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分電盤電気基礎安全対策

分電盤・キュービクル用バスバー(母線)の選定基準|許容電流・銅とアルミ・断面積の決め方と発熱事故を防ぐ考え方

読了目安: 12分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

改修工事で分電盤に分岐ブレーカーを一つ増やした。電線は容量に余裕を持たせて一回り太いものを選び、圧着も規定トルクで締めた——にもかかわらず、数か月後の定期点検で、盤の奥、主幹ブレーカーの二次側にある金属板が茶色く変色しているのが見つかった。触れてみると、通電中でもないのにほのかに熱を持っている。電線でも、ブレーカーでもない。バスバーと呼ばれる、電流を配るためのむき出しの金属板そのものが、発熱していた。

なぜ電線側は万全だったのに、その先の金属板が発熱するのか。答えを急ぐ前に、まずこの金属板が何をしている部品なのかを見ておく必要がある。

バスバー(母線)とは何か——分電盤内で電流を配る導体

バスバーは、分電盤やキュービクル、制御盤の内部で主幹ブレーカーと各分岐ブレーカーをつなぎ、電流を配る帯状の金属導体だ。電線のように被覆で覆われた丸い線ではなく、平たい板状の裸導体をボルトで締結してつないでいく点が電線と大きく違う。ホシモト(NC-NET掲載)の解説によれば、バスバーは役割によって大きく3種類に分かれる。主幹バーは盤内の母線・分岐の中心を担い、アースバーは接地に使われ、分岐バーはブレーカーと主幹バー、あるいは主幹バー同士をつなぐ役割を持つ。

電線を1本ずつ引き回して各ブレーカーに配線する代わりに、板状の導体を使うのには理由がある。断面積を大きく取れる分、電気抵抗を低く抑えたまま大容量の電流を分配でき、配線作業そのものも簡素化できる。分電盤の主幹ブレーカーから伸びる太い板、あるいはキュービクル内で複数の機器へ電力を振り分けている金属板を見たことがあるなら、それがバスバーだ。

電線であれば「サイズ(断面積)を選ぶ」という発想が浸透しているのに対し、バスバーは盤メーカーが設計・製造した完成部材として扱われることが多く、断面積や許容電流を意識する場面自体が少ない。この意識の薄さこそが、後述する増設時の見落としにつながっていく。

銅とアルミ——導電率・価格・接続部の扱いにくさ

バスバーの材質は、分電盤・キュービクル用途では銅が主流だ。Kabuku Connectの技術情報によれば、銅ブスバーには導電率・機械的特性に優れたC1020またはC1100という材質がほぼ使われている。

アルミが検討される場面もある。メッキ.comの解説では、銅の導電率を100%としたときアルミは約60%にとどまる一方、価格は銅がアルミの約2.5倍、比重はアルミが銅の約1/3という。同じ電流を流すにはアルミの方が太い断面積が必要になるが、それでも軽量化とコスト圧縮の効果が大きい用途——大型の配電盤や、重量制約が厳しい設備——ではアルミバスバーが選ばれる。

ただしアルミには銅にはない扱いにくさがある。Kabuku Connectのアルミブスバーの解説では、アルミニウムは表面に酸化被膜ができやすく、この被膜のせいで表面抵抗が高くなり、溶接やはんだ付けといった接合がしにくい材料だとされる。酸化被膜そのものが絶縁性を持つため、素のアルミ同士をボルトで締め付けても、被膜が邪魔をして狙った接触抵抗が得られないことがある。この対策として、接続部にめっき処理を施し、被膜の影響を受けにくくするのが実務上の前提になる。分電盤・キュービクルの母線に銅が今も主流であり続けているのは、導電率の高さに加えて、この接続部の扱いやすさの差が大きい。

断面積と許容電流の関係——「電流密度」という考え方

バスバーの太さ(断面積)は、勘や経験則ではなく、電流密度という指標で決まる。Kabuku Connectの解説にある通り、設計上の考え方はシンプルで、「断面積=流したい電流値÷電流密度」という式で最低限必要な断面積を求める。

