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一般用電気工作物等及び自家用電気工作物の保安に関する法令 ・ 1 / 12

電気工作物の区分 — 一般用・小規模事業用・自家用・事業用

読み終えると、こうなる

同じようなコンセント交換の依頼でも、その建物の受電の仕方によって自分が受けてよい仕事かどうかを判断できるようになる。

  • 低圧600V以下で受電し小規模発電のみの建物を、一般用電気工作物として見分けられる
  • 太陽光と風力を併設した建物で、風力があるだけで一般用電気工作物にならないと判断できる
  • 高圧受電のビルでは、末端のコンセント1個の交換でも自家用電気工作物の工事として扱われると判断できる
  • 一般用電気工作物の技術基準適合を調査する義務が、所有者ではなく電線路維持運用者にあると言い当てられる
考えてみよう

同じような雑居ビルの、同じようなコンセント交換の依頼。片方の店では第二種電気工事士の免状で作業できるのに、隣の店では同じ免状が通用しない。工事の中身はほとんど変わらないのに、何が違うのか。

見当がつかなくて当然だ。この違いは、コンセントそのものではなく、そのビルが「電気をどう受け取っているか」で決まっている。このトピックを読み終えるころには、その線引きの正体を説明できるようになっている。

電気工事士法は「電気工作物」という言葉を使うが、その電気工作物にはいくつかの区分がある。この区分こそが、法令科目全体の土台になる。まずは電気事業法が定める区分を、大きい方から順に見ていく。

電気工作物は、まず「一般用電気工作物」と「事業用電気工作物」の2つに大別される(電気事業法38条)。一般用電気工作物は、低圧(600V以下)で受電し、かつ小規模発電設備(太陽光50kW未満・風力20kW未満・水力20kW未満・内燃力10kW未満・燃料電池10kW未満 等。施行規則48条2項)以外の発電設備と同一構内に設置されていないもの、と定義される(38条1項)。一般家庭や小規模な店舗の屋内配線は、ほぼここに含まれる。

ただし、小規模発電設備であれば一般用電気工作物のまま、というわけではない。 38条1項2号イは「出力が経済産業省令で定める出力未満のもの」だけを一般用に残しており、その出力は設備の種類ごとに施行規則48条4項で別に決められている。太陽電池は10kW、水力・内燃力・燃料電池は10〜20kW。そして風力発電設備は「零キロワット」と定められている。

つまり風力は、20kW未満で小規模発電設備には当たるものの、一般用電気工作物になる余地が最初から無い。出力の大小に関わらず、次に見る小規模事業用電気工作物として扱われる。「風力20kW未満なら一般用」と覚えると逆の答えを選ぶことになる。

事業用電気工作物は、この一般用「以外」のすべてを指す裏返しの定義になっている(38条2項)。発電所や変電所はもちろん、高圧で受電するビルや工場の需要設備も、この事業用電気工作物に入る。

電気工作物の区分(電気事業法38条) 一般用電気工作物 低圧600V以下+小規模発電(太陽光10kW未満 等) ↑ この2つは排他。一般用「以外」が下の事業用 ↓ 事業用電気工作物(一般用以外の全て) 電気事業用電気工作物 一般送配電事業・発電事業等の設備 自家用電気工作物 電気事業用と一般用の「以外」(38条4項)。下の2つを含む 小規模事業用電気工作物 太陽光10kW以上50kW未満・風力20kW未満 等 保安規程の届出・主任技術者の選任は不要 それ以外の自家用電気工作物 高圧受電のビル・工場等の需要設備 保安規程の届出・主任技術者の選任が必要 電気工作物の区分(自作の概念図。電気事業法38条・施行規則48条にもとづく)

事業用電気工作物の中には、さらに「小規模事業用電気工作物」という区分がある。小規模発電設備のうち、38条1項2号イの出力以上のものがこれにあたる(38条3項1号イ)。具体的には太陽光10kW以上50kW未満、そして風力は0kW以上=20kW未満のすべてだ。小規模事業用電気工作物も法律上は自家用電気工作物の一部だが、保安規程の届出も主任技術者の選任も不要という点で、それ以外の自家用電気工作物より義務が軽い。保安規程の届出(42条1項)と主任技術者の選任(43条1項)が「事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く)」に課されているのは、そのためだ。

