古い制御盤の図面フォルダから、見積書が一枚出てくる。型番の欄には「LV429630」。もう一枚、今週届いたばかりの現行価格表には「C10F3TM100」とある。担当者は、この二つを見比べて手が止まる。文字の並びがまるで違う。廃番になって、まったく別の後継機に切り替わったのだろうか——そう身構えて公式カタログを開くと、注記にあっさりこう書いてある。この二つは、同じ製品を指している。
シュナイダーエレクトリックの配線用遮断器ComPacT NSXシリーズは、2026年3月30日付の公式カタログ(LVPED221001EN、Version 4.0)で、型番(commercial reference)の体系そのものを刷新した。カタログのCatalog Numbers章はこの変更を「New generation, simpler commercial references」と題し、旧来の「LV+6桁の数字」という、数字を見ただけでは中身の見当がつかない型番から、フレームサイズ・遮断容量クラス・極数・トリップユニットを一続きの文字列に埋め込んだ、読んで意味の分かる型番へ置き換えたと述べている。カタログ自身が挙げる例がまさにこれで、「NSX100F・36kA・AC・3P3D・100A・TMD」という仕様の遮断器は、旧型番のLV429630から、新型番のC10F3TM100になった、と明記されている。
型番の骨格——六つの部品の並び
新型番の骨格は、公式カタログの対応表によれば、次の六つの部品でできている。
- ComPacTタイプ(NSX/NSXmとも記号は「C」)
- フレームサイズ(2桁の数字)
- 遮断容量クラス(1文字のアルファベット)
- 極数構成(1桁の数字)
- トリップユニットの種類(2〜3文字)
- トリップユニットの定格電流(3桁、ゼロ埋め)
C10F3TM100を分解すると、C=ComPacT、10=フレームサイズ100Aクラス、F=遮断容量クラス(36kA)、3=3極3素子(3P3D)、TM=熱動電磁式トリップユニット(TMD)、100=トリップユニット定格電流100A、という並びになる。同じ論理で、フレーム250A・遮断容量50kA・3極・TMD・定格電流250AのNSX250Nは「C25N3TM250」と書ける。実際、カタログのComPacT NSX250N(50kA at 380/415V)の一覧表にも、この型番がそのまま載っている。極数構成の数字にも規則があり、3極3素子(3P3D)は「3」、4極4素子(4P4D)は「4」、4極だが3素子(4P3D)は「6」——同じ4極でも、素子数によって割り当てられる数字が変わる。
ここまでは、素直な話だ。フレームサイズが大きくなるほど数字も大きく、遮断容量クラスが上がるほどアルファベットも規則的に変わっていく——そう期待したくなる。ところがカタログの別の一覧表を見ていくと、その期待は途中で裏切られる。
NSXmだけに回された、電流値と無関係な番号
フレームサイズの2桁の数字を並べてみる。NSX100は「10」、NSX160は「16」、NSX250は「25」、NSX400は「40」、NSX630は「63」——定格電流の頭2桁をそのまま使っているだけに見える。ところが、より小型の姉妹機種ComPacT NSXmの型番を見ると、この規則が急に崩れる。カタログF-4ページの一覧表によれば、NSXmの63A相当フレームは「11」、160A相当フレームは「12」。定格電流の頭2桁とは何の関係もない、通し番号のような数字が割り当てられている。
なぜNSXmだけ、こんな中途半端な番号を背負わされているのか。理由は単純だ。「63」はすでにNSX630(630Aフレーム)に、「16」はすでにNSX160(160Aフレーム)に割り当て済みだからである。NSXmの63A相当フレームが仮に「63」を名乗ろうとすれば、本家NSX630のフレームコードと桁が衝突する。160A相当フレームが「16」を名乗ろうとしても同じことが起きる。だからNSXmには、定格電流とは無関係な予備の番号「11」「12」が回されている。フレームサイズの数字は、電流値を表すための桁であると同時に、製品ファミリーを区別するための空き番号でもある。
HB1・HB2という名前なのに、型番の文字はVとW
