キュービクルの更新図面に「VF-13NH-DG」という型式を書き込んだ担当者が、ふと手を止める。13という数字は、定格遮断電流の欄でよく見る13kAのことだろうか。だとすれば、隣にある8kA機のVF-8NH-DGとの差は5kAということになる。
そう考えたくなるが、三菱電機の公式カタログを確認すると、この「13」は13kAではない。実際には12.5kAを指している。しかも、この丸めは1台だけの例外ではなく、もう一つのシリーズにも同じ形で現れていた。
型式は6つの区分の組み合わせでできている
三菱電機の高圧真空遮断器(VCB、ブランド名MELVAC)の型式は、「VF-13NH-DG」のように、6つの位置に記号を割り当てる構造をとる。2018年7月に発行されたVF-8D/13Dシリーズカタログ(資料番号K-K06-5-C7085-P)の「VFシリーズ形名の基本体系」には、この構成が図で示されている。
①形名は「VF」で固定。②定格遮断電流は「8」または「13」で、8kAまたは12.5kAを表す。③据付方式は、パネル取付形なら主回路端子の配列方向によってN・R・Pのいずれか、引出形なら固定枠の種類(JEM1425区分のCW・PW・MW級)によってC・V・D・Gのいずれかが入る。④投入操作方式は「H」が手動ばね操作、「M」が電動ばね操作。⑤シリーズ名は「D」で固定。⑥低サージ区分は、空欄なら汎用品、「G」が付けば低サージ品となる。
ここまでは、他メーカーの高圧開閉器の型式によくある構成だ。定格・据付・操作方式・仕様区分を桁ごとに割り振り、組み合わせで一台の仕様を特定する。だから「13」も、額面どおり13kAを意味していると考えるのが自然だった。
「13」は12.5kAで、「32」は31.5kAだった
同じカタログP.5の定格・仕様表を見ると、②定格遮断電流の表には「8」の行に「8kA」、「13」の行に「12.5kA」と、はっきり数値が書かれている。8はそのまま8kAだが、13は12.5kAの繰り上げだ。定格電流(A)も、8系列は400A、13系列は600Aと、それぞれ一つの数字にひもづく。
これが単なる誤植や偶然の丸めでないことは、もう一冊のカタログを見ると分かる。2016年8月発行の「VF-20D/25D/32D/40Dシリーズ」カタログ(資料番号K-K06-1-C8925-C)は、より大きなフレームの製品を扱っているが、P.3の「機種選定」には同じ形式の構成図がある。ここでの定格遮断電流の対応表は、20=20kA、25=25kA、32=31.5kA、40=40kA。8・13の系列と横に並べると、三菱電機が扱う高圧VCBの定格遮断電流は8・12.5・20・25・31.5・40kAの6段階で、このうち整数でない12.5kAと31.5kAだけが、型式では13と32という整数に切り上げられている。8・20・25・40はそのまま型式の数字になる。
つまり、型式の先頭の数字を額面どおりの「kA」として読んでよいのは6段階中4段階だけで、残り2段階では実際の値より0.5だけ大きい数字が型式に現れる。この差は小さいが、他メーカーの遮断容量とkA単位で見比べる場面や、旧規格の仕様書に記載された「12.5kA」という数値と三菱電機の「VF-13」を照合する場面では、見落とすと数字が一致しないまま話が進んでしまう類の差でもある。
なぜ整数に丸めるのか、資料からは分からない
なぜ12.5と31.5だけを繰り上げるのか。JEC-2300が定める遮断電流の標準値は、国際的な優先数列(10を基準に一定の比率で増える数列)に沿ったもので、8・12.5・20・25・31.5・40という並び自体は電気機器の規格でしばしば見かける組み合わせだ。型式コードを扱いやすい2桁の整数で統一しようとすれば、整数値の8・20・25・40はそのまま使い、小数を含む12.5・31.5だけをどちらかの整数に寄せる必要が出てくる。
ここで四捨五入なら12・32になりそうなところを、三菱電機は12.5を「13」に切り上げている。31.5が「32」になるのは四捨五入でも切り上げでも同じ結果だが、12.5だけは四捨五入の慣習(偶数への丸め、あるいは単純な五捨六入)とは逆方向に振れている。この理由について、2冊のカタログのどちらにも技術的な説明は見当たらなかった。命名規則の由来にまで踏み込んだ記述がない以上、ここから先は推測の域を出ない。正直に言えば、分からない。
