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太陽光・EV太陽光パネル設置角度・方位角

太陽光パネルの設置角度・方位角はなぜ緯度で変わるのか|真南・最適傾斜角からのズレが発電量に与える影響を一次情報で整理

読了目安: 12分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

見積もりの打ち合わせで、屋根の向きが話題になることがある。「真南から少しでもズレていたら、その分だけ損をする」と考えている担当者もいれば、「多少のズレなんて誤差の範囲」と言い切る担当者もいる。同じ業界にいながら、この二つの立場はあまり噛み合わない。どちらも間違ってはいない、というのが厄介なところだ。

実際のところ、太陽光パネルの発電量を左右する設置角度・方位角には、緯度によって理論上の最適値が変わるという性質があり、そこからズレたときの発電量の落ち方にも、ある程度はっきりした傾向がある。「真南・最適角度でなければ意味がない」という思い込みと、「多少のズレは全く気にしなくていい」という楽観。この記事で見ていきたいのは、その両極端のあいだにある、もう少し具体的な話である。

「傾斜角は緯度に合わせる」という経験則の中身

太陽光パネルの設置角度を考えるとき、よく耳にする目安がある。「傾斜角はその土地の緯度に合わせるとよい」というものだ。これは根拠のない俗説ではない。太陽の年間平均的な南中高度、つまり太陽が真南に来たときの地面からの高さは、おおよそ「90度からその土地の緯度を引いた角度」で近似できる。パネル面が太陽光に対してできるだけ直角に近い角度で向き合えるよう傾きを決めるなら、緯度に合わせて傾けるという考え方は、直達光(太陽から直接届く光)だけを見れば理にかなっている。

京セラの解説記事も、この考え方に沿った説明をしている。「太陽光パネルに対して太陽光が90度(直角)にあたるのが、最も発電効率の高い角度」であり、「太陽の南中高度は地域(緯度)によって変わりますが、全国的に『設置角度30度』が最も効率的と言われています」という一文だ。日本の主要な人口集中地域の緯度がだいたい30度台であることを踏まえると、「30度」という数字が広く流通してきた理由も見えてくる。

ここまでは、多くの人が漠然と知っている話に近い。問題は、この経験則がどこまで正確なのか、という一段先の話である。

837地点を解析してわかったこと——最適角度は緯度どおりとは限らない

この問いに、学術研究の形で正面から答えを出した論文がある。Yuらが2019年にSustainability誌へ発表した研究で、NEDOが公開する気象データベースMETPV-11を使い、日本全国837地点について、方位0度から360度・傾斜角0度から90度まで、あらゆる組み合わせの年間日射量をシミュレーションした。対象となったデータは、1990年から2009年までの20年分の地上観測データから作られた、代表的な1年分の時別値である。

結果は、経験則をそのまま裏付けるものではなかった。論文の結論部分にはこうある。「最適傾斜角は、従来の緯度傾斜という経験則から最大15度ずれることがわかった」。緯度どおりに傾ければ最適になる、という単純な話ではないということだ。

この15度という数字の背景にあるのが、拡散日射比率という指標である。地表に届く日射には、太陽から直接届く直達光と、空全体に散乱してから届く拡散光(散乱光)の二種類がある。論文は、日本海側など降水量の多い地域ほどこの拡散光の割合が高くなる傾向を確認し、拡散光の割合が高い場所では、パネルをやや寝かせて空をより広く見渡せる角度にした方が、かえって多くの光を受け止められると説明している。同じ緯度であっても、太平洋側と日本海側とで最適な傾斜角が変わってくるのは、この拡散光比率の違いが利いているためだ。東京(北緯35.69度)の場合、論文の試算では傾斜角35度のときに年間の当たり日射量が最大の1,847kWh/㎡に達するとされている。

「最適角度でなければ意味がない」への反証にもなる数字

ここで、この論文がもうひとつ示している数字に注目したい。緯度に傾けて真南を向けるという従来の経験則と、地点ごとに計算し尽くした理論上の最適角度とを比べたとき、年間日射量の差は「最大でも2%」にとどまる、という結果だ。

