雑居ビルの改装工事。1階の店舗では、天井にライティングダクトを取り付け、スポットライトを自由な位置に差し込めるようにした。工事は問題なく終わり、検査も通った。
数週間後、オーナーから「地下の厨房にも同じものを」と頼まれた電気工事店は、現地を見て首を横に振った。「ここには付けられません」。同じ建物、同じ製品、階段ひとつ分の距離。1階でよかったものが、なぜ地下ではだめなのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、部屋を見た瞬間に「ここで使える工事・使えない工事」を仕分けられるようになっている。
低圧屋内配線のルールは、建物の中の場所をまず「見えるかどうか」で3つに分ける。
- 展開した場所 — 壁や天井に隠れていない、目で見えて手が届く場所
- 点検できる隠ぺい場所 — ふだんは隠れているが、点検口などから入って確認できる場所(天井裏、押入れの裏など)
- 点検できない隠ぺい場所 — 壁の中、コンクリートの中など、壊さないと二度と見られない場所
さらにそれぞれを「乾燥した場所」と「湿気の多い場所・水気のある場所」に分ける。合計6区分。電技解釈第156条は、この区分ごとに使ってよい工事方法を1枚の表(156-1表)で指定している。使用電圧300V以下の場合、表の全体はこうなる。
| 工事の種類 | 展開・乾燥 | 展開・湿気水気 | 点検可隠ぺい・乾燥 | 点検可隠ぺい・湿気水気 | 点検不可隠ぺい・乾燥 | 点検不可隠ぺい・湿気水気 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ケーブル工事 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 金属管工事 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 合成樹脂管工事(CD管を除く) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 金属可とう電線管工事(2種) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| がいし引き工事 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × |
| バスダクト工事 | ○ | ○ | ○ | × | × | × |
| 金属線ぴ工事 | ○ | × | ○ | × | × | × |
| 金属ダクト工事 | ○ | × | ○ | × | × | × |
| ライティングダクト工事 | ○ | × | ○ | × | × | × |
| 平形保護層工事 | × | × | ○ | × | × | × |
| セルラダクト工事 | × | × | ○ | × | ○ | × |
| フロアダクト工事 | × | × | × | × | ○ | × |
72マスある。上から順に暗記しようとすると心が折れるが、その必要はない。
削られ方を1つずつ確かめてみる。がいし引き工事は電線がほぼむき出しだが、がいしによる支持と離隔で絶縁を保つ工法なので、湿気があっても施設できる。その代わり、状態を確かめに行けない壁の中——点検できない隠ぺい場所——には置けない。むき出しの電線を、二度と見られない場所に閉じ込めることは許されない。
金属線ぴ・金属ダクト・ライティングダクトは、ふたや開口のある細長い箱に電線を収める工法だ。隙間から湿気が入り込むため、乾燥した場所限定になる。とくにライティングダクトは、照明器具を差し込むための開口が全長にわたって続いている。湿気の多い厨房に置けない理由は、形を見ればそのまま分かる。
フロアダクト・セルラダクトは事務室の床コンクリートに埋め込み、床面から電源を取り出すための専用工法で、持ち場は乾燥した隠ぺい場所(床の中)だけ。逆に展開した場所には出てこない。平形保護層工事はカーペットの下に平らな電線を敷く工法で、乾燥した点検できる隠ぺい場所限定だ。
なお、使用電圧が300Vを超えると、金属線ぴ・ライティングダクト・平形保護層・フロアダクト・セルラダクトは選択肢から消える。また金属可とう電線管のうち1種金属製可とう電線管は、乾燥した展開した場所・点検できる隠ぺい場所に限られる(どこでも使えるのは2種)。第二種電気工事士の学科試験は300V以下の行が中心なので、まず上の表を原則から再現できれば足りる。
「どこに置けるか」の前に「それは何か」— 定義文で見分ける
出題にはもう1つの型がある。場所の可否ではなく、器具の説明文を4つ並べて「◯◯に該当するのはどれか」と聞く型だ。並べられるのは金属線ぴ・金属ダクト・ライティングダクト・フロアダクト・ケーブルラックといった、姿かたちの似た材料どうし。名前と姿かたちが結びついていないと、表を完璧に覚えていても落とす。決め手は次のとおり。
| 定義文の決め手 | 器具 | 根拠 |
|---|---|---|
| 幅5cm以下の樋状のカバーを壁面・天井面に取り付け、絶縁電線を収める | 金属線ぴ(メタルモール) | 解釈第161条(電気用品安全法の適用品=幅5cm以下等) |
| 幅5cmを超え、厚さ1.2mm以上の鉄板等で作った箱に多数の電線を収める | 金属ダクト | 解釈第162条 |
| 導体が本体と一体で、専用プラグにより任意の位置から照明器具等へ直接給電できる | ライティングダクト | 解釈第165条(JIS C 8366) |
| 床コンクリート内に埋め込み、床面から電源を取り出す | フロアダクト | 解釈第165条 |
| はしご状の部材にケーブルを並べて敷設し、支持する | ケーブルラック | 工事の種類としては独立せず、ケーブル工事の支持材 |