ここで見方を反転させる必要がある。「小規模事業用は保安規程も主任技術者もいらない」と聞くと、規制のない緩い区分だと思ってしまう。だが小規模事業用電気工作物は、あくまで事業用電気工作物の一種であることに変わりはない。**免除されているのは保安規程の届出と主任技術者の選任という「体制」の義務だけで、技術基準に適合させる義務そのものはなくならない。** 区分ごとに免除される義務と残る義務が違う、という読み方に切り替えると、法令科目全体の構造が見えてくる。

そして電気事業(一般送配電事業・送電事業・配電事業・特定送配電事業・一定の発電事業)の用に供する電気工作物と、一般用電気工作物。この2つ以外が「自家用電気工作物」になる(38条4項)。高圧6,600Vで受電するビルや工場の需要設備は、実務上ほぼここに入る。

ここで注意したいのは、電気事業法の「自家用電気工作物」と、電気工事士法の「自家用電気工作物」は同じ言葉でも範囲が違うということだ。電気工事士法2条2項の自家用電気工作物は、電気事業法の自家用電気工作物からさらに「発電所・変電所・最大電力500kW以上の需要設備等」を除いた、狭い概念になる。この500kWという線引きの意味は、次のトピック「電気工事士の作業範囲」で扱う。

一般用電気工作物の安全は、誰が確認しているのか

一般用電気工作物は、事業用電気工作物と違って保安規程の届出も主任技術者の選任も義務ではない。では、住宅や小規模店舗の屋内配線が技術基準に適合しているかどうかは、誰がどうやって確認しているのか。

電気事業法57条は、この調査の義務を定めている。義務を負うのは、その一般用電気工作物と直接電気的に接続する電線路を維持・運用する者——つまり一般送配電事業者等(電線路維持運用者)だ。所有者や占有者自身が調査する義務を負っているわけではない、という点が最も間違えやすい。

「自分の家の設備なのだから、自分で状態を確認する義務があるはずだ」という感覚は、この条文の構造とは逆になる。**調査するのは電線路を維持・運用する側(電力会社側)であり、所有者・占有者は調査の対象になる側だ。** 調査の結果、技術基準に適合していないと判明したときは、とるべき措置と、放置した場合に生ずべき結果を所有者・占有者に通知する(57条2項)、という順序になっている。

調査の頻度は、電気事業法施行規則第96条が定めている。設置時・変更工事完成時のほかは、原則4年に1回以上。ただし、登録点検業務受託法人が点検業務を受託している一般用電気工作物については、5年に1回以上でよいとされる。この調査業務そのものは、電線路維持運用者が経済産業大臣の登録を受けた登録調査機関に委託することもできる(57条の2)。

受電の仕方が、その建物の資格の世界を決めている

この区分が頭に入ると、街を歩く見方が変わる。電柱から直接引き込まれた低圧の引込線しか見当たらない家は一般用電気工作物、屋上や敷地の隅にキュービクル(高圧受電設備)が置かれているビルは自家用電気工作物、という当たりがつくようになる。今日試せることとして、通勤・通学路のビルの外観を見て、キュービクルらしき金属の箱があるかどうかを探してみるといい。

この区分が細かく分かれているのは、事故が起きたときの被害の大きさが違うからだ。低圧の一般家庭で起きる事故は基本的に構内で完結するが、高圧の自家用電気工作物で事故が起きれば、波及事故として周辺一帯の停電につながりかねない。だから区分ごとに求める保安の体制の厚みを変えている。

この区分を正しく読めるようになることは、独立して電気工事の仕事を請け負うときの出発点にもなる。「この現場は一般用か、自家用か」を自分で判定できなければ、そもそも自分が請け負ってよい仕事かどうかも判断できない。

