制御盤や配管ラックに取り付けられたEJA110Eの銘板を覗き込むと、型式の欄に「EJA110E-DMS5A」というような文字列が並んでいる。差圧・流量・液位を測るこの発信器は、通信方式だけでもBRAIN、HART、FOUNDATION Fieldbus、PROFIBUS PA、Low Powerと5種類を選べる製品だから、型式のどこかにその違いが刻まれているはずだ、と考えるのは自然なことだろう。
実際、この型式を並べて見比べると、2文字目だけがM、F、Pと変わっている組が目に入る。DMS5A、DFS5A、DPS5A——Fといえば真っ先にFOUNDATION Fieldbus、Pといえば真っ先にPROFIBUSが連想される並びだ。だが、その連想が正しいかどうかは、横河電機が公開している公式のGeneral Specifications「GS 01C31B01-01EN」(差圧発信器EJA110E、28th Edition, Jun. 2026)のMODEL AND SUFFIX CODES表に当ててみるまで分からない。
型番の1文字目だけが、通信方式を決めている
GS資料のMODEL AND SUFFIX CODES表は、型式「EJA110E」のあとに続くハイフンつきのサフィックスを、上から順に次の5つの位置として定義している。
- 出力信号(ハイフン直後の1文字):D=4〜20mA DC+BRAINプロトコル/J=4〜20mA DC+HART5・HART7プロトコル(発注時に版数を指定)/F=FOUNDATION Fieldbus通信(詳細はGS 01C31T02-01EN)/G=PROFIBUS PA通信(詳細はGS 01C31T04-01EN)/Q=Low Power、1〜5V DC+HART7
- 測定スパン(キャプセル):F=0.5〜5kPa(接液部材質コードSの場合のみ)/L=0.5〜10kPa(材質コードM・H・T・A・D・B・Wの場合)/M=1〜100kPa/H=5〜500kPa/V=0.14〜14MPa
- 接液部材質:別表「Wetted Parts Materials」で規定される1文字(S・L・H・M・T・A・D・B・Wなど)
- プロセス接続:0=接続コネクタなし・カバーフランジにRc1/4めねじ/1=Rc1/4めねじの接続コネクタ付き/2=Rc1/2めねじ/3=1/4NPTめねじ/4=1/2NPTめねじ/►5=接続コネクタなし・カバーフランジに1/4NPTめねじ(►は表内で「最も標準的な選択」を示す印)
- ボルトナット材質:J=B7炭素鋼/G=316L SST/C=660 SST
この5つを一つずつハイフンなしで並べたものが、型式のうち最初のブロックにあたる。ここまでで分かるのは、通信方式を決めているのは1文字目だけだということだ。2文字目以降がどう変わっても、BRAINがHARTに化けたりFieldbusに化けたりすることはない——表の規則を素直に読む限り、そうなる。
「DMS5A」「DFS5A」「DPS5A」を1文字ずつ当てはめる
この規則を、冒頭の3つの型式にそのまま当てはめてみる。
EJA110E-DMS5A:D(出力信号=BRAINプロトコル)+M(測定スパン=1〜100kPa)+S(接液部材質=コードS)+5(プロセス接続=接続コネクタなし、カバーフランジに1/4NPTめねじ)+A。ここまでは表の規則にきれいに収まる。ただし5文字目のAは、ボルトナット材質の位置に来る文字のはずだが、GS資料が定義するボルトナット材質のコードはJ・G・Cの3種類だけで、Aという選択肢は存在しない。
EJA110E-DFS5A:D(BRAIN)+F(測定スパン=0.5〜5kPa)+S(接液部材質=コードS)+5+A。2文字目のFは、表の脚注が「接液部材質コードSの場合に限る」と注記する測定スパンコードで、3文字目が実際にSであることと矛盾しない。むしろこの組み合わせは、表の脚注が課す制約と整合している。だが5文字目のAが有効なボルトナット材質でないという問題は、DMS5Aと同じく残る。
EJA110E-DPS5A:D(BRAIN)+P+S+5+A。ここで最初の食い違いが表面化する。GS資料の測定スパンコードはF・L・M・H・Vの5種類だけで、Pという文字はどこにも定義されていない。2文字目に置かれるべき測定スパンとしては、Pは公式表に存在しないコードということになる。
現場で間違えやすい点――「F」「P」は通信方式ではなく測定スパンの位置にある
