制御盤の改修現場で、外した基本ユニットのラベルに「FX3G-40MR/ES」、差し替える新品のラベルに「FX5U-32MT/ESS」とある。どちらも三菱電機のFXシリーズだと聞かされて安心しかけるが、並べてよく見ると数字とアルファベットの並びがまるで違う顔をしている。MRとMT、ESとESS——同じメーカーの同じPLCなのに、なぜここまで表記が揺れて見えるのだろうか。
型番の見た目だけを追うと、暗号のように思えるかもしれない。だが三菱電機の公式ユーザーズマニュアルを開くと、この文字列は思いのほか整然とした規則の上に成り立っている。しかもその規則は、FX3GからFX5U、さらに次世代のFX5UJへと、シリーズをまたいで生き延びている。以下、公式資料に基づいてこの規則を一段ずつ剥がしていく。
型番の骨格——点数・M・出力方式・電源方式という4つの部品
三菱電機の「FX3Gシリーズ マイクロシーケンサ ユーザーズマニュアル[ハードウェア編]」は、基本ユニットの形名を「FX3G[入出力合計点数]M[出力方式]/[電源・入力方式]」という構成図で説明している。FX3G-40MR/ESという型番をこの型に当てはめると、FX3G(シリーズ名)+40(合計点数)+M(基本ユニットを示す記号)+R(出力方式)+/ES(電源・入力方式)という4つの部品に分解できる。
FX5Uも骨格は同じだ。三菱電機FAサイトが公開しているFX5U CPUユニットのリーフレットは、FX5U-32MT/ESという型番を、FX5U+32(点数)+M+T(出力方式)+/ES(電源・入力方式)という同じ並びで示している。シリーズ名が変わっても、型番を組み立てる順序そのものは引き継がれているということだ。
「点数」は入力と出力を均等に割っているとは限らない
型番の数字を見て、「40なら入力20・出力20だろう」と直感的に半分へ割ってしまう人は少なくない。だがFX3Gの製品一覧表を見ると、その直感は外れる。FX3G-40MR/ESの内訳は入力24点・出力16点。FX3G-24MR/ESは入力14点・出力10点、FX3G-60MR/ESに至っては入力36点・出力24点と、常に入力側を多めに配分する非対称な設計になっている。
ところがFX5Uでは事情が違う。三菱電機FAサイトの仕様ページによれば、FX5U-32MT/ESは入力16点・出力16点、FX5U-64MR/ESは入力32点・出力32点と、こちらは点数をきっちり半分に割っている。同じ「合計点数」という表現をFX3GとFX5Uの型番に対して使っていても、その内訳の設計思想は世代によって違う。型番の合計点数だけを見て入出力の内訳まで決め打ちすると、配線設計の段階でずれが生じかねない。
MとRとTが運ぶ情報——基本ユニットと出力方式
型番中盤のMは、FX3Gの製品一覧表で「基本ユニット」という注記が添えられている記号で、CPU・メモリ・入出力・電源を1台に収めた本体であることを示す。このMのすぐ後ろに続くRとTが、出力方式を分けている。
FX3Gの製品一覧表は、MRの行に「出力形式:リレー」、MTの行に「出力形式:トランジスタ」と明記する。三菱電機FAサイトが公開するFX5U関連リーフレットの形名凡例はさらに踏み込み、Rを「リレー出力」、T1を「トランジスタ出力(シンク)」、T2を「トランジスタ出力(ソース)」と定義している。MとRまたはTの組み合わせだけで、機械的な接点を持つリレーを積んでいるか、半導体スイッチのトランジスタを積んでいるかが決まる。
スラッシュの後ろ——ESとDSが分けるのは「電源」
型番後半、スラッシュに続くES・DSは、CPUユニット自体の電源方式を示す。FX5Uのリーフレットの形名凡例は、ACを「AC電源」、DCを「DC電源」と定義しており、ESはAC電源、DSはDC電源を前提にした型番だとわかる。同じ凡例はD2という記号も定義していて、これは「DC入力(シンク/ソース)」——入力側の信号がDC24Vで、しかもシンク・ソースどちらの配線方式にも対応することを示す記号だ。FX3G・FX5UのES/DS系の型番はいずれもこのD2(シンク・ソース入力共用)を内蔵しており、入力側の配線方式で迷う場面は基本ユニットに関しては起きにくい。
