現場で外した古い住宅分電盤の銘板に、こう書かれていた。「BQR36382」。銘板にはもう一段、「盤定格」という欄があり、そこにも電流の値が刷り込まれている。品番の中に埋め込まれた「60A」という数字と、銘板の「盤定格」欄の数字は、同じものを指しているのだろうか。パナソニックの公式品番検索でこの品番を調べても、品名には「60A」としか出てこない。二つの欄が別の数字を示している時点で、判断はいったん保留にせざるを得ない。
答えを急ぐ前に、品番という文字列そのものを見ておきたい。パナソニックの住宅分電盤「コンパクト21」のうち、BQRという4文字で始まる品番は、公式の住宅分電盤選定ツールで「コスモパネルコンパクト21(BQR/BQEタイプ)」と分類されている、ドア付きの標準タイプだ。この後に続く数字が、盤の仕様を段階的に積み上げている。
頭の1桁は「リミッタースペースの有無」
BQRの直後に来る1桁は、3か8のどちらかだ。パナソニックの公式Vカタ品番詳細を並べて見ると、この違いがはっきり見える。品番「BQR36182」の品名は「標準タイプ リミッタースペース付 18+2 60A」、品番「BQR86142」の品名は「標準タイプ リミッタースペースなし 14+2 60A」。頭の数字が3なら付、8ならなし——この対応は、主幹容量や回路数が変わっても崩れない。
リミッタースペースとは何か。パナソニックの公式FAQは「リミッタースペース付は、主幹ブレーカの左側にリミッターを入れるスペースがあります」と説明している。電力会社との契約が、契約電流を物理的に制限するリミッター(アンペアブレーカ)を必要とする方式であれば、このスペースが要る。同じFAQにはこう続く。「現在、住宅分電盤新設においてはリミッター機能を備えたスマートメーターが使用されており、スマートメーター設置後はリミッターの設置が不要になります」。この1桁が何のためにあるのかという理由そのものが、スマートメーターの普及によって過去のものになりつつある、ということだ。古い盤を同一仕様で更新するときは頭の数字を確認する必要があるが、新設の現場ではこの区画自体の重みが以前ほどではなくなっている。
続く数字は主幹容量——ただし100Aだけ桁が増える
頭の1桁の次に来る数字は、主幹ブレーカの容量を示すコードだ。パナソニックの公式Vカタ品番詳細を容量帯ごとに確認すると、次の対応が見えてくる。
| 容量コード | 主幹容量 | 確認した品番 |
|---|---|---|
| 3 | 30A | BQR3362 |
| 4 | 40A | BQR34182 |
| 5 | 50A | BQR3582 |
| 6 | 60A | BQR36182 |
| 7 | 75A | BQR87204 |
| 10 | 100A | BQR810204 |
30Aから75Aまでは、容量を10で割った値がそのまま1桁のコードになっている。ところが100Aだけは10÷10=1にはならず、「10」という2桁がそのままコードとして使われる。パナソニックの公式FAQは「住宅分電盤では、最大100Aです」と明記しており、100Aがコンパクト21というシリーズの上限であることをはっきりさせている。上限だからこそ1桁に押し込めず律儀に2桁のまま表記した、と見たくなるが、その理由自体をパナソニックが説明しているわけではない。品番の並びから読み取れるのは、あくまで「100Aだけ2桁になる」という事実そのものまでだ。
残りの桁は分岐回路数と予備回路数——ただし予備が0なら桁ごと消える
容量コードのあとに続く数字は、分岐回路数と、その先に増設用として空けておく予備回路数だ。BQR36182なら「18」+「2」、BQR87204なら「20」+「4」——ここまでは素直に読める。
ところが、BQR81024という品番の品名を確認すると「標準タイプ リミッタースペースなし 24+0 100A」となっている。頭が8、容量コードが10、その後に続くのは「24」の2桁だけで、予備回路数を表すはずの桁が見当たらない。予備回路数が0のとき、パナソニックはその桁を省略して品番を短くしている。同じ100Aでも予備回路数が4あるBQR810204では、末尾にきちんと「4」が付く。品番の桁数は容量帯によって変わるだけでなく、予備回路数がゼロかどうかによっても変わるということだ。この省略ルールを知らずに桁数だけで区画を割り振ろうとすると、24+0の盤と、本来なら24+2や24+4になるはずの盤を読み違える。
冒頭のBQR36382に戻る。品番を分解すると、頭が3(リミッタースペース付)、続く6が主幹容量60A、残る「38」と「2」が分岐回路数38・予備回路数2だ。品番が語っているのは、あくまで主幹ブレーカのAT値(遮断電流の設定)としての60Aである。では、銘板に別途印字されていた「盤定格」の数字は何を表しているのか。
