キュービクルの改修図面に「LBS-6A/200F」と書き込んだ担当者が、隣の行に「LBS-6A/210F」という似た型式を見つけて手を止める。200と210。差はたった10だ。だとしたら、定格電流も200Aと210Aの違いだろうか。
そう見えるが、違う。富士電機機器制御株式会社が公開した新製品ニュース資料を確認すると、この10の差は電流の大きさではなく、組み合わせられるヒューズの容量の違いを表している。しかもこの差は、もう一段先の桁にまで影響を及ぼしている。
型式は5つの桁の組み合わせでできている
富士電機のLBS(ストライカ引外し式限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器)の型式は、「LBS-6A/200FC」のように、5つの位置に記号を割り当てる構造をとる。2013年10月に発行された新製品ニュース(資料番号62G9-J-0144)の「形式説明」欄には、この構成が次のように示されている。
①基本形式は「LBS□A」で固定。ストライカ引外し式限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器という製品カテゴリそのものを表す部分だ。②定格電圧は「6」の一択で、3.6/7.2kVを意味する。ここまでは単純な固定枠だ。
型式には現れないが、定格仕様表を見ると「定格電流200A」という一つの数字の裏に、実は複数の開閉動作が積み重なっていることもわかる。負荷電流200A(200回)、励磁電流10A(10回)、充電電流10A(10回)、コンデンサ電流50A(200回、6%リアクトル付)——負荷電流の開閉だけでなく、変圧器の励磁突入電流やケーブルの充電電流、進相コンデンサの投入電流まで、それぞれ回数を区切った上で開閉できることが定格として保証されている。単に「200A流せる」という話ではなく、「どの種類の電流を、何回開閉できるか」までがワンセットで定格に含まれている、という点は見落とされやすい。
問題は③以降である。③定格電流は「200」または「210」。④引外し方式は「なし」(ストライカ引外しのみ)または「F」(ストライカ引外し+電圧引外し)。⑤ヒューズホルダは「なし」(ヒューズクランプによるねじ止め構造、標準)または「C」(ばね加圧方式によるねじレス構造)。掛け合わせれば選択肢は多そうに見える。ところが実際の製品ラインアップを見ると、そうはなっていない。
「200」と「210」、どちらも200Aなのに枝分かれする
③定格電流の説明を読み直す。「200:200A(取付可能ヒューズJC-6/5〜75)」「210:200A(取付可能ヒューズJC-6/100)」。開閉器本体が流せる負荷電流は、どちらも200Aで変わらない。差は、直列に組み込むヒューズリンクの上限がG75AまでなのかG100Aまでなのか、その一点だけだ。
ヒューズリンク側の型式も見ておく。「JC-6/100」であれば、①基本形式JC(JC形ヒューズリンク)、②定格電圧6(3.6/7.2kV)、③定格電流100(G100A)という構成になる。開閉器の型式に埋め込まれた「200」「210」という数字は、実はこのヒューズリンク側の定格電流の上限をそのまま指し示す道しるべになっている。単なる連番ではない。
なぜLBSがヒューズと組み合わせを前提にしているのか、そこにも一次資料は理由を残している。定格仕様表の「ストライカ引外し装置による付加機能」の欄には「全領域遮断:ヒューズとの組み合わせにより、ヒューズ定格遮断電流40kA以下ヒューズ最小溶断電流までの全ての事故電流を遮断可能」「欠相防止:1相でもヒューズが遮断すれば開閉器は開路し、電源と負荷間は開路する」という2行が並ぶ。LBS本体は負荷電流を開閉する機構であって、大電流の短絡事故そのものを遮断する能力は持たない。その守備範囲の外にある領域——ヒューズが溶断するほどの大電流から、ヒューズでは検知しきれない小さな異常まで——を、ヒューズの溶断とストライカによる連動引外しの合わせ技で塞いでいる。ヒューズの容量が③桁の「200」「210」で厳密に規定されているのは、この合わせ技が成立する電流範囲そのものを型式に刻んでいるからだ、と読める。