遮断容量クラスの1文字にも、同じ事情が隠れている。カタログF-26ページ・F-27〜28ページには、690V級の特殊仕様として「HB1(500Vで85kA、690Vで75kA)」「HB2(500Vで100kA、690Vで100kA)」という型式名が載っている。名前の見た目からすれば、HとBの組み合わせなのだから、型番のクラス文字もHやBに寄せてきそうなものだ。ところが実際の型番でHB1を引き当てると、クラス文字は「V」になる(例:C10V3TM080)。HB2に至っては「W」になる(例:C10W3TM063)。
HもBも、それぞれ別のクラス(H=70kA、B=25kA)にすでに使われている一文字だから、HB1・HB2に同じ文字を再利用すると型番の意味が二重になってしまう。だから、型式名の見た目とは無関係な、まだ使われていないアルファベットが充てられている——と考えると筋は通る。ただしカタログ自体は、VやWという文字の選定理由までは説明していない。なぜV・Wという具体的な文字が選ばれたのか、他に候補があったのかは、公開資料からは分からない。
NSXmのフレームコードとHB1・HB2のクラス文字。この二つは、見た目も場所もまったく違う型番の部品でありながら、同じ構造の問題を抱えている。基本の記号体系(フレームは電流値の頭2桁、クラスはアルファベット1文字)を先に固定してしまうと、あとから追加した派生機種は、その体系の中に素直には収まらない。素直に収めようとすれば桁や文字が衝突するので、体系の外側から予備の記号を借りてくるしかない。ComPacT NSXの新型番は、便利な暗記法であると同時に、増築を重ねた製品ラインの履歴そのものを刻んでいる。
型番だけでは分からないこと——Micrologicの枝番
電子式トリップユニットMicrologicの型番表記にも、似た省略が起きている。旧来の型式名では、Micrologicには2.2・2.3、4.1・4.2・4.3というように、世代の中でさらに枝番が振られていた。ところが新型番では、2.2も2.3も、どちらも「2D」という同じ2文字に集約される。4.1・4.2・4.3も、そろって「4V」だ。枝番の違いは、型番の文字列からはもう読み取れない。
発注する側からすれば、これは十分に実用的なのだろう。同じフレーム・同じ極数・同じ定格電流の組み合わせに対して、シュナイダーが実際に販売しているMicrologicの枝番は一つに絞られているはずだからだ。だが裏を返せば、新型番の文字列は「今、注文できる一点」を指し示すためのラベルであって、現物のトリップユニットが技術的に何世代目のものかまでは保証しない。型番の桁数が減った分だけ、型番に載っている情報量も、実は減っている。
現場での実務的な注意点——630Aフレームの上限は、組み合わせで変わる
型番の構造が分かったところで、選定の場面で見落としやすい数字を一つ挙げておく。フレーム630AのNSX630Fに搭載できるトリップユニットの上限電流は、組み合わせる機種によって変わる。
カタログF-50〜51ページの一覧表を突き合わせると、NSX630F(36kA)に熱動電磁式TMDやMicroLogic 2.3(LSOI保護)を組み合わせた場合、トリップユニットの定格電流はフレーム表記どおり630Aまで選べる(C63F3TM630、C63F32D630)。ところが同じNSX630Fのフレームに、地絡保護機能を備えたMicroLogic Vigi 4.3(LSOIR保護)やVigi 7.3 E(LSIR保護+エネルギー管理)を組み合わせると、選べる定格電流の上限は570Aで頭打ちになる(C63F34V570、C63F37E570)。地絡保護を足すかどうかで、同じ630Aフレームの実質的な上限電流が60A分だけ変わる。制御盤の主幹に630Aフレームを指定し、かつ漏電保護まで持たせたい場合は、この570Aという上限を見落とすと、後から定格を再検討する羽目になる。
型番の読み替えが必要になる場面は、実務ではむしろ日常的だ。過去の制御盤の図面や保守記録に残っているのは、たいてい旧型番のLVコードか、あるいはNSX250Nのような「フレーム+クラス」の型式名であって、新しいカタログ番号ではない。予備品の手配や更新工事の見積りでは、まず現物のプレートか旧図面から型式名を特定し、そこから極数・トリップユニットの仕様を突き合わせて、初めて現行の発注コードにたどり着ける。
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