制御盤の更新図面に「HN46AP-2S1」という型式を書き写していて、末尾の記号が気になったことはないだろうか。1という数字は操作電圧を表すらしい。では2や3、4はどう違うのか。同じ据付方式・同じ電流でも、操作電圧の桁だけ選択肢が少ない型式があるとしたら、それは偶然だろうか。
富士電機機器制御の高圧真空電磁接触器HNシリーズのカタログを確認すると、偶然ではなかった。操作電圧を表す7つの記号のうち、1つだけが片方の操作方式にしか存在しないと、資料に明記されている。
型式は「基本形式+据付方式+電流+操作方式+操作電圧」の組み合わせでできている
HNシリーズの型式は、HN46AP-2S1□のように、スラッシュより前の部分だけでも5つの区分を持つ。2010年3月発行のカタログ(資料番号EH755p)Q5-3「ご注文指定事項(形式)」には、HN46A□-□□□□/□□□□□□□□という12桁の構成図が示されている。
先頭のHN46Aは基本形式で、短絡遮断電流4kA・定格使用電圧3.3/6.6kV(共用)という中身が固定されている。続く1桁目は据付方式で、記号は10種類。固定形にP・J・V・Kの4種、引出形にX・H・Y・U・R・Wの6種が割り当てられている。次の1桁は定格使用電流で、2が200A、4が400A。ここまでは、他メーカーの高圧開閉器の型式でもよく見る作りだ。
その次の2桁が、操作方式と操作電圧の組み合わせになる。操作方式はSが常時励磁式、Lがラッチ式。そのあとに続く数字が操作電圧で、記号は1から7まで用意されている。1がAC/DC100・110V、2がAC/DC200・220V、4がDC48V。ここまでは常時励磁式・ラッチ式のどちらにも存在する。
スラッシュの後ろにも、まだ7つの区分が続く
ここまでで型式が完成した気になるが、実際にはスラッシュの手前にヒューズホルダ記号(A〜G、J、K、T、無記号)がもう1桁付き、スラッシュの後ろにさらに7つの区分が続く。計器用変圧器(VT)を付けるかどうかとその容量、運転位置・試験位置を示す位置スイッチ、補助回路の断路方式、ブッシング形変流器(BCT)の個数と定格、熱帯湿地処理・寒冷地処理といった特殊処理、盤側リード線かプラグのみか、そして銘板を和文にするか英文(JEM・IEC・AS・BS)にするか。指定を省けば無記号のまま標準仕様になる区分がほとんどだが、全部埋めると型式は12桁を超える文字列になる。据付方式・電流・操作方式・操作電圧という手前の5区分だけを追っていると見落としがちだが、実際の発注では後半の7区分も型式の一部として機能している。
「3」という記号だけ、片方の方式にしか出てこない
ところが3番の記号、DC21/24Vだけは事情が違う。カタログの操作電圧表には、3の行に「DC21/24V(閉路、開路共)〔ラッチ式のみ適用〕」と、括弧書きで適用範囲が限定されている。常時励磁式には、この記号を持つ型式が存在しない。
これがカタログの注記だけの話でないことは、富士電機機器制御の公式サイトで裏が取れる。真空電磁接触器(VMC)の製品ページには、固定形4種・引出形6種、計10種類の据付方式それぞれについて、常時励磁式とラッチ式の実在する型式が一覧で並んでいる。この10種類すべてに目を通しても、常時励磁式で操作電圧記号が3になっている型式は一つも掲載されていない。常時励磁式の形式記号は-□S1・-□S2・-□S4の3種類だけで、S3という組み合わせが最初から存在しない。カタログの注記と、現行の製品ラインアップが、10通りすべてで一致している。
操作電圧の記号表をもう少し眺めると、5と6という記号も目に留まる。5は「AC100/110V, DC100/110V(閉路)、AC200/220V, DC200/220V(開路)」、6はその逆で「AC200/220V, DC200/220V(閉路)、AC100/110V, DC100/110V(開路)」。1〜4のように投入(閉路)と引外し(開路)が同じ電圧というのが普通の組み合わせなのに、5と6だけは閉路と開路で電圧帯そのものが入れ替わっている。なぜこの組み合わせが必要になる場面があるのか、カタログには用途の説明がない。標準品としての位置づけではなく、7番の「その他」に近い、個別仕様向けの記号なのだろう。
