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太陽光パネルはなぜ炎天下で発電量が落ちるのか|最大出力(Pmax)の温度係数と、屋根置き・野立てで変わる冷却差を一次情報で整理

読了目安: 12分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

年間で日射量が最も多いはずの、真夏の正午。発電量のモニターを見た担当者が、あれ、と思う。晴天は続いている。日射計の数値も申し分ない。なのに、出力のグラフは春先の穏やかに晴れた日と比べて、むしろ低い位置で頭打ちになっている。日射量が多いのに出力が伸びない——これは機器の不調だろうか。

そう疑いたくなる気持ちはわかる。だが、大抵の場合これは故障ではない。パネルという製品が、太陽光にさらされ続けることそのものによって抱え込む、避けがたい性質のあらわれである。

開放電圧の温度係数とは別の話——最大出力(Pmax)の温度係数

太陽光パネルの「温度係数」という言葉を耳にしたことがある人は、低温になるほど開放電圧(Voc)が上がり、パワーコンディショナ(PCS)の入力電圧上限を超える恐れがある、という話を思い浮かべるかもしれない。それは正しい。ただし、それは冬の設計問題である。ここで扱うのは、まったく別の係数だ。

太陽電池モジュールには、開放電圧の温度係数(β)、短絡電流の温度係数(α)とは別に、最大出力の温度係数(δ、あるいはγ)という数値がある。ソーラーフロンティアの単結晶モジュールSFB250-88Aの仕様書には、この3つの温度係数がそろって記載されている。短絡電流の温度係数は+0.055%/K、開放電圧の温度係数は-0.27%/K、そして最大出力の温度係数は-0.35%/Kだ。同じマイナス符号でも、開放電圧は「気温が下がると上がる」現象を、最大出力は「セル温度が上がると下がる」現象を指している。向いている方向がそもそも逆なのだ。

カナディアン・ソーラーのCS1H-335MSでも同様の内訳が確認できる。最大出力の温度係数は-0.37%/℃、開放電圧は-0.29%/℃、短絡電流は+0.05%/℃。2社の実測値はいずれも最大出力の温度係数が-0.3%台半ばに収まっており、電気学会に報告された学術研究でも、結晶シリコン系モジュールの最大出力の温度係数は「-0.4~-0.5(%/℃)程度と大きく、温度上昇による発電出力の低下は大きなファクターとなっている」と位置づけられている。つまりこの数値は、ある特定のメーカーだけの癖ではなく、結晶シリコン系太陽電池が構造的に抱えている性質だということになる。

数字だけを並べても実感が湧きにくいので、具体的に置き換えてみる。公称最大出力400Wのモジュールで、Pmax温度係数を-0.4%/℃とする。セル温度が基準の25℃から35℃上昇して60℃になったとすると、出力低下は0.4%×35=14%。400Wの機種であれば、日射条件がまったく同じでも、出力はおよそ344Wまで落ち込む計算になる。60℃というセル温度は、真夏の直射日光下では決して大げさな数字ではない。日射量そのものは午前中よりも正午前後の方が多いはずなのに、実発電量ではそこまで差がつかない、あるいは逆転すら起きるという冒頭の違和感は、この14%という目減りでかなりの部分が説明できる。

セル温度25℃という基準と、そこからの乖離

ここで一度、足元を確認しておきたい。パネルのカタログに載る「公称最大出力350W」といった数値は、どんな条件のもとで測定されたものなのか。ソーラーフロンティアもカナディアン・ソーラーも、基準状態(STC)をセル温度25℃・分光分布AM1.5・放射照度1,000W/m2と定義している。この25℃というのは、気温ではなくセル(パネル内部の発電素子)そのものの温度だ。

炎天下で作業したことのある人なら想像がつくと思うが、真夏の屋外でパネルの温度がちょうど25℃に収まる場面は、まずない。気温がすでに30℃を超えていることも珍しくなく、そこに直射日光を浴び続けるパネルの表面温度は、気温よりもさらに高い位置まで押し上げられる。カタログ値は、めったに実現しない条件での性能を示しているにすぎない。

パネル表面温度は、気温よりどれだけ高くなるのか

では実際、パネル表面温度は気温よりどれだけ高くなるものなのか。この問いに答えるための指標が、NMOT(公称モジュール動作温度)である。カナディアン・ソーラーのCS1H-335MSは、NMOTを43±3℃と公表している。IEC61215が定めるNMOTの測定条件は、日射強度800W/m2・気温20℃・風速1m/sというもので、しかも架台に開放的に設置した(裏面が塞がれていない)状態を想定している。

