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一般用電気工作物等及び自家用電気工作物の保安に関する法令 ・ 2 / 12

電気工事士の作業範囲と500kWの線引き

読み終えると、こうなる

500kW以上の大工場に免状が不要なのを『規制が緩い』からだと思っていたのが、実は違う理由があると気づく。

  • 受電設備の最大電力を聞いただけで、その工事が一般用電気工作物等の範囲か、自家用(500kW未満)の範囲かを仕分けられる
  • 最大電力600kWの工事現場について、電気工事士法の対象外だと判断できる
  • 500kW以上の設備が主任技術者を中心とする自主保安体制で管理されていると、免状の要否とは別の軸で位置づけられる
考えてみよう

500kW以上の電気を使う大工場。町中のコンビニより桁違いに大きな電力を扱っているのに、実はそこでの電気工事に電気工事士の免状は要らない。免状がいらない設備の方が、免状が必要な設備より規模も危険も大きいように見えるのに、なぜ規制が緩くなるのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この逆転した線引きの理由を説明できるようになっている。

前のトピックで見た電気工作物の区分に対応して、電気工事士法は「誰がどこまでの工事に従事できるか」を定めている。まず押さえるべきは、第二種電気工事士が従事できる範囲だ。第二種は一般用電気工作物等(一般用電気工作物+小規模事業用電気工作物)の工事にしか従事できない(電気工事士法3条2項)。

第一種電気工事士は、この一般用電気工作物等に加えて、自家用電気工作物の工事にも従事できる(3条1項・2項)。ただしここでいう「自家用電気工作物」は、電気事業法の定義そのものではない。電気工事士法2条2項は、電気事業法上の自家用電気工作物から、発電所・変電所・最大電力500kW以上の需要設備等をさらに除いた、狭い概念を定めている。実務上は「500kW未満の需要設備」が第一種電気工事士の主戦場になる。

電気工事士法における作業範囲(3条) 一般用電気工作物等 一般用+小規模事業用/第二種・第一種いずれも従事可 自家用電気工作物(500kW未満の需要設備) 第一種電気工事士のみ従事可(特殊電気工事を除く) 発電所・変電所/500kW以上の需要設備 電気工事士法の対象外 (主任技術者を中心とする自主保安体制で管理) 電気工事士法の作業範囲と500kWの線引き(自作の概念図。電気工事士法2条・3条にもとづく)
ここで見方を反転させたい。「500kW以上は免状がいらない」と聞くと、規制が緩い・危険が小さいという印象を持ってしまう。だが実際は逆で、**保安規程の届出(42条1項)と主任技術者の選任(43条1項)は、500kW未満の自家用電気工作物にも等しく課される。違うのは体制の厚みだ。500kW以上の大規模設備には専任の電気主任技術者が常駐するのが通例で、設置者側の自主保安体制がすでに厚く備わっている。** だからこそ電気工事士法は「自主保安の薄い500kW未満」にだけ資格の網をかけた。資格による規制と自主保安は、同じ「保安の確保」という目的を、対象の規模に応じて別の手段で達成しているにすぎない。この保安規程・主任技術者の中身は、次の科目の柱として改めて扱う。

なお、第一種電気工事士であっても、自家用電気工作物の工事すべてに従事できるわけではない。ネオン工事と非常用予備発電装置工事の2つ(特殊電気工事)は、第一種の資格があっても別の資格が必要になる。この例外については次のトピックで扱う。

「この現場は誰の仕事か」を自分で線引きできるようになる

この500kWの構造が分かると、現場に入る前に「自分がこの仕事を請け負ってよいか」を自分で判断できるようになる。設備の規模を聞いただけで、一般用電気工作物等の範囲なのか、自家用電気工作物(500kW未満)の範囲なのか、それとも電気工事士法の対象外(500kW以上)で別の専門家が管理する領域なのか、当たりをつけられるようになる。

今日試せることとして、取引先や現場の受電設備の規模(キュービクルの銘板や電力会社の検針票の契約電力が手がかりになる。ただし条文が線を引いているのは最大電力であって契約電力ではなく、両者は一致しないことがある)を見て、それが500kWのどちら側にあるかを考えてみるといい。

この線引きが生まれた背景には、資格だけで保安を担保しようとすると、規模が大きくなるほど工事の頻度や関係者が増え、かえって目が届きにくくなるという事情がある。だから一定規模を超えたら、資格ではなく専任の管理体制で保安を担保する方式に切り替えている。

独立して自家用電気工作物の工事を請け負うようになると、この500kWの線は「見積もりを取ってよい仕事かどうか」を最初に判断する基準そのものになる。

500kW以上の大工場で規制が「緩い」ように見えるのは、本当はなぜだったか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 500kWを『第一種電気工事士が扱える設備の上限』だと逆向きに覚えさせる

    なぜ引っかかる500kWという数字が出てくると、大きい設備ほど資格が必要になりそうな直感から「第一種が扱えるのは500kW未満まで」という逆の理解をしてしまう

    見破り方500kWは『第一種でなければ扱えない下限』ではなく『電気工事士法の対象そのものから外れる上限』だと読み替える。500kW以上は資格の世界の外側にある

  2. 自家用電気工作物なら何でも第一種電気工事士が全部できると思わせる

    なぜ引っかかる第一種は自家用電気工作物の工事に従事できると習うため、自家用の作業なら例外なく全部できると誤解しやすい

    見破り方特殊電気工事(ネオン工事・非常用予備発電装置工事)は自家用電気工作物の工事でありながら第一種でも従事できない例外だと覚えておく(詳細は次のトピック)

  3. 電気事業法上の自家用電気工作物と、電気工事士法上の自家用電気工作物を同じ範囲として計算させる

    なぜ引っかかる前のトピックで学んだ電気事業法の自家用電気工作物(発電所・変電所も含む)の範囲のまま、電気工事士法の作業範囲を計算してしまう

    見破り方電気工事士法2条2項の自家用電気工作物は、電気事業法の自家用電気工作物から発電所・変電所・500kW以上の需要設備等をさらに除いた狭い概念だと意識する

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 第一種電気工事士でなければ、自家用電気工作物(電気工事士法上の。最大電力500kW未満の需要設備が実質的な範囲)の電気工事に従事できない(電気工事士法3条1項、2条2項)
  2. 電気工事士法上の自家用電気工作物は、電気事業法上の自家用電気工作物から発電所・変電所・最大電力500kW以上の需要設備等を除いた狭い概念
  3. 第一種電気工事士は、一般用電気工作物等(一般用+小規模事業用)の工事にも従事できる(3条2項)
  4. ただし特殊電気工事(次のトピックで扱う2種類)は第一種でも従事できない(3条3項)
  5. 500kW以上の設備が電気工事士法の対象から外れているのは規制が緩いからではなく、設置者側に主任技術者を中心とする自主保安体制が備わっているから
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