古い制御盤の予備品棚に、型番だけがかろうじて読み取れるスマートリレーが二台並んでいる。ラベルには「SR2B121BD」、もう一台には「SR2E121BD」。10文字のうち9文字までが一致している。担当者は、これはロット差かメーカー内の表記ゆれだろうと判断して、片方を予備品として棚に戻す。
その判断は、半分正しく、半分間違っている。シュナイダーエレクトリックの小型PLC(プログラマブルリレー)「Zelio Logic」シリーズの公式カタログ(文書番号DIA3ED2111202EN、Version 4.0、2022年1月版)を開くと、この2文字目のB/Eの違いだけで、現物の姿がまるで変わることが分かる。SR2B121BDには、本体前面にバックライト付きの液晶ディスプレイが付いている。SR2E121BDには、それがない。表示器がなければ、現場でラダー図やI/Oの状態をその場で確認する手段が失われる。棚に戻された1台は、もしかすると「同じもの」ではなかったかもしれない。
型番の骨格――四つのブロック
Zelio Logicの型番は、公式カタログのReferences章の一覧表を並べていくと、次の四つのブロックでできていることが見えてくる。
- 基本記号(SR2=コンパクトタイプ、SR3=モジュラータイプ)に続く1文字のアルファベット(A・B・D・E)
- I/O点数を示す2桁の数字(10・12・20・26)
- 出力の種類を示す1桁の数字(1=リレー出力、2=トランジスタ出力)
- 電源電圧を示す末尾の記号(B・E・FU・JD・BD)
SR2B121BDを分解すると、SR2(コンパクト)+B(1文字目)+12(I/O点数)+1(リレー出力)+BD(24V DC電源)という並びになる。同じI/O点数12点のまま出力だけをトランジスタに変えると、公式カタログの一覧表にはSR2B122BDという型番が載っている。末尾から3桁目の数字が1変わっただけで、リレーの接点による開閉ではなく、無接点のトランジスタ出力に切り替わる。
「表示器の有無」と「クロックの有無」――同じ1文字に、二つの仕様が重なっている
厄介なのは、冒頭のB/Eの1文字だ。この1文字は、表示器の有無だけを示しているのではない。公式カタログのコンパクト形一覧表を、表示器あり・表示器なしの2枚に分けて読み比べると、次の対応が浮かび上がる。
- B=表示器あり・クロックあり
- A=表示器あり・クロックなし
- E=表示器なし・クロックあり
- D=表示器なし・クロックなし
1文字に、「画面が付いているか」と「時計(スケジュール機能用のリアルタイムクロック)を内蔵しているか」という、本来なら別々に選べてもよさそうな二つの仕様が同時に折り畳まれている。SR2B121BDとSR2E121BDが見た目にも中身にも似ているのは偶然ではない。両方とも「クロックあり」という共通点を持ちながら、表示器の有無だけがBとEに割り振られているからだ。
ここまでは、ハードウェアの構成の違いとして納得できる。ところが公式カタログのReferences表の脚注をたどっていくと、この1文字はソフトウェアの選択肢まで縛っていることが分かる。
その1文字が、使えるプログラム言語まで決めている
一覧表の「Clock」列が「No」になっている行――つまりA・Dで始まる型番――には、例外なく脚注(1)「Programming in ladder language only(プログラミングはラダー言語のみ)」が付く。SR2A201E、SR2A101FU、SR2A101BD、SR2D101FU、SR2D101BD……。クロックを持たない型番は、すべてラダー言語専用だ。逆に「Clock」が「Yes」のB・Eの型番には、この脚注が一つも付いていない。プログラミングソフト「Zelio Soft 2」が持つもう一つの言語、FBD(ファンクションブロック線図)は、クロックを内蔵したB・E系列でしか使えない。
なぜクロックの有無がプログラム言語の選択肢まで左右するのか、公式カタログはその理由を説明していない。クロックなし機種が処理能力を抑えた廉価な入門機として設計され、そのぶんFBDの実行環境を積む余裕がなかったのではないかとは推測できる。ただし、この推測を裏づける記述は公開されている一次資料には見当たらない。分かるのは、型番の2文字目を見ただけで、「この現物にFBDで書き込めるかどうか」まで、注文する前に決まってしまうという事実だけだ。
モジュラー型(SR3)には、そもそもA・D・Eが存在しない