補足すると、8・12.5・20・25・31.5・40という並びそのものは、電気機器の規格でよく使われる優先数列(10を基準に一定の比率で刻まれる数列)の1桁上の値に一致する。1.25・1.6・2.0・2.5・3.15・4.0という係数を10倍すれば、12.5・16・20・25・31.5・40になる。三菱電機のVCBがこの数列のうち12.5・20・25・31.5・40(16は欠番)と、その1桁下の8を採用していると考えれば、定格遮断電流の刻み方自体には合理性がある。合理性があるのは数値の並びであって、その数値をどう2桁の型式コードに写像するかという表記の作法の方は、資料を読む限り別問題として扱われている。
型式だけでは定格電流が決まらない機種もある
もう一つ、両カタログを見比べて分かったことがある。VF-8D/13Dシリーズでは、②定格遮断電流の桁(8または13)を決めた時点で、定格電流(A)は400Aか600Aかに自動的に決まる。型式の中に定格電流を選ぶための独立した桁は存在しない。
ところが大型フレームのVF-20D/25D/32D/40Dシリーズでは事情が違う。P.4の定格・仕様表を見ると、「VF-20□M-DD」という一つの品名の欄に、定格電流(A)として600・1200・2000という3つの値が併記されている。つまり形名の6区分(VF・定格遮断電流・据付方式・閉路操作方式・シリーズ名・スイッチ区分)を全部埋めても、定格電流はまだ一つに定まらない。実際の発注では、P.39-40の12桁の発注コードにある定格電流専用の桁(③④または⑤⑥)を別途指定する必要がある。
見た目は同じ「型式」という言葉でも、小型フレームでは仕様を一意に特定できる識別子として機能し、大型フレームでは製品カテゴリを絞り込むだけの略称として機能している。カタログの型式例だけを見て「VF-32DM-DGを1台」と手配すると、定格電流の指定が抜け落ちたまま話が進みかねない。
現場での実務的な注意点
更新工事の見積もりや仕様確認で押さえておきたい点を4つ挙げる。
一つめは、遮断容量の比較でVF-13を「13kA品」と扱わないことだ。既設設備の仕様書に「定格遮断電流12.5kA」と書かれていて、更新後の見積もりに「VF-13NH-DG」とだけ書かれていると、数字が違って見えて確認の手間が増える。12.5kAと13の対応は、この記事で引用した一次資料の範囲では確かに一致しているので、型式から実際の遮断容量へ変換する一手間を挟めば済む話ではある。
二つめは、大型フレーム機を扱う場合、型式表記だけで定格電流を確定させないことだ。VF-20D以上のシリーズでは、同じ据付方式・操作方式の型式でも定格電流違いのバリエーションが複数存在する。見積もり依頼や仕様検討の段階では、型式に加えて定格電流(A)の値も明記してもらう必要がある。
三つめは、低サージ品(G)を選ぶかどうかは、遮断器単体の価格差だけでなく盤全体のコストで見ることだ。サージ保護基準の表によれば、汎用品では電動機や乾式変圧器の開閉回路にCRサブレッサや避雷器が別途必要になる場合があるのに対し、低サージ品ではそれらが不要と整理されている。遮断器本体の価格は上がる可能性があるが、周辺のサージ保護部材や配線スペースを省ける分、盤全体で見ると低サージ品の方が有利になるケースも考えられる。ただし本体の価格差は一次資料に記載がないため、実際の判断は見積もりで比較してほしい。
四つめは、旧形からの読み替えを型式の見た目だけで済ませないことだ。カタログには「従来機種(VF-8C/13C)との互換性にも考慮しています」とあるが、この一文が指しているのはあくまで設計上の配慮であって、取付寸法や端子位置がそのまま同一であることまでを保証する記述ではない。銘板がVF-8C・VF-13Cといった旧形式のままの盤を更新する場合は、型式の読み替えで終わらせず、現地の据付寸法を実測して確認する手順を省かないほうがよい。
型式の桁を一つずつ確認していく作業は地味だが、更新工事で旧型式(VF-8C/13C系列など)から新形(VF-8D/13Dシリーズ)へ切り替える際にも、この読み方の土台がそのまま役立つ。型式や定格電流の確認、見積もりの相談は、以下から受け付けている。
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