電材の卸売カタログをめくっていると、たまに妙な取り合わせに出くわす。あるページには大地に打ち込む接地棒(アース棒)が並び、少し先のページには電柱の腕金に取り付ける鳥よけの针山タイプの資材が載っている。接地工事と鳥対策——事業として何の接点もなさそうな二つが、日動電工という一社の同じ商品棚に収まっている。実務でこの会社の製品を扱ったことがある人でも、両方を同じメーカーが作っていると知って「え、そうだったのか」と思う人は案外多い。
この取り合わせは、偶然ではない。理由は後段に回すとして、まずは日動電工がどういう会社で、何を主力としているのかを見ていきたい。
日動電工とは——接地資材だけの会社ではない
日動電工株式会社は1957年、創業者・福田祐治氏が大阪市北区南森町で設立した会社で、当初は電力用引込金物の販売から事業を始めている。塩ビ(塩化ビニル)付属品の取り扱いに乗り出したのは1961年、そこから1963年に郵政省(現・総務省)で採用、1967年には日本住宅公団(現・UR都市機構)の認定を取得と、公的な規格適合を早い段階から積み重ね、1972年にJIS規格も取得した。
2009年に黒田電気株式会社の子会社となり、2020年の持株会社体制移行以降は黒田グループ株式会社の100%子会社という位置づけで、ISO9001・ISO14001も取得している。2025年には本社機能を大阪から奈良県天理市の新社屋へ集約し、関東物流拠点や大阪・名古屋の営業拠点も同時期に再編するなど、老舗にしては動きが速い部類の企業と言っていい。
主力製品として真っ先に挙がるのがシェアNo.1のロングセラー、アース棒だ。これに樹脂製ボックス、架線金物・ケーブルハンガーが続き、周辺分野としてビニル電線管・付属品、埋設標識シート、そして冒頭で触れた鳥害防止材料がラインアップされている。
製品ラインアップ——一枚で見る全体像
| カテゴリ | 代表製品・シリーズ | ざっくり言うと |
|---|---|---|
| アース棒・接地資材 | 丸形(単独工法用/連結工法用)、メッキ、S形 | 接地工事の基本資材。シェアNo.1 |
| 樹脂製ボックス | 露出用丸形ボックス、スイッチボックス、四角ボックス等 | 天井内・間仕切内・露出配管でのボックス取付 |
| 架線金物・鳥害防止材料 | ケーブルハンガー、サイクルガード、ラインハンター等 | 電路の支持・固定と、鳥害からの保護 |
| ビニル電線管・付属品 | 硬質ビニル電線管「ニチパイプ」、ノーマルベンド等 | 露出配管工事における電線の保護 |
| 埋設標識シート | 高圧電力用・低圧電力用・通信ケーブル用 | 地中埋設物の位置を地表から示す |
いずれも「電気を通す」「電気を溜める」ような主役の部材ではなく、電路を支え、守り、示すための脇役に徹している点が共通している。
アース棒の選び方——単独か連結か、まずそこで決まる
日動電工のアース棒は、丸形の単独工法用(B0〜B7900)と連結工法用(BKJ、B3J〜B8J)、それにメッキアース棒(M09S等)、S形アース棒(SF300等)という系列に分かれる。
選定の起点になるのは、土壌がどれだけ電流を通しにくいか、つまり抵抗率だ。単独工法用は棒1本を打ち込んで完結させる設計で、比較的柔らかい土質であればこれで足りる。だが岩盤や砂礫が混じる硬い土地では、1本では必要な接地抵抗値まで下がりきらないことがある。そこで連結工法用の出番になる。ねじ込み式の継ぎ手で棒を次々とつなぎ、より深くまで打ち込んでいくことで、抵抗値を必要な水準まで追い込んでいく発想だ。
どちらの系列で発注するかは、正直なところ現場を見てみないと判断が難しい場面もある。接地抵抗そのものの考え方——A種〜D種の基準値や、複数棒を並べる際の間隔の話——は接地(アース)工事の種類と施工方法で扱っているので、そちらを踏まえたうえで、日動電工のどの系列を選ぶかは土質次第、とだけここでは押さえておいてほしい。
埋設標識シートの使い方——色だけでは高圧・低圧を区別できない
埋設標識シートは、地中に埋めたケーブルの位置を地表から示すための資材で、UR都市再生機構仕様(EF-191-2-A/EF-191-2-B)に適合している。高圧電力用・低圧電力用・通信ケーブル用の3系統があり、標準の幅150mmに加えて幅300mm・3.5倍サイズ・アルミ付タイプも用意されている。
ここで一つ、発注する側が誤解しやすい点がある。高圧電力用と低圧電力用は、どちらも「地色橙/文字色赤」で配色が同じなのだ。色を見ただけでは高圧か低圧かの判断がつかず、品番末尾のH(高圧)・L(低圧)と、シートに印字された文字を確認して初めて区別できる。通信ケーブル用だけは「地色赤/文字色黒」で電力用と色が分かれているので、そちらは見分けやすい。
このシートがなぜ必要かは、法令にも根拠がある。電気設備の技術基準の解釈第120条第2項第二号は、管路式で施設する高圧・特別高圧の地中電線路について、物件の名称・管理者名・電圧を、おおむね2mの間隔で表示することを求めている(需要場所に施設する場合は物件の名称と管理者名を除き、電圧の表示となる)。同条第4項第三号により、直接埋設式の場合もこの表示が準用される。ただし需要場所に施設する高圧地中電線路のうち長さ15m以下のものは対象外とされ、他人が立ち入らない場所や電線路の位置が十分に認知できる場合は2m間隔の表示を要しないという例外もある。