見落としやすい一文字——ESSの「S」は出力の向きを変える
ここまでの規則を押さえると、次に引っかかるのがMT/ESとMT/ESSの違いだ。文字数が一つ増えただけに見えるこの「S」は、電源方式の話ではない。FX5Uのリーフレットの形名凡例に戻ると、MT/ESはT1(トランジスタ出力・シンク)、MT/ESSはT2(トランジスタ出力・ソース)に対応しており、末尾のSはトランジスタ出力の電流の向き——シンクかソースか——を切り替える記号だとわかる。
三菱電機の「MELSEC FX3シリーズからMELSEC iQ-Fシリーズへの置換えの手引き」も、増設用の高速カウンタユニットについて「FX5-16ET/ES-Hはオープンコレクタ DC24V入力かつシンク出力を使用時に選定してください」「FX5-16ET/ESS-Hはソース出力を使用時に選定してください」と説明しており、ESとESSの違いがCPUユニットに限らずシンク/ソースの区別として一貫して使われていることがわかる。
もう一つ気づく点がある。リレー出力のMR/ES・MR/DSには、このSが付いた型番が存在しない。リレーは機械的な接点の開閉であって、トランジスタのように電流の向きで区別する必要がないからだ。Sという記号は、出力方式がトランジスタであるMT系列にしか現れない。
型番の規則は世代を超えて生き残っている
FX3GからFX5U・FX5UJへの置き換えを考えるとき、この規則性はそのまま役に立つ。三菱電機が2025年9月に発行した置換えの手引きを見ると、FX3G-40MR/ESの推奨代替機種はFX5UJ-40MR/ES、FX3G-60MR/ESの代替機種はFX5UJ-60MR/ESと、末尾のMR/ESという表記がシリーズをまたいでそのまま引き継がれている。
一方でFX3G-14MR/ESの代替機種はFX5UJ-24MR/ESとなっており、この手引きは「推奨代替機種ではI/O点数が増えます」と注記している。同じ末尾表記でも、点数の桁だけは新シリーズの製品ラインナップに合わせてずれることがある、ということだ。型番の記号体系が世代を超えて共通だからといって、点数まで一致するとは限らない。
型番だけでは読み切れないもの——増設ユニットは別のシリーズ名を名乗る
型番の規則をここまで分解できるようになると、逆に型番が正直に語らない部分も見えてくる。FX3Gの入出力増設ユニットの型番を製品一覧表で確認すると、FX2N-32ER-ES/UL、FX2N-48ET-ESS/ULといった具合に、頭に付くのはFX3Gではなく一世代前のFX2Nという名称だ。基本ユニットはFX3Gを名乗りながら、それに繋ぐ増設ユニットはFX2Nという古いシリーズ名の型番のまま供給され続けている。
FX5Uはここが違う。三菱電機FAサイトのリーフレットに載る拡張ユニットは、FX5-32ER/ES、FX5-32ET/ESSのようにCPUユニットと同じFX5という頭文字を持つ。同じ「入出力を増設する部品」という役割でも、FX3G世代は旧シリーズの型番を引き継ぎ、FX5U世代は自分自身の世代名を名乗る——という違いがある。制御盤の増設ユニットにFX2Nと書かれたラベルを見つけても、それは古い基本ユニットの生き残りではなく、現行のFX3G基本ユニットに正規に接続される部品である可能性がある。型番の頭文字だけで世代を判断すると、増設ユニットについては読み違える。
MELSEC FXシリーズPLCの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、制御盤に残った基本ユニット・増設ユニットの型番から、後継機種(FX5UJ・FX5U等)への読み替え、出力方式(リレー/トランジスタ・シンク/ソース)の確認まで対応している。型番の一部が判読できない場合は、現物の写真を添えてもらえると照合が早い。
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