つまり、そこそこ風が通る条件で、しかも真夏よりだいぶ穏やかな日射・気温であっても、パネル温度は気温より20℃以上高い水準に達するということだ。真夏の炎天下、無風に近い状況ではどうなるか。電気学会に報告された研究がその答えを示している。沖縄県宮古島に設置された750kW級の太陽光発電試験設備で2年間にわたり収集された実測データによれば、基準日射強度1.0kW/m2・風速0(自然冷却のみ)の条件でのモジュール温度上昇は、年間平均気温24℃の同地において51℃と推定されている。気温24℃の日でも、無風であればパネル温度は75℃近くまで押し上げられるという計算だ。

架台の設置方法によって、冷却のされ方は変わる

パネル表面温度が気温だけでは決まらず、風による冷却にも大きく左右されることは、ここまでの数字がすでに示している。だとすれば、次に気になるのは、その風がどれだけパネル裏面まで届くかという話になる。ここで効いてくるのが、架台の設計だ。

先述の宮古島の実測データには、風向ごとの温度上昇の違いも記録されている。基準日射強度1.0kW/m2において、風速3m/sの北風では温度上昇が23.9℃だったのに対し、同じ風速3m/sの南風では33.7℃まで上がっている。風速4m/sでも21.4℃と31.5℃、風速5m/sでも18.7℃と30.6℃と、南風の場合だけ一貫して高い。研究チームの分析によれば、これは架台の傾斜角が原因だ。北風・東風では風がパネルの表と裏の両面に回り込み両面が冷却されるのに対し、南風では架台の傾斜によって風が上に押し上げられてしまい、裏面にはほとんど風が届かず、実質的に自然冷却任せの状態になる。同じ風速でも、裏面に風が回り込むかどうかだけで、温度上昇に約10℃もの差が生まれている。

この「裏面の通気性」という論点は、屋根置き型と野立て型の架台を比べるときにも、そのまま当てはまる考え方だ。野立て型の架台は地面から一定の高さを確保して組まれることが多く、パネル裏面の空間に風が回り込む余地が比較的残されやすい。一方、屋根置き型は建物の屋根面という限られた下地の上に架台を組むため、裏面のクリアランスが野立て型ほど確保しにくい設置になりやすい。実際、先述の研究チームは、屋根に密着させて取り付け、裏面での放熱(輻射・対流)がほとんど起こらない断熱状態を想定した計算もあわせて行っている。裏面の通気を奪われた設置ほど、温度が高い側に振れるという前提を、彼らの計算モデルもまた踏まえていたことになる。

裏面の通気性が悪くなれば、パネル温度は上がりやすくなる。パネル温度が上がれば、最大出力の温度係数の分だけ、出力が理論値から目減りする。日射量では説明のつかない出力の伸び悩みの背景には、こうして温度係数と架台設計という、一見別々の論点が一本の線でつながっている。

この関係は、パネル選定の段階で見落とされがちな部分でもある。カタログを比較検討するとき、目が行きやすいのはやはり公称最大出力(W)や変換効率(%)であって、Pmax温度係数の欄まで確認する担当者は多くない。しかし設置場所が屋根置きで、周辺に建物が密集していて風の抜けが悪いことがあらかじめわかっているなら、Pmax温度係数がわずかでも小さい機種を選ぶことは、年間発電量の見積もり精度を上げるうえで意味のある比較軸になる。逆に野立てで十分な高さと風通しを確保できる設計であれば、温度係数の差が発電量に与える影響は相対的に小さくなる。設置環境と機種選定は、切り離して考えるべきものではない。

よくある誤解・見落とし

  • 「温度係数」を開放電圧の話とひとくくりにする:低温時の開放電圧上昇(PCS入力電圧超過リスク)と、高温時の最大出力低下は、原因も設計上の対処もまったく別の論点である。片方の対策をもう片方の対策と混同すると、必要な検討が抜け落ちる。
  • カタログの公称最大出力を、実発電量の予測にそのまま使う:公称値はセル温度25℃という、真夏にはまず実現しない条件での数値である。年間発電量シミュレーションでは、季節ごとのパネル温度上昇を織り込んだ計算が必要になる。
  • 架台の通気設計を、強度・コストだけで決める:裏面のクリアランスを削ると施工性やコスト面で有利に見えることがあるが、通気性の低下は夏場の出力低下という形で長期的な発電量に跳ね返ってくる可能性がある。

パネル選定・架台設計のご相談について

「屋根置きで検討している設置場所は、野立てに比べて夏場の発電量がどれくらい変わるのか知りたい」「Pmax温度係数の小さいモジュールに変更した場合の効果を試算したい」といったご相談を、設計担当者様からいただくことがあります。

温度係数はメーカー・機種ごとに数値が異なり、実際の出力への影響は設置場所の風況や架台仕様によっても変わります。当サービス「電材サーチ」では、モジュールの仕様確認から、架台を含めた部材構成のご相談まで承っております。