15度もズレるという話のすぐあとに、その差が生む効果はせいぜい2%だと言われると、拍子抜けするかもしれない。しかし、この二つは矛盾していない。日射量を角度と方位の関数として描くと、山のてっぺん付近はなだらかで、そこから離れるほど傾斜が急になっていく地形に近い。最適点そのものが緯度どおりの位置から動いていても、その山の頂上付近は横に広く、多少ズレた場所に立っても標高はさほど下がらない——15度のズレが2%の差にしかならない理由は、この地形のなだらかさにある。

つまり、「緯度ちょうどでなければ発電量が大きく損なわれる」という思い込みは、この研究に照らす限り成り立たない。むしろ、緯度どおりに傾けるという昔ながらの経験則は、最適解からズレていても十分に実用的な近似だった、というのがこの数字の意味するところだ。

方位角のズレは、傾斜角ほど緩やかではない

もっとも、なだらかな山の頂上も、離れすぎればいずれ急な下り坂に変わる。同じYuらの論文は、日本各地の最適方位角についても計算しており、ほとんどの地点で最適方位は真南から±10度以内に収まると報告している。最適な向きそのものが、そもそも真南から大きく外れることは稀だということだ。

では、現実の屋根のように、真南から大きく外れた方位にしか設置できない場合はどうなるのか。この点については、業界で公開されている試算例を参考値として見ておきたい。エネがえるが公開している試算例では、方位を真南から45度(南東・南西)ずらした場合の発電量低下は5%程度にとどまる一方、90度(真東・真西)までずらすと低下は約15%に達し、真北まで振り切ると最適条件の60%台にまで落ち込むとされている。同じ試算例では、傾斜角についても最適値から10度程度(20度や40度)ズレたところでの低下は1%程度とごくわずかだとしている。

数字の並びを見ると、傾斜角のズレに対する緩やかさと、方位角のズレに対する厳しさの差が際立つ。傾斜角は多少狂っても山の頂上付近にとどまりやすいのに対し、方位角は真南から離れるほど坂を下る速度が速くなる。ただし、これらはある地域を想定した試算例であり、日射条件や緯度が変われば同じズレ幅でも低下率は変わりうる。断定できる数字として扱うのではなく、傾向をつかむための参考値として受け取るのが安全な使い方だろう。自分が検討している設置場所での正確な値を知りたい場合は、NEDOが無償で公開している日射量データベース閲覧システムで、任意の地点・任意の方位角・傾斜角の組み合わせでの日射量を直接確認できる。

現実の屋根と折り合いをつける

理論の話を離れて、現場の判断に戻ろう。JPEA太陽光発電協会のFAQは、設置方位について「南向きがベスト」としながらも「他の方位に設置することもできます」と明言している。京セラの解説記事も、南北方向の屋根なら南向きに、東西方向の屋根であれば東向きと西向きに分けて設置することを、現実的な選択肢として挙げている。真南に向けられない屋根であっても、太陽光発電という選択肢そのものを諦める理由にはならない、というのがこの業界の共通した立場だ。

一方で、JPEA太陽光発電協会のFAQは北面設置について踏み込んだ注意も添えている。「北面の屋根に設置する場合、他の方位に比べて太陽電池モジュールの発電出力は少なくなり、条件によっては太陽電池モジュールの反射光が近隣へ影響を与える可能性が高くなりますので、注意が必要です」。ここで問題になっているのは発電量だけではない。パネル表面で反射した光が近隣の住宅へ差し込むという、方位選定が生む別種のトラブルにも触れている。

方位・傾斜角をめぐる判断でもう一つ実務上ぶつかりやすいのが、一つの屋根に方位の異なる複数の面がある場合の配線設計だ。この点は太陽光パネルのストリング配線で扱ったとおり、方位や傾斜角が異なる面のモジュールを同一の直列回路(ストリング)に混在させると、日照条件の良い面まで悪い面に足を引っ張られる構造になりやすい。角度・方位の検討は、パネルの向きを決める段階だけでなく、その後の回路設計にまでつながっている。

設置角度・方位角の検討について

「屋根の向きが真南から外れているが、どの程度の発電量を見込めるか知りたい」「傾斜角を変えた場合の年間発電量シミュレーションを比較したい」といったご相談を、施工店・設備管理担当者様からいただきます。

設置予定地の緯度・気象条件によって最適な角度は変わり、屋根の形状や周辺の建物による制約とのすり合わせが必要になる場面も少なくありません。当サービス「電材サーチ」では、設置条件に応じたパネル・架台の選定から、見積もりのご相談まで承っております。