冒頭の「同じようなコンセント交換なのに免状が通用しない」という謎、その正体は何だったか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 「小規模発電設備=一般用電気工作物」だと思わせ、風力を一般用に含めさせる

    なぜ引っかかる小規模発電設備の一覧(太陽光50kW未満・風力20kW未満・水力20kW未満 等)を覚えると、その一覧に載っていれば一般用のままだと錯覚する。ところが一般用として残る出力の上限は種類ごとに別に決められており、風力は「零キロワット」と定められている。つまり風力には一般用になる余地が最初から無い

    見破り方小規模発電設備かどうか(施行規則48条2項)と、一般用として残る上限(同48条4項)は別の話だと切り分ける。風力を見たら出力に関わらず小規模事業用、と固定してしまうのが早い

  2. 太陽光発電の出力だけを単独で見て一般用かどうかを判断させる

    なぜ引っかかる「太陽光50kW未満だから一般用」という条件の前半だけで判断すると、同一構内の他の発電設備と合算して基準以上になるケースを見落とす

    見破り方出力を単独で見ず、同一構内にある小規模発電設備の合計出力で判定する。合計が基準以上になれば一般用電気工作物の対象から外れる

  3. 「小規模」という名前から、保安規程も主任技術者も何もかも不要な緩い区分だと誤解させる

    なぜ引っかかる小規模事業用電気工作物は名前に「小規模」とつくため自家用電気工作物より規制が軽いと連想しやすいが、事業用電気工作物であることに変わりはない

    見破り方免除されるのは保安規程の届出と主任技術者の選任の2つだけで、技術基準に適合させる義務そのものはなくならない、と切り分けて覚える

  4. 一般用電気工作物の技術基準適合を調査する義務が、所有者・占有者自身にあると思わせる

    なぜ引っかかる『自分の家の設備なのだから、自分で状態を確認する義務があるはずだ』という常識的な感覚に引きずられやすい

    見破り方電気事業法57条が調査義務を課しているのは、その一般用電気工作物と直接電気的に接続する電線路を維持・運用する者(電線路維持運用者=一般送配電事業者等)であって、所有者・占有者ではないと固定して覚える。調査の結果、不適合であれば所有者・占有者に通知が来る、という順番で理解する

  5. 電気事業法上の自家用電気工作物と、電気工事士法上の自家用電気工作物を同じ範囲だと思わせる

    なぜ引っかかる同じ「自家用電気工作物」という言葉が2つの法律で違う範囲を指すため、片方の定義のまま読み進めると混同する

    見破り方電気事業法の自家用電気工作物(発電所・変電所も含む広い概念)と、電気工事士法の自家用電気工作物(需要設備に絞った狭い概念)は別物だと意識して読み分ける

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 電気工作物は「一般用電気工作物」と「事業用電気工作物」に大別される(電気事業法38条)
  2. 一般用=低圧600V以下で受電し、小規模発電設備以外の発電設備と同一構内にないもの(38条1項、施行規則48条1項・2項)。太陽電池が一般用として残る上限は10kW未満で、10kW以上50kW未満は小規模事業用電気工作物になる(施行規則48条4項一号)
  3. 事業用電気工作物のうち、電気事業の用に供するもの以外が「自家用電気工作物」(38条4項)
  4. 「小規模事業用電気工作物」(太陽光10kW以上50kW未満 等)は事業用の中の区分で、法律上は自家用電気工作物にも含まれる(38条3項・4項)。保安規程の届出(42条1項)と主任技術者の選任(43条1項)は、条文のかっこ書きで小規模事業用が除かれているため不要だが、技術基準に適合させる義務そのものは残る
  5. 一般用電気工作物の技術基準適合を調査する義務は、所有者・占有者ではなく、その一般用電気工作物と直接電気的に接続する電線路を維持・運用する者(電線路維持運用者=一般送配電事業者等)にある(電気事業法57条)。頻度は原則4年に1回以上、登録点検業務受託法人が点検業務を受託している場合は5年に1回以上(施行規則第96条)。登録調査機関への委託も可能(57条の2)
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