手元にある取扱品リストには、こう書いてあった。「GXT5-6000IRT2UXLN」。1000VA、2000VA、3000VAと並ぶGXT5シリーズの中で、6000VAだけ末尾に見慣れない「N」が付いている。これが地域仕様の違いなのか、それともオプションの印なのか——確かめるつもりでVertiv公式のインストーラー/ユーザーガイドを開いた。
型式の一覧表を探すのに、そう時間はかからなかった。ところが、そこに「GXT5-6000IRT2UXLN」という文字列は存在しない。載っているのは「GXT5-6000IRT5UXLN」だった。IRT2UではなくIRT5U。Nの謎を解く前に、その手前の数字が違っていた。
「IRT」の後ろの数字——2・5・9という三段階
Vertiv公式のインストーラー/ユーザーガイド(SL-70547、2024年版)は、表題そのものに「230 V Input, 230 V Output (I)」と掲げている。型式の頭に来る「I」は、この資料が扱う電圧・地域区分を示すコードだと見てよい。同シリーズには120V向けの資料もあり、そちらの型式は「GXT5-500LVRT2UXL」のように「LV」というコードに置き換わる。位置は同じ、中身が違う。この1〜2文字は、電圧と仕向地によって変わる枠だ。
続く「RT」は素直にRack/Tower(ラック・タワー兼用)と読める。問題はその後ろの数字だった。同じガイドのTable 2.1を最後まで追うと、750VAから3000VAまでは一貫して「IRT2U」、5000VAから10000VAまでは「IRT5U」、16000VAと20000VAは「IRT9U」に変わる。数字が容量の桁ではなく、別の何かに対応して段階的に切り替わっている。
答えは、同じガイドの寸法表にあった。3000IRT2UXLの本体高さは85mm。5000・6000IRT5UXLNは217mm。16K・20KIRT9UXLNは394mm。ラックユニット(1U=44.45mm)で割ると、85mmはおよそ2U分、217mmはおよそ5U分、394mmはおよそ9U分にきれいに収まる。裏付けはもう一つあった。リチウムイオン版のブローシャ(SL-70951)には、型式とは別に「Form Factor:2U Rack/Tower」という項目がそのまま載っている。数字は容量ではなく、筐体の高さ区分そのものを表していた。
手元の4機種に当てはめる
ここまでで分解の軸は見えた。実際にリストの4機種へ当てはめてみる。
1000VA「GXT5LI-1000IRT2UXL」は、Vertiv公式のリチウムイオン版ブローシャに実在が確認できる。GXT5の後にLIが付くのはリチウムイオンバッテリ機であることを示し、続く「1000」が容量、「I」が230V国際仕様、「RT2U」が2U高のラック・タワー兼用筐体だ。ブローシャの寸法表にも幅430×奥行446×高さ85mmとあり、85mmという数字は先ほどの2U換算とも一致する。
2000VA「GXT5-2000IRT2UXL」、3000VA「GXT5-3000IRT2UXL」は、いずれもVRLA(鉛蓄電池)版のインストーラー/ユーザーガイドのTable 2.1にそのまま載っている実在の型式だ。容量が変わっても「IRT2U」の並びは変わらない。3000VAまでは同じ2Uの筐体に収まる、ということになる。
そして6000VA。手元のリストにあった「GXT5-6000IRT2UXLN」は、このガイドのどこにも出てこない。載っているのは「GXT5-6000IRT5UXLN」と「GXT5-6000IRT5UXLE」の2つだ。6000VAは3000VAより大きな出力を扱うぶん、筐体も2Uから5Uへ1段階大きくなっている。容量が上がれば数字も上がる、という素直な対応がここでも成立していた。手元のリストの「2」は、おそらく3000VAクラスの型式が紛れ込んだものと見られるが、その経緯までは確認できない。
「N」の正体——リチウムイオン版ブローシャが答えを明かした
型式のズレは解けた。残るは本題の「N」だ。
VRLA版のガイドを追う限り、5000VA以上のクラスにはNとEの2種類しか型式が現れない。1000〜3000VAクラスにあった無印(サフィックスなし)のモデルが、5000VA以上では見当たらない。NかEか、どちらかを選ぶしかない構造になっている。
この時点では、NとEのどちらが「標準」でどちらが「追加」なのか、判断がつかなかった。ヒントは別の資料にあった。同じGXT5シリーズのリチウムイオン版ブローシャ(SL-70951)には、型式の対比表がそのまま載っている。「Standard Models」の行に無印の型式(GXT5LI-1000IRT2UXLなど)、「Models with RDU120 Network Card」の行に末尾へ(N)を付した型式(GXT5LI-1000IRT2UXL(N)など)が並ぶ。Nの意味は、この一行で確定した。Vertiv製の通信カード「RDU120」を工場出荷時から内蔵しているモデルを指す記号だ。
5000VA以上のVRLA版ブローシャ(SL-70564-APAC)を見返すと、辻褄が合う。このブローシャの同梱物欄には「UPS (Including factory installed Network Card.)」とあり、掲載されている型式はすべてN付きモデルだけだった。工場出荷時にネットワークカードを内蔵した機種だけを別カタログとして案内している、という位置づけだ。
Eとは何か、Aとは何か——確認できたこと、できなかったこと
Nの正体が「ネットワークカード内蔵」だとわかると、5000VA以上でNとEの2択しかない理由も見えてくる。無印モデルが存在しない容量帯では、Eが無印の代わりに標準品の枠を埋めていると考えるのが自然な読み方になる。ただし、これは型式一覧の構造から推測できる範囲の話だ。「E=標準品」とVertiv公式資料が文章で明言している箇所までは、今回参照した資料の中には見当たらなかった。
1000〜3000VAクラスのVRLA版には、さらに「A」という3つ目のサフィックスがある。同じガイドのリアパネル図を見比べると、無印・E共通の背面レイアウトに対し、Aは端子台の構成が異なる図版になっている。何らかのハードウェア差があることは図から読み取れるが、Aという文字自体が何を略しているかは、参照した資料からは確認できなかった。ここは富士電機GX100の「T」と同様、確認できた事実の外側に置いておくしかない。
現場で間違えやすい点
この記事の出発点そのものが、間違えやすい点の実例になっている。容量が同じシリーズ名の中で並んでいても、型式の途中にある「2U」「5U」「9U」は容量ではなく筐体サイズの区分であり、桁を1つ書き違えるだけで別の容量帯の型式に化ける。銘板や見積依頼の型式を転記するときは、末尾のN・E・Aだけでなく、その手前のU数字まで一致しているかを確認したほうがいい。
もう一点、N付きモデルとE付きモデルは電気的な仕様(出力容量・入力電圧範囲・効率)が同一である一方、ネットワークカードの有無という運用面の差を持つ。SNMPや遠隔監視を前提にした更新であればN、後から現地でRDU101/RDU120を追加する前提であればEでも要件を満たせる場合がある。型式の1文字が、監視システムの構成そのものに関わってくる。
Liebert GXT5の型式確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物銘板の型式からラックユニット高さ・ネットワークカード内蔵の有無を照合したうえでの見積りに対応している。銘板の写真があれば、容量帯とサフィックスの両方を突き合わせられるため照合が早い。
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