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住友電工グループのIVワイヤ(600Vビニル絶縁電線)の型番はどう読むのか|「IV1.6mm」はJIS規格書の例文そのものだった

読了目安: 9分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

分電盤や制御盤のフタを開けると、細い電線が何本も束ねられているのを見たことがあるはずだ。あの中の1本を抜き取って、絶縁体の表面に目を凝らしてみる。何が書いてあるだろうか。

VVFケーブルの取材で古河電工の仕様書を見たときは、拍子抜けした。シースに印字されている「記号」は、てっきり「VVF」だと思っていたのに、仕様書上ではただの「VV」としか書かれていなかったからだ。今回のIVワイヤも、同じことが起きるのではないか――そう身構えて、住友電工グループの連結子会社である住電HSTケーブル株式会社の仕様書と、JIS C 3307の規格原文を開いてみた。

結論から言うと、今回は裏切られなかった。

結論――「IV1.6mm」はJISの例文そのものである

JIS C 3307「600Vビニル絶縁電線(IV)」の「8.製品の呼び方」には、次のような例がそのまま載っている。

例1.600Vビニル絶縁電線 1.6mm又はIV1.6mm

VVFのときのような「印字とお馴染みの呼び名が違う」というひねりは、少なくともこの一点については起きない。IVはJISの規格書自身が「IV1.6mm」という呼び方を例示していて、現場で交わされる呼称と規格上の表記が一致している。

ただし話はここで終わらない。同じ「8.製品の呼び方」の注記には、硬銅線を使った場合だけ記号の後に「(H)」を付けるという規定があり、実際に流通している住友電工グループの製品仕様書(住電HSTケーブル株式会社、HST-SS10-0002G、2026年7月6日改訂)を見ると、品名略号は「IV LF □MM」(単線)または「IV LF □SQ」(より線)という形になっている。JISの原則的な呼び方と、実際に市場に出ている製品の型番表記との間には、LFという追加記号や、mm²の代わりに使われるSQという略記など、小さいがれっきとした差がある。

表示の分解――規格が定める最小限と、住友電工グループが実際に守っている最大限

まずJIS C 3307が定める最小限の姿を確認しておく。「1.適用範囲」によれば、この規格が対象とするのは「600V以下の主に一般電気工作物や電気機器の配線に用いる塩化ビニル樹脂を主体としたコンパウンドで絶縁された単心の絶縁電線」だ。「単心」という言葉が示す通り、VVFやCVのような外装(シース)はない。絶縁体一枚だけをまとった裸の導体、それがIVワイヤの構造上の位置づけになる。

規格が電線の表面に義務づけている表示は、実は驚くほど少ない。「9.1電線の表示」に定められているのは、a)記号、b)製造業者名又はその略号、c)製造年又はその略号の3項目だけだ。

ところが、実際に住友電工グループのブランドで流通しているIVワイヤの仕様書を開くと、様子が一変する。住電HSTケーブル株式会社の仕様書「3.4表示」には、次の8項目を電線の表面に連続表示すると定められている。

  1. ブランド名(HS&T Cable)
  2. 電気用品安全法による表示:<PS>E(単線及び100mm²以下に適用)
  3. 製造業者名又はその略号
  4. JIS認証表示
  5. JIS認証番号
  6. 電線の記号(IV)
  7. 製造年(西暦年号)又はその略号
  8. 鉛フリービニルである表示(LFV)

JISが求めている「記号・製造業者名・製造年」の3項目は、この中の3番・6番・7番として確かに含まれている。だがそれ以外の5項目――ブランド名、PSEマーク、JIS認証表示とその番号、そしてLFV(鉛フリービニル)の表示――は、住友電工グループが自主的に上乗せしているものだ。とりわけLFVの表示は品名そのものにも組み込まれていて、「IV LF」という品名略号の「LF」が、この鉛フリービニルであることを指している。JISの規格書が示す素朴な「IV1.6mm」という呼び方は、現在市場に出ている実物からすると、いわば最小構成の姿でしかない。

