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溶接機の一次側電源選定|定格使用率を無視するとブレーカーが落ちる理由

読了目安: 13分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

分電盤の前で、担当者が首をかしげていた。新設した半自動溶接機、カタログに書かれた定格電流を見て、そこに1.25倍の余裕を掛けてブレーカーを選んだはずだった。数字の上では明らかに足りているはずなのに、量産の追い込みで作業員がほぼ休みなくビードを打ち続けた午後、そのブレーカーは何度も落ちた。

原因は、選定の計算そのものではなかった。計算の前提にしていた「定格電流」という数字の意味を、取り違えていたのである。

溶接機のカタログに書かれた定格電流は、無条件に流し続けられる値ではない。ある決まった時間の使い方——定格使用率——を前提にした数字だ。作業の実態がその前提より頻度高く、あるいは長時間続くものであれば、カタログの数字通りに電源を選んでも、現場では容量不足になる。これが、この記事で扱う核心である。

溶接機は「連続運転」ではなく「断続運転」の負荷である

モーターや照明のような一般的な電気負荷は、電源を入れれば基本的に定格電流が連続して流れ続けることを前提に設計されている。だからこそ、ブレーカーの容量計算は「負荷電流×1.25」という単純な式で足りる。負荷電流の値そのものが、すでに「継続して流れる電流」だからだ。

溶接機はこの前提が成り立たない。アークを出している時間と、次の溶接位置に電極やトーチを運ぶ、母材を固定し直す、スラグを除去するといった休止時間が、作業の性質上どうしても交互に現れる。電流という観点で見れば、溶接機は「一定の電流を流し続ける負荷」ではなく、「大きな電流を短く出しては止める」ことを繰り返す負荷なのだ。

この違いは、電源側の設計思想にそのまま跳ね返る。連続負荷なら、定格電流という一つの数字だけ見ておけばよい。断続負荷では、電流の大きさに加えて「その電流をどれくらいの頻度・時間で出すのか」という、もう一つの軸を無視できない。溶接機のカタログに必ず添えられている「定格使用率」という値は、まさにその軸を表している。

定格使用率とは何か——10分間のうち、何分アークを出せるか

JIS C 9300-1(アーク溶接装置-第1部:アーク溶接電源)は、使用率を「10分間の周期に対する負荷時間の比率」と定義している。溶接機の世界に置き換えると、10分間のうちアークを実際に出している時間の割合、ということになる。

ダイヘンの技術解説はこれをもう少し具体的に説明している。定格出力350A・定格使用率60%の溶接機であれば、10分間のうち6分だけ350Aのアークを連続して出すことができ、残りの4分は休止させる必要がある、という運用が前提になっている。60%というのは「余裕で使える割合」ではなく、「これを超えて連続使用すると機器が耐えられない」という上限の側の数字だ。

つまり定格使用率とは、溶接機の内部(変圧器・整流部・ケーブル)が熱的に耐えられる限界を、10分周期という共通のものさしで表現した値である。使用率を超えて連続運転を続ければ、多くの機種では熱による損傷を避けるための保護機能が作動して自動停止する。対策なしにそれでも使い続ければ、巻線の絶縁劣化や整流部の焼損につながる、とダイヘンは注意を促している。

定格使用率が低いほど、カタログの電流値が大きく見える理由

ここで一つ、実務上よく起きる誤解がある。「定格使用率40%、定格電流350A」という機種と、「定格使用率60%、定格電流300A」という機種、数字だけ見れば前者のほうが強力な溶接機のように映る。

しかし定格使用率は機種ごとにメーカーが選んだ試験条件であり、使用率が低いほど、同じ内部構造でも表示できる電流値は大きくできる。10分間のうち休止する時間が長いぶん、瞬間的にはより大きな電流を流しても熱的な収支が合うからだ。逆に言えば、定格使用率40%と表示された350Aという数字は、「10分間のうち4分しか出せない電流」であって、その機種が常時350Aを出し続けられることを意味しない。

この関係を数式として与えているのが、定格電流と異なる電流で使う場合の許容使用率の計算式である。溶接情報センター(一般社団法人日本溶接協会)は、次の式を示している。

