き、シェルサイズと配列番号の組み合わせごとの実測値を拾う。この一手間を省くと、シェルサイズだけ合っていて極数が異なる部品、あるいはコンタクトサイズの構成が違う部品を手配してしまうリスクが残る。
もう一つ押さえておきたいのが、サービスレーティング(電圧区分)の違いだ。Glenair公式サイトの挿入配列表によれば、16サイズのコンタクトだけで構成された配列(20-27・20-29・14S-2など)はA区分(500V)またはINST区分(200V)に分類される一方、12サイズ以上のコンタクトが混在する配列(18-9など)は区分が変わる場合がある。極数が同じでも、コンタクトサイズの構成次第で許容電圧・許容電流が変わる点は、更新・置き換えの検討時に見落としやすい。
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