トイレの換気扇が急に唸りだして、天井裏や壁の中から古い本体を引っ張り出したことがある人なら覚えがあるかもしれない。裏側のラベルに書かれているのは、たいてい「FY-08PD9」という短い型番だ。これさえ控えて発注すれば話は早い——はずだった。
ところが、この型番の資料をいくつか並べて見比べると、妙な食い違いに突き当たる。ある資料はFY-08PD9を「パイプ径φ70対応」と説明しているのに、同じ「08」から始まる別の型番(FY-08PDL9やFY-08PDE9Dなど)は軒並み「適用パイプ径φ100mm」となっている。同じ「08」を名乗る製品群のはずなのに、太さの表記が70mmだったり100mmだったりする。どちらかが誤植なのか、それとも「08」という数字自体が、パイプの太さとは別の何かを指しているのか。
パナソニックの公式製品データベース(Vカタ)を一台ずつ突き合わせてみた。
結論——「08」はパイプ径φ70ではなくφ100mm、太さの実測値ではなく機種クラスの記号である
先に答えを書いておく。FY-08PD9をはじめとする「FY-08」始まりのパイプ用ファンは、すべて適用パイプ径φ100mmである。φ70mmという数字は、少なくとも公式製品データベース上のFY-08PD9には見当たらない。
根拠は一つではない。FY-08PD9の品番詳細ページ自体が「角形格子ルーバー 適用パイプ径:φ100mm」と明記しているのに加え、パナソニックが別途公開している「パイプファン有効換気量早見表」というページでは、FY-08PD9・FY-08PD9SD・FY-08PDL9・FY-08PDE9・FY-08PP9といった「08」始まりの型番が、丸ごと「パイプ呼び径φ100mmタイプ」という見出しの下にまとめられている。個別ページと早見表という、性質の異なる2種類の公式資料が同じ結論を指している。
では「08」とは何なのか。パイプの太さの実測値ではなく、対応するパイプ径のクラスを示す機種コードだと考えたほうが実態に近い。その傍証が、φ150mm対応のパイプファンだ。φ100mm系列の数字を素直に伸ばすなら「10」あたりに割り振られていそうなものだが、実際にφ150mm対応として存在するのはFY-13PD9であり、こちらの公式ページには「適用パイプ径:φ150mm」とはっきり書かれている。φ100mm系は08、φ150mm系は13。数字は連続する太さの目盛りではなく、機種の区分を表すラベルとして振られている。
型番を分解する——数字とアルファベットが指しているもの
FY-08PD9という6〜9文字ほどの短い型番の中に、実は複数の情報が詰め込まれている。ここまでに確認できた範囲で分解すると、次のようになる。
FY-[機種クラスを示す2桁の数字:08/12/13/16など]PD[機能を示す英字:L・E・Aなど、無いこともある]9[末尾の任意記号:SD・D・Wなど]
「08」は、上で見たとおり適用パイプ径φ100mmの機種クラスを示す。続く「PD」の後ろに来る英字が、機能面の違いを枝分かれさせる場所だ。公式製品データベースで実機を確認すると、ここに「L」が入ったFY-08PDL9は「小風量形」、「E」が入ったFY-08PDE9Dは「高気密電気式シャッター付」という説明が付く。何も入らない素のFY-08PD9が、標準の排気プロペラファンということになる。
末尾の記号にも意味がある。FY-08PD9SDの「SD」は、公式ページの「本体スイッチ付」「速結端子付」という2つの仕様に対応しているとみてよさそうだ。素のFY-08PD9が「コード、プラグ付」でコンセント接続なのに対し、SD付きは換気扇本体にスイッチを内蔵し、配線も差し込み式の速結端子で行う。同じ「PD9」という核の部分に対して、末尾の記号が現場での使い勝手(電源の取り方、スイッチの有無)を書き足していく構造だ。
ここまでは、いわば予想の範囲に収まる規則性だった。だが実機を並べていく過程で、もう一つ見落としていた事実に気づかされた。FY-08PP9という型番の存在である。
実機に当てはめる——6機種を横に並べる
パナソニック エコシステムズ株式会社(現・パナソニックHVAC&CC株式会社)の公式製品データベースに載っている、実際の数値で確認しておく。
- FY-08PD9:排気・プロペラファン・角形格子ルーバー・適用パイプ径φ100mm・コード/プラグ付。2015年4月1日発売、希望小売価格11,880円(税抜10,800円)、有効換気風量74.5m3/h(60Hz)。
- FY-08PDL9:排気・プロペラファン・小風量形・角形格子ルーバー・適用パイプ径φ100mm・コード/プラグ付。2015年4月1日発売、希望小売価格11,880円(税抜10,800円)、有効換気風量53.5m3/h(60Hz)。FY-08PD9より一段小さい風量クラス。
- FY-08PD9SD:排気・プロペラファン・角形格子ルーバー・本体スイッチ付・適用パイプ径φ100mm・速結端子付。2015年4月1日発売、希望小売価格15,180円(税抜13,800円)。