見分けの急所は2つある。1つ目、線ぴとダクトの境界は幅5cm。同じ「金属の細長い箱」でも、幅5cm以下なら線ぴ、超えればダクトと呼び名が変わり、適用される条文も変わる。2つ目、金属ダクトとライティングダクトは別物。金属ダクトは電線を入れて運ぶただの箱だが、ライティングダクトは導体がダクト本体に組み込まれていて、それ自体が電気の通り道になっている。だからこそ器具をどこにでも差し込めるし、だからこそ開口が全長に続いて湿気に弱い——定義がそのまま、施設できる場所の理由につながっている。ケーブルラックだけは毛色が違い、工事の種類の名前ではない。ラックに載っているのはケーブル工事であり、ラックはその支持材だ。
屋内を出たところに、もう1つの表がある — 屋側電線路と木造の壁
ここまでの156-1表は、あくまで屋内配線の話だ。ところが配線図の問題では、電力量計から分電盤へ至る外壁沿いの区間を指して「この部分で施工できない工事はどれか」と聞かれることがある。屋内の表を当てはめようとすると、どれも施工できてしまって答えが出ない。ここは別の条文の領域だからだ。
建物の外壁に沿って施設する低圧の電線路を低圧屋側電線路といい、電技解釈第110条が工事の種類を定めている。使えるのは次の5つで、それぞれに条件が付く。
| 工事 | 条件 |
|---|---|
| がいし引き工事 | 展開した場所に施設し、簡易接触防護措置を施すこと |
| 合成樹脂管工事 | 制限なし(第158条等に準じる) |
| 金属管工事 | 木造以外の造営物に施設すること |
| バスダクト工事 | 木造以外の造営物で、展開した場所又は点検できる隠ぺい場所 |
| ケーブル工事 | 鉛被・アルミ被・MIケーブルを使う場合は木造以外の造営物 |
なぜ木造だけが名指しされるのか。金属管やバスダクトは、それ自体が電気を通す。万一そこへ漏電すれば、管が長い距離にわたって充電される。相手が鉄筋コンクリートなら建物自体が大地とつながっていて電位が上がりにくいが、木造の壁は電気を通さない——つまり管が大地から浮いたまま、電圧を持ち続ける。おまけに木は燃える。金属を通じた発熱や火花が、そのまま構造材に伝わる。「木造以外」という4文字は、この2つの心配をまとめて書いた省略形だと読める。
住宅の外壁を歩いて見てみると、電力量計から下りてくる線はたいていグレーの丸い管(合成樹脂管)か、ケーブルをそのままサドルで留めた形をしている。木造の家の外壁に金属管が這っていることは、まずない。 条文を知ってから街を歩くと、この規定が景色として見えるようになる。
管や樋の「中」で、電線をつないでよいか
施設場所の可否と並んで問われるのが、その中で電線を接続(分岐)してよいかだ。原則はどの工事も共通で、管・線ぴ・ダクトの中では電線に接続点を設けない。中で切れたりゆるんだりしても、外から見えないし直せないからだ。
ところが「容易に点検できる」形にできる工事には、例外が開いている。
| 工事 | 中での接続・分岐 |
|---|---|
| 合成樹脂管・金属管・金属可とう電線管 | 不可(管内では接続点を設けない) |
| 金属線ぴ | 電線を分岐する場合で、2種金属製線ぴを使い、接続点を容易に点検できるように施設し、線ぴにD種接地工事を施すなら可(第161条第1項第二号) |
| 金属ダクト | 電線を分岐する場合で、その接続点が容易に点検できるときは可(第162条第1項第三号) |
| フロアダクト・セルラダクト | 電線を分岐する場合で、接続点が容易に点検できるときは可 |
だから「金属線ぴ内で電線を分岐し、線ぴの長さが4m以下なのでD種接地工事を省略した」という選択肢は不適切になる。長さの条件だけを見て○を付けると落ちる。
金属ダクトについては、断面積の制限も押さえておきたい。ダクトに収める電線の断面積(絶縁被覆を含む)の総和は、ダクトの内部断面積の20%以下。ただし電光サイン装置・出退表示灯・制御回路等の配線だけを収める場合は50%以下まで許される(第162条第1項第二号)。電力を運ぶ線は発熱するから20%、信号だけの線は熱が出ないから50%——数字の差が、そのまま熱の話になっている。
ライティングダクトにも固有の規定がある。ダクトの開口部は下に向けて施設する(第165条第3項第六号)。簡易接触防護措置を施してじんあいが入りにくいようにした場合などは横向きも認められるが、上向きは認められない。開口が上を向けば、そこにほこりや水が落ちて溜まるからだ。
天井の点検口ひとつで、選べる工法が変わる
現場調査で最初に確かめるのは、負荷の大きさでも配線距離でもなく、この6区分のどこに当たるかだ。点検口のない下がり天井なら「点検できない隠ぺい場所」として全部○の工法しか選べず、点検口をひとつ設ければ選択肢が広がる。天井の小さな四角い蓋には、使える工法のリストを書き換える力がある。今日確かめるなら、スーパーや店舗の売場でライティングダクト(乾燥した展開した場所)を見つけたあと、バックヤードや厨房との境目で配線が金属管やケーブルに切り替わる瞬間を探してみるといい。表の×のマスが、現実の建物では工法の切り替え点として目に見える。
この表は、湿気で絶縁が劣化し、点検できない場所で不具合が静かに育った事故の積み重ねの上に引かれた線でもある。そして住宅でケーブル工事(VVFケーブル)が圧倒的に使われる理由も、この表から読める。全マス○——場所を選ばない工法だからこそ、間取りも湿気も現場ごとに違う住宅で標準になった。浴室乾燥機やEV充電器のように水まわり・屋外に近い設備が増えるほど、「どこにでも置ける工事」を選び分ける眼は仕事の入口になっていく。工法選定の実務は電線管・配線ダクトの種類と選び方が詳しい。
冒頭の地下厨房で、なぜ工事店は首を横に振ったのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。