いずれにせよ、他工事の掘削で埋設ケーブルを傷つける事故は、埋設物の存在が伝わってさえいれば防げたはずの事故だ。標識シートは、単に「あると親切」な資材ではなく、こうした事故を未然に防ぐための表示の一端を担っている。
鳥害防止材料とビニル電線管——現場でどう使い分けるか
鳥害防止材料は、送電線・配電線・鉄塔・電柱に取り付けて鳥類の飛来や営巣、ふん害を防ぐための資材群だ。振子タイプ「サイクルガード」(最大30個=22.5mまで連結可能)、テグスタイプ「ラインハンター」、針山タイプの「スーパーシホンⅢ」「トリせんぼん」「とりパス」「トリケード」、風車タイプまで、設置箇所と工法に応じて選び分けるラインアップになっている。
このうちラインハンターは間接活線工法に対応しており、電線を停電させずに、絶縁工具を使って充電中のまま取り付けられる。電線からの離隔は40/75/100mmの3段階で調整可能だ。停電作業の調整がボトルネックになりがちな現場では、この一点だけでも選定理由になり得る。
ビニル電線管「ニチパイプ」(JIS C 8430)と、ノーマルベンド等の付属品(JIS C 8432)は、露出配管工事で使う樹脂製の電線管だ。アイボリー・グレー・ダークブルーの3色展開で(ホワイトは生産中止)、色は品番末尾の記号で区別する。電線管そのものの太さ・曲げ方の考え方は電線管の選び方に譲るとして、ここでは「日動電工品は色指定が品番に含まれる」点だけ押さえておけば発注ミスは防げる。
まとめ——なぜ同じ会社が接地棒と鳥よけを作るのか
冒頭の疑問に戻る。アース棒と鳥害防止材料、埋設標識シート。この三つに共通しているのは、どれも「事故が起きてから」ではなく「事故が起きる前」に働く資材だという点だ。漏電した電流を大地へ逃がすアース棒、鳥の営巣が原因の停電(四国電気保安協会の資料では、他物接触による波及事故のうち鳥獣接触が一定割合を占めることが報告されている)を防ぐ鳥害防止材料、そして誤掘削による断線事故を防ぐ埋設標識シート。表舞台に立つ機器ではないぶん地味に見えるが、電気設備の「守り」を担う資材を一貫して手がけてきたのが、この会社の実態に近い。
樹脂製ボックスやビニル電線管も含め、日動電工の製品は単体で目立つものではない。だが、どれも電気工事の現場で欠かせない脇役であり、その品揃えの幅広さが、アース棒のシェアNo.1という実績を支えている土台でもある。
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よくある質問
アース棒の「単独工法用」と「連結工法用」はどう違いますか?
単独工法用(B0〜B7900など)は棒1本を打ち込んで完結させる系列で、土壌の抵抗率がそれほど高くない現場向けです。連結工法用(BKJ、B3J〜B8Jなど)は、1本では目標の接地抵抗値に届かない硬い土質・岩盤混じりの現場で、棒をねじ込み式に継ぎ足しながら深く打っていくための系列です。どちらを選ぶかは打込み予定地の土質と目標抵抗値次第で、迷う場合は現場条件を伝えて相談するのが早道です。
埋設標識シートは色を見れば高圧か低圧かわかりますか?
わかりません。日動電工の埋設標識シートは、高圧電力用・低圧電力用のどちらも「地色橙/文字色赤」で同じ配色です。見分けるのは品番末尾のH(高圧)・L(低圧)と、シートに印字された文字内容になります。色だけで判断すると高圧・低圧を取り違える恐れがあるため、掘削前は印字を必ず確認してください。なお通信ケーブル用は「地色赤/文字色黒」で、電力用とは明確に色が異なります。
鳥害防止材料は何を基準に選べばいいですか?
設置場所の形状と、施工時に停電が可能かどうかで系列が変わります。腕金やLアングルへの後付けなら磁石付きの針山タイプ(スーパーシホンⅢ等)、電線に沿って連続的に防ぐなら振子タイプ(サイクルガード、最大30個=22.5mまで連結可)が向きます。停電せずに充電中のまま施工したい場合はテグスタイプ「ラインハンター」が間接活線工法に対応しており、電線からの離隔を3段階で調整できます。
ビニル電線管「ニチパイプ」の色は選べますか?
アイボリー・グレー・ダークブルーの3色から選べます(ホワイトは生産中止)。品番末尾の記号(J/G/D等)で色を区別しており、露出配管工事では建物の意匠に合わせて色を指定されることも多いため、発注時は品番の末尾まで確認するのが安全です。
日動電工の製品はどこで購入できますか?
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)でお取り寄せ・お見積りに対応しています。アース棒の品番・数量だけでもお見積りできますし、「土質が硬めの現場で連結工法にすべきか」「この設置場所ならどの鳥害防止材料が合うか」といった選定段階からのご相談も承っています。
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