同じ1文字の規則を、モジュラータイプのSR3にあてはめようとすると、今度は別のことに気づく。公式カタログのモジュラー形一覧表には、SR3B101B、SR3B261B、SR3B101FU、SR3B261FU、SR3B261JD、SR3B101BD、SR3B102BD、SR3B261BD、SR3B262BDと、SR3で始まる型番が並ぶ。だが、どの型番も2文字目は必ず「B」で、A・D・Eは一つも出てこない。
SR3の一覧表には、そもそも「表示器あり・クロックあり」という組み合わせしか用意されていない。表示器なしの構成も、クロックなしの構成も、モジュラータイプにはカタログ上存在しない。拡張モジュールを足して機能を積み増していく上位ラインだからこそ、削ぎ落とした廉価版を別に作る必要がなかったのだろう――と考えると筋は通るが、これも公式カタログが明言しているわけではない。確かなのは、SR3の型番でA・D・Eという文字を探しても、絶対に見つからないという事実だけだ。
電圧記号の「B」――さっきの1文字と、まったく別の意味で再登場する
型番の末尾にも、目を凝らすべき箇所がある。SR2B121Bという型番を分解すると、2文字目の「B」(表示器あり・クロックあり)のすぐあとに、I/O点数と出力種別の数字を挟んで、末尾にもう一つ「B」が出てくる。この2番目の「B」は、24V AC電源であることを示す記号だ。同じ「B」という1文字が、型番の中の位置が変わるだけで、「表示器とクロックの構成」と「電源電圧の種類」という、まるで無関係な二つの情報を交互に背負っている。
電源記号の対応は、公式カタログの一覧表を電圧の欄ごとに拾っていくと次のようになる。
- B(単独)=24V AC
- E(末尾)=48V AC(この組み合わせはSR2A201Eの1機種のみ)
- FU=100…240V AC
- JD=12V DC
- BD=24V DC
末尾が「B」ならAC24V、「BD」ならDC24V――「B」の後ろにもう1文字「D」が続くかどうかで、交流と直流という、配線を間違えれば機器を壊しかねない違いが決まる。SR2B121BとSR2B121BDは、末尾の1文字が増えるか増えないかだけの違いに見えて、電源そのものが別物だ。型番を目視で照合するときほど、この末尾の1文字を読み飛ばしやすい。
現場での実務的な注意点
型番の骨格が見えたところで、発注や保守の場面で見落としやすい点を、二つ書いておく。
一つは、本体と拡張モジュールの電圧を揃える必要があることだ。公式カタログのモジュラー形一覧表には「Note: The Zelio Logic smart relay and its associated extension modules must have an identical voltage to be able to operate together.(Zelio Logicスマートリレー本体と、それに接続する拡張モジュールは、同一の電源電圧でなければ一緒に動作できない)」と明記されている。SR3B101BD(24V DC)に、100…240V AC用の拡張モジュールを組み合わせることはできない。型番末尾の電源記号は、本体を選ぶときだけでなく、あとから増設する拡張モジュールを選ぶときにも、もう一度照合が必要になる。
もう一つは、リレー出力の点数がすべて同じ電流定格とは限らないことだ。26 I/OのSR3B261B(モジュラー形、リレー出力10点)には脚注が付いており、「Including 8 outputs at maximum current of 8 A and 2 outputs at maximum current of 5 A.(うち8点は最大8A、残り2点は最大5A)」という内訳が示されている。カタログの表面上は「10 (1)」と一括りに見える出力点数も、末尾の2点だけ電流定格が落ちる。負荷側の電流を出力点数で単純に割り振ると、この2点で定格超過を起こしかねない。
あわせて読みたい
- 三菱電機MELSEC FXシリーズPLCの型番はどう読むのか|FX3G・FX5UのMR/MT・ES/DS・シンク/ソース出力の見分け方
- オムロンCP1EシリーズPLCの型番はどう読むのか|CP1E-N30DR-Aが「ラインアップの生き残り」ではない理由
- シュナイダーエレクトリックの電磁接触器(LC1Dシリーズ)の型番はどう読むのか|LC1D09・LC1D40Aが並べるフレーム番号・端子記号・コイル電圧コードの規則
- 廃番型番の代替品はこう探す|メーカーが『わかりません』と言うときに商社ができること
関連するシュナイダー・Zelio・Logic・SR2・SR3・型番・見方の品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。