500kW以上の電気を使う大工場。町中のコンビニより桁違いに大きな電力を扱っているのに、実はそこでの電気工事に電気工事士の免状は要らない。免状がいらない設備の方が、免状が必要な設備より規模も危険も大きいように見えるのに、なぜ規制が緩くなるのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この逆転した線引きの理由を説明できるようになっている。
前のトピックで見た電気工作物の区分に対応して、電気工事士法は「誰がどこまでの工事に従事できるか」を定めている。まず押さえるべきは、第二種電気工事士が従事できる範囲だ。第二種は一般用電気工作物等(一般用電気工作物+小規模事業用電気工作物)の工事にしか従事できない(電気工事士法3条2項)。
第一種電気工事士は、この一般用電気工作物等に加えて、自家用電気工作物の工事にも従事できる(3条1項・2項)。ただしここでいう「自家用電気工作物」は、電気事業法の定義そのものではない。電気工事士法2条2項は、電気事業法上の自家用電気工作物から、発電所・変電所・最大電力500kW以上の需要設備等をさらに除いた、狭い概念を定めている。実務上は「500kW未満の需要設備」が第一種電気工事士の主戦場になる。
なお、第一種電気工事士であっても、自家用電気工作物の工事すべてに従事できるわけではない。ネオン工事と非常用予備発電装置工事の2つ(特殊電気工事)は、第一種の資格があっても別の資格が必要になる。この例外については次のトピックで扱う。
「この現場は誰の仕事か」を自分で線引きできるようになる
この500kWの構造が分かると、現場に入る前に「自分がこの仕事を請け負ってよいか」を自分で判断できるようになる。設備の規模を聞いただけで、一般用電気工作物等の範囲なのか、自家用電気工作物(500kW未満)の範囲なのか、それとも電気工事士法の対象外(500kW以上)で別の専門家が管理する領域なのか、当たりをつけられるようになる。
今日試せることとして、取引先や現場の受電設備の規模(キュービクルの銘板や電力会社の検針票の契約電力が手がかりになる。ただし条文が線を引いているのは最大電力であって契約電力ではなく、両者は一致しないことがある)を見て、それが500kWのどちら側にあるかを考えてみるといい。
この線引きが生まれた背景には、資格だけで保安を担保しようとすると、規模が大きくなるほど工事の頻度や関係者が増え、かえって目が届きにくくなるという事情がある。だから一定規模を超えたら、資格ではなく専任の管理体制で保安を担保する方式に切り替えている。
独立して自家用電気工作物の工事を請け負うようになると、この500kWの線は「見積もりを取ってよい仕事かどうか」を最初に判断する基準そのものになる。
500kW以上の大工場で規制が「緩い」ように見えるのは、本当はなぜだったか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。