銘板に「C1-022LF2」とある。ハイフンの後ろに並ぶ数字とアルファベットを追えば、容量も電圧クラスもおおよそ見当がつく。日立産機システムのインバータらしい、というところまでは分かる。
ところが、この型式をめぐる話には、容量表示の読み方だけでは説明のつかない部分が残っている。同じ1台のインバータが、ある設定では「WJ200」を名乗り、別の設定では「WJ-C1」を名乗る。型式ラベルはどちらの場合も「C1-022LF2」のまま変わらない。だとすれば、この製品を「WJ200」たらしめているものと「WJ-C1」たらしめているものは、いったい何なのか。
日立産機システムのWJシリーズC1総合カタログ(SM-497Q)を確認すると、この二面性の正体が、型式の構成そのものとは別の場所に見つかった。
型式の骨格――5つの位置に分かれる機種略号
カタログの「機種構成」ページには、機種略号として「C1-001 L F 2」という並びが示されている。先頭の「C1」はタイプ名で、WJシリーズC1であることを表す固定の接頭辞だ。続くハイフンの後の3桁が容量コードで、注記には「適用モータ容量(ND定格) 001:0.1kW~150:15kW」とある。ND、つまり標準負荷定格を基準にした値だと、わざわざ限定されている。
容量コードの次の1文字が入力電源仕様で、M(単相100V級)、S(単相200V級)、L(三相200V級)、H(三相400V級)の4通り。さらに次の1文字がF(操作パネル付)、末尾の1桁がバージョンを表す2だ。実際の機種一覧を見ても、単相100V級はC1-004MF2・C1-007MF2、三相200V級はC1-001LF2からC1-150LF2まで、三相400V級はC1-004HF2からC1-150HF2まで、この並びのとおりに型式が振られている。
容量コードの作り方にも規則がある。ND定格のkW値を10倍して3桁にそろえただけの数値で、0.1kWは001、1.5kWは015、2.2kWは022、15kWは150。素直な対応に見えるが、0.75kWだけは007になる。7.5を四捨五入した8でも、切り上げた8でもなく、整数部の7で打ち切られた値だ。小数点以下の情報は、コードの上では静かに失われている。
もうひとつ、容量コードがND定格だけを基準にしていることの意味も押さえておきたい。WJ-C1の単相200V級・三相200V級には、定格電流と過負荷耐量の異なる2つの定格――軽負荷定格(LD)と標準負荷定格(ND)――を切り替えられる「2重定格仕様」が備わっている。同じC1-022LF2でも、LD側では定格出力電流と適用モータ容量の値がND側とは変わる。ところが型式に埋め込まれた容量コードはND側の値だけを表しており、LD側の数値は型式のどこにも現れない。型式だけを見て「このインバータの容量はこれで確定している」と思い込むと、LD定格で使う場合の値を見落とすことになる。
驚きはここから――型式が変わらないのに、正体が変わる
ここまでは、型式を分解して終わる話のはずだった。ところがカタログを読み進めると、「選べる2つのモードを搭載」という項目に行き当たる。WJ-C1には、パラメータで切り替えられる「基本モード」と「拡張モード」という2つの動作モードがある。基本モードはWJ200相当の機能に絞ったモードで、4桁のパラメータ表示。拡張モードはWJ-C1の新機能を含む多機能モードで、5桁表示になる。工場出荷時の初期状態は拡張モードだと明記されている。
ここまでなら、単なる互換モードの話だと思うだろう。ところが、共通仕様ページの脚注に、もう一段踏み込んだ一文があった。
「基本モードはWJ200、拡張モードはWJ-C1として認識します。」
これはパソコン設定ソフト「ProDriveNext」がインバータに接続したときの挙動についての注記だ。本体に貼られた型式ラベルは「C1-022LF2」のまま何も変わらない。それにもかかわらず、選んでいる動作モードによって、設定ソフトはこの1台を「WJ200」と認識したり「WJ-C1」と認識したりする。型式が指し示すハードウェアの型と、ソフトウェアが認識する製品名は、この製品に関しては同じものではない。パラメータの設定値ひとつが、その1台の「名乗り」を決めている。
なぜこんな仕組みになっているのか
理由をカタログの中に断定的な一文として見つけることはできなかった。ただし、手がかりはある。
