キュービクルの点検で外した高圧限流ヒューズを二本、作業台に並べる。片方は変圧器バンクから、もう片方は進相コンデンサの回路から。定格電流はどちらも50A。だが刻印を見ると、一方には「T50」、もう一方には「C50」と書いてある。定格が同じなら中身も同じだろう、そう思いたくなる。予備品が足りないとき、片方をもう片方の代わりに使えないだろうかという考えが、ふと頭をよぎる。
結論から言えば、それはできない。T50とC50は、定格電流という数字こそ揃っているものの、電流に対して「いつ切れるか」という設計思想が根本から別物だからである。
T種・C種とは何か——同じ「限流ヒューズ」の中の別区分
高圧限流ヒューズは、JIS C 4604(高圧限流ヒューズ)およびJEC-2330という規格に準拠して作られている。この規格は、負荷の種類ごとに溶断特性を作り分けた区分を定めており、その代表がT種(変圧器用)とC種(コンデンサ用)である(ほかにM種=電動機用、G種=一般用も存在する)。
三菱電機の限流ヒューズカタログによれば、用途は次のように整理されている。T種は「変圧器の二次側直下短絡及び一次側故障の保護」を担い、C種は「コンデンサ内部故障時のケース破壊保護、あるいは故障コンデンサを系統から切離して回路を保護」する役目を負う。守る対象が違う以上、型番の記号一文字は単なる分類ラベルではなく、内部のヒューズエレメントの設計そのものが違うという事実を表している。
数字で見る違い——溶断特性・繰返し過電流特性
同カタログの「溶断特性の区分」(表2)には、それぞれの区分がどんな電流にどう耐えるかが数値で示されている。ここが本題である。
T種(変圧器用)
- 2時間溶断電流:定格電流の1.3倍以上で溶断しない
- 10秒溶断電流:定格電流の2.5〜10倍
- 0.1秒溶断電流:定格電流の12〜25倍
- 繰返し過電流特性:定格電流の10倍を0.1秒通電、これを100回繰り返しても溶断しない
C種(コンデンサ用)
- 2時間溶断電流:定格電流の2倍以上
- 60秒溶断電流:定格電流の10倍以下
- 繰返し過電流特性:定格電流の70倍を0.002秒通電、これを100回繰り返しても溶断しない
数字を並べて眺めると、違いの輪郭がはっきりする。T種が耐えるよう作られているのは「定格の10倍程度の電流が0.1秒ほど流れる」という条件であり、C種が耐えるよう作られているのは「定格の70倍という、桁が一つ違う電流がわずか0.002秒だけ流れる」という条件だ。同じ「一時的な大電流に耐えて、しかし本物の異常には正しく溶断する」という機能を果たしながら、想定している「一時的な大電流」の形がまるで違う。
なぜ形が違うのか——変圧器とコンデンサ、突入電流の性質の差
この数値の違いは、恣意的に決められたものではない。変圧器とコンデンサでは、投入した瞬間に流れる一時的な大電流——突入電流——の性質がそもそも異なるからだ。
変圧器には励磁突入電流と呼ばれる現象がある。鉄心を磁化する過程で、投入直後に定格電流よりはるかに大きな電流が流れ、その後は鉄心の磁気特性に従って比較的なだらかに減衰していく。三菱電機のカタログでは、ヒューズの定格電流選定にあたってこの励磁突入電流を「変圧器定格電流の10倍、0.1秒、これが数十〜数千回程度発生する」と想定して設計値に織り込んでいる。T種の繰返し過電流特性(10倍・0.1秒・100回不溶断)が、この励磁突入電流の想定値とほぼ重なっていることに気づくはずだ。偶然ではない。T種という区分そのものが、変圧器という負荷が実際に起こす突入電流の姿を写し取って作られている。
進相コンデンサはまったく違う暴れ方をする。コンデンサは投入した瞬間、内部の電荷がまだ空であることに起因して、電源側から極めて大きな電流が流れ込む。ただしその継続時間は励磁突入電流よりも桁違いに短い。同カタログはコンデンサの突入電流を「コンデンサ定格電流の70倍、0.002秒」という想定で設計に反映しており、C種の繰返し過電流特性(70倍・0.002秒・100回不溶断)はこの数値にそのまま対応している。振幅は変圧器よりはるかに大きいが、継続時間は変圧器よりはるかに短い——この非対称な突入電流の姿こそが、C種という区分を必要とした理由である。
