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電気工事の施工方法 ・ 7 / 10

小勢力回路 — チャイムの線はなぜ細くていいのか

読み終えると、こうなる

玄関チャイムの細い配線と、コンセントの太い配線を、電流の縛り方の違いとして仕分けられるようになる

  • 小勢力回路の電圧区分(15V・30V・60V)から、対応する最大使用電流5A・3A・1.5Aを選び直せる
  • 造営材取付けか架空施設かで、電線の太さ基準(0.8mmか1.2mmか)を選び直せる
  • 60Vという施設上の上限と、36Vという資格免除の上限を混同せず仕分けられる
考えてみよう

玄関チャイムの配線は、直径0.8mmほどの細い電線でよい。同じ壁の中を通っているコンセントの電線は1.6mm以上で、技能試験なら被覆のわずかな傷でも欠陥になる。しかもチャイムの配線は、条件によっては電気工事士の資格がなくても触れる。

同じ壁の中を並んで走る2本の線に、なぜここまで扱いの差があるのか。細いほうが危ないのではないのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この差の理由を電流の数字から説明できるようになっている。

チャイムの線が属しているのは「小勢力回路」という区分だ。電技解釈第181条は、電磁開閉器の操作回路や、呼鈴・警報ベル等に接続する電路のうち、最大使用電圧が60V以下のものを小勢力回路と定め、一般の低圧屋内配線よりずっと緩いルールで施設できるようにしている。玄関チャイム、インターホン、リモコン式スイッチの操作回路、火災報知の警報ベル——住宅や店舗の壁の中には、この回路が思いのほか多く走っている。

緩めるための条件が、電源の作り方だ。小勢力回路には絶縁変圧器(1次側の対地電圧300V以下)で電気を供給する。1次側の100Vと2次側のチャイム回路が電気的に完全に切り離された変圧器で、電圧を落とすと同時に、流せる電流にも上限を掛ける。

最大使用電圧の区分最大使用電流変圧器の2次短絡電流
15V以下5A以下8A以下
15V超 30V以下3A以下5A以下
30V超 60V以下1.5A以下3A以下

右端の「2次短絡電流」に注目してほしい。2次側の電線同士が直接触れてショートしたときに流れる電流が、変圧器の性能として最初からこの値以下に抑えられている(この値を超える変圧器を使う場合は、最大使用電流以下の過電流遮断器を2次側に施設する)。

ふつうの配線は、「流れるかもしれない大電流」に電線の太さで備える。小勢力回路は逆で、電源側で「流れうる電流」を先に縛ってしまう。ショートしても数Aしか流れない回路では、太い電線で備える理由そのものが消える。細い線が許されているのではなく、細い線で足りる回路を先に作っている——順序が逆なのだ。

だから電線のルールも軽い。造営材に取り付ける場合、電線はケーブル・通信用ケーブルを除き直径0.8mm以上の軟銅線(又は同等以上の強さ・太さ)でよく、コードやキャブタイヤケーブル、絶縁電線が使える。屋外に架空で渡す場合は直径1.2mm以上の硬銅線が基準になり、道路横断では路面上6m以上といった高さの規定も付くが、いずれも一般の低圧配線より簡素だ。

もうひとつ、冒頭の「資格がなくても触れる場合がある」には注意がいる。電気工事士法で資格不要とされる軽微な工事に入るのは、電鈴・インターホン等に使う小型変圧器(二次電圧36V以下)の二次側の配線工事だ。小勢力回路の60Vと、資格免除の36Vは別々の線引きで、60V以下でも36Vを超えれば資格の免除はない。施設のルール(電技解釈)と資格のルール(電気工事士法)が、それぞれ別の数字で線を引いている——試験ではこの2つを混ぜた選択肢が出る。

必要な心線数から、写真を1枚に絞る

小勢力回路の写真問題は、「この配線に必要なケーブルはどれか」という形で出る。 外観だけで迷ったら、必要な心線の数から逆算すると1枚に決まる。

数え方は主回路と同じで、電気は行って帰ってくる

回路必要な心線数
押しボタン1個 → チャイム1台2心(行きと帰り)
押しボタン2か所 → チャイム1台(鳴り分けなし)2心(並列につなぐ)
押しボタン2か所 → 鳴り分ける(玄関/勝手口で音を変える)3心(共通線1+各ボタン1)
**鳴り分けが要るかどうか**が分岐点だ。**同じ音でいいなら2心、区別したいなら3心**になる。 3心が要るのは、チャイム側が「どちらのボタンが押されたか」を知る必要があるからで、 **共通線1本+ボタンごとに1本**という数え方は、片切スイッチの戻り線と同じ考え方になる。

そのうえで写真を見る。細く柔らかいコード状のものが候補で、 そこから心線数が合うものを選ぶ。太くて硬い平形(VVF)は最初に消える。

心線数が同じ候補が2枚あるときは、より線か単線かで分ける。 小勢力回路の規格は「直径0.8mm以上の軟銅線、またはこれと同等以上の強さ・太さのもの」で、 より線でも単線でもよいが、写真の設問では断面の見え方(1本の芯か、細い線の束か)が 手がかりになる。

