銘板に「FR-A840-7.5K(00250)-1」とある。7.5Kという表記はすぐに読める。7.5kWのインバータだろう、と。ところが、その直後に続くカッコ書きの「00250」に目が止まる。これは何を表しているのか。
同じ製品を検索していると、まったく同じ実物を指しているはずなのに「FR-A840-00250-E2-60」というふうに、カッコの中身だけが型式の頭に出てきている表記にも出くわす。7.5Kという容量表示はどこに消えたのか。00250という5桁の数字だけで、この本体は特定できるのか。
三菱電機のFREQROL-A800シリーズ総合カタログ(L06074)の形名構成図と定格表を照合すると、この00250が何の数字で、なぜキロワット表記と並んで存在しているのかが見えてくる。答えを先に言うと、これは偶然の一致でも誤植でもない。三菱電機が容量表記とは別に、正式な形名として用意している「もう一つの型式」である。
型式の骨格――標準構造品は6つの位置に分かれる
カタログP.16の形名構成図は、標準構造品の形名を「F R - A 8 2 0 - 0.4K - 1 -」という並びで示している。頭のFR-Aは固定の接頭辞で、FREQROL-Aシリーズであることを表す。続く1桁が電圧クラスで、2なら200Vクラス、4なら400Vクラス。次の1桁が構造・機能を表し、0は標準構造品を意味する。
ハイフンの先に続くのが容量で、0.4Kから280Kまでの範囲が用意されている。図にはこの欄の説明として「インバータND定格容量(kW)」と注記が添えられている。ND、つまり標準負荷定格時の容量だと、わざわざ限定して書かれている。この一言が、後で効いてくる。
容量の次にタイプ記号が続く。1はFM(パルス列出力端子)とRS-485通信、2はCA(アナログ電流出力端子)と通信、E1はFMとEthernet通信、E2はCAとEthernet通信を表す。さらに基板コーティングの記号(記号なし=コーティングなし、60=コーティングあり、06=コーティングと導体メッキの両方あり)と、機能記号(GF=CC-Link IEフィールドネットワーク機能内蔵)が続く。ここまでで6つの位置に情報が積み上がっている構造だ。
カッコの中の5桁――もう一つの正式な形名
ここまでは、型式の並びとして特に驚くところはない。問題は、容量欄の注記に添えられた脚注のほうだ。カタログには「インバータ定格電流(SLD定格)を表した形名も用意しています」と一行だけ書かれている。
定格表で確かめてみる。P.27の400Vクラス定格表には、形名FR-A840-[]の行に「0.4K 0.75K 1.5K 2.2K 3.7K 5.5K 7.5K…」というキロワット表記の並びと、その真下に「00023 00038 00052 00083 00126 00170 00250…」という5桁の並びが、対になって掲載されている。7.5Kの真下にあるのが00250だ。
この00250がどこから来る数字なのか、同じページのSLD定格時定格電流(A)の行を見ると分かる。7.5Kのモデルは、SLD定格で運転したときの定格出力電流が25Aと記載されている。25.0を10倍してゼロ埋めした5桁が00250。0.4Kなら2.3A→00023、5.5Kなら17A→00170、30Kなら77A→00770、280Kなら683A→06830。200Vクラスの表でも同じ関係が成り立っている。0.4Kは4.6A→00046、90Kは475A→04750。この対応は、カタログに載っている全ての容量帯で、例外なく一致していた。
つまり00250という5桁は、SLD定格時の定格出力電流をアンペアの10分の1単位で表した数値であり、実測値でも丸めた概算でもなく、公式の定格表に載っている数字そのものを、そのまま形名の一部として採用したものだ。7.5Kと00250は、同じ本体1台を指す、まったく対等な2つの正式な形名だということになる。
なぜ容量表記が「NDだけ」なのか――多重定格という設計
この二重表記が生まれた理由を、断定できる一文としてカタログの中に見つけることはできなかった。ただし、手がかりはある。
FREQROL-A800シリーズの特長として、カタログP.12は「多重定格」という機能を挙げている。定格電流と過負荷耐量の異なる4つの定格――SLD(超軽負荷)、LD(軽負荷)、ND(標準負荷)、HD(重負荷)――を、パラメータの設定だけで切り替えられる。ファン・ポンプのような負荷ならSLD定格を選んで設備を小形化でき、低速から高トルクが必要な用途ならHD定格を選ぶ、という具合だ。