実機への当てはめ――住友電工グループのIV1.6・IV2.0・IV3.5sqを構造表で読む

抽象的な話を、実際の数値で確かめておく。住電HSTケーブル株式会社の構造表には、単線とより線がそれぞれ別の表として掲載されている。

単線(構造表より抜粋)

導体径(mm)絶縁体厚さ(mm)仕上り外径(mm)試験電圧(V/1分)絶縁抵抗(20℃・MΩ・km)
1.60.83.2150050
2.00.83.6150050

より線(構造表より抜粋)

公称断面積(mm²)構成(本/mm)絶縁体厚さ(mm)仕上り外径(mm)試験電圧(V/1分)
3.57/0.80.84.01500
5.57/1.01.05.01500
87/1.21.26.01500

sumitomo-densen.yamlに載っているIV1.6・IV2.0(単線)、IV3.5sq・IV5.5sq・IV8sq(より線)という表記例は、この構造表のそれぞれの行にきちんと対応している。ここで一つ、見過ごしそうになった数字がある。絶縁体厚さだ。単線の1.6mmと2.0mmは、導体の太さが違うのに絶縁体厚さはどちらも0.8mmで変わらない。より線の3.5mm²も同じく0.8mmだ。絶縁体の厚みは導体径に比例して増えていくものだと思い込んでいたが、少なくともこの表の範囲では、ある太さの区分ごとに厚みが据え置かれ、区分が変わるところ(5.5mm²で1.0mm、8mm²で1.2mm、14mm²で1.4mm)で段階的に増える、という刻み方をしている。

そしてこの構造表を、単線とより線で並べて眺めたときに、当初の予想と違う事実に気づく。単線の表は2.0mmで終わっており、それより太いサイズは存在しない。一方でより線の表は0.9mm²から始まって500mm²まで続く。0.9mm²というのは、単線でいえばおよそ1mm前後の細さに相当する領域で、単線の1.6mm・2.0mmという太さの範囲と、より線の0.9〜3.5mm²あたりの範囲は、実際には重なり合っている。つまり同じくらいの太さでも、単線とより線の両方が製品として選べる場面があるということだ。VVFケーブルの記事で見た「太くなるとより線に切り替わらざるを得ない」という一方通行の境目とは、ここが違う。IVワイヤの単線とより線は、細いところでは並走する二つの製品ラインであり、太いところ(3.5mm²以上)になって初めて、より線しか残らないという片側だけの境目に変わる。

現場で間違えやすい点

一つ目は、sqとmm²の書き分けだ。 JIS C 3307の「8.製品の呼び方」が示す正式な例は「IV(H)5.5mm2」のように、単位をそのまま「mm2」と書く形になっている。ところが住電HSTケーブル株式会社自身の品名略号は「IV LF □SQ」であり、より線側の単位記号として「SQ」を使っている。見積書や発注書で「IV5.5sq」という表記を見かけたとき、それはJISの規格文そのものの表記ではなく、住友電工グループの製品としての品名略号だと理解しておいたほうがいい。

二つ目は、(H)の意味を取り違えることだ。 JIS C 3307の「8.製品の呼び方」の注記には、「(1)硬銅線の場合だけ(H)とする」とある。つまり(H)がない「IV1.6mm」は軟銅線を指す。市場に出回るIVワイヤの大半は軟銅線で、(H)付きの硬銅線タイプは特定用途向けの少数派だ。(H)を「なにかのオプション記号」程度に読み流すと、導体材質という基本仕様を見落とすことになる。

三つ目は、色数の思い込みだ。 JIS C 3307の「5.材料,構造及び加工方法」c)には、電線の色は軟銅導体の場合は黒・白・赤・緑・黄・青の6色、硬銅導体の場合は黒・白・青の3色とする、と定められている。住電HSTケーブル株式会社の仕様書でも、絶縁体の色として同じ黒・白・赤・緑・黄・青の6色が挙げられている。硬銅線のIVワイヤを扱う機会は多くないだろうが、もし扱うことになったとき、軟銅と同じ6色から選べると思い込むと在庫にない色を指定してしまう。導体材質によって選べる色数そのものが変わる、という規定は覚えておいて損はない。