- FY-08PDE9D:排気・プロペラファン・高気密電気式シャッター付・角形ルーバー・適用パイプ径φ100mm・速結端子付。2016年4月1日発売、希望小売価格18,700円(税抜17,000円)。運転停止時に外気の侵入を防ぐ電気式シャッターを搭載。
- FY-08PP9:排気・ターボファン・高気密電気式シャッター付・角形インテリアパネル形”ピタンコ”・適用パイプ径φ100mm・コード/プラグ付。2016年4月1日発売、希望小売価格18,590円(税抜16,900円)、有効換気風量46.5m3/h(60Hz)。
- (比較)FY-13PD9:排気・プロペラファン・角形ルーバー・適用パイプ径φ150mm・コード/プラグ付。2016年4月1日発売、希望小売価格14,960円(税抜13,600円)、有効換気風量134.5m3/h(50Hz)/137.5m3/h(60Hz)。
並べてみて意外だったのは、FY-08PP9の立ち位置だ。型番の見た目こそFY-08PD9の兄弟のように見えるが、公式ページの製品説明は「排気 ターボファン 壁・天井取付 高気密電気式シャッター付」となっていて、他のFY-08PD9系列が名乗る「プロペラファン」とは別の送風方式が採用されている。見た目も、格子状のルーバーではなく、運転を止めるとパネルがぴたりと閉まる「ピタンコ」という独自の意匠だ。同じ「08」=φ100mmという括りの中に、プロペラファンとターボファンという異なる送風機構が同居している。
現場で間違えやすい点——「08=φ70」という思い込みと、実在しないφ100mm大風量品番
型番の資料に「FY-08PD9はパイプ径φ70対応」と書いてあると、そのまま信じてしまいそうになる。だが公式製品データベースを見る限り、この記載は誤りだ。同じ「08」始まりの他の型番(FY-08PDL9、FY-08PDE9D、FY-08PD9SDなど)がことごとくφ100mmとされている中で、FY-08PD9だけがφ70mmだったとすれば、それこそ整合性のない話になる。φ70mmという数値がどこから紛れ込んだのかは分からないが、少なくとも公式資料には現れない。
もう一つ、実務でありがちな取り違えが「大風量タイプが欲しいから、番号を一つ上げてFY-10PD9を頼めばいいだろう」という発想だ。だが、パナソニックが公開しているJIS自己適合宣言書(パイプファン全品番を対象としたもの)を確認すると、対象品番の頭2桁は08・12・13・16のいずれかしか存在せず、「10」で始まる品番は一件も見当たらない。φ100mmの範囲でより大風量の機種が欲しい場合、公式資料に基づく限り、頭2桁を変えるのではなく、同じ「08」の系列内で機能違いの型番(無印・SD・Eなど)を選ぶか、そもそもφ150mm対応のFY-13系列へ切り替えるかのどちらかで考えたほうがよい。「10」という数字を安易に当てはめると、存在しない品番で見積り依頼をしてしまうことになる。
実務上の注意点
型番から仕様を類推するのではなく、公式製品データベースの「適用パイプ径」欄を都度確認する——これに尽きる。特に改修工事で既設のパイプに合わせて機種を選び直す場合、パイプの実測径とファン側の適用パイプ径が食い違うと施工できない。型番の数字を見て「08だからφ70だろう」「10だから大きいだろう」と決め打ちせず、現物のパイプ径を測ったうえで、対応する適用パイプ径の型番を選定する手順を徹底したい。
もう一つ、電気式シャッター付(FY-08PDE9D、FY-08PP9)の機種については、公式ページに「電子式スイッチを使用すると換気扇が正常に動作しない場合がある」という注意書きがある。既設の壁スイッチが電子式(ホタルスイッチなど)になっている現場でこれらの機種へ交換する場合、スイッチ側の仕様も合わせて確認しておいたほうがいい。
パイプ用ファンの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、既設のパイプ用ファンの型番から適用パイプ径・後継機種の確認、SD・L・Eといった機能記号の読み取りまでのご相談を見積フォームで受け付けている。型番ラベルが薄れて読み取りにくい場合は、パイプの実測径と合わせて現物の写真を確認できると選定が早い。
あわせて読みたい
- パナソニックのキャビネットファン(FYシリーズ)の型番はどう読むのか|FY-20NCS3・FY-23SCT3JEZが並べるダクト径・静音形/消音形・電源仕様の規則
- パナソニックのタイムスイッチ(TB26/29シリーズ)の型番はどう読むのか|TB261101Kが積み上げる周期・回路数・世代の規則
- パナソニックの漏電ブレーカの型番はどう読むのか|BJW・BKW・BKWAが示すモータ保護の有無と極数・定格電流の規則
- 空調・換気設備業者向け一括仕入れガイド!換気扇適合選定と配管部材まとめ買いのコツ
関連するパナソニック・パイプ用ファン・FY-08PD9・型番・見方・パイプ径・φ100の品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。