驚くのはここからだ。定格仕様表でLBS-6A/200とLBS-6A/210の希望小売価格を並べると、前者が50,600円、後者は103,000円。開閉器としての基本性能——負荷電流200A、機械的開閉寿命1000回、準拠規格JISC4611——は共通のはずなのに、価格はほぼ倍になっている。さらに⑤ヒューズホルダの説明には「C:ばね加圧方式によるねじレス構造(LBS-6A/210□形は製作不可)」という注記が付く。LBS-6A/200系列にはLBS-6A/200C、LBS-6A/200FCという「C」付きの型式が存在するのに、LBS-6A/210系列には対応する型式が一つもない。同じ⑤桁の選択肢が、③桁の値によって丸ごと閉じられている。
なぜ「210」だけホルダの選択肢が消えるのか
一次資料はこの理由までは説明していない。ここから先は、公開されている仕様値をもとにした推測として書く。
手がかりは、別売品として並ぶヒューズリンク自体の価格差にある。定格仕様表付属の価格表によれば、JC-6/5は5,400円、JC-6/75は27,770円、そしてJC-6/100は42,970円。定格電流が上がるほど価格が跳ね上がっているのは、遮断すべきエネルギーが大きくなるぶん、内部の溶断エレメントや消弧材の量そのものが増え、ヒューズリンクの物理的な本体サイズも大きくなっているからだと考えられる。ヒューズクランプによるねじ止め構造であれば、ヒューズ本体の寸法差はクランプの締め代の調整である程度吸収できる。だが、ばね加圧によってヒューズを保持するねじレス構造は、ばねの寸法とばね力をあらかじめ特定のヒューズサイズに合わせて設計する方式だと考えられる。G100Aという大型のヒューズまでばね加圧構造で保持しようとすると、保持力や接触圧の設計要件を満たせない、あるいは検証コストに見合わないという判断が働いた可能性がある。あくまで仕様表から読み取れる推測であり、富士電機側の設計意図として明言された文献は見つからなかった。
発注前に確認しておきたいこと
型式の見た目上の近さが誤発注につながりやすい構造であることは、ここまでの分解からも明らかだろう。現場で押さえておきたい点を整理する。
一つめは、③桁の「200」と「210」を、開閉器本体の定格電流の違いだと思い込まないことだ。両方とも200Aである。見るべきはヒューズ側の対応容量とそれに伴う価格差であり、既設設備の更新であれば、現在使っているヒューズがG75A以下かG100Aかを先に確認しないと、型式そのものを取り違える。
二つめは、④引外し方式に「F」が付く型式には、定格制御電圧(AC100/110VまたはDC100/110V、3A短時間5秒)が必要になる点だ。電圧引外し回路の電源配線を忘れて手配すると、ストライカ引外しだけの動作になり、電圧引外しという本来の機能が使えないまま設置される。
三つめは、本体だけを発注して終わりにしないことだ。定格仕様表・別売付属品表を見る限り、ヒューズリンク(JC-6/5〜100)、補助開閉器(AUX-7・AUX-8)、ヒューズ溶断表示接点(AL-3C)、絶縁バリア(SP-4D)はいずれも別売品として扱われている。既設からの更新で「本体一式」のつもりで発注すると、これらが同梱されず、現地で組み立てられない状態になりかねない。補助開閉器も、接点だけのAUX-7(7,590円)と端子台付のAUX-8(12,100円)で価格も配線方法も違うため、既設の結線方式に合わせて型式まで指定したい。
四つめは、旧形からの更新そのものにも注意が要る。発売案内には「本製品は現行品との取付互換性がありません。別売取付互換アダプタをご使用いただきますようお願い申し上げます」と明記されている。2013年のフルモデルチェンジで主接触子とアーク接触子が一体化され、本体容積そのものが変わったためだ。古いLBSの銘板を見て型式だけ拾い、そのまま同型を再発注すれば収まると考えていると、盤内の取付寸法で躓く。
型式の桁を読み違えたまま発注書を切ると、ヒューズが物理的に収まらない、電圧引外しの電源が来ていない、付属品が足りない、といった形で現場に跳ね返ってくる。銘板の型式・商品コードを確認したうえで、不明点があれば発注前に相談したい。見積もり依頼をする →
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