許容使用率(%) = (定格出力電流 ÷ 実際の使用電流)² × 定格使用率(%)

定格二次電流350A・定格使用率60%の溶接機を、実際には300Aで使う場合で計算してみる。(350÷300)の2乗はおよそ1.36倍、これに60%を掛けると約82%になる。つまり出力を300Aまで下げれば、10分間のうち8分以上を連続してアークに使い、休止は2分程度で済むようになる。電流を下げるほど、使える時間の割合は急激に伸びる——比が2乗で効いてくるためだ。

裏を返せば、この関係は「電流を上げる方向」にも同じ強さで働く。定格電流を少しでも超えて使おうとすれば、許容される使用率は2乗のペースで急落する。カタログの定格電流という一点だけを見て「この数字以下なら安全」と考えるのは早計で、実際にどの電流・どの使用率で運転しているかという組み合わせでしか、安全かどうかは判断できない。

一次側にも同じ関係がある——JISが定める「実効入力電流」

ここまでは、溶接機が出力する二次側(アーク側)の電流の話だった。では、電源設備として選ぶべきブレーカーや配線が接続される一次側(電源側)の電流は、この使用率とどう関係するのか。

JIS C 9300-1は、一次側の入力電流についても使用率を組み込んだ値を定義している。定格入力電流(I1)、定格無負荷入力電流(I0)、そして使用率(X)から、次の式で「定格最大実効入力電流」(I1eff)を求める。

I1eff = √[ I0² + X(I1² − I0²) ]

この式が言っていることは、直感的にはそう複雑ではない。使用率Xが小さければ、実効入力電流I1effはI0(無負荷時の電流)に近づく。逆にXが1、つまり使用率100%——休みなく通電し続ける状態——に近づくほど、I1effは定格入力電流I1そのものに近づいていく。

実務上重要なのはここだ。溶接機の銘板に書かれている定格入力電流I1は、あくまでメーカーが選んだ定格使用率という試験条件のもとでの値にすぎない。もし現場での実際の使用率が、その試験条件よりも高い——たとえば量産ラインで休止時間をほとんど取らずに溶接を続ける、あるいは複数の溶接機がほぼ同時に稼働する——という状況であれば、電源側が実際に負担する実効電流は、銘板のI1という数字より大きい側へ寄っていく。カタログ通りの数字をそのまま鵜呑みにしてブレーカーを選ぶという行為は、この「使用率が上がれば実効電流も上がる」という関係を見落としている点で危うい。

一次側ブレーカー・配線サイズの実務的な選び方

では実務として、一次側の電源はどう選べばよいのか。基本の出発点は、銘板に記載された定格入力電流、または定格入力(kVA)である。ダイヘンの技術解説は、銘板に定格入力電流が明記されていない場合の算出式も示している。

電流(A) = 定格入力(kVA) × 1000 ÷ 入力電圧(V)

この式で求めた一相あたりの電流値をもとに、入力側ケーブルの太さを選ぶ。ダイヘンが示す目安では、電流50A程度で8〜14mm²、100Aで22mm²、300Aで60mm²、500Aで100mm²という対応関係になる。パナソニック コネクトが公開する電源設備一覧でも、機種ごとに定格入力(kVA)・電源設備容量・ヒューズ容量・ノーヒューズブレーカー容量が対で示されており、たとえば定格入力19kVA程度の半自動溶接機であれば60A程度のヒューズ、75A程度のブレーカーという組み合わせが例として挙げられている。

ここまでは、メーカーが提示する「その機種を、その定格使用率の範囲内で使う」ことを前提にした数字であり、素直にこの通りに選定すれば大きく外すことはない。問題が生じるのは、次の二つの場面だ。

一つは、先述した通り、実際の使用率がメーカー想定より高い場合。もう一つは、内線規程(JEAC 8001)が定める、断続負荷向けの電線・遮断器選定の考え方を誤って適用してしまう場合である。内線規程は、溶接機のような断続負荷に供給する幹線・分岐回路について、瞬間的な定格電流をそのまま連続電流として扱うのではなく、断続負荷電流による等価熱容量と同等以上の電流容量を持つ電線・開閉器・過電流遮断器を選定してよい、という考え方を採っている。使用率が低い負荷であれば、瞬間的な電流値より小さい容量の電線・ブレーカーでも、熱的には十分に安全という理屈だ。