つまりT種とC種は、どちらも「正常な投入動作では溶断せず、本物の短絡・過負荷では確実に溶断する」という同じ目的を持ちながら、その目的を達成するために耐えるべき一時的な大電流の形がまったく違うために、別の溶断特性区分として設計されている。一つの曲線ですべての負荷をカバーしようとすれば、変圧器の投入のたびに誤って切れるか、コンデンサの短絡を見逃すかのどちらかに寄ってしまう。JIS・JECがT・M・C・Gという区分を用意しているのは、負荷ごとに異なる「一時的な大電流の癖」に、それぞれ専用の溶断特性で応えるための構造だ。
G種・M種も含めた全体像
高圧限流ヒューズの動作特性区分は、この二つだけではない。JIS C 4604・JEC-2330が定める区分は次の4種類で、それぞれの繰返し過電流特性を並べると、想定している負荷の「癖」の違いがそのまま見えてくる。
| 区分 | 主な用途 | 繰返し過電流特性 | 想定している負荷の動き |
|---|---|---|---|
| T種 | 変圧器用 | 定格電流の10倍・0.1秒・100回不溶断 | 励磁突入電流(大きいが比較的なだらか) |
| M種 | 電動機用 | 定格電流の5倍・10秒・10,000回不溶断 | 始動電流の頻繁な入切(振幅は控えめだが回数が多い) |
| C種 | コンデンサ用 | 定格電流の70倍・0.002秒・100回不溶断 | 投入突入電流(極端に大きいがごく短時間) |
| G種 | 一般用(負荷を限定しない) | 規定なし(特定の突入電流を想定しない代わりに小電流遮断性能を重視) | 特定の負荷の突入現象を前提としない汎用特性 |
M種の並びを見ると、また違う顔が見えてくる。電動機は始動のたびに大きな電流を流すが、その振幅は変圧器やコンデンサほど極端ではない。かわりに、始動という動作そのものが1日に何度も、それも設備の寿命の間ずっと繰り返される。だからM種は「5倍・10秒」という控えめな振幅を、「10,000回」という桁違いの回数で保証する方向に振られている。振幅で攻めるT種・C種と、回数で守るM種。同じ「繰返し過電流特性」という項目の中に、負荷ごとにまったく違う設計思想が並んでいる。
JIS C 4604は1971年に制定され、直近では2017年に改正されてIEC 60282-1(国際規格)に整合する形へ更新された。半世紀以上前から、電力用ヒューズは「負荷の種類ごとに溶断特性を分ける」という発想を土台にしてきたことになる。
発注・選定で気をつけること
キュービクルの改修工事では、変圧器バンクとコンデンサバンクの両方でヒューズ更新が必要になる場面が少なくない。このとき「定格電流が同じだから」という理由だけでT種とC種を取り違えると、保護協調の設計自体が崩れる。既設設備の更新であれば、単線結線図上でそのヒューズが変圧器の一次側なのかコンデンサの一次側なのかを確認したうえで、現物に刻印された型番(T◯◯AなのかC◯◯Aなのか)まで照合するのが最も確実だ。
在庫を抱える側にとっても、この記号違いは見過ごせない。棚に「T50」「C50」が並んでいると、定格電流の数字だけを見て取り違えるミスが起きやすい。発注書・現品票の両方に記号を含めた型番をそのまま記載し、変圧器用とコンデンサ用を別の保管区画に分けておくといった運用上の工夫が、現場での取り違えを防ぐ最後の砦になる。
高圧限流ヒューズの調達は「電材サーチ」へ
「変圧器一次側のT種ヒューズと、コンデンサ回路のC種ヒューズを、既設と同じ型番でまとめて手配したい」「キュービクル改修に合わせてLBS用の限流ヒューズを更新したい」という電気管理技術者・設備工事ご担当者様へ。電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、高圧限流ヒューズを含む高圧受変電設備の関連資材を幅広く取り扱っている。用途(変圧器用・コンデンサ用)と現物型番を照合したうえで、まとめてお見積りいただける。
あわせて読みたい
- PASとLBSの違い|高圧開閉器2種を『設置場所』と『保護階層』で正しく使い分ける
- 進相コンデンサによる力率改善|電気料金「力率割引」の仕組みと直列リアクトルを組む理由
- 変圧器のタップ切替による電圧調整の仕組み|NVタップの使い方と切替を誤った場合の影響
- 保護継電器(OCR・OCGR)とは何か|過電流継電器と地絡過電流継電器の役割の違い
関連する高圧限流ヒューズ・T種・C種・違い・変圧器用・コンデンサ用の品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。