この4つの定格を切り替えると、同じ本体1台の「適用モータ容量(kW)」の値そのものが動く。7.5K相当の本体でも、ND定格ではその容量のまま扱えるが、HD定格に切り替えれば適用モータ容量は下がり、逆にSLD定格に切り替えれば上がる。つまり「容量」という言葉は、この本体に対しては一意に定まらない。
形名構成図の容量欄がわざわざ「インバータND定格容量(kW)」と限定していたのは、このためだと考えられる。キロワット表記の形名は、4つの定格のうちND定格という1つを基準に選んだ呼び方にすぎない。一方、SLD定格時の定格出力電流は、パラメータの設定を変えても本体のハードウェアが変わるわけではないから、定格の選び方に左右されない固定の値になる。定格によって意味の変わる指標(kW)と、定格の選び方とは独立した指標(SLD時のA)の両方を形名として用意しておく――多重定格という設計を採用した以上、これは筋の通った選択だったのだろう。とはいえ、これはカタログの2つの記述を突き合わせた上での推測であり、三菱電機がこの言葉でその意図を説明している一次資料は見つかっていない。
現場での注意点――寸法は互換でも、端子は互換ではない
もう一つ、カタログの中で見つけた具体的な事実を挙げておく。FR-A800シリーズは旧世代のFR-A700シリーズの後継にあたるが、カタログP.212の「互換性について」には「インバータの取付け寸法は、FR-A700シリーズと同一なため、置換えが安心です」と明記されている。制御盤の開口部をそのまま使って本体だけを載せ替えられる、という意味では確かに互換性がある。
ただし同じページの比較表を読み進めると、寸法以外は無条件に互換とは言えないことが分かる。制御回路端子台は、FR-A700が脱着式のねじ式であるのに対し、FR-A800はスプリングクランプ式に変わっている。既存の配線をそのまま使いたい場合は、オプションの端子台取付互換アタッチメント「FR-AAT」を介す必要がある。USBコネクタもBコネクタからミニBコネクタへ変更されており、パラメータ設定用のケーブルを流用できるとは限らない。PTCサーミスタの入力端子も、FR-A700の端子AUからFR-A800の端子2へ移っている。
さらに、ブレーキトランジスタの内蔵範囲そのものが変わっている。旧FR-A740(400V)は0.4K〜22Kの範囲で内蔵していたが、新FR-A840は0.4K(00023)〜55K(01800)まで内蔵範囲が広がっている。単純な置換えのつもりで発注すると、ブレーキ抵抗器の要否まで変わってくる容量帯があるということだ。「寸法は同じだから」という理由だけで、周辺部品の選定まで従来どおりで済むと判断するのは早計になる。
FR-A840-7.5K(00250)を通しで読む
ここまでの内容を、最初に挙げた1本の型式で読み通しておく。FR-Aは固定の接頭辞。4は電圧クラスで400Vクラス。続く2桁目相当の位置(表記上は現れない)は標準構造品であることを前提とする。7.5Kが容量表記で、ND定格時の適用モータ容量が7.5kWであることを示す。カッコ内の00250はもう一つの正式な形名で、SLD定格時の定格出力電流25Aを10倍・ゼロ埋めした値。末尾の1はタイプ記号で、FM端子とRS-485通信を備えた仕様であることを示している。
7.5Kと00250、どちらも同じ本体を指す。片方だけを見て「容量が違う本体だ」と誤認しないためには、この2つの表記が対になっていること自体を知っておく必要がある。
三菱電機FREQROL-A800インバータの型式確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社では、現物の銘板に残ったFR-A800系列の型式から、容量表記・電流表記のどちらで書かれていても品番の照合を行い、FR-A700シリーズからのリニューアル時に必要となる端子台アタッチメントの要否確認まで対応している。カッコ書きの数字が判読しにくい場合や、銘板が古く容量表記しか見えない場合も、写真を添えてもらえれば照合が早い。
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