この考え方自体は妥当だが、危ういのはその先である。この等価熱容量による低減は、あくまで「その使用率が今後も維持される」という前提の上に成り立っている。設計段階で低めの使用率を仮定して電線・ブレーカーを一段階細く・小さく選んでおいたあと、生産体制の変更で作業頻度が上がり、実際の使用率が想定より高くなれば、当初の等価熱容量の計算はもう成立しない。「以前は問題なかったのに、最近になって落ちるようになった」という相談の多くは、機器や配線が劣化したのではなく、使用実態のほうが変わってしまったケースである。

他の一般負荷と混在させるときの注意点

溶接機を他の一般負荷と同じ幹線・分電盤にまとめる構成も、現場では珍しくない。ここでも断続負荷特有の注意点がある。

一つは、電圧降下への影響だ。溶接機がアークを出す瞬間、一次側には大きな電流が短時間流れる。同じ幹線を共有する照明やコンセント回路がこの瞬間の電圧降下の影響を受け、照明のちらつきや、精密機器の誤動作につながることがある。可能であれば溶接機は専用回路とし、幹線を共有せざるを得ない場合は、電圧降下の計算に溶接機の使用率を反映した換算電流を用いる必要がある。

もう一つは、溶接機を複数台まとめて一つの幹線に接続する場合の考え方だ。1台あたりの電流を単純に合算し、そこへ一律で1.25倍を掛けるという一般負荷向けの発想をそのまま持ち込むと、実態と合わない数字になりやすい。断続負荷を複数台束ねる場合、すべての機体が同時に最大出力を出し続ける確率は、1台だけの場合より低いという前提のもと、実務では2台目までは1台目と同等、3台目以降は段階的に低減するといった需要率の考え方を反映させる資料も存在する。ただし、この低減をどこまで適用してよいかは作業内容・稼働タイミングの実態に強く依存するため、複数台を束ねる幹線の設計は、既存の低い見積りをそのまま流用せず、実際の作業スケジュール(同時に何台が稼働しうるか)を確認した上で判断したい。

エンジン発電機を電源にする場合は、また別の余裕が必要になる。パナソニック コネクトの技術資料は、エンジン発電機を使用する場合、定格入力に対して3相入力なら2倍以上、単相入力なら3倍以上の発電機容量を確保することを推奨している。商用電源に比べて電源波形が不安定になりやすいためで、商用電源での容量計算をそのまま発電機の容量選定に流用すると、明らかに不足する。

現場での確認手順

ここまでの内容を、実際の選定・見直しの手順としてまとめておく。

  1. 銘板の確認:定格出力電流・定格使用率・定格入力電流(またはkVA)を、カタログではなく現物の銘板で確認する。
  2. 実際の使用条件の把握:その溶接機が実際にどの出力電流・どれくらいの頻度で使われているかを、作業内容から確認する。カタログの定格使用率より高い頻度で連続稼働させる計画があるなら、その時点で標準選定をそのまま適用してはいけない。
  3. 一次側電流の算出:銘板に定格入力電流の記載がなければ、kVA×1000÷電圧で一相あたりの電流を求める。
  4. ケーブル・ブレーカーの選定:算出した電流値に対応するケーブル太さ・ブレーカー容量をメーカーの対応表で確認する。
  5. 他の負荷との関係を確認:専用回路にできるか、幹線を共有する場合は電圧降下・需要率をどう見込むかを確認する。
  6. 不明な点は実測する:既設設備の見直しであれば、クランプメーターで一次側電流を数分〜数十分にわたって記録し、平均的な負荷の高さを実際に確認するのが最も確実である。

溶接機の一次側電源は、モーターやヒーターのような一般負荷の延長として選んでしまうと、見えている数字の上では余裕があるはずなのに、実際の使われ方次第で容量不足に陥る。定格使用率という前提条件を踏まえた選定・見直しについては、機種の仕様確認から配線・ブレーカーの手配まで、電設資材専門商社としてご相談を承っている。

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