ここでいう電流密度には、規格上の上限値がある。JIS C 8480(キャビネット形分電盤、住宅用分電盤は適用対象外)の8.6項「帯状導体の電流密度」は、基準定格電流の区分ごとに次の上限値を定めている。

基準定格電流電流密度の上限値
125A以下3.0 A/mm² 以下
125A超〜250A以下2.5 A/mm² 以下
250A超〜400A以下2.0 A/mm² 以下
400A超〜630A以下1.7 A/mm² 以下

出典:JIS C 8480:2016 8.6項(kikakurui.com掲載の規格要約

数字の並びを見て気づくことがあるはずだ。電流が大きくなるほど、許容される電流密度はむしろ下がっていく。これは直感に反するようだが、理由は放熱にある。ブスバー・バスバー通販.COMの解説が示す対応例では、断面積が大きくなるほど、単位断面積あたりが逃がせる熱量の余裕が相対的に減っていく。大電流用の太いバスバーほど、断面積の割に許容電流の伸びが緩やかになるのはこのためだ。

実務上の目安として、銅ブスバー.comの許容電流一覧表には、厚さ5.0mm・幅50mmで断面積250mm²・許容電流500A、厚さ10.0mm・幅100mmで断面積1000mm²・許容電流1700Aといった具体例が示されている。ただし同ページも明記する通り、これらはあくまで参考値であり、最終的な許容電流は温度上昇・取付条件(垂直配置か並列配置か)・周囲温度・安全率を含めて個別に判断する必要がある。関連規格としては、銅ブスバーそのものの規格であるJIS H 3140や、キュービクル式高圧受電設備の許容電流を示すJIS C 4620の解説表、低圧金属閉鎖形スイッチギヤに関するJEM1265なども設計の裏付けに使われる(配電盤類に使用する銅ブスバーの許容電流計算参照)。

接続部(ボルト締結)の施工不良が、なぜ発熱に直結するのか

断面積と電流密度の計算をどれだけ正確に行っても、それは「バスバー本体」の話でしかない。実際に事故が起きやすいのは、バスバー同士、あるいはバスバーとブレーカーをつなぐボルト締結部だ。

電線の接続と違い、バスバーの接続は板と板をボルトで押し付けて面接触させる方式が基本になる。この方式は、締め付けトルクがそのまま接触の質を決める。電気工事のwebbookの解説によれば、締め付けが不足すると接触面積が実質的に減少し、そこに発熱が生じる。抵抗が生じている箇所に電流が流れ続ければ、その積(ジュール熱)がそのまま熱となって蓄積する。

厄介なのは、この発熱が一度きりの現象では終わらないことだ。発熱によって金属が熱膨張と収縮を繰り返すと、締結部にわずかな緩みが生まれる。緩みは接触面積をさらに減らし、接触抵抗をさらに押し上げ、発熱をさらに強める——この悪循環に一度入ると、外部からは異常に気づきにくいまま進行する。冒頭の変色は、まさにこの悪循環が数か月かけて進んだ末の痕跡だったと考えられる。

対策として同解説が挙げるのは、感覚的な手締めに頼らず、校正されたトルクレンチやトルクドライバーで規定トルクを与えることだ。締結後は配線・バスバーを手で動かして緩みがないかを確認し、ペイントマーカーなどで締結位置にマーキングを残す。このマーキングは、次回点検でボルトが回っていないか(緩みが進行していないか)を一目で判別するための記録にもなる。

増設時に見落としやすいリスク——「電線は太くしたのに、母線側を見ていなかった」

冒頭のエピソードに戻ろう。あの現場で見落とされていたのは、まさにここだった。

分岐ブレーカーを増設するとき、現場の意識はどうしても「新しく引く電線のサイズ」に向かう。負荷に見合った太さの電線を選び、規定通りに圧着・接続する——ここまでは、多くの現場が丁寧にやっている。しかし、その電線がつながる先の主幹バーや分岐バーは、盤を最初に設計・製造した時点の負荷想定に基づいて断面積が決まっている。あとから回路を積み増すという発想は、母線の設計時には織り込まれていないことが多い。