実務上の注意点

IVワイヤは単心の絶縁電線であり、外装(シース)を持たない。そのため、屋外や水気のある場所にIVワイヤを単体で露出配線することは想定されていない。分電盤内・機器内・制御盤内といった、外装で覆われた箱の中の配線に使うための電線であり、この位置づけはJIS C 3307の適用範囲そのものに書き込まれている。

発注時に伝えるべき情報は、少なくとも次の4点に整理できる。導体径またはサイズ(単線ならmm、より線ならmm²かsq表記)、単線かより線かの構造区分、絶縁体の色(軟銅なら6色から、硬銅なら3色から)、そして数量(条/m)だ。住電HSTケーブル株式会社の仕様書では単線・より線ともに0.9mm²から500mm²まで幅広いサイズが構造表に載っているが、実際にどのサイズ・どの色が在庫として即応できるかは、その時々の流通状況による。

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よくある質問

IVワイヤの「IV」という記号は何を表していますか?

JIS C 3307の「3.記号」には、記号はIVとする、とだけ定められている。何の略かという説明はこの規格の中には書かれていない。ただし同じ規格の「1.適用範囲」を読むと、この記号が指しているのは「600V以下の主に一般電気工作物や電気機器の配線に用いる塩化ビニル樹脂を主体としたコンパウンドで絶縁された単心の絶縁電線」であることが分かる。ポイントは「単心」という一語で、VVFやCVのような外装(シース)を持たない、絶縁体一枚だけの電線がIVだということだ。

IVワイヤの単線とより線は、太さで自動的に切り替わるのですか?

いいえ。住電HSTケーブル株式会社の構造表を見ると、単線は導体径0.8〜2.0mmの5サイズしかなく、より線は公称断面積0.9〜500mm²まで幅広く用意されている。この二つの範囲は太さで綺麗に分かれているわけではなく、0.9〜数mm²あたりでは単線とより線の両方が製品として存在する重なりがある。つまり単線とより線は『太くなったら仕方なく物差しが変わる』のではなく、同じくらいの太さでも可とう性(曲げやすさ)を取るかどうかで選べる、別々の製品ラインとして最初から用意されている。ただし一定より太いサイズ(3.5mm²以上)になると単線の製品自体が存在せず、より線しか選べなくなる。

型番の末尾についている「sq」や「mm」は何のためにありますか?

断面積(mm²)か直径(mm)か、物差しの種類を区別する記号だ。JIS C 3307の『8.製品の呼び方』が示す例は『IV1.6mm』『IV(H)5.5mm2』のように、単位を『mm』『mm2』とそのまま書く形になっている。ところが住電HSTケーブル株式会社自身の仕様書を見ると、品名略号は『IV LF □MM』(単線)と『IV LF □SQ』(より線)に分かれており、より線側の単位表記として『SQ』(スクエア)が使われている。JISの規格文と、実際に流通する製品の型番表記は、同じ内容を指していても書き方が微妙に違う。

IVワイヤはどんな色が使えますか。VVFのように色の組み合わせに決まりはありますか?

JIS C 3307の『5.材料,構造及び加工方法』のc)には、電線の色は導体が軟銅の場合は黒・白・赤・緑・黄・青の6色、硬銅の場合は黒・白・青の3色とする、と定められている。VVFのように『3心なら黒白赤』というような芯数ごとの組み合わせ規定は、IVワイヤには存在しない。IVは単心の電線なので、そもそも複数の色を1本の中で組み合わせる構造がなく、1本=1色として、その色数が導体の材質(軟銅か硬銅か)によって変わるという規定になっている。

参考文献・出典

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