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FAQ

Q. Pmax(最大出力)の温度係数と、開放電圧(Voc)の温度係数は何が違うのですか?

A. 別の係数で、効く方向も逆です。Voc温度係数は「気温が下がると開放電圧が上がる」という低温側の現象を表す数値で、ストリングの直列枚数設計(PCSの入力電圧上限との整合)に関わります。一方Pmax温度係数は「パネル表面温度が基準の25℃より上がるほど、出力(kW)そのものが下がる」という高温側の発電量ロスを表す数値です。前者は冬の設計問題、後者は夏の発電量問題であり、同じ「温度係数」という言葉でも指している現象は別物です。

Q. 真夏の炎天下では、実際どのくらい出力が下がるのですか?

A. 使用するモジュールのPmax温度係数と、そのときのパネル表面温度によって変わります。例えばPmax温度係数が-0.37%/℃のモジュール(カナディアン・ソーラーCS1H-335MS)の場合、基準の25℃からパネル表面温度が20℃上昇して45℃になると、出力は理論上7.4%程度低下する計算になります。実際のパネル表面温度は気温だけでなく日射量・風速・架台の通気性によっても変わるため、一律の数字で断定はできません。

Q. 屋根置き型と野立て型では、なぜ架台の通気性に差が出るのですか?

A. 屋根置き型は屋根面とパネル裏面の間隔が、野立て型の架台に比べて限られやすい設置方法です。電気学会に報告された宮古島での実測研究でも、風がパネル裏面まで回り込んで両面が冷える状態と、架台の傾斜によって風が上に押し上げられ裏面がほぼ自然冷却任せになる状態とでは、同じ風速でも温度上昇に大きな差が生じることが示されています。同研究では、屋根に密着させて裏面の放熱経路をふさいだ場合の計算も行われており、裏面の通気性が確保しにくい設置ほど温度上昇が大きくなる方向であることが示唆されています。

Q. 出力の目減りを抑えるために、設計上できることはありますか?

A. パネル自体のPmax温度係数が小さい(0に近い)機種を選ぶこと、架台とパネル裏面の間に通気空間を確保すること、周辺に風の通り道をふさぐ構造物を置かないことが基本的な対策になります。ただしいずれも強度・コスト・屋根形状といった他の設計条件とのトレードオフになるため、設置環境に応じた総合判断が必要です。

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よくある質問

Pmax(最大出力)の温度係数と、開放電圧(Voc)の温度係数は何が違うのですか?

別の係数で、効く方向も逆です。Voc温度係数は『気温が下がると開放電圧が上がる』という低温側の現象を表す数値で、ストリングの直列枚数設計(PCSの入力電圧上限との整合)に関わります。一方Pmax温度係数は『パネル表面温度が基準の25℃より上がるほど、出力(kW)そのものが下がる』という高温側の発電量ロスを表す数値です。前者は冬の設計問題、後者は夏の発電量問題であり、同じ『温度係数』という言葉でも指している現象は別物です。

真夏の炎天下では、実際どのくらい出力が下がるのですか?

使用するモジュールのPmax温度係数と、そのときのパネル表面温度によって変わります。例えばPmax温度係数が-0.37%/℃のモジュール(カナディアン・ソーラーCS1H-335MS)の場合、基準の25℃からパネル表面温度が20℃上昇して45℃になると、出力は理論上7.4%程度低下する計算になります。実際のパネル表面温度は気温だけでなく日射量・風速・架台の通気性によっても変わるため、一律の数字で断定はできません。

屋根置き型と野立て型では、なぜ架台の通気性に差が出るのですか?

屋根置き型は屋根面とパネル裏面の間隔が、野立て型の架台に比べて限られやすい設置方法です。電気学会に報告された宮古島での実測研究でも、風がパネル裏面まで回り込んで両面が冷える状態と、架台の傾斜によって風が上に押し上げられ裏面がほぼ自然冷却任せになる状態とでは、同じ風速でも温度上昇に大きな差が生じることが示されています。同研究では、屋根に密着させて裏面の放熱経路をふさいだ場合の計算も行われており、裏面の通気性が確保しにくい設置ほど温度上昇が大きくなる方向であることが示唆されています。

出力の目減りを抑えるために、設計上できることはありますか?

パネル自体のPmax温度係数が小さい(0に近い)機種を選ぶこと、架台とパネル裏面の間に通気空間を確保すること、周辺に風の通り道をふさぐ構造物を置かないことが基本的な対策になります。ただしいずれも強度・コスト・屋根形状といった他の設計条件とのトレードオフになるため、設置環境に応じた総合判断が必要です。

参考文献・出典

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