冒頭の場面・会話は、内容の理解を助けるための例示です。特定の現場・企業・案件を指すものではありません。
「6SL3210-1PE21-8UL0」という型番を、部品リストか流通サイトの型番検索で見かけたことがあるかもしれない。備考欄には「5.5kW」と書かれていたりする。パワーモジュールの型番なのだから、末尾の記号を追えば出力くらいは読み取れるはずだ、と最初は思う。
ところがシーメンス公式の「SINAMICS G120 Power Module PM240-2 Hardware Installation Manual」(文書番号A5E33294624B AN、Edition 07/2022)を開き、Ordering Dataの表で同じ型番の行を探すと、そこには「7.5 kW」とある。5.5kWではない。見間違いかと思い、2017年発行の公式ブローシャー(Order No. DRBR-G120X-0617)の別表でも同じ型番を確認したが、そちらも7.5kWで一致していた。型番は1つ。だが、手元にある「5.5kW」という数字と、公式資料の「7.5kW」という数字は、食い違ったままだ。
型番の骨格――4つのブロックに分かれている
まず土台を確認しておく。今回扱う4機種の型番は次のとおりだ。
- 6SL3210-1PE18-0AL1
- 6SL3210-1PE21-8UL0
- 6SL3210-1PE23-8AL0
- 6SL3210-1PE28-8AL0
いずれも「6SL3210」で始まっている。マニュアルのOrdering Data表を見渡すかぎり、この頭7桁はPM240-2の400V(3AC 380〜480V)シリーズに共通する固定部分で、この4機種の間で変わることはない(250kWを超えるFSGクラスの一部型番では頭の桁が「6SL3224」に変わる例もあるが、それは今回の4機種の範囲外の話である)。
続く「1PE」は、200〜240V系の型番が「1PB」または「1PC」を名乗るのに対し、380〜480V系だけが名乗るブロックだ。マニュアルの200V用表と400V用表を突き合わせるかぎり、この対応は一貫している。つまり「1PE」を見た時点で、少なくとも「380〜480V系の製品である」ことまでは読み取れる。
問題はその先――「21」「23」「28」「18」という数字と、続くハイフンのあとの1桁である。
「21-8」はどこから来た数字なのか
結論から言うと、この数字を出力(kW)や電流(A)から逆算する計算式は、マニュアルのどこにも書かれていない。書かれているのは、Ordering Dataの表そのものだ。表を上から下まで読むと、次のような並びになっている。
| フレームサイズ | 定格出力(LO基準・kW) | 定格出力電流(LO・A) | フィルタなし | フィルタ内蔵 |
|---|---|---|---|---|
| FSA | 3 | 7.7 | 6SL3210-1PE18-0UL1 | 6SL3210-1PE18-0AL1 |
| FSB | 4 | 10.2 | 6SL3210-1PE21-1UL0 | 6SL3210-1PE21-1AL0 |
| FSB | 5.5 | 13.2 | 6SL3210-1PE21-4UL0 | 6SL3210-1PE21-4AL0 |
| FSB | 7.5 | 18 | 6SL3210-1PE21-8UL0 | 6SL3210-1PE21-8AL0 |
| FSD | 18.5 | 38 | 6SL3210-1PE23-8UL0 | 6SL3210-1PE23-8AL0 |
| FSE | 45 | 90 | 6SL3210-1PE28-8UL0 | 6SL3210-1PE28-8AL0 |
同じフレームサイズFSBの中で「21-1」「21-4」「21-8」と数字が大きくなるにつれ、出力も4kW→5.5kW→7.5kWと大きくなっている。ここだけを見ると、数字が出力の目安になっているように見える。だが「21-8」の次に来るのは「22-7」(FSC・11kW)であり、8の次が7に戻る。数字はフレームサイズをまたいだ瞬間にいったんリセットされ、また小さい値から積み上がっていく。連番ではあっても、kWやAへの換算式ではない――マニュアルを最後まで探しても、そう言い切れる記載しか見つからなかった。
だからこの数字は、「同じフレーム内で出力の大きい順に振られた管理コード」として扱うのが実務上は正確だ。数字から出力を暗算するのではなく、必ずOrdering Dataの表と突き合わせる。回り道のようだが、この製品に関しては、それが一番早い。
U と A の分かれ目――フィルタ内蔵の有無
表の列見出しに戻ろう。「Without filter」の列には末尾が「U」で終わる型番が、「With filter」の列には末尾が「A」で終わる型番が並ぶ。ここでいうフィルタとは、EN 61800-3のクラスA無線周波妨害波抑制フィルタ(いわゆるEMCフィルタ)のことだ。ブローシャーの解説文には「The integrated Class A filter is required to maintain the cable-conducted interference voltages and the radiated disturbances for installations in compliance with EN 61800-3 Category C2」とある。フィルタなしを選ぶと、その分は外付けの部材か、設置環境側の対策で補う必要が出てくる。