電線は現場で自由に選び直せるが、母線は盤に組み込まれた既製の部材だ。増設のたびに電線側だけを太くしても、電流が実際に流れる母線側の断面積・電流密度が変わるわけではない。増設を重ねた結果、母線を流れる合計電流がJIS C 8480の電流密度上限に近づく、あるいは超えるところまで来ていても、電線という「目に見えて選び直した部分」に安心してしまい、母線という「触れずに済ませた部分」の余裕は誰も検算していない——これが、電線のサイズアップだけでは防げない発熱事故の典型的な発生パターンだ。

増設工事の見積もり・設計段階では、追加する分岐回路の電線サイズだけでなく、①既設の主幹バー・分岐バーの定格電流(型番から確認できることが多い)、②増設後の合計負荷が母線の定格に収まるか、③盤全体の主幹容量そのものに余裕があるか、の3点をセットで確認する必要がある。母線の型番が不明な場合や、竣工図と現況が食い違っている老朽盤では、盤メーカーへの照会や有資格者による現地確認を挟んだ方が安全だ。

メッキ(銀メッキ・スズメッキ)による接触抵抗低減

裸のままの銅バスバーは、実は空気中でもゆっくり劣化していく。メッキ.comの解説では、銅は酸化・硫化といった化学変化を起こしやすく、これが変色やサビとなって表れ、そのぶん電気抵抗値が上昇して性能が落ちるとされる。バスバーの表面にめっきを施すのは、見た目の仕上げではなく、この酸化・硫化から母材を保護し、接触部の電気的な性能を長期間保つための処置だ。

めっきの種類によって得意分野が分かれる。銅ブスバー.comのめっき選定ガイドが整理する比較によれば、次のような使い分けになる。

めっき種類接触抵抗耐食性コスト主な用途
スズめっき(Sn)良好普通安い受配電盤の母線・アースバー・端子台接続部。ボルト締結に最適
ニッケルめっき(Ni)やや高い優秀普通腐食性ガスの多いプラント・塩害地域
銀めっき(Ag)最良普通高い高圧遮断器(VCB)・断路器(DS)の接触部。発熱を極限まで抑えたい箇所

出典:電力設備用 銅バー・銅ブスバーのメッキ選定ガイド

スズめっきが受配電盤の母線・ボルト締結部で選ばれやすいのには理由がある。スズは軟らかい金属で、ボルトで強いトルクをかけるとめっき層がわずかに潰れ、接続する二枚のバスバーの微細な凹凸の隙間を埋めて密着する。結果として実質的な接触面積(通電面積)が増え、接触抵抗が低く安定する。一方、銀めっきは接触抵抗の低さでは最良だがコストが高く、抜き差しを繰り返す遮断器の可動接触部など、発熱を極限まで抑えたい限られた箇所に使われる傾向がある。ボルト締結が前提の母線・端子台まわりでは、コストと性能のバランスからスズめっきが標準的な選択になりやすい。

定期点検でのチェックポイント

母線まわりの発熱は、進行の初期段階では外観にほとんど現れない。だからこそ、定期点検での確認項目をあらかじめ決めておくことが実質的な予防策になる。

  1. 停電時の目視・触診:母線本体とボルト締結部に、茶色〜黒っぽい変色や焼け跡、異臭がないかを確認する。ボルトのマーキングが締結時の位置からずれていないかも合わせて見る。
  2. 通電中のサーモグラフィ確認:赤外線サーモグラフィで盤内の温度分布を撮影し、同一条件の他相・他箇所と比べて明らかに高温な箇所がないかを確認する。接触不良は多くの場合、局所的な温度上昇として現れる。
  3. 増設履歴の確認:竣工後に分岐ブレーカーの増設・入れ替えが行われていないかを図面と現況で突き合わせ、増設がある場合は母線側の合計負荷が定格内に収まっているかを再検算する。
  4. 締結部の増し締め判断:異常が見つかった、あるいは長期間トルク管理された記録がない締結部については、有資格者による増し締め・点検を検討する。

いずれの点検も、判断に迷う場合や活線状態での確認が必要な場合は、自己判断で作業を進めず、有資格者や電気保安協会に相談することを前提にしてほしい。

よくある質問

バスバーの断面積はどうやって決めればいいですか?