WJ-C1は、WJ200の後継として、同一取付寸法によるリプレースのしやすさを掲げて設計された製品だ。同時に、WJ200の前に日立産機システムが手がけていたSJシリーズP1の多機能「拡張モード」の血統も受け継いでいる。つまりWJ-C1は、旧世代の使い勝手をそのまま踏襲したいユーザーと、新機能をフルに使いたいユーザーの両方に、同じ1台のハードウェアで応えようとしている製品だ。
そのために用意されたのが、機能を絞った「基本モード」と、機能を解放した「拡張モード」という2階建ての構造なのだろう。基本モードでWJ200として認識されるという仕様は、既存のWJ200用の通信オプション(WJ-ECT・WJ-PB・WJ-PN・WJ-CCL)をそのまま流用できるようにするための、実務上の必然だったと考えられる。ハードウェアを新しくしながら、ソフトウェア上の身分証だけを旧世代に合わせて出し分ける。型式という固定された記号だけでは表現しきれない互換性を、パラメータという可変の層で補っている、というのがカタログの記述から読み取れる範囲での見立てだ。この意図そのものを日立産機システムが明言している一次資料は見つかっていない。
型式のほうにも、この二面性を裏づける傍証がある。実際にWJ200の製品ページのURLへアクセスすると、ページ本体は表示されず、HTMLの自動転送タグによって現行のWJシリーズC1の製品ページへ即座に飛ばされる。型番の検索という入口においてすら、WJ200はすでに独立したページを持たず、WJ-C1という現行製品に吸収されている。型式としては過去のものになりながら、動作モードとしては現行機の中に生き続けている、というのがWJ200の今の位置づけということになる。
現場での注意点――寸法は互換でも、端子とオプションは別問題
WJ200との比較表には「取付寸法互換有」と明記されている。既存の制御盤の開口部を作り直す必要はない、という意味では確かに互換だ。
ただし、同じ表を読み進めると、無条件に互換とは言えない部分が見えてくる。制御回路端子台の入力端子数は7端子から8端子に増え、USBコネクタはMini-BからMicro-Bに変わり、通信機能の内蔵終端抵抗も200Ωから120Ωへと変わっている。EMCノイズフィルタは標準では内蔵されておらず、CE指令に適合させるには別途フィルタオプションの設置が必要だとも記載されている。
そして、ここまで見てきたモードの話が、そのまま実務の分岐点になる。WJ200用の通信オプションをWJ-C1で使い回したい場合、カタログには「基本モード選択時、既存のWJ200シリーズの通信オプションに対応。」とある。工場出荷状態の拡張モードのままでは対応が保証されない。外部オペレータについても、OPE-SR・OPE-SBK・OPE-SRmini・WOPは基本モード専用、VOPは拡張モード専用と、モードによって使えるオプション自体が入れ替わる。型式を読んで容量と電圧クラスを確認するだけでは、この製品の互換性は半分しか分からない。動作モードの設定まで含めて確認して、初めてリプレースの計画が立てられる。
C1-022LF2を通しで読む
最初に挙げた1本の型式を、ここまでの内容で読み通しておく。「C1」はタイプ名でWJシリーズC1であることを示す固定の接頭辞。「022」は容量コードで、ND定格の適用モータ容量2.2kWを10倍して3桁化した値。「L」は入力電源仕様で三相200V級、「F」は操作パネル付、末尾の「2」はバージョンを表す。ここまでは型式ラベルに刻まれた、変わることのない情報だ。
一方、このインバータが「WJ200」なのか「WJ-C1」なのかは、型式のどこにも書かれていない。パラメータで選んだ動作モードが基本モードなら設定ソフト上ではWJ200、拡張モードならWJ-C1。ラベルを見ただけでは分からない身分が、本体の中の1つの設定値によって決まっている。型式を読むという行為は、この製品に関しては全体の半分にすぎない。
日立産機システムWJ-C1インバータの型式確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社では、盤に残ったWJ200・WJ-C1いずれの型式からも、容量コードと電圧クラス記号を照合し、後継品への読み替えに対応している。旧WJ200の通信オプションを流用したいという相談も多いが、その場合は基本モードへの切り替えが前提になる点まで含めて確認できる。銘板の型式が判読しにくい場合は、写真を添えてもらえれば照合が早い。
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