3つの型式を横に並べて見比べたとき、Fや Pという文字がFOUNDATION FieldbusやPROFIBUSの頭文字と一致しているように見えるのは、偶然にしては出来すぎている。だからこそ、この一致を手がかりに通信方式を読み取ろうとする誤読が起きやすい。
だが、GS資料のMODEL AND SUFFIX CODES表を素直にたどる限り、通信方式は型式のハイフン直後、1文字目にしか現れない。FOUNDATION Fieldbusを表すコードは-F、PROFIBUS PAを表すコードは-Gであり、どちらも「出力信号」という最初の位置に置かれる文字であって、2文字目の測定スパンの位置に置かれるものではない。冒頭の3つの型式は、いずれも1文字目がDのままだから、表の規則をそのまま適用する限りBRAINプロトコルという扱いになる。
この読み違いは実務上、軽くない意味を持つ。GS資料の冒頭説明は、EJA-Eシリーズの標準構成が「Fieldbus・PROFIBUS・Low Powerタイプを除いて」SIL2適合を取得していると明記している。出力信号コードがDまたはJ(BRAIN・HART)であれば標準構成としてSIL2適合の対象になるが、FやG(Fieldbus・PROFIBUS)であれば対象から外れる、という区分だ。型式の2文字目を見て「これはFieldbus仕様だ」と判断してしまうと、SIL適合の有無についても実際とは逆の理解をしてしまいかねない。型式のどの位置に何が書かれているかを、思い込みではなく表の並び順で確認する必要があるのは、このためでもある。
型番の5文字は、発注できる型式の「前半」にすぎない
もう一つ、実務で見落としやすい点がある。GS資料のMODEL AND SUFFIX CODES表は、ボルトナット材質のあとにも項目を並べている。Installation(設置方向、-7・-8・►-9・-B・-U)、Amplifier housing(変換部ケース材質、1・3・2)、Electrical connection(電気配線接続、0・►2・4・5・7・9・A・C・D)、Integral indicator(指示計の有無、D・E・►N)、Mounting bracket(取付金具、►B・D・J・K・M・P・N)——出力信号から始まった最初のブロックのあとに、ハイフンを挟んでもう一段、5項目が続く構造になっている。
さらにGS資料のOrdering Information(p.19)は、発注時に「型式・サフィックスコード・オプションコード」に加えて、校正レンジとその単位、出力モード(リニアか平方根か)を指定するよう求めている。HART出力(出力信号コードJ)を選ぶ場合は、HART5かHART7かのプロトコル版数の指定も必要になる。
つまり「EJA110E-DMS5A」のような5文字の型式は、出力信号から接液部材質・プロセス接続・ボルトナット材質までを示す前半ブロックであって、そのまま工場への発注書に書ける完成形の型式ではない。後半のブロックと、校正レンジ・出力モードの指定が揃って、はじめて1台の発信器が特定できる。銘板や見積書に書かれた型式が5文字で終わっているのを見かけたら、それは省略された表記か、あるいは製品を大まかに識別するための代表型式である可能性が高い、と考えたほうが実務としては安全だ。
EJA110E差圧発信器の型番確認・見積りについて
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、EJA110Eの銘板に残った型式の読み取りから、出力信号・測定スパン・接液部材質・プロセス接続といった仕様の確認、後半ブロックまで含めた完成形の型式特定までのご相談を見積フォームで受け付けている。型式の一部がかすれて判読できない場合や、通信方式の実機確認が必要な場合は、現物の写真を添えてもらえると照合が早い。
あわせて読みたい
- 4-20mA電流ループとは何か|なぜ電圧信号ではなく電流信号なのか、なぜ0-20mAではなく4-20mAなのか
- 熱電対と測温抵抗体(RTD/Pt100)の違いと選び方|K・J・T熱電対の使い分け、精度・応答速度・耐久性を比較
- アズビルのSDC35・SDC36調節計の型番はどう読むのか|「SDC35」の銘板とは別の顔をした型式「C35TR0UA1000」を7つの位置に分解する
- 横河電機EJA110E差圧発信器の製品詳細
- 横河電機の取扱品種一覧
関連する横河電機・EJA110E・型番・見方・DMS5A・DFS5A・DPS5Aの品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。