倉庫の棚に、見た目のよく似た2つの住宅用分電盤が並んでいた。品番ラベルには「ELEA 3080」と「ELE 3080」。主幹はどちらもELB3P30A、分岐回路数8。違いといえば、片方にはフタが付き、もう片方はカバーだけで中の配線が見える。フタが1枚多い分だけ、当然ELEAのほうが少し高いはずだ。そう決めてかかって河村電器産業の公式Webカタログの価格表を開いた。
標準価格は、どちらも28,000円だった。1円も違わない。
見落としではないかと思い、隣の品番でも確かめてみた。ELEA 23033とELE 23033は9,880円で同額。ELEA 4084とELE 4084は36,400円で同額。確認できた35品番すべてで、フタの有無による価格差はゼロだった。フタという部材が1枚増えているのに、材料費も加工費も価格に一切反映されていない。この時点で、品番の文字列が語っている情報と、実際に財布から出ていく金額とは、必ずしも一致しないらしいということが見えてくる。
頭の並びが語るのは「リミッタースペース」と「Ezライン」であることの2つ
河村電器産業のホーム分電盤には、「Ezライン(分岐横一列タイプ)」「enステーション」「HEMS・ZEH対応 enステーション EcoEye」という3つの系統がある。公式カテゴリページを見ると、Ezラインだけが「分岐横一列タイプ」という物理形状の名前を冠しており、分岐ブレーカが横一列に並ぶ構造であることが最初から明示されている。
Ezラインの品番は、頭に「EL」または「EN」が来る。ここまではenステーションと同じで、Lはリミッタースペース付、Nはなしを表す。だがすぐ後ろにもう1文字「E」が続く点が、Ezラインだけの特徴だ。つまり「ELE」「ENE」という3文字が基本形になっている。enステーションの「EL」「EN」との違いは、この末尾の「E」の有無であり、Ezラインであることを示す標識がここに埋め込まれている、と読むのが素直だろう。
さらにフタ付タイプでは、この3文字の直後に「A」が挟まる。「ELEA」「ENEA」がそれだ。公式のフタ付カテゴリページとフタなしカテゴリページを見比べると、ELE↔ELEA、ENED↔ENEDA、ELET-4↔ELETA-4、ELER-K↔ELERA-Kというように、オプション違いの系列でも「A」が同じ位置、つまり基本形の直後・追加のオプション記号の手前に一貫して挿入されている。フタの有無という1つの性質のためだけに、型式全体を通じて同じ位置に同じ文字を差し込むという、律儀な規則がここにある。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| EL | リミッタースペース付 |
| EN | リミッタースペースなし |
| E(3文字目) | Ezラインであることの標識 |
| A | フタ付(挿入位置は基本形の直後) |
主幹電流は素直な1桁——ただし単相2線30Aだけ「23」という例外
「ELE」「ENE」に続く数字は主幹電流のコードだ。公式価格表を電流帯ごとに追うと、30A帯は3、40A帯は4、50A帯は5、60A帯は6、75A帯は7と、電流を10で割った値がそのまま1桁で並ぶ。enステーションで見られた「100Aだけ10ではなく1になる」ような圧縮の例外は、少なくとも確認できた価格表の範囲では見当たらない。というのも、Ezラインの主幹電流コードはそもそも7(75A)までしか存在せず、100A帯の品番自体が公式カタログに見当たらなかったからだ。同じ河村電器産業の住宅用分電盤でも、enステーションは主幹100Aまで届くのに対し、Ezラインはそこまで伸びない。この上限の違いがなぜ生じているのかは、公式資料からは読み取れない。
例外はもう一つだけある。ELEA 23033のような「23」という2桁の並びだ。この品番の詳細ページを開くと、相線式は「単2」、つまり単相2線式だと明記されている。単相3線式(単3)の30A品番は「ELEA 3033」のように1桁の「3」で表されるのに対し、単相2線式の30A品番だけは頭に「2」を足した2桁になる。そして単2用の品番は、価格表を見る限り30A帯にしか存在しない。40A以上はすべて単3用に切り替わり、2桁コードは二度と出てこない。単相2線式という契約形態そのものが小容量向けであることを踏まえると、30Aという最小の電流帯に限ってこの例外的な表記が必要になった、という理屈は通る。
分岐回路数とスペース数——末尾の1桁は0から7まで動く