基本は「断面積=流したい電流値÷電流密度」で最低限必要な断面積を求め、そこにねじ穴による断面欠損や周囲温度、放熱条件の余裕を見込みます。JIS C 8480の帯状導体の電流密度規定では、基準定格電流125A以下で3.0A/mm²以下、125超〜250A以下で2.5A/mm²以下、250超〜400A以下で2.0A/mm²以下、400超〜630A以下で1.7A/mm²以下と、電流が大きくなるほど密度の上限は下がります。実際の許容電流は取付姿勢・並列枚数・周囲温度によっても変わるため、メーカーの許容電流表や設計基準に照らして最終決定してください。

バスバーは銅とアルミどちらを選ぶべきですか?

同じ断面積で流せる電流量を優先するなら銅、重量とコストを優先するなら(スペースに余裕がある前提で)アルミという整理になります。銅の導電率を100%とするとアルミは約60%で、同じ電流を流すにはアルミの方が太い断面積が必要です。一方で価格は銅がアルミの約2.5倍、比重はアルミが銅の約1/3のため、大型盤の軽量化やコスト圧縮を狙う場合にアルミが検討されます。ただしアルミは表面に酸化被膜ができやすく、そのままではボルト締結部の接触抵抗が上がりやすいため、めっき処理や専用の接続部材と組み合わせるのが前提です。分電盤・キュービクル内の母線は今も銅が主流です。

母線の接続部(ボルト締結部)が発熱しやすいのはなぜですか?

ボルト締結による接続は、導体同士を面で押し付けて電気を通す構造のため、締め付けトルクが不足すると接触面積が実質的に減り、接触抵抗が増加します。抵抗が増えればその分だけジュール熱(電流の2乗×抵抗に比例する発熱)が生じ、さらに熱による膨張・収縮の繰り返しでボルトが緩み、接触抵抗がさらに上がるという悪循環に陥ります。締結には校正されたトルクレンチを使い、規定トルクで締めたことが分かるようマーキングを残す運用が、発熱事故を防ぐ基本です。

分電盤を増設するとき、母線側で見落としやすいポイントは何ですか?

分岐ブレーカーを追加する際、そこにつながる電線のサイズは意識されやすい一方、その電流を実際に運ぶ主幹バー・分岐バー側の断面積や、追加後の合計電流に母線がもともと対応できる設計だったかは見落とされがちです。母線は盤の設計段階で想定した負荷を前提に断面積が決められているため、後から分岐回路を積み増すと、電線は適切でも母線側の電流密度が設計時の想定を超え、母線自体やボルト締結部が発熱するリスクが生じます。増設の際は電線サイズだけでなく、母線の型番・定格電流・増設後の合計負荷を必ず確認してください。

母線の点検では具体的に何を見ればいいですか?

停電点検が可能な機会には、母線本体とボルト締結部の変色(茶色〜黒っぽい焼け色)・異臭・ボルトの緩みの有無を目視・触診で確認します。通電中であれば赤外線サーモグラフィによる温度分布の確認が有効で、同条件の他相・他箇所と比べて明らかに高温な箇所があれば接触不良を疑います。締結部にはトルク管理でマーキングを施しておくと、次回点検時にボルトが回っていないかが一目で分かります。異常を発見した場合は自己判断で作業を進めず、有資格者や電気保安協会に相談してください。

バスバーまわりの部材調達について

「分電盤の増設に合わせて、既設のバスバー型番に適合する分岐バー・渡りバーを手配したい」「老朽化したキュービクルの母線を、めっき仕様まで含めて更新したい」といったご相談を、電気工事店・設備管理担当者様からよくいただきます。

バスバーは盤メーカー・型番ごとに断面積・穴ピッチ・めっき仕様が細かく分かれ、既設設備との適合を誤ると再工事になりかねない部材です。当サービス「電材サーチ」では、日東工業をはじめとする各メーカーの分電盤用バスバー・分岐バーから、増設に必要な部材一式まで、仕様の確認からまとめての調達までご相談いただけます。

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