小勢力回路の電線は、見た目からして細い

小勢力回路の写真判別では、主回路用のケーブルと並べて出題される。 外観の違いは、慣れていなくても分かるほどはっきりしている。

小勢力回路の電線屋内配線用(VVFなど)
太さ細い(0.8mm以上の軟銅線が基準)1.6mm・2.0mmが標準で明らかに太い
外装薄く柔らかい。コード状で曲げやすい硬く厚い。平形(VVF)は断面が長方形
心線の色赤・青・黄など多色のことが多い黒・白・赤(3心)と決まっている
心線数2心のコード状のものが多い2心・3心
決め手は**太さと外装の柔らかさ**だ。小勢力回路は電圧も電流も小さい(最大60V・1.5A〜15V・5A)ので、 太い導体も厚い絶縁も要らない。**チャイムやインターホンの配線が細いのは、そのためだ**。

写真4枚に明らかに細くて柔らかいコードが混じっていたら、それが小勢力回路用になる。 逆に、断面が長方形で硬い平形ケーブルはVVFで、小勢力回路には使わない。

なお電線の規格は「直径0.8mm以上の軟銅線、またはこれと同等以上の強さ・太さのもの」で、 ケーブル・コードのいずれも使える。細ければ何でもいい訳ではなく、下限がある点は押さえておく。

呼鈴の細い線から、弱電という職域が見えてくる

小勢力回路の考え方——電圧と電流を先に縛って配線を軽くする——は、チャイムだけの話ではない。インターホン、防犯センサー、ネットワークカメラ、LANケーブルで電力ごと送るPoE給電(PoE給電の電圧降下)。建物の中で増え続けているのは、まさにこの「細い線で足りるように設計された回路」たちだ。強電の資格を取りながら弱電の理屈も手にしておくと、スマートホーム・IoT設備の施工のように両方の線が同じ壁を通る現場で、どこからが資格の要る仕事かを自分で仕分けられるようになる。

今日確かめるなら、自宅のドアホンやチャイムを見てみるといい。親機の裏で100Vに直結するタイプか、コンセントに差すタイプか、乾電池式か。玄関子機へ向かう線の細さはどれも同じでも、100V側に触れる作業とチャイム線側の作業では、法律上の扱いがまったく違う。60Vと36Vという2本の線が引かれた理由は、感電と火災の危険が電圧と電流の積で決まるという、この科目全体を貫く事実にある。

冒頭の問い——同じ壁の中で、なぜ細い線が許されるのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 60Vのまわりに、別の制度の数字を並べて迷わせる

    なぜ引っかかる小勢力回路の最大使用電圧は60V以下だが、選択肢には20V台・30V台といった値が並ぶ。15Vや30Vは表181-1の電圧区分の境目として実在する数字であり、36Vは電気工事士法で資格が不要な軽微な工事(小型変圧器の二次電圧36V以下)の線引きだ。どれも小勢力回路まわりで見た覚えのある数字なので、記憶をたどるほど迷う。

    見破り方60は回路全体の上限、15と30は電流の区分を切る目印、36は資格が要るかどうかの別制度の線、と数字ごとに役割を貼り分けておく。設問が「使用できる電圧の最大値」を聞いているのか「電流の上限」を聞いているのかを読み分けてから、その役割の数字を取り出す。

  2. 電圧区分の境界ちょうどの値を出して、1段ずれた電流を選ばせる

    なぜ引っかかる最大使用電流は、15V以下で5A、15Vを超え30V以下で3A、30Vを超え60V以下で1.5Aと3段に分かれている。設問が15Vや30Vというちょうど境界の値を出してくると、「以下」なのか「超え」なのかで区分が1つずれ、答えも1段ずれる。区分の名前を覚えていても、境界の帰属を取り違えると外れる。

    見破り方表の区切りを「15V以下/30V以下/60V以下」と、すべて以下で読み直す。境界の値はつねに小さい側の区分に含まれる。15Vなら1段目で5A、30Vなら2段目で3A。境界値が出てきたら、迷わず小さい側に入れると決めておく。

  3. 電線の太さを、施設方法と切り離して問う

    なぜ引っかかる造営材に取り付けて施設する場合は直径0.8mm以上の軟銅線でよいが、架空で施設する場合は直径1.2mm以上の硬銅線が基準になる。選択肢には0.5・0.8・1.2・1.6が並び、どれも電線の太さとして実在する値だ。一般の低圧屋内配線で標準の1.6mmも混ぜられるため、細くてよいという知識だけでは絞りきれない。

    見破り方太さを問われたら、まず施設方法を読む。造営材に取り付けるのか、架空で張るのか。張るなら風や雪の力を受けるぶん太くなる、と理屈で結びつけておけば、0.8と1.2を機械的に覚え直さずに選び分けられる。

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 小勢力回路=電磁開閉器の操作回路や呼鈴・警報ベル等に接続する、最大使用電圧60V以下の回路(電技解釈第181条)
  2. 電源には絶縁変圧器(1次側の対地電圧300V以下)を使い、最大使用電流は電圧区分ごとに制限される(15V以下:5A、15V超30V以下:3A、30V超60V以下:1.5A)
  3. 電線はケーブル・通信用ケーブルを除き、直径0.8mm以上の軟銅線でよい(一般の低圧屋内配線の1.6mmより大幅に細い)
  4. 資格が不要になる「軽微な工事」の線引きは小型変圧器の二次電圧36V以下で、小勢力回路の60Vとは別の基準
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