主幹電流コードに続く2桁は分岐回路数、その後の1桁は分岐スペース数(増設用の予備回路数)だ。ここまではenステーションと同じ素直な対応だが、末尾の数字の動く幅が違う。enステーションのEL・EN・ENDでは0・2・4の3通りしかなかったこの桁が、Ezラインでは0・1・2・3・4・6と、より細かく刻まれている。感震リレー付のELERA-Kシリーズに至っては、分岐回路数12・スペース数7という組み合わせ(ELERA 6127-K)まで存在し、末尾が7になる例すら公式価格表で確認できた。
もう一つ、価格表を眺めていて気づいたことがある。同じ主幹電流の中で、分岐回路数とスペース数を足した合計値が、いくつかの決まった数値にしかならないのだ。30A帯(単3)では合計6(3033・3042・3051・3060)か合計8(3062・3080)のどちらかで、40A〜75A帯では合計12(084・102・120)か合計20(146・164・182・200)のどちらかしか出てこない。分岐回路数とスペース数の内訳は品番ごとに違っても、その合計だけは筐体のサイズによって固定されている、ということだろう。今すぐ使う回路数と、将来のために空けておく回路数の配分は選べるが、箱全体の大きさという上限までは動かせない——そう考えると、末尾の1桁は単なる予備回路の数ではなく、筐体サイズという別の制約が透けて見える窓のようなものだ。
なぜ「S」という品番が別に存在するのか
リミッタースペースなしのENEA系列を見ていくと、もう一つ引っかかる箇所がある。ENEA 3080(主幹30A・分岐8・スペース0)という品番のすぐ近くに、まったく同じ主幹・分岐回路数・スペース数を持つ「ENEA 3080S」という品番が並んでいるのだ。同じ仕様の品番が2つ存在するというのは妙な話だが、公式製品詳細ページで中身を比べると、はっきりした違いが見えてくる。
ENEA 3080の主幹ブレーカはZSG 3P30TL-30、外形寸法はフカサ98mm、標準価格28,300円、納期区分は「翌日に発送」。一方のENEA 3080Sは主幹ブレーカがZLGS 63-30TL-30、フカサ110mm、標準価格34,000円、納期区分の表示はない。同じ電気的仕様を満たす盤なのに、内部に積む主幹ブレーカの系列そのものが違い、その分だけ奥行きが12mm深くなり、価格も5,700円高い。そして即納の対象からも外れている。
なぜ2つの系列を並行して用意しているのか、公式資料に理由の説明はない。手元の価格表を見る限り、ZSG系列が使えない一部の主幹電流・分岐回路数の組み合わせ(3062S・4062S・4142S・4160Sなど)を補うために、ZLGS系列を積んだ「S」付き品番が追加で用意されている、という構図には見える。だがこれは価格表の並びから推測できる範囲の話であり、確証があるわけではない。少なくとも言えるのは、「S」の有無を品番の見た目だけで軽く扱うと、外形寸法と納期の両方で足をすくわれるということだ。
現場での実務的な注意点
フタの有無(Aの有無)は価格に影響しないとわかった以上、更新工事で古い盤を同一仕様のまま置き換える場合は、フタの有無よりも先に、契約の相線式(単2か単3か)と主幹電流、そして分岐回路数・スペース数の合計のほうを優先して確認したほうがいい。フタは好きな方を選んでも懐は痛まないが、単2用の「23」を単3の契約先に発注してしまえば、そもそも取り付けられない。
「S」付き品番を見かけたら、電気的仕様が同じだからといって即決しないこと。外形寸法、とくにフカサが変わる可能性があるため、既設の盤を収めていたスペースに新しい盤が収まるかを現物で確認する必要がある。加えて納期区分が変わる場合があるので、工期がタイトな現場では発注前にリードタイムを別途確認しておきたい。
まとめ
Ezラインの品番は、頭の「EL/EN」がリミッタースペースの有無を、3文字目の「E」がEzラインであることを、任意で挟まる「A」がフタの有無を、続く1桁(例外的に単2用の30Aだけ2桁)が主幹電流を、次の2桁が分岐回路数を、末尾の1桁が分岐スペース数を、それぞれ表している。ただし品番の文字列がすべてを語ってくれるわけではない。フタの有無は価格に表れず、「S」の有無は品番の見た目には表れても外形寸法と納期の違いにまでは言及がない。品番を分解して読めることと、発注に必要な情報がすべて揃うことは、やはり別の話だ。
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