今回の4機種のうち、6SL3210-1PE21-8UL0だけが「U」――つまりフィルタなし――で、残る3機種(1PE18-0AL1、1PE23-8AL0、1PE28-8AL0)はすべて「A」、フィルタ内蔵だ。同じ「1PE21-8」という管理コードでも、UL0とAL0の2つが表には並んでいる。フィルタの有無は型番の末尾1文字で分かれる、というだけのことなのだが、この1文字を見落とすと、EMC対策の要否を丸ごと取り違えることになる。
末尾の「L0」「L1」――フレームサイズに紐づく符丁
型番の一番最後、「UL0」「AL0」「AL1」の「L」に続く数字にも、確認できる範囲でのパターンがある。技術データの章(6.6.3節、パルス周波数による電流低減の表)を見ると、FSA(1PE11-8から1PE18-0まで)は軒並み「L1」、FSB以降(1PE21-1から1PE28-8まで)は軒並み「L0」で統一されている。今回の4機種で言えば、FSAの1PE18-0AL1だけが「L1」、FSB・FSD・FSEに属する残る3機種はすべて「L0」だ。
出力やフィルタの有無とは無関係に、フレームサイズのグループにそのまま連動しているように見える。ただし、この数字が何の略号なのか(設計世代なのか、生産ライン区分なのか)を明言した記載は見当たらなかった。断定はできない。確認できたのは、「FSAはL1、FSB〜FSEはL0」という対応関係がマニュアル内で一貫している、というところまでだ。
4機種を通しで読む
ここまでの読み方を、実際の4機種に当てはめておく。
6SL3210-1PE18-0AL1は、FSA・定格出力3kW(LO基準、電流7.7A)・フィルタ内蔵・末尾L1。3kWという数字は、公式マニュアルとブローシャーの両方で一致している。
6SL3210-1PE21-8UL0は、FSB・定格出力7.5kW(LO基準、電流18A)・フィルタなし・末尾L0。冒頭で触れた「5.5kW」という表記は、この型番に関するかぎり、公式一次資料2点のどちらとも一致しない。5.5kWに対応する型番は、同じFSBの中にある別の型番「6SL3210-1PE21-4UL0」のほうだ。型番の中間コードが1つ違うだけで、対応する出力も変わる。
6SL3210-1PE23-8AL0は、FSD・定格出力18.5kW(LO基準、電流38A)・フィルタ内蔵・末尾L0。こちらも「15kW」という数字が周辺情報として見られることがあるが、公式資料が示す値は18.5kWだ。15kWに対応する型番は「6SL3210-1PE23-3AL0」であって、末尾が「-3」か「-8」かで出力が変わる。
6SL3210-1PE28-8AL0は、FSE・定格出力45kW(LO基準、電流90A)・フィルタ内蔵・末尾L0。この機種については、45kWという数字が公式資料と一致している。
4機種のうち2機種は手元の想定どおり、残る2機種は想定とずれていた。型番のどの桁を見落とすと、想定と実物がずれるのか――その答えは、ここまで見てきた「中間コードは計算式ではなく管理番号」という一点に尽きる。
現場で間違えやすい点――型番だけでは決まらないこと
実務上、注意したい点が2つある。
1つは、いま見た出力の取り違えだ。中間コードの1桁違い(21-4と21-8、23-3と23-8)だけで出力が変わるという構造は、旧設備の銘板を控えて手配する場面や、流通サイトの型番リストを転記する場面で、写し間違いや情報源の誤りに気づきにくい原因になる。型番を控えたら、可能な限り公式のOrdering Data表と突き合わせておきたい。
もう1つは、パルス周波数(搬送周波数)による電流低減だ。技術データの章によれば、6SL3210-1PE21-8.L0の定格出力電流は、パルス周波数2kHzでは18Aだが、モータ騒音の低減や配線条件の都合で16kHzまで上げると7.2Aまで下がる。同じ型番、同じ「7.5kW」という表記のまま、実際に流せる電流はパルス周波数の設定次第で半分以下になり得る。銘板の出力(kW)だけを見て「このモータには足りる」と判断するのではなく、実際の運転条件(特にパルス周波数を初期値から変更しているかどうか)まで確認する必要がある。
実務上の注意点――フィルタ内蔵とブレーキチョッパーは別の話
もう1点、混同しやすい仕様がある。「内蔵ブレーキチョッパー」は、フィルタ内蔵の有無(U/A)とは別の話だ。ブローシャーには「PM240/PM240-2 Power Modules have an integrated braking chopper」とあり、これはU型・A型を問わず、PM240-2シリーズ全体に共通する標準仕様として書かれている。特定の型番だけがブレーキチョッパーを内蔵しているわけではない。同様に、IP20仕様がUL認証のOpen Type装置である点も、マニュアル付録のUL File記載を見るかぎり、FSA〜FSGの全フレームサイズに共通する仕様であって、4機種のうちどれか1つだけの特徴ではない。型番の桁が語っているのは「フレームサイズ」「出力・電流の管理コード」「フィルタ内蔵の有無」までであり、それ以外の仕様は型番と切り離して確認したほうがいい。
シーメンスSINAMICS G120の型番確認・見積りについて
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、盤に残ったSINAMICS G120 パワーモジュールの型番から、フレームサイズ・出力・フィルタ内蔵の有無を公式Ordering Dataと照合したうえでの後継品・代替品の確認に対応している。型番の中間コードだけを頼りに出力を判断せず、実際に接続するモータの定格やパルス周波数の設定条件まで含めて確認できる。銘板が判読しにくい場合は、写真を添えてもらえれば照合が早い。
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