電流の桁を見比べると、理由の見当がつく
なぜ3だけがラッチ式専用なのか。カタログの技術的な説明は見当たらないが、Q5-2の操作回路表に並ぶ電流の数値を比べると、見当はつく。
常時励磁式は、投入した後も電磁石を励磁し続けて可動部を保持する方式だ。保持電流は100/110Vで0.05A、200/220Vで0.03A、DC48Vで0.1Aとなっている。電圧が下がるほど、同じ保持力を得るための電流は大きくなる関係がここに表れている。48Vで0.1Aなら、24Vではさらに大きな電流を流し続ける必要が出てくるはずで、コイルの発熱や消費電力の面で現実的な仕様にしづらかったのではないか、と推測できる。
一方のラッチ式は、投入と引外しの瞬間だけ電流を流し、あとは機械的に位置を保持する方式だ。だから電圧が下がっても、その瞬間さえ電流を確保できればよい。DC21/24Vの投入操作電流は16A、引外し電流は8.5Aと、他の電圧帯より桁が上がっているが、これは一瞬の話であって、常時励磁式の「流し続ける」電流とは性質が違う。24Vという低い電圧でも、瞬間的に大きな電流を流せる設計にすれば足りる。ラッチ式にしか3が存在しない理由を、カタログは説明していない。ただし励磁の続く方式と続かない方式で電流の性質が違うという、資料に載っている数字を並べれば、辻褄は一応合う。ここから先は、この記事を書く過程での推測であり、富士電機機器制御の公式な説明として確認できたものではない。
「ヒューズホルダ無し」にも2種類ある
型式の作りをもう少し追うと、ヒューズホルダ記号の欄にも似た構造がある。A・B・Cなど具体的なホルダ形式を示す記号のほかに、Tと無記号がある。どちらも「ヒューズホルダ無し」という点は同じだが、Tは「ヒューズホルダ無し(引出形、短絡バー付)」、無記号は「ヒューズホルダ無し(固定形、短絡バー無し)」と、括弧の中身が違う。据付方式が固定形か引出形かによって、ヒューズを省いたときの主回路の結線方法(短絡バーの要否)まで変わるということだ。同じ「ヒューズ無し」という指定でも、固定形の型式にTを、あるいは引出形の型式に無記号を当てはめると、実際の仕様とは食い違うことになる。
現場での実務的な注意点
見積もりや更新工事の仕様確認で、押さえておきたい点を4つ挙げる。
一つめは、操作電圧をDC21/24Vで統一したい制御盤にHNシリーズを組み込む場合、選べるのはラッチ式に限られるということだ。常時励磁式でDC24V仕様を探しても、カタログ上も現行製品上も見つからない。盤の操作電源仕様を先に決めてから型式を選ぶ順番だと、この制約に途中で気づいて設計をやり直す事態になりかねない。
二つめは、ヒューズホルダ記号のTと無記号を、据付方式とセットで確認することだ。固定形と引出形では短絡バーの扱いが異なるため、図面の記号だけを機械的に転記すると、意図した仕様と違う型式になる可能性がある。
三つめは、カタログ自体が「旧形品と記号が異なっている箇所がございますのでご注意下さい」と注記している点だ。古い盤の銘板に書かれた型式を、現行の記号表にそのまま当てはめて読み替えると、据付方式の記号が指す中身がずれることがある。更新工事で旧型式を扱う場合は、現行カタログの記号表と機械的に突き合わせず、現物の据付方式を確認したほうがよい。
四つめは、型式の手前5区分(据付方式・電流・操作方式・操作電圧)だけを図面に書き写して満足しないことだ。VT・位置スイッチ・補助回路断路部・BCT・特殊処理・盤側リード線・文字コードという後半の区分は、指定を省けば標準仕様になるとはいえ、監視操作盤との結線方式やキュービクルの仕様によっては個別に選ぶ必要が出てくる。見積もり依頼の段階で、手前の5区分だけでなく後半の付属品構成まで含めて相手に伝えておくと、手戻りが減る。
型式の桁を一つずつ追う作業は地味だが、操作電圧やヒューズホルダの指定を間違えると、盤の設計をやり直すことになる。型式の読み方や在庫状況の確認、見積もりの相談は、以下から受け付けている。
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