パナソニックの公式FAQは、この「盤定格」について「主幹バーに流せる定格電流値です。盤定格や、主幹ブレーカのAT(アンペアトリップ)値ではありません」と説明している。主幹バーとは、分電盤の中で分岐ブレーカへ電気を配る金属の帯のことだ。同じ盤でも、内部配電に使われている金属バーそのものの許容電流と、そこに取り付けられている主幹ブレーカの遮断設定は、公式に「別の数字」として扱われている。品番の中の容量コード「6」が表しているのは主幹ブレーカのAT値だけであり、銘板の「盤定格」欄はそれとは別に、バー自体の許容電流を示す数字だ。二つを同じ「容量」として読み違えると、更新時に間違った主幹ブレーカを発注することになりかねない。
BQEは同じ並びを継承した「高機能」区分——ただし中身は一つではない
BQRの隣には、もう一つBQEという品番群がある。パナソニックの公式Vカタで品番「BQE86343C2」を確認すると、品名は「太陽光発電システム・エコキュート・IH対応住宅分電盤 リミッタースペースなし エコキュート容量20A 露出・半埋込両用分岐送りタイプ 34+3 60A」。数字だけを取り出すと「8」「6」「34」「3」——リミッタースペースなし、主幹容量60A、分岐回路数34、予備回路数3と、BQRとまったく同じ3区画の規則がそのまま生きている。違うのは、その後ろに太陽光・エコキュート・IHといった専用ブレーカの仕様を示す「C2」のような英数字の区画が追加されている点だ。
ここまでなら、BQEは「BQRに省エネ・創エネ機器対応の区画を足しただけの上位版」という理解で済む。ところが同じBQEという4文字は、まったく性格の異なる製品にも使われている。パナソニックの公式Vカタで品番「BQE3255ZK」を確認すると、品名は「感震リニューアルボックス(主幹容量50A)」となっている。これは新設用の分電盤本体ではなく、既存の分電盤を感震機能付きに載せ替えるためのリニューアルボックスだ。さらにもう一つ、品番「BQE325」「BQE825」は、パナソニックの別のFAQによれば分電盤本体ですらなく、「フリーボックス」という付属の空箱を指している。このFAQは「コスモパネル(BQR,BQEタイプ・ドア付)の住宅分電盤は、リミッタースペース付とリミッタースペースなしではフカサ寸法が異なります」としたうえで、BQE325はリミッタースペース付の盤とフカサ(奥行き)を124mmで揃えた空箱、BQE825はリミッタースペースなしの盤とフカサを111mmで揃えた空箱だと説明している。
つまりBQEという4文字だけでは、太陽光・エコキュート対応の分電盤本体なのか、感震機能のリニューアルボックスなのか、それとも中身が空のフリーボックスなのかが決まらない。品番の全体像——後に続く数字と、末尾のアルファベットの組み合わせまで見て、初めてどの製品カテゴリーに属するかが定まる。BQRのようにドア付き標準タイプという1カテゴリーに閉じていない分、BQEは品番の桁だけを機械的に分解しても安全ではない。
なお、地震対策としての感震ブレーカーそのものは、BQEという品番カテゴリーに閉じた機能でもない。パナソニックの公式サイトによれば、既設のパナソニック製分電盤の分岐回路1回路分の空きスペースに後付けできる単体の感震ブレーカー「BQX702」が別売りで用意されており、BQR・BQEを問わず、空き回路さえあれば追加できる。新築時にBQEの高機能タイプへ感震機能を組み込むか、既設のBQRにBQX702を後付けするかは、まったく別の選択肢として並んでいる。
まとめ
コンパクト21のBQRシリーズの品番は、頭の1桁がリミッタースペースの有無を、続く数字が主幹容量のコードを、残りの桁が分岐回路数と予備回路数を、それぞれ3区画に分けて積み上げている。100Aだけ容量コードが2桁になる例外と、予備回路数が0のときに桁ごと省略されるという例外を覚えておけば、品番の文字列から仕様を逆算できる。ただし品番が語っているのは主幹ブレーカのAT値であって、銘板に併記される盤定格(バーの許容電流)とは別物だという点、そしてBQEという4文字は分電盤本体・リニューアルボックス・フリーボックスという性格の異なる製品にまたがって使われているという点は、品番の桁を分解する前に押さえておきたい。
パナソニックの住宅分電盤の型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物の銘板から読み取ったBQR・BQEの品番の仕様確認から、リミッタースペースの有無や感震機能の要否を踏まえた発注仕様の確定まで対応している。
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