天井裏から垂れたケーブルの被覆に、目を凝らしたことがあるだろうか。細かい文字が連続で印字されていて、その中に「VVF」という文字列を探そうとする。ところが、見つからない。あるのは「VV」という2文字だけだ。
見間違いだろうか、それとも古い在庫品だからだろうか――そう思いながら、古河電気工業とSWCC株式会社(旧・昭和電線ホールディングス)が共同で出資するSFCC株式会社の公式仕様書を開いてみると、事情はもっと単純だった。仕様書自体が、平形(VVF)にも丸形(VV/いわゆるVVR)にも、「記号」としては「VV」としか書いていない。
型番の骨格――シースに印字される「記号」は、VVFでもVVRでもない
SFCC株式会社は、SWCCの営業開始告知とSFCCの製造事業統合完了告知によれば、SWCC(当時は昭和電線ホールディングス)と古河電気工業の共同出資により2020年4月に販売会社として営業を開始し、2022年には両社から一般電線・ケーブルの製造事業を譲り受けた会社である。CVケーブルの型番を扱った別記事でも触れた通り、古河電工の汎用電線・ケーブル事業は現在この会社のブランドの下で仕様が定められている。VVF・VVRも例外ではない。
SFCCが公開する「600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル平形仕様書」(仕様書番号SF-0039B)を開くと、「3.ケーブルの表示」には、適切なところに次の事項を連続表示すると定められている。ブランド名(SFCC)、記号(VV)、導体サイズ、JIS認証表示(4心を除く)、電気用品表示(PSEマーク)、製造業者略号(KYOWA)、製造年、鉛フリービニルの表示(LFV)、200LINE及びストレートライン。9項目のうち、いわゆる「型番」に相当する記号は2番目に置かれているが、その中身は「VV」であって「VVF」ではない。Fの文字はどこにも現れない。
丸形はどうか。SFCCの「600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル(シース灰)仕様書」(仕様書番号SF-0015B)と「600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル仕様書」(仕様書番号SF-0016A、東日本・中日本・西日本の各高速道路会社殿仕様に準拠)の2枚を確認しても、記号はどちらも「VV」だ。この2枚の仕様書には、「VVR」という文字列自体が一度も出てこない。業界では丸形のVVを「VVR」と呼ぶ場面が多いにもかかわらず、少なくとも古河電工・SWCCが共同で定めるこの2枚の一次資料の上では、平形も丸形も同じ「VV」を名乗っている。
ただし、これで話が単純にまとまるかといえば、そうもいかない。アース線付の平形仕様書「アース線付600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル平形仕様書」(仕様書番号SF-0040B)を見ると、記号の欄には「VVF(G)」と、今度はしっかりFが入っている。同じSFCCが定める仕様書群の中でも、Fを記号に含めるかどうかは製品によって割れているということだ。平形か丸形かを見分ける手がかりを記号の文字だけに求めるのは、思いのほか当てにならない。
分解――同じ「600V VV」なのに、記号の位置も耐電圧試験の基準もまるで違う
記号の中身が「VV」で共通していると分かった以上、次に気になるのはその置かれる位置だ。SF-0039B(VVF平形)では記号は9項目中2番目、ブランド名のすぐ後に置かれている。ところがSF-0015B(VV丸形・シース灰)を見ると、様子が違う。ブランド名(SWCC・FURUKAWA)、電気用品表示(PSEマーク)、製造業者略号、製造年、JIS認証表示ときて、記号(VV)が出てくるのはようやく6番目、そのあとに導体公称断面積、鉛フリービニルの表示(LFV)と続く。8項目中6番目だ。
電圧クラスが違うのだろうか。CVケーブルの記事ではそう考えたくなる場面があった。だが今回はそうはいかない。SF-0015Bもこれから見るSF-0016Aも、どちらも「600V」のVVケーブルである。電圧クラスという説明は、ここでは通用しない。
では丸形同士で比べるとどうか。SF-0016A(VV丸形・シース黒、高速道路会社仕様)の「3.ケーブルの表示」を見ると、ブランド名(SFCC)、記号(VV)、導体公称断面積、JIS認証表示、電気用品表示(PSEマーク)、製造業者略号、製造年、鉛フリービニルの表示(LFV)の順で、記号は8項目中2番目に出てくる。同じ600Vの丸形VVケーブルなのに、SF-0015Bでは6番目、SF-0016Aでは2番目。平形か丸形かという構造の違いでも、電圧クラスの違いでも説明がつかない位置の入れ替わりが、丸形同士の間で起きている。
仕様書自体はこの理由を説明していない。ただし、気づく点はある。記号が6番目のSF-0015Bはブランド名を「SWCC・FURUKAWA」と表記し、記号が2番目のSF-0016AとSF-0039B・SF-0040Bはいずれも「SFCC」と表記している。PDFのファイル更新日を確認すると、SF-0015Bは2022年4月8日、それ以外の3枚は2026年3月に集中している。ブランド名の表記が「SWCC・FURUKAWA」から「SFCC」へ切り替わった時期と、記号の位置が6番目から2番目へ動いた時期が重なっているように見える。もっとも、これは日付とブランド表記から逆算した推測であって、仕様書のどこにも「ブランド表記を変えたので記号の位置も変えた」とは書かれていない。確からしい仮説ではあっても、確定した理由ではないという留保は付けておきたい。