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FAQ

Q. なぜ「傾斜角は緯度に合わせる」という説明をよく見かけるのですか?

A. 太陽の年間平均的な南中高度(太陽が真南に来たときの地面からの高さ)が、おおよそ「90度-その土地の緯度」で近似できるためです。太陽光が真上から当たる角度、つまりパネル面に対して直角に近い角度で日射を受けられるよう、パネルの傾きを緯度に合わせるという考え方が、直達光だけを重視した場合の目安として広く使われてきました。

Q. 緯度に傾ければ、それが常に最適角度になるのですか?

A. そうとは限りません。Yuらの研究(Sustainability誌、2019年)がNEDOの気象データを用いて日本国内837地点を解析した結果では、実際の最適傾斜角は緯度どおりの角度から最大15度程度ずれることが示されています。これは、直達光だけでなく空全体から降り注ぐ散乱光(拡散日射)の割合が地域によって異なり、この割合が高い地域ほど傾斜角を低めにした方が有利になるためです。

Q. 方位を真南からずらすと、発電量はどれくらい落ちますか?

A. ズレの大きさによって傾向が変わります。エネがえるの試算例では、真南から45度(南東・南西)のズレでは低下が5%程度にとどまる一方、90度(真東・真西)のズレでは約15%の低下、真北ではより大きく落ち込むとされています。ただし、これらは特定の地域・条件を前提にした試算例であり、正確な数値は設置場所によって異なるため、NEDOの日射量データベース閲覧システムで自分の設置地点・条件を確認することをお勧めします。

Q. 屋根の向きが真南からずれている場合、太陽光発電は諦めた方がよいのでしょうか?

A. 必ずしもそうではありません。JPEA太陽光発電協会のFAQも、南向きがベストとしつつ他の方位への設置も可能だとしており、京セラも東西方向の屋根であれば東向き・西向きへの設置を選択肢として挙げています。度合いの問題であり、南東・南西程度のズレであれば発電量への影響は限定的だとする試算例もあります。北面への設置は発電出力の低下に加えて反射光が近隣に影響する可能性も指摘されているため、特に慎重な検討が必要です。

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よくある質問

なぜ「傾斜角は緯度に合わせる」という説明をよく見かけるのですか?

太陽の年間平均的な南中高度(太陽が真南に来たときの地面からの高さ)が、おおよそ「90度-その土地の緯度」で近似できるためです。太陽光が真上から当たる角度、つまりパネル面に対して直角に近い角度で日射を受けられるよう、パネルの傾きを緯度に合わせるという考え方が、直達光だけを重視した場合の目安として広く使われてきました。

緯度に傾ければ、それが常に最適角度になるのですか?

そうとは限りません。Yuらの研究(Sustainability誌、2019年)がNEDOの気象データを用いて日本国内837地点を解析した結果では、実際の最適傾斜角は緯度どおりの角度から最大15度程度ずれることが示されています。これは、直達光だけでなく空全体から降り注ぐ散乱光(拡散日射)の割合が地域によって異なり、この割合が高い地域ほど傾斜角を低めにした方が有利になるためです。

方位を真南からずらすと、発電量はどれくらい落ちますか?

ズレの大きさによって傾向が変わります。エネがえるの試算例では、真南から45度(南東・南西)のズレでは低下が5%程度にとどまる一方、90度(真東・真西)のズレでは約15%の低下、真北ではより大きく落ち込むとされています。ただし、これらは特定の地域・条件を前提にした試算例であり、正確な数値は設置場所によって異なるため、NEDOの日射量データベース閲覧システムで自分の設置地点・条件を確認することをお勧めします。

屋根の向きが真南からずれている場合、太陽光発電は諦めた方がよいのでしょうか?

必ずしもそうではありません。JPEA太陽光発電協会のFAQも、南向きがベストとしつつ他の方位への設置も可能だとしており、京セラも東西方向の屋根であれば東向き・西向きへの設置を選択肢として挙げています。度合いの問題であり、南東・南西程度のズレであれば発電量への影響は限定的だとする試算例もあります。北面への設置は発電出力の低下に加えて反射光が近隣に影響する可能性も指摘されているため、特に慎重な検討が必要です。

参考文献・出典

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