もう一つ、耐電圧試験の基準にも見過ごせない差がある。SF-0015Bの付表では、より線2〜14mm²の試験電圧は1500〜2000Vだ。ところがSF-0016Aの付表では、同じ2〜14mm²のより線に対して試験電圧は3000〜4000Vと、ほぼ倍の水準が要求されている。難燃試験の基準も、SF-0015Bが「60秒以内に自然に消えること」なのに対し、SF-0016Aは「30秒以内」とより厳しい。同じ「600V VV・丸形」という括りでも、高速道路会社向けの仕様は一般向けの仕様より高い耐電圧・難燃性能を要求しているということだ。「600V」という表示だけを見て中身が同じだと決めてかかると、実際に要求されている性能の水準を見落とすことになる。
実機への当てはめ――「1.6mm」「2.0mm」の物差しが、太さの途中で入れ替わる
型番の骨格が見えたところで、現物に当てはめてみる。SF-0039Bの付表には、2心・1.6mmの仕上外径が6.2×9.4mm、最大導体抵抗8.92Ω/km、標準条長100m。同じ2心の2.0mmは仕上外径6.6×10.5mm、抵抗5.65Ω/km。ここでいう「1.6mm」「2.0mm」は導体径、つまり1本の単線そのものの直径であって、心線の本数(2心・3心)とは無関係の別の軸だ。「VVF 2.0-3C」と書けば、2.0が導体径、3Cが心線数を指す。ここまでは、住宅配線に馴染みのある呼び方通りである。
ところが、この物差しは丸形のVVでは途中から効かなくなる。SF-0015Bの付表を追っていくと、1.6mm・2.0mm・2.6mmという導体径の表記は円形圧縮より線ではなく単線のサイズにのみ使われており、2mm²以上のサイズになると、構成は「7/0.6」(0.6mmの素線を7本より合わせ)のようなより線に切り替わり、表の見出し自体が「導体径」から「導体公称断面積」へ変わる。単線からより線へ、直径表示から断面積表示へ――太さが大きくなる境目で、物差しの種類そのものが入れ替わるということだ。SF-0016Aに至っては、扱うサイズがすべてより線・公称断面積表記で、単線・導体径による表示は一切登場しない。「VVは太さをmmで見ればいい」という理解は、小径の単線サイズの範囲でしか成立しない。
現場で間違えやすい点――3心の線心色は「黒白赤」だけではない
VVFの3心といえば黒・白・赤、と思い込んでいる向きは多いだろう。無理もない。もっとも一般的な組み合わせは確かにそれだ。しかしSF-0039Bの「識別・配列図」を見ると、3心のVVFには黒・白・赤のほかに、黒・白・緑、赤・白・緑、黒・赤・緑という組み合わせも規定されている。しかも後者2つには、シースの表面に色付きの連続線という追加の目印まで用意されている。
黒・白・緑と赤・白・緑の組み合わせには「緑の連続線」が、黒・赤・緑の組み合わせには「橙の連続線」(表内の注記では「200LINE」)が、それぞれシースに印刷される。緑の連続線は、線心の中に緑色の接地線が含まれる構成であることを示す目印であり、橙の連続線は200V回路向けであることを示す目印だと読み取れる。つまり、シースを剥がして中の線心を確認しなくても、外側の連続線の色を見るだけで「これはアース線入りか」「これは200V回路用か」の見当がつくようになっている。逆にいえば、連続線を確認せずに「3心だから黒白赤のはずだ」と思い込んで結線すると、実際にはアース線入りや200V回路用の配色を扱っていた、という取り違えが起こりうる。
アース線付の平形VVF(G)についても、油断はできない。SF-0040Bの識別・配列図には一体型とセパレート型の2種類があり、どちらも黒・白の電力線に緑のアース線(1.6mm固定)を添え、緑の連続線をシースに配している点は共通している。ただし一体型は電力線とアース線が1本のシースに収まっているのに対し、セパレート型は電力線とアース線が別々のシースに分かれて束ねられている。付表を見ると、セパレート型のシース仕上外径の欄は「-」で、一体型のような一つの外径値が存在しない。同じVVF(G)という記号を名乗っていても、現物の構造が一体かセパレートかで、外径という基本的な数字の持つ意味合いが変わってくる。
そしてもう一点、4心の丸形についても表記が揺れている。一般仕様のSF-0015Bでは4心の線心識別は黒・白・赤・緑だが、高速道路会社仕様のSF-0016Aでは黒・白・赤・青となっており、4番目の色が緑ではなく青に置き換わっている。同じ「4心のVV」という括りでも、適用する仕様書が変われば線心の色そのものが変わりうるということは、覚えておいて損はない。
実務上の注意点
まず、シースに印字された文字列を安易に「VVF」「VVR」と読み替えないほうがいい。少なくとも古河電工・SWCCが定めるSFCCの仕様書上、平形の一般品も丸形もどちらも記号は「VV」であり、形状はあくまで現物の断面で判断するしかない。アース線付平形の「VVF(G)」のように例外的にFを含む記号もあるため、「Fがあれば平形、なければ丸形」という単純な法則も成り立たない。
次に、3心のVVFを「黒白赤」の一択だと思い込まないこと。アース線入り、200V回路向けといった別の配色が正規に規定されており、シース表面の連続線(緑または橙)で見分けられるようになっている。結線前にこの連続線の有無を確認する習慣をつけておくと、思い込みによる取り違えを防ぎやすい。
最後に、「600V」という電圧クラスの表示だけで仕様の水準が同じだと考えないこと。同じ600VのVV丸形でも、一般仕様と高速道路会社仕様とでは、耐電圧試験の基準がほぼ倍近く異なっていた。用途によって要求される仕様書そのものが異なる場合があるという前提で、発注時にはどの仕様書に基づく製